キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

清酒に望むこと

2007年04月20日 | Weblog
昨日は随分長いブログになってしまい、今回試飲して気がついた清酒の傾向について書くことが出来ませんでした。私は清酒については愛好家のレヴェルに留まっている状態ですが、数年前と今回では明らかに出展されている清酒の種類味わいの傾向が異なってきていると思います。

赤レンガに参集していただいた清酒メーカーは最大手がおりませんので、小規模から中規模の蔵の酒造りの傾向になると思います。従って最大手との差別化を図ることを戦略の基本にしていると思います。価格訴求の傾向はあまり見られず、既に過去十数年の清酒冬の時代を経過し、この訴求点では経営が成り立たない事が明らかになっているんだと思いますし、またそこを訴求点にしていた中小の酒蔵は既にゲームから消えているのではないかと思います。品質を訴求点とした場合に、一時吟醸酒や大吟醸酒に走った蔵が多かったように思われますが、食前酒としての役割の一端をになったものの一過性の流行に終わったように思います。食中酒としての清酒の地位を確保しない限り、消費量は伸びてゆかないような気がいたします。

今回気がついた傾向としては、純米酒が多かったこと、それも生酛造りや山廃造りといった酸のレベルが高い酒質の酒で、飽きがこない食中酒を意識していると思われました。また、一年あるいはそれ以上蔵で寝かせてから出荷して酒質を整えているものが多かったですね。これは造りが良くなければ寝かせる事は出来ないわけで、旨味のある落ち着いた酒が多かったと思います。有機米を使用した酒も増えてきていると感じました。味わいの特徴は試飲固体が少ないので今のところ何とも言えません。湿潤な日本の風土を考えた場合無農薬栽培はかなり厳しいことと思いますが、有機肥料を使って地力を維持する事はとてもよいことと思います。もう少し飲み込んで味わいの差が分かるようにしたいものです。

全体としての味わいは、特に純米酒に限定して利いたことも大いに影響しているとは思いますが、厚みがあり、味わいに襞があり、旨味が強く、酸のレベルが高いためにフィニッシュが切れるスタイルが主流とみました。これは常々私が清酒に求めているもので当然好みのスタイルです。

ワインと比較して清酒に少ない要素は、渋味、酸、香りですが、決定的に優位に立っている要素は旨味です。かつて吟醸香に清酒復活の活路を求めたのは、当時のワインの好調さに倣ったような気がいたしますが、他の酒類に比較して清酒がもつ最大のアドヴァンテージは香りではなく旨味です。このことを心に留めていただいて、これからも旨い酒の追求をしていただくことを、酒蔵の皆様に心の底からお願いしたいと思います。
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雨の赤レンガ倉庫の中では

2007年04月19日 | Weblog
昨日の横浜は生憎の雨、にも拘らず清酒焼酎ワインビールのバトルロイヤルともいうべき試飲会は、横浜赤レンガ倉庫に400名を集める大盛況。大星岡村横浜支社の傘下に結集したメーカーは50社を超えていたのではないかと思われ、そのアルコールのバリエーションの多さが人をして雨中試飲会に足を運ばせたのでしょうか。見方を変えれば赤レンガ倉庫に忽然と現れた時間限定の酒場に集う左党が作り上げた大酒宴、春の遅い夕闇が迫る頃にはその喧騒も忽然と姿を消し、宴は一時の夢、静謐な倉庫のたたずまいに戻っておりました。

身を清め体調を整え臨んだ清酒の利き酒のご報告をいたします。流石に利き酒は清酒に限定するとはいえ十五を超えるメーカーの総ての酒を利くには時間と肝臓のアルコール分解能力に限度があり、あくまでも私の好みで純米酒を主体の利き酒といたしました。

以前に神吉拓郎さんのエッセイでご紹介した東京の地酒、創業元禄15年の澤の井、青梅市の小澤酒造が造っております。「純米大辛口」品名の通り辛口でスッキリしたスタイルでした。

徳島県阿波市から来られた太閤酒造場、淡路島の有機米の日本晴れで造られた「有機純米」は米の香りがぐっと来るシャープで厚みのある優れた酒でした。徳島の山田錦で造られた「特別純米 白我流」も味筋は似ていて美味。

