正月休み(あまり休めなかったが)の夜、タイトルに挙げた2作品を観た。
『ストロベリーナイト』は昨年の春、『ATARU』はこの正月の間に放送されたものである。
2作品ともテレビドラマを映画化したモノで、「映画論評サイト」や巷の感想を見ると、両作とも
「映画というよりテレビのスペシャルドラマという感じ。劇場に足を運ぶほどモノではなかった」
というものであった。
確かにその通りで、映画としては物足りなさが残る。しかし、個人的にはそのほうが良い。
映画だと興行収入を求められるので、集客の為にカーチェイス、爆破、アクションなどが盛り込まれる。しかし、それらが不必要なものでストーリーが歪められたり、ストーリーの根幹が薄められたりすることが多いからである。
この点では、両作ともそういった余分な要素が少なく、キャラや風味もドラマの時のモノを引き継いでいた。けれども、視聴後の感想は対照的なものであった。
と、もったいぶって書いたが、その原因は明白で、元のドラマが「面白かった」か「つまらなかった」かの差である。
これだけでは、元も子もないので、それぞれについて少々
『劇場版 ATARU THE FIRST LOVE & THE LAST KILL』
ドラマそのままのキャラクターたち
ヒロイン?の蛯名舞子(栗山千明)は警察を辞めて、“捨て山”事件を拾い上げる為探偵社を開いていたが、相変わらずウロチョロするだけ。ドラマではアタル(猪口 在) /チョコザイ(中居正広)をフォローする役割を果たしていたが、劇場版ではそれもなし。ほとんど、存在価値が感じられなかった。ラリーにビンタしたところは光った。と言っても、ビンタされる元となったラリーの行動には必然性が感じられなかった。
あとは、最後までアタルを信じたことぐらいか。
相方の沢俊一(北村一輝)もほぼ傍観者。ふたりの会話や、アタルを交えたやり取りも面白味も深みもなかった。
で、主役のアタルは若干、物分りが良くなったが、やはり、じれったさを感じてしまう。
総じて言うと、蛯名と沢に魅力がなくなった分だけ、映画版はドラマよりさらに魅力を感じなかった。
さらに、主役3人の妨げになる人物として、管理官・星秋穂(松雪泰子)が登場。沢の同僚だったらしいが、足の障害というハンデを見せたくない為、無理している節がある。今回は、真犯人のアレッサンドロ・カロリナ・マドカ(堀北真希)の巧妙な工作に乗せられ、アタルを犯人扱いしてしまう嫌われ役。結局、“ツンデレ”になるのだが、主役たちのモタモタぶりと相まって、ストレスを溜めさせる役割を果たしてしまった。
白状すると、演じていたのが松雪泰子だと全く気付かなかった。
裏の主役の真犯人・マドカも魅力に欠けた。
ラリーの横槍でFBIを追い出され、アタルにも見捨てられたと感じ、汚い大人たちに罰を与える(処刑する)ついでに、アタルを犯人に陥れることで復讐を果たそうとしたが、今一つ、ピンとこない動機である。知能は高くても、情操が未発達ということで許容はできるが、魅力は感じなかった。
アタルとの心の交流は許容するとして、想い出の場所だからと言っても、最後にアメリカに渡って決着をつけることの必然性が弱い。
自殺の理由はなんだったのか?アタルが自分を受け入れてくれなかった?せいか、アタルを陥れた罪の意識か?逮捕・拘束を逃れる為か?私の視聴力不足ゆえか、分からなかった。
マドカの為に、アタルがはユリを運ぶシーンも冗長感を感じただけであった。
ストーリーというか、謎解きであるが…………
コンピュータで解析しないとわからないようなアタルの出すヒント、しかも、謎解きをするのは警視庁鑑識課・科捜研連絡係の渥見怜志(田中哲司)。彼がいないと、ストーリーは進まなかった。さすが、『トリック』の自称天才マジシャン・山田奈緒子を演じる仲間由紀恵さんを射止めただけのことはあるが、彼が謎解きをしたんじゃあ、ドラマとしておかしいのではないだろうか?
蛯名もアタルの言葉を解析したことはあったが、謎解きに頭を使ったシーンはなかった。
結局、キャラに魅力がなく、犯人の行動や心理がよく分からず、謎解きも面白くないという残念な映画であった。
『ストロベリーナイト ~インビジブルレイン~』
こちらも、相変わらず自分勝手に単独行動を取る姫川玲子(竹内結子)、面子にこだわり非協力的な組対四課係長・宮崎真一郎(今井雅之)や組対四課主任・片山正文(柴俊夫)ら組対四課の面々、現場の刑事など“道具”としか思わない刑事部長・長岡征治(田中哲司)とストレスの溜まる要素はいっぱい。(何と、今作にも田中哲司、登場!)
