キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

冬の陸奥

2006年12月18日 | Weblog
小春日和の横浜から久し振りにお便りいたします。先週は陸奥へ旅に出ており、ブログが滞っておりました、すみません。

八戸には当社のSさんが駐在しており、横浜ワインコレクションの案内を陸奥一帯にして頂いております。元々八戸近辺は酒どころ、南部杜氏の本拠地でもあります。Sさんは元々桃川におられた方で、蔵の中に知人も多く、しぜん私も桃川を頂く機会が多くなりがちですが、今回も八戸でお世話になっている方をお招きし、酒盛り。当然南部津軽の酒の話になりました。悪口もいっぱい出ましたが、蔵元に対して個人的な見解で評価するのは大変失礼なので、ここは桃川の酒質について話した事のみを書くことにいたします。桃川、特にそのとき飲んだ”杉玉”についての意見は、雑味の無い純粋な綺麗な酒。純潔無垢。

皆さん楽しく杉玉を飲んでいらっしゃったので文句を言うつもりはまったくないのですが、ひねくれ者の私としては、その純粋さが物足りない。素直すぎて汚れきったこちらが恥ずかしい。そんな感じを抱いてしまうのでした。
でもよーく考えて見ますと、酒は食に合ったものが造られるという原則。八戸は港町、日本一のイカの水揚げ、白いイカは食わない、透明静謐なイカを食してきた文化。イカだけでなく生臭い魚なんて考えられないのですね。酒質もそれに合わせてどんどん磨かれてきたのだろうなと、酔った頭で考えました。

陸奥で成功するワイン、港町と山間部では当然異なるのでしょうが、山の山菜きのこでさえ凝った料理を考える必要は無く、素材の味を生かした調理方法が主流。とすれば自ずから出てくる答えは、純潔無垢、雑味の無い清冽なスタイル。強い香りが有ってはならず、酸が強くては問題外、タンニン控えめの軽いワイン。うーん、今思いつく当社のワインで言えば今度新たに取り扱う予定の”タリケ”が該当するような気がしてなりません。

陸奥の旅から始まり、清酒の話、八戸のイカの話と続きましたが、何のことは無いタリケの宣伝だったのかと怒らないで下さい。陸奥には酒や食べ物以外にも温泉という悦楽が各地に点在しており、ぜひその三点セットでお楽しみいただこうと言う旅への誘いでした。



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試飲地獄

2006年12月11日 | Weblog
横浜は小春日和です。久し振りの良い天気で今週は面白い事が期待できそうです。先週は海外のお客様を迎え忙しい一週間でしたが、何より大変だったのは来春の新商品選択のための試飲でした。その日以降憔悴が激しく新しい記事を投稿する気力を失っておりました。

83アイテムのワインを試飲して評価するのは地獄の苦しみです。我々ワイン業者にとっての評価は、美味しい不味いではなく、売れる売れないという評価です。味わいを評価するのはもちろんですが、価格、パッケージ、バックグラウンド等等総合的な評価が求められます。書類選考によって篩いにかけられ第一次選考に残ったワインが83アイテム、第二次選考の試飲によって選ばれたものが7アイテムありました。これから在庫状況や輸送コストの多寡により第三次選考をして最終的な採用アイテムを決定しなければいけません。

ワイン愛好家であれば味わいの良し悪しで完結する試飲が、仕事となると大いなる苦痛になる事中々理解されませんが、ワインの顔も見たく無いという気持ちお分かりいただきたいものです。しかし、この大変な生みの苦しみのあと市場に出したワインが皆様に受けいられて好調な売上を示し、美味しいなんていわれるともっと良いのを見つけ出して更なる賞賛を浴びたいという気持ちが抑えられず、また大量試飲という悪循環、これを称して”試飲地獄”

今回は、コート・ド・ヴァントゥーのメーカーに見るべきワインがありました。南仏のワインは安いものでも果実味が濃くその部分に問題は無いのですが、酸味が少なくシャープでスッキリしたワインを見つけ出すのが中々難しいのです。価格もこなれていて皆様に1000円以内でお買い求めいただけそうです。この1000円以内というのがとっても重要でお買い求めの際の大きな壁がこの価格にあるようです。ワイン愛好家で多くのお金をワインに投資している方なら何でも無い金額かもしれませんが、日常用ワインの価格が500円というのが我が日本国の多くの方の常識です。それを1000円近くのワインを買っていただくだけでも大変な力技なんです。

私の好み?低価格で品質が高く良く売れるワインが私にとって一番のワインです。
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野毛にて

2006年12月07日 | Weblog
横浜は何だか澱んだ冬の日です。昨夜横浜を徘徊したオリジョナのコンビは慌しく次の訪問地マニラへ旅たちました。昨夜は当地横浜で横浜を愛する人達が集う忘年会に参加いたしました。その席でもオリオール五代目が長広舌をふるい、如何にヴァルファルモサのカヴァが優れているかの演説を行ないました。こういう席だから短くしろと言ったにも拘らずです。