小田原から箱根登山鉄道で湯元へ向かう途中、入生田という駅の近所で見えてくる相田酒造店は総ての酒を純米造りとしています。酒の名前は“火牛”(かぎゅう)北条早雲が牛の角に松明をつけて大軍を装ったという「火牛の計」からの命名。「火牛 純米」は麹米が五百万石、掛米があかね空、厚みがありすっきりした飲み口。地元ゆえぜひ良い純米酒を造り続けて欲しいもので、利き酒にもつい力が入ってしまします。

奈良県吉野からお越しの北岡本店の酒のブランドは“やたがらす”日本サッカー協会の旗章になっている三本足の烏です。瑞鳥で大きい鳥の意、太陽の精。「やたがらす 山廃純米」原料米はひとめぼれ、厚みがあるがフィニッシュはさっぱりしている。

滋賀県の岡村本家は大星岡村の本家でもあります。ブランドは「金亀」彦根藩主井伊大老の居城金亀城が名前の由来。「長寿金亀白80」昔の酒質を再現との事、ほーという感じ、まったりとした甘味がある。「長寿金亀茶70」シェリー香、すっきりしているが厚みがある。「鬼の左近」辛口でこくと切れがある。

創業延宝元年(1673)伏見、玉の光酒造ここは純米酒が無く「山廃純米吟醸」女酒、優しく癖が無く、米の旨味をダイレクトに感じる。私的には4年ほど前ここの酒を四種類ばかりいただき、徹底的に飲み込んで清酒開眼となった記念すべき酒蔵、懐かしい味わいです。雅という言葉が似合います。

小樽から来られた北の誉れ酒造には札幌に行くとお世話になっており、縁の深い酒蔵です。「純米 吟心北の誉れ」すっきりしていてバランスが良い。ここは何より価格が安いのが魅力、四号で千円を切って求める事が出来る財布に優しい純米酒。

秋田県由利本荘市の斎彌酒造店は長い間この試飲会に参加していただいており、過去随分多くの酒をいただき、飲ませていただきましたので、すっかりスタイルは馴染みになっております。「雪の茅舎 山廃純米」はすっきりしたこの蔵のスタイルでした。ここの酒を飲むと雪国の一面白の風景を連想いたします。「隠し酒」山廃純米辛口古酒 シェリー香があり、複雑さとこくが強い良い酒です。

創業元和元年の秋田から来られたナショナル物産は秋田杜氏の手にな寒造りの「純米 福小町」厚みがあり素直な味わいでフィニッシュに酸がある。秋田の酒に共通する芳醇なスタイルです。

宮城県塩釜の佐浦は「浦霞」で有名ですね。実朝の「鹽竈の浦の松風霞むなり八十島かけて春やたつらん」からとったとの事です。風雅ですね。「純米 浦霞」米の味わいが綺麗にでている。厚みがありフィニッシュはすっきりしている。

会津の末廣酒造もかれこれ二十五年くらい前から飲ませていただいている酒蔵です。有機米使用「純米酒 大自然」は厚みがありまったりとしています。「山廃純米 末廣」大自然と同じスタイルでした。面白い興味を引くアイテムに、「酒蔵のシャンパン 微発泡 ぷちぷち」瓶内二次醗酵で低アルコール7%、ほんのり甘くて炭酸が刺激的でさっぱりしていて、美味。何しろ“ぷちぷち”って名前がとってもいいセンスだなあと感心しました。

長岡からはお福酒造が参加されており、私なんぞは山本五十六を直ぐに連想し、好ましい印象を受けてしまします。明治30年創業、創業者のに岸五郎さんは速醸酛の技術を発明され、酒造りのバイブル「醸界拾玉」を明治27年に発刊されているとの事。玉という文字をお使いになったところにもつい感激してしまいます。「純米酒」を利きましたが、こくがあって、フィニッシュに果実味があります。

新発田からも金升酒造創業文政五年(1822)が参加いただいており、加治川岸の桜並木に由来する「初花」という酒をお持ちです。雪国の長い冬が終わり、待ちに待った優しく可憐な桜花の爛漫をイメージしたとの事です。「純米酒 初花」はフルーティーですっきりしていてフィニッシュに酸があります。まさに春のイメージですね。

