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英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『BORDER  ~警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係~』 最終回

2014-06-25 22:34:07 | ドラマ・映画
 本当は、今クール視聴した『BORDER』、『MOZU』、『ホワイト・ラボ~警視庁特別科学捜査班~』、『ビター・ブラッド』すべて観終わってから、ひとまとめで感想を述べようと思っていましたが、終了日時に間があったのと、『BORDER』が他の3作とは水をあけた出来だったこと、最終回がショッキングだったことから、今作だけ独立して記事を書くことにしました。

 前回も書いたように、「霊と対話できる」というのは刑事としては最強の反則技であるが、その制約の中で、種々のシチュエーションを駆使して、謳い文句の「正義と法など様々な境界で命と向き合うヒューマンサスペンス」を見せてくれていた。(お助けマンの力を借り過ぎるきらいがあったのが不満点)

 さて、最終回だが、刑事の正義が暴走してしまい、犯人を突き落としてしまうという衝撃のラストであった。
 正義が暴走して法を犯してしまう刑事という設定は稀有なものではない。しかし、それは主人公とは対極に位置す者であった。主人公の正義が暴走し、殺人を犯してしまい終了!……主人公・石川刑事が犯人を思わず突き落としてしまった時に、「あっ」と言葉を発したのと同じ感情を抱いてしまった。

 そして、皮肉にも、「死者と話ができる」石川の特殊能力により、自分が殺した犯人の声を聴くことになる。
 石川の背後を意識させるカメラワーク、そして「こちらの世界にようこそ」という犯人の言葉………まさに『世にも奇妙な物語』の世界である。


 ……そう、『世にも奇妙な物語』なら、良いのである。
 視聴後、衝撃と共に、もやもやしたモノが残った。

 大森南朋さんが演じた犯人・安藤……「殺人鬼」、いや、「殺人者」と言ったほうが良い。平淡で静穏な「狂気」……いや、これも違う……「快楽」「憎悪」などの感情を持たない存在である。もはや、人間ではなく「悪、そのもの」「殺人を行うために存在する者」である。
 安藤が石川を「お前と俺の違いは、正義(悪)のために殺人ができるかどうかだ。お前には殺せない」といったような挑発をするが、石川が≪殺せない≫とタカをくくっていたのではなく、石川が自分の側に来ることを望んでいたように思える。
 何らかの感情を持って殺人を行っていたのなら、殺されてしまったことで≪今後、殺人を犯せなくなってしまう≫……そういった無念さを「こちらの世界へようこそ」の台詞からは、全く感じられなかった。


 石川が、凶弾を受けたことによって得た特殊能力。しかし、この事と結末の因果が薄い。
 もちろん、この能力により死者の無念さやこの世への未練を感じ、それによって、平穏な精神状態を保てなくなることはあった。最終回も、殺された少年の思いに応えられなかった悔しさも殺人を犯してしまった原因のかなりの部分を占めていたが、最後は石川の犯人への怒りによって衝動的に突き落としてしまった。
 殺人のボーダーを超えてしまったのは、特殊能力によるものではなく、怒りだった。
 特殊能力の意義は、ラストシーンで安藤が「こちらの世界へようこそ」と言わせて、井上と視聴者に聞かせることであったと言って良いだろう。

 「死者と会話できる能力」による葛藤が主題ではなく、能力は単なるドラマを展開するための道具に過ぎなかったのだ。


 今クールの視聴したドラマの中では、頭一つ抜けた面白さだったが、この点が残念だった。
コメント (2)
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