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Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

ドローイング362. 小説:小樽の翆291. 幕間16.実像と虚像の間を揺れ動く

2021年01月11日 | drawing

 

 昨年1月10日に始めた「小説:小樽の翆1.冬の旅の妄想」から初めて、このシリーズは1年続いてしまった。

 このシリーズ最初の頃は、手元にある雪の画像を集めてブログを書いていた。早々に手持ち冬画像は底をつき、当時局地的なコロナ感染で北海道も終息の兆しが見えていた頃を見計らって雪の小樽を訪れた。これは正解だったし、随分と撮影画像をブログで用いた。これも払底し、再度の全国への感染拡大で家にこもると、撮影どころではなくイラストにした。

 イラストで描き続けているとけっこう多彩な表現が可能となり、誰でも撮影できる機材で画像をアップさせることに、むしろ私自身が退屈さを感じはじめてしまった。

 写真という技術的な方法に、どうせ機械の目だし、実像を記録したければ写真しかないが、実像しか記録できないところに、写真のつまんなさを感じてしまった。そういうことに気づくと、私の写真への興味が大いに失せてゆく。

 ならば、つくって表現してしまえばよい!。それは写真ではできない事だ。そうした気づきで、イラスト化が始まった。そんなイラスト制作の内事情は、あるフェーズでは実像と虚像の間を揺れ動いているようだ。それは私自身の意識の揺らぎでもあるが。

 例えば図1の左側は、南小樽駅近くの海際に実在する古い民家だ。撮影画像を見ながら、実在に近いイラストにしている。それに対して右側は、架空の居酒屋だ。架空ではあるけど、幾つかの撮影画像から、建築の細かい要素を拾い集めて再構成したので、こうした居酒屋が小樽にあってもおかしくないとする現実のリアリティを維持している。そんなリアリティにこだわり続けたのも、この頃までである。

図1.左:ドローイング243、右ドローイング244

 

 図2左側は、今も実在する明治建築だが、右側は実在してないし、したという記録もない。ただ昔はこの程度のものが小樽にも、あったでしょうという全く架空の建築だ。Google mapでロケーションをして現実の敷地を想定して描いた。

 次第に、こうした実在と虚構の間を揺れ動く面白さが、描いている側には沸いてきたし、現実の風景など無視して、クリエイションを働かせて風景を小説に合わせてつくってしまう、あるいはイラストに合わせて小説化するという方が面白い事に気がついた。

 

図2.左:ドローイング311、右ドローイング345

 

 もう一例あげておこう。図3は、坂の街小樽を踏まえてはいるが、全く存在しないストリートである。

 こんなストリートがあったら街も面白いでしょう、とする提案が背後に見え隠れしている。こうした方法を、都市デザインの分野ではスケマティック・デザインと呼ぶ。それは街の将来ビジョンを、できる限り理想型で描いたものであり、筆者の仕事の一つにもなっている。

 こうした方法でこれまで随分と仕事をしてきたけど、実現した街は皆無。こちらもこの通りに作りなさいと言わないし、街づくりに関わる人達の意識の相違で、このエッセンス程度の実現位は、果たしただろうか。

 それでも、このイラストの役割は、将来ビジョンをビジュアルに示したものとして、十分意味があったし、地元の人達に活力を与えてきたことも事実だ。そんな仕事の方法を、このブログにも持ち込んでみた。小樽にも、こんなストリートをつくりませんか?、という筆者のメッセージをこめて。

図3.ドローイング329

 

 図4に至っては、完全に架空の風景だ。明治期に干拓事業をおこなって平地を確保し、今の堺町商店街があるが、それだけ小樽は平地が少なく、大河も流れておらず、むしろ坂と山ばかりの街といってよい。そんなわけで、雪原などがあろうはずはない。しかし私の感性に合わせて作ってしまえ!。

 ただし北海道のいずれかの土地だったら、例えば倶知安の平原とか・・・、だったらありそうな風景だ。多分背後の山をニセコの羊蹄山と見立てれば、この程度の風景はありそうだが・・・。

図4.ドローイング348 

 

 こうして実像から虚像へ、私のクリエイション意識が変化してきた。最近では、現実の風景もつまらないので、虚像でいいんじゃないと思ったりする。それも見た風景を写生するという退屈な技法は素通りして、架空の風景のクリエイションを勉強している。40年ぶりで再開した透明水彩絵具による絵画も、まだまだ学ぶべき事がありそうだ。

 そんなわけで、目に見える風景しか表現できない写真には興味がなくなり、撮影機材が遊んでいる。

 そんな七転八倒して、官能小説を1年間も真面目に続けている自分に少し笑える。

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