「酔鯨」という豪快な名前にまずいかれちゃいますが、高知県から酔鯨酒造が参加されています。初代土佐藩主はご存知山之内一豊、奥さんの方が有名ですが、内助の功の実態はいかばかりだったのでしょうか、何だか怖そうなんですが。土佐藩最後の十五代藩主は山内容堂です。その容堂が酒を愛した自らを「鯨海酔侯」と称し、ここから「酔鯨」と命名したとの事。「酒は固より欠くべからず。吾言わず、之を温む。留むるを欲する者、則ち知己に非ず」という極端な酒擁護論を展開していたようで、殿様がこれではとさっぽは飲まなきゃ仲間はずれ、出世の道も断たれたことでしょう。下戸には生き抜くに厳しい藩だったのでしょうね。「特別純米酒 酔鯨 八反純米酒60%」と多少しつこめの命名のこの酒は襞のあるフルーティーな香りで、酸が強い飲み飽きしないスタイル。「酔鯨特別純米酒」高知アキツホを使ったこの酒も基本的なスタイルは同じ、品種の違いが風味に出ています。二つとも良い酒です。

二本松の大七酒造の「大七純米生酛造り」は死ぬほど飲み込んでいるので、あえて試飲はいたしませんでしたが、厚みとナッティーな風味があり、フィニッシュが切れる。誠に好みの酒です。新酒のにごり酒を聞かせていただきましたが、これが一年経つと磨かれ熟成して行くのかとその揺籃期を味わう事が出来たのが幸せでした。

昨日酒を利くのに疲れましたが、今日は書くのに疲れました。きっと読むのにも疲れることでしょう。出来れば利いて疲れたいって、お悔やみ申し上げます。
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ワイン東京を観て

2007年04月18日 | Weblog
昨日ワイン東京が浜松町で開催され午前中少しだけ見学してまいりました。会場は朝降った雨のためか出足が鈍くお客様はそれほどいらっしゃいませんでした。出展ワイン業者のかたに顔見知りが多く挨拶と話をすることが多かったですね。

シャンペインのコーナーにレネ・ジョリーが出ていましたので、久し振りに挨拶方々声をかけ一杯頂戴いたしました。相変わらず美味いですね。日本の輸入元の担当者が辞めちゃってコンタクトが取れないんだとのことでしたが、最近ワイン業界はお辞めになる方が多いような気が致します。その後会場をうろうろしていたら、お会いしたかたのうち二名は今月一杯で今の会社お辞めになるとの事、気がするだけではなく事実多いんですね。もともと利益に弾力が無かった所にこのユーロ高でワイン業界は本当に厳しい状況に追い込まれています。国益から観れば輸出超過のこの国の外貨は蓄積されてゆき好ましいのでしょうが、ヨーロッパからの輸入を生業としているものにとってはたまりません。ニュージーランド・オーストラリアにシフトして特定のニッチなマーケットでかなり上手く遣り繰りしている若い方もいらっしゃいましたので、おじさん達がよってたかって嘆き節を唸っているだけでは子守唄にもなりません。工夫が必要なんです。

ブルゴーニュの良いものを最近飲むのを楽しみにしておりますので、知り合いのブースでモンタニー一級を飲ませていただきました。酸が綺麗に出たシャープなスタイルの白でしたが、説明するの難しくて売り難いようなニュアンスのお話でした。ああ、やっぱりねと言う感じです。ワインについて自分自身の舌で判断が出来る大人が増えて来ないと、このスタイルは苦労するみたいです。苦労が目に見えてるのに何故売るのかって、メーカーに綺麗なお嬢さんがいて、沢山売ってまた会いに行きたいんだとのことです。正当にして妥当性の高い動機ですね。

お昼までいて帰ってきてしまったので、会場の様子がその後同推移したのかは分かりませんが、昼まではいかにも盛り上がりに欠けた悲しい状況でした。雨も昼にはほぼ止んでいたので盛況に推移していただいていると良いのですが。

日付が替わって今日は、横浜赤レンガ倉庫でワイン清酒焼酎ビールによるバトルロイヤルが行なわれます。午後にでも顔を出し清酒を端から試飲させていただこうと企んでおります。それも純米酒をターゲットに行ないますので、舌の感受性は100%の状態にしておく必要があり、昨日は刺激物を避け充分な睡眠をとり今日のハレの日に備えてまいりました。清酒の試飲は本当に難しいです、今日は一年間の訓練でどの程度試飲能力がついているのかを確認する意味でも楽しみです。

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和食とシャトー・ラ・ルーヴィエール

2007年04月17日 | Weblog
今朝の湘南は雨、早朝から起き出してがたがたと仕事を片付けております。昨夜は横浜で旧知のフランス人女性キャロルと久しぶりに会食をし、今日再び十時にワインジャパンでお会いする約束をしたため、すこしあわてております。