私も、ドラマ放映中、姫川には好印象を持っていなかったが、その他の脇役たちに魅力を感じており、また、ストーリーの深さや、ドラマの雰囲気が好きであった。
この作品も、相変わらず協調性のない姫川、その他、事件の詳細には疑問を感じる点は多かったが、プラス要素がマイナス要素をカバーしてくれた。
ただ、トラウマを持つゆえ、人を殺したいという衝動に駆られるという共通項で、姫川が竜崎組の牧田勲(大沢たかお)に惹かれ、身体を許すというのは、描写不足を感じたし(故意の演出かも)、理解が困難だった(牧田は魅力的だったが)。
それにしても、サブタイトルが「インビジブルレイン」とは言え、雨が降り過ぎだった。
『ストロベリーナイト』は昨年の春、『ATARU』はこの正月の間に放送されたものである。
2作品ともテレビドラマを映画化したモノで、「映画論評サイト」や巷の感想を見ると、両作とも
「映画というよりテレビのスペシャルドラマという感じ。劇場に足を運ぶほどモノではなかった」
というものであった。
確かにその通りで、映画としては物足りなさが残る。しかし、個人的にはそのほうが良い。
映画だと興行収入を求められるので、集客の為にカーチェイス、爆破、アクションなどが盛り込まれる。しかし、それらが不必要なものでストーリーが歪められたり、ストーリーの根幹が薄められたりすることが多いからである。
この点では、両作ともそういった余分な要素が少なく、キャラや風味もドラマの時のモノを引き継いでいた。けれども、視聴後の感想は対照的なものであった。
と、もったいぶって書いたが、その原因は明白で、元のドラマが「面白かった」か「つまらなかった」かの差である。
これだけでは、元も子もないので、それぞれについて少々
『劇場版 ATARU THE FIRST LOVE & THE LAST KILL』
ドラマそのままのキャラクターたち
ヒロイン?の蛯名舞子(栗山千明)は警察を辞めて、“捨て山”事件を拾い上げる為探偵社を開いていたが、相変わらずウロチョロするだけ。ドラマではアタル(猪口 在) /チョコザイ(中居正広)をフォローする役割を果たしていたが、劇場版ではそれもなし。ほとんど、存在価値が感じられなかった。ラリーにビンタしたところは光った。と言っても、ビンタされる元となったラリーの行動には必然性が感じられなかった。
あとは、最後までアタルを信じたことぐらいか。
相方の沢俊一(北村一輝)もほぼ傍観者。ふたりの会話や、アタルを交えたやり取りも面白味も深みもなかった。
で、主役のアタルは若干、物分りが良くなったが、やはり、じれったさを感じてしまう。
総じて言うと、蛯名と沢に魅力がなくなった分だけ、映画版はドラマよりさらに魅力を感じなかった。
さらに、主役3人の妨げになる人物として、管理官・星秋穂(松雪泰子)が登場。沢の同僚だったらしいが、足の障害というハンデを見せたくない為、無理している節がある。今回は、真犯人のアレッサンドロ・カロリナ・マドカ(堀北真希)の巧妙な工作に乗せられ、アタルを犯人扱いしてしまう嫌われ役。結局、“ツンデレ”になるのだが、主役たちのモタモタぶりと相まって、ストレスを溜めさせる役割を果たしてしまった。
白状すると、演じていたのが松雪泰子だと全く気付かなかった。
裏の主役の真犯人・マドカも魅力に欠けた。
ラリーの横槍でFBIを追い出され、アタルにも見捨てられたと感じ、汚い大人たちに罰を与える(処刑する)ついでに、アタルを犯人に陥れることで復讐を果たそうとしたが、今一つ、ピンとこない動機である。知能は高くても、情操が未発達ということで許容はできるが、魅力は感じなかった。
アタルとの心の交流は許容するとして、想い出の場所だからと言っても、最後にアメリカに渡って決着をつけることの必然性が弱い。
自殺の理由はなんだったのか?アタルが自分を受け入れてくれなかった?せいか、アタルを陥れた罪の意識か?逮捕・拘束を逃れる為か?私の視聴力不足ゆえか、分からなかった。
マドカの為に、アタルがはユリを運ぶシーンも冗長感を感じただけであった。
ストーリーというか、謎解きであるが…………
コンピュータで解析しないとわからないようなアタルの出すヒント、しかも、謎解きをするのは警視庁鑑識課・科捜研連絡係の渥見怜志(田中哲司)。彼がいないと、ストーリーは進まなかった。さすが、『トリック』の自称天才マジシャン・山田奈緒子を演じる仲間由紀恵さんを射止めただけのことはあるが、彼が謎解きをしたんじゃあ、ドラマとしておかしいのではないだろうか?
蛯名もアタルの言葉を解析したことはあったが、謎解きに頭を使ったシーンはなかった。
結局、キャラに魅力がなく、犯人の行動や心理がよく分からず、謎解きも面白くないという残念な映画であった。
『ストロベリーナイト ~インビジブルレイン~』
こちらも、相変わらず自分勝手に単独行動を取る姫川玲子(竹内結子)、面子にこだわり非協力的な組対四課係長・宮崎真一郎(今井雅之)や組対四課主任・片山正文(柴俊夫)ら組対四課の面々、現場の刑事など“道具”としか思わない刑事部長・長岡征治(田中哲司)とストレスの溜まる要素はいっぱい。(何と、今作にも田中哲司、登場!)
私も、ドラマ放映中、姫川には好印象を持っていなかったが、その他の脇役たちに魅力を感じており、また、ストーリーの深さや、ドラマの雰囲気が好きであった。
この作品も、相変わらず協調性のない姫川、その他、事件の詳細には疑問を感じる点は多かったが、プラス要素がマイナス要素をカバーしてくれた。
ただ、トラウマを持つゆえ、人を殺したいという衝動に駆られるという共通項で、姫川が竜崎組の牧田勲(大沢たかお)に惹かれ、身体を許すというのは、描写不足を感じたし(故意の演出かも)、理解が困難だった(牧田は魅力的だったが)。
それにしても、サブタイトルが「インビジブルレイン」とは言え、雨が降り過ぎだった。