昨夜は典型的な和食割烹で洋室の個室を取り、板長お任せの料理をいただきました。色々出ましたね。明日葉のチーズソース和え、筍の酒盗和え、これが先ず出ましたが、キャロルのためにシャトールーヴィエール白04を用意し、私のために山形男山の燗をいただき飲んでみたのですが、前者にはワインが後者には酒がまったく予想通り会いました。キャロルは先週末諏訪の酒造メーカーを訪問して純米酒、吟醸酒などのつくりを研究してきたところで、この酒盗には厚みのある純米酒があう。とおっしゃるではありませんか、お皿がすすんでオコゼの薄作りが、湯引きした皮と肝、葱と紅葉おろしの薬味にポン酢とともに出てきた折には、ワインは合わないし吟醸酒も香りが強すぎてだめねとおっしゃるではありませんか。刺身には純米酒ですよね。いやまったく、ブルゴーニュの美食とワインを子供の頃から堪能している舌は、和食でも清酒についても的確な意見をその同じ舌から発言されます。

鱸の焼き物や煮物などをルーヴィエール04に合わせてニコニコ顔のキャロルに、ルーヴィエール白99も用意しました。これは多分次に揚げ物が出るからそれにとっておいたほうが良いよ、といっていたら春野菜のてんぷらと牛蒡のしんじょ、雲丹とホタテのはさみ揚げがでてまいりました。いやはや喜ぶこと、99のこの瓶は当りで、ルーヴィエールの能力が全部詰まったワインでした。繊細さ、酸と果実と熟成感の重層的な襞を味わう楽しみ、天婦羅には清酒よりワインが好く合います。南蛮渡来の食い物ですから当たり前といえば当たり前。そのあとの赤貝を胡瓜の薄切りで固めた酢の物も良かったですね、胡瓜の花が飾られケーキみたいでした。これにはよく清酒があいました。天婦羅に清酒が余り合わないため、その後の酢の物で口直しをする辺りに食物の組み合わせの妙がありますが、天婦羅をワインでいただくとワインがこの酢の物の役割をするわけですね。もり蕎麦をいただき、最後のデザートは白きくらげとワインゼリーに柑橘で余り甘くなく、キャロルが最後まで大事そうに飲まずにとっておいたルーヴィエール99にも合うお皿でした。

板長の橋本さんは和食の方なのに、少し洋の要素を取り入れたデザートがいつも閃いていますが、フランス女性の心理をよく読んでゼリーにワインを入れたところは実に憎いですねえ。女性にももてるんでしょうねえ。
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鈍感力がもてはやされているけれど

2007年04月16日 | Weblog
今日の横浜は雨です。春雨とはいえ陰鬱です。一人会社の前の街路樹の鈴かけはこの雨に喜んでいるようです。開いてきた黄緑の芽が雨に濡れて色鮮やかに見えてとても綺麗です。

先週ムルソーのドメーヌ・ラトゥール・ジローの試飲をする機会に再度恵まれました。ここのところ価格にこだわらず飲んでみたいワインを求めて、機会があれば試飲を重ねておりますが、個人的にはブルゴーニュの良くできたワインが好きです。お金のことを気にしなければ、良いブルゴーニョを毎日飲んでいたいと思っている方は随分と多いのではないかと思います。だから高いんだよと言われればそれまでのことで、需要と供給を考慮した場合、需要が供給を上回る幸福な状態を長い間楽しんできた地域と言えると思います。

このメーカーとは先月のフーデックスに始めてお会いして、幾つかのワインを試飲させていただいたのですが、変にマランジェに感心いたしました。この件は既にお話させていただいておりますが、不思議な造り手だなあとその後も度々思い出しておりました。ムルソーを試飲してみて、流行の売れるスタイルではないんですね。ムルソーは人が驚くように凄く強く造るか、酸化をかなりさせてバタ臭い感じに仕上げるかのやり方の人が多いなあと認識していた所。軽くてエレガントなスタイルのムルソーを造っているんですね。安くないワインですから、このスタイルに中々お金を出し難い。特に日本の愛好家はムルソーに一つの味わいを期待しているので、そこから外れると大した事が無いという評価を受けがちです。メーカーと話してみると、このスタイルがムルソーの持つ可能性を最大限に表現できるやり方で、多くの他のムルソーの造り手はその潜在的な能力を100%発揮させる造りが出来ていないことが多いとの説、キュヴェセレクション2005とジュヌヴリエール2004を飲んだのですが、重くなく、しつこくなく、チャーミングで味わいが多面的で重層的、重層的というと複雑で強いイメージを連想されるかたがいらっしゃると思いますが、あくまで軽快なんです。

ここ数年清酒の良さに虜になっておりますが、ある意味で繊細で多面的、あくまでかるみをもったものです。私は好みのものを良く俳句に喩えるのですが、優れた俳句が持っている要素、時間と空間の広がり、色彩とリズム感、余韻を備えたものは、日本人の感性に響くような気が致します。
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春夏秋冬女は怖い

2007年04月15日 | Weblog
昨日茅ヶ崎の海岸よりの住宅街を徘徊いたしましたが、紫の花が多い時期なんだなあと楽しく眺めながら歩きました。花蘇芳が一番目立ち満開、終わりに近い紫木蓮とまさに咲き始めた藤が紫の饗宴です。山帽子、花水木の白が新緑に映えるのも見ものです。気温が25度まで上がり狂おしいような春の一日でした。

先日、古書店で吉行淳之介さんの「“春夏秋冬 女は怖い”なんにもわるいことしてないのに」を見かけ、既に持っているかもしれないと危ぶみながらも、とりあえず購入しました。彼の本は昔読んだので部屋の奥まったところに仕舞ってあり、引っ張り出して読むのには半日掛かりなので大仕事なんです。学生時代熱中し当時入手できる著書はほとんど読破した好みの作家です。読み始めてみると彼独自の世界で軽妙に女性の怖さについて書いてあり、その思考パターンや嗜好美意識については慣れているというより、随分影響を受けているのでとても馴染み深かったですね。また幸いなことに初めて読む本だったのでより面白かったです。とはいうものの書かれているエピソードの幾つかは既に知っている事柄でしたけど。

最近雑誌などで吉行さんの記事を見かけることが多いですね、イメージはダンディーで軽妙で女に持てて、大人の男。最近昔の方が大人の男としてマスコミに取り上げられるケースが多いような気がいたします。白洲次郎、池波正太郎、開高健、山口瞳、青山二郎等々、「春夏秋冬 酒は美味い」なんて題でも本が編めそうな人達ばかりです。何で昔の人達が出てくるんだろうかと考えて見ますと、それぞれ教養と経験に裏打ちされた独自の生き方のスタイルを持った方達で、目利きで食通なんですね。そんな人達が今見あたらないので過去に遡って探してみると大人の男としてあるべき姿を持ったと思われる人達が居たんだということでしょう。しかし、この中の何人かの方の著書には親しんだ事があり、イメージだけではなく、かなり実相に近い形で了解していることを勘案すると、今の時代、当時の振る舞いをしたら世間から抹殺されそうな事が多いのではないかと思います。要は今、大人の男が生きにくい嫌な世の中なんです。

美意識より金が優先する社会といえるのかもしれません。もちろん資本主義の世の中金を抜きにしたら成り立ちませんが、資本主義はプロテスタンティズム無しに成立する事が無かったと、マックスウエーバーさんが分析しておられます。ここの部分が欠落してしまったのが現代の日本のようです。プロテスタンティズムの伝統の無いわが国において武士道をそれに代わるものとして上げる方もいらっしゃいますが、善良な庶民の感覚があれば事足りるのではないかと愚考いたします。不二家、村上ファンド、ほりえもんなど「春夏秋冬 官憲は怖い」にうってつけのスターですね。

無駄話が長くなってしまいましたが、その吉行さんには、キングズレー・エイミス「酒について」という翻訳書があります。「贋食物誌」というエッセーもあり、女性の問題を抱えた中で酒と食い物に一家言持ったかたでした。95年に愛人の大塚英子さんが「暗室の中で吉行淳之介と私が隠れた深い穴」、01年に同居人の宮城まり子さんが「淳之介さんのこと」、04年に本妻の吉行文枝さんが「淳之介の背中」をそれぞれ出版なさっておりますが、愛人→同居人→本妻の順に出版された所が興味深く、後の本になるほど恨みが込められているような気がして怖いですね。ちなみに私は大塚英子さんの著書を読ませていただきましたが、後のお二方のは恐ろしくて読んでおりません。かような恐ろしい環境の中、よくぞ吉行さんは味覚を維持できたものだと感服いたします。私なんぞ同じ環境におかれたら何を飲んでも食べても味がしないと思います。この辺りが吉行さんが達人として神格化される所以でもあるのでしょう。

「・・・女は怖い」の前書きによると阿川弘之さんが題名の候補を、春夏秋冬・東西南北・古今東西と三つ考えてくれたらしいいのですが、お亡くなりになった後に三つ合わせて題名にしても足りないぐらい怖い展開になろうとはご本人思ってもいなかったでしょうねえ。それにしても、こわいこわい。
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志水辰夫 「シャブリに候」

2007年04月14日 | Weblog
今朝の湘南は春というより海風が爽やかで初夏といったほうが良い天気です。二階の書斎で座って風を受けているだけでもとても気持ちがいいですし、南風が運んでくる潮騒と西湘バイバスを走る車の音を聞いているのも楽しいです。庭の姫紗羅はシュートした葉芽が展葉し黄緑と赤っぽい色合いが美しい瞬間で目を楽しませてくれます。良い季節ですねえ。

前に志水さんの「情事」を読んで同書に出てくるワインで志水さんのお好みのワインの傾向を推理してみましたが、今回「あした蜉蝣の旅」を読んでみて二度ほどシャブリを飲む場面が出てきました。この方センチメンタル・ハードボイルドと言われているので、もしかすると「あした蜉蝣の旅」が書かれた頃にはカルフォルニアシャブリが確か存在したので、ハードボイルドの本場アメリカに敬意を表して、これを飲んでいた可能性が僅かに残るのかなと思っていたら、好みの女性と飲んでいる場面で”世界が私たちを中心に回りはじめた。さすがにこういうときアメリカの酒の出る幕がない。デリカシーにかけるのだ”と主人公に言わせています。フィリップ・マーロウがワインを飲んでいたという記憶はありません。レイモンド・チャンドラーを読んだのは三十年も昔の事なので当然記憶は確かではありませんが、やっぱりI suppose it's a bit too early for a gimlet. の科白ほうが似合いますよね。だとするとハードボイルドにセンチメンタルの形容詞がついた場合だけ、俄然フランスワインが登場する確率が高くなると考えたほうが良さそうです。

それにしてもシャブリ、人気があります。先日ご紹介した宇佐美伸さんの「寿司おたく、ジバラ街道をゆく」の中でも驚くべきことにワインが一度出てきてしかもシャブリ、やはり日本人には一番馴染みがあるワインなのかもしれません。寿司食い専門家でもシャブリですものね。そのシャブリ産地では2005年がグレイトヴィンテージだったのでひじょうに良く売れ品薄になり、2006年の価格が暴騰、我々輸入業者を泣かせています。まあシャブリだけのことでは無くフランス中のワイン産地にこの傾向があり、加えてユーロ高でまっとうな価格を維持するのにほとほと弱っております。

これから札幌は一遍に春と夏がやってきます。私の大好きな白アスパラガスもシーズンを迎えます。マヨネーズと味噌を混ぜたソースでシャブリが良いですね。札幌にお住まいのシャブリ好きと推定される志水さんにとっても良い季節の到来のはずです。薄野のロビンソンB2に“グランヴァンセラー”という良いワインショップがあり、あのオリヴィエ・トリコンのシャブリが置いてありますのでぜひお試しいただけると嬉しいですね。


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輸入スティルワインの市場構造 

2007年04月13日 | Weblog
昨日は私の誕生日で多くの方からお祝いのメッセージをいただきました。あのオリヴィエ・トリコン、シャトー・スオのモニク、ジャン・フィリップ・マルシャン、こう並べてみると古くから付き合いのある連中です。モニクなどはオールド・フレンドなんて書いてきました。みんな年取るわけですね。国内のお取引先からもたくさんメールいただきました。「ありがとうございました。これからもよろしくお付き合い願います」とまとめてお礼をさせていただきます。今年の夏は久し振りに湘南の平目を釣ってやろうと、マリアオフィスのコノシロカラーのルアーを記念に購入いたしました。
        
WANDSというアルコールを生業とした人達向けの雑誌があることはご存知のかたも多いと思いますが、我々にとっては飯の種になる記事満載のありがたい雑誌です。そこから「2006 輸入スティルワインの市場構造」が届きとても興味深く拝見させて頂いております。

業務用(以後業と略記)と家庭用(以後家と略記)に別れ、尚且つ価格別に販売量が分かる統計になっています。業:家の比率は約38:62で国内で14,052,000ケースが販売されています。昨年より業が1%増えて家が1%減っています。価格帯は500円から1000円未満(以後0510と略記)が最も多く業15%家27%の構成比、次に売れている価格帯が1015(もうお分かりいただけますよね1000円以上1500円未満です)が業10%家16%です。要は0520の価格帯が一番売れているということです。この中で特異的なのは家2030が10%もあり、業2030の5%を上回っている事です。業:家が4:6を勘案しても上回っています。何となく家では安いワインを飲んでいるというイメージがありますがそうではないのですね。
もう一つ面白い傾向は業家の計で対前年比を見ますと、計05以下10%減、計0510が5%減と低価格帯が減っているのに計1050のミドルクラスの価格帯が約10%増えており、50以上が減っています。¥1000以上¥5000円未満の中間的な価格帯ののワインが好調であったということです。

ありがたいことに同じ統計が国別にもなされております。フランスは販売数が6,100,000ケースと全体の43.4%です。日本は特異的にフランスワインが強い国です。でも少し比率が減ったようです。四割以上の構成比があるので全体の特徴に傾向が反映しますが、家2030が19%もあります。計2030では28%の構成比です。

イタリアは総数が2,500,000ケース対前年3.3%増で全体の17.8%を占めています。業:家は53:47、0510から価格帯が高くなるにつれて構成比が綺麗に下がっています。計1015が28.5%増、計50100が12.9%増、計100以上62.5%増と高額ワインが増えているところに特徴があります。但し絶対数量は少ないのでその傾向があるとまではいえません。イタリアはうちは弱く、特に業務店向けに弱いのがその大きな原因ですが、業0515の構成が40%とあるのは実感より安いワインが主流を占めており、家0515の35%とあわせて75%あり、ここがポイントなんだと認識を新にいたしました。

アメリカは第三位なんですね。我が社は弱い所です。総数で2,100,000ケース全体の14.9%、前年比は7.7%増。業:家は32:68と圧倒的に家庭用ですね。家0510の構成比が59%、計でも77%と特異的な傾向を示しています。前年比は計1030が減っているだけで低価格高級ワイン共に増えています。特に計50100は125%増です。横浜ワインコレクションがこの国のワインに弱いのは、0510の価格帯のワインを持っていないことに原因がありそうですが、ここは大手輸入元の独占市場で我々が入り込む余地が有るのか無いのかよーく検討してみます。

チリは売れているようで総数が880,000ケース構成比は6.3%、対前年6.7%増と思ったほどではないですね。業:家が35:65、計0510が44%、計1015が48%と計0515で82%です。この統計は実感できますね。

我が社の得意なスペインです。販売総数830,000ケース構成比5.9%、対前年5.1%増です。業:家が25:75と圧倒的に家庭需要です。日本ではスペインレストランあまり見かけないですものね。それに引き換えイタメシ屋の多いこと。スペインレストランも麺類扱っていれば今頃そこいらじゅうにあったかも知れないのに。計0510の構成比が58%、計1015が28%と圧倒的に低価格志向です。確かにこれは実感どおりですね、今伝統的なワイン生産国で一番安くワインが仕入れられるのはスペインですから、低価格ワインはこの国に頼りがちになりますね。

オーストラリアは販売量随分減らしています。
ドイツも下げ止まりませんね。うちでもどうやって売ろうかと頭を抱えています。

アルゼンチンは元の数字が少なかった事もあるのでしょうが、販売総数は120,000ケースと対前年20%増と健闘です。計1520なんて700%増です。業:家は38:62と比較的業が健闘しています。計0510が47%、計1015が27%と全体の74%を占めており、安いワインが主流ではあるけれど、最安値のワインは無く、とても良い展開を今後してゆく可能性が高いと思います。無闇に最安値のワインを取り扱うのは得策ではありません、耳が痛いですね。

南ア、ニュージーランド、ポルトガルは販売を減らしています。

私は調査結果表の数字だけから以上の分析を書きましたが、あくまで私見です。詳しいワイン市場の分析はWANDS4月号に出ております。私はそれを読んでおりませんので、異なった見解が書いてある可能性も当然あります。分析とはそういう部分もあり、またそれが面白いのです。しかし資本主義の世の中、市場を正確に分析し対応をした人が勝ち残りです。こんな事をしていられません、早速これから読んでみます。
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イースターが終わり

2007年04月12日 | Weblog
今週頭は復活祭の休日で海外からのメールがほとんどなく気分の良い出だしでしたが、今日はイースターが終わり怒涛のメールがやってきました。毎年4月にイースターがあるとは何となく分かっていたのですが、それが正確に何時なのかというと恥ずかしながらこの年になるまで知りませんでした。調べた所「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に行なわれるとの事で、日にちが毎年変わるんだとようやく合点した次第です。

もう十年前になるでしょうか、フランスのコニャックの仕入先のカトーリーヌ・テルシニエールが、兄貴のうちで開かれるイースターのお祝いの集まりに招いてくれた事があります。兄さんはコニャックから北に車でだいぶ走ったロワールにそれほど遠くない所に、大きなシャトーを構えて農業を営んでおりました。親族が30人くらい集まって大広間で食前酒を楽しみ、その後食堂に移って昼食となりました。何を食べたかは忘れてしまいましたが、野菜サラダと焼いた肉、ケーキとコーヒーだったような気もします。当然食後はコニャックをたんまりと飲み腹いっぱいになった所で庭でゲートボールみたいな遊びをいたしました。子供達は広い庭の木立の中に隠されたイースターエッグやお菓子を探し回って、発見してはきゃあきゃあ歓声を上げていました。これは子供たちにとって凄く楽しい時間に違いありません。私でさえ宝探しに参加して見たくなったくらいですから。子供時代に復活祭は楽しい日という強烈な印象を持つことでキリストに対する好意的な感情を育てる事にもなっているんでしょうか。

昼前から飲み始めて、腹いっぱい昼を食べてワインを流し込み、その隙間にコニャックをさらに流し込み、多少の運動はしたとはいえ喉もとにまだ昼飯が詰まっている状態、それでもまた夕方になると晩飯の集まりが大広間の食前酒から繰り返されます。いや何ともガルガンチュワの国、すさまじいものがあります。それでも晩飯の準備で牡蠣の殻剥きのお手伝いをして多少の消化活動の後いよいよ晩飯。さぞや大変なものが出てくるのかと思いきや、さっき剥いた牡蠣のみ、白ワインと共に食してチョン。そうですよねえ、これでなければ人間を維持してゆく事はかないません。

復活祭の楽しみを少なくともフランスの片田舎で一度は経験したことが如何にその後のフランス人との付き合いに役立ったことか。
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ザルツブルグの華     

2007年04月11日 | Weblog
寒のぶり返しとかいって寒い日もあったのですが、いつの間にかコートを着なくなっています。桜もいつの間にか仙台辺りが見頃になっているのかも知れません。実は明日が私の誕生日なのですが、何時もこの頃庭の牡丹が見頃を迎えます。かつては一株から百以上の花をつける見事なものでしたが、年齢によるものか、日当たりが悪くなったせいか今年は二輪のみです。随分遠くからも観に来られる人がいて賑やかだった頃を思うと寂しい限りです。
   
ナンネル・バイオリンリキュールを新発売いたしました。シンデレラ・シューでこのメーカーをご存知の方もいらっしゃると思いますが、このバイオリン・リキュールはナンネル社の基幹商品です。ナンネル社はオーストリア・ザルツブルグにありますが、この街はモーツアルト生誕の地として記憶されている方が多いと思います。ナンネルと聞いてモーツアルトの姉のマリア・アンナ・モーツアルトの愛称と連想された方は相当のモーツアルト狂いですね。実際このナンネル社はこのマリア・アンナの愛称を社名にした会社です。

昨年10月に会社を訪問し、ザルツブルグの街を徘徊いたしましたが、モーツアルト生誕250年も手伝い、日本人観光客が私同様山間の小さな街を徘徊しており、この大天才を愛してやまない日本人が多いのに本当に驚かされました。こじんまりした中世の雰囲気を残したこの街には、古くて古典的な酒屋さんがひっそりとしぶとく営業をしており、店頭に見事に並べてられた20種類もある色とりどりのこのヴァイオリン・リキュールはとても美しく、観光客がお土産に購入するにはうってつけの容量と価格で、良く売れているようでした。またオーストリアはワイン生産国でありますが、ビールを飲む人も多く、リキュールの消費もかなり多いようです。

ザルツブルグへ行かれた方が、街の酒屋さんで目にすることも多く、ウイーンの空港ではそれこそ至る所で販売されているわけで、知らぬは輸入業者ばかりなりでは格好がつきません。メーカーからも何故これを売らないんだと再三の矢の催促も手伝い、今回販売に踏み切りました。今までになかった、森のフルーツ、キウイフルーツ、アプリコット、チェリー、ペアー、ラズベリー、エルダーベリー、ピーチが新たに加わりました。品質は既にシンデレラシューで実証済みです。食後酒やカクテル、お菓子作りにぜひお求め下さい。お部屋に飾っておいてもとても可愛いですよ。但し一つ買うと全部揃えたくなるのでお買い求めは計画的に。
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