”私はワインを売った事などありません、皆さんに幸せをお届けしたいだけです。”てな事を言いながら、自分のワインを売る熱意と自信には本当に感服いたしました。何時もいい加減に聞いていた私でもあれだけ言われるとそのワイン造りの秘密とやらを覚えてしまいました。

曰く、ぺネデスは土壌と気候の違い3つの地域アルト、メディオ、バホに分かれている。ヴァルファルモサは夫々の地域に計9箇所のブドウ園を持っており総ての地域の個性を持ったブドウを得られる。良い香りが得られるマカベオ、酒体を造るチャレルロ、綺麗な酸をもたらすパレリャーダという3つの異なった性格のブドウ品種から造られている。土地を反映した個性と品種が持つ個性の組み合わせの妙がエレガントで軽く、複雑な構成を作り出している。シャンペインは一杯飲んだら充分だけど、カヴァは幾らでも飲める、それはこの絶妙な軽さに秘密がある。

まあそんなことを言いながら昨夜の締めは毎度のことではありますが、野毛(横浜が余り詳しくない方に説明いたしますが、ここは文明開化の中心地、夏目漱石も森鴎外も洋行前夜には当地の牛鍋屋何ぞで壮行会を開いたと思しき地)にあるBar Rでマールを仲良くいただきました。私25年前よりここに通い、ドアを開けた瞬間から時代が昭和に逆戻りするここを愛し続けております。酒を飲み始めてから飲み収めるまで50年間変わらない行きつけの店が存在すれば、その人はきっと幸せな一生を送る事が出来るんでしょう。

横浜的で決して高い店ではありませんが、Rでの一時を多くの海外のメーカーが気に入ってくれます。はたしてオリジョナコンビもご機嫌で、日本最後の夜をディープな野毛でマール片手に過したという、オリジョナ日本滞在記の顛末。


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ヴァルファルモサⅡ

2006年12月06日 | Weblog
ヴァルファルモサ新ラベル発表会が新宿ヒルトンホテル21でひそやかにとり行われました。今回はカヴァの新ラベルの発表会のため、ディナーで出したワインは、ブリュット、ブリュットナチュレ、セミセッコの三種類、苦手なフレンチだったのですが、シェフがワインに料理を合わせてくれたため、比較的あっさりした食後感で気持ち悪くならずに済みました。私フレンチのこってりしたソースがどうも体に合わないのです。

メーカーの5代目が参加してワインの説明を色々してくれました。上記三種のカヴァ、飲む順番は書いたとおりが良いらしいです。アペリティフとしてブリュット、食事の間はブリュットナチュレ、デザートにセミセッコ。5代目名前をオリオールといいますが、45歳178センチ105キロ子供三人、金持ちのため鷹揚、ワインの勉強は、マドリッド大学、ディジョン大学、カルフォルニア大学デーヴィス校、特に泡物はデーヴィスで多くを学んだとの事です。

私的にはこのワインのなかでは、ブリュットナチュレが出色でした。何度も同じ事を書くなといわれそうですが、昨夜飲んで再度このワインの素晴らしさに感動いたしました。他のものより長く18ヶ月瓶内熟成をしているので、色は黄色味が強く熟成された香り、アーモンドのロースト香、繊細さ、細やかな泡立ち=柔らかな口当たり、愛すべき低価格。一消費者の立場に立っても購入意欲がそそられるワインです。

オリオールにコルク栓やめて、王冠にしたら如何かともちかけました。彼は技術的には王冠の方が良いが、王冠にすると安物のイメージになるのが嫌なんだと・・・。それなら王冠にきれいなデザインを施し、コレクターアイテムになるようにして発想の転換をしたら良いじゃないかと申し上げました。コルク栓て200年前にガラス瓶が使われ始めたときに、合うふたがコルクしかなかった時代の遺物ですものね。いまだにコルクが主流なの恥ずかしながらワイン業界だけです。メモ魔の彼はすぐさまこの事を電子手帳に書き留めておりました。

食後酒には、ヴァルファルモサとは関係ありませんが、私の趣味でピエールバルマンコニャックXOを出させていただきました。皆さんがお飲みのコニャックは、殆どがカラメル入りですが、これは砂糖が添加されていないコニャックです。樽で40年瓶内で15年熟成しており、辛口でありながらマイルド、フルーティーさを残しながら枯れて複雑さを醸し出しているという、垂涎の一品です。参加頂いた皆様にとても好評で、カヴァを食ってしまったのではないかと心配しております。

さて今日は、ヴァルファルモサのオリオールとジョナサンのコンビ横浜に出現です。関内辺りを馬鹿でかいおっさんが二人でうろうろしてたらきっとオリジョナのコンビです、危害は加えませんから声を掛けてやってください、とても喜びます。


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ヴァルファルモサ

2006年12月05日 | Weblog
冬めいた天気が続いております。今日は新宿ヒルトンホテルでヴァルファルモサ新ラベル発表会が厳かに開催されます。近年カヴァの人気は鰻上りで,フレシネというブランドをご存知の方も多いと思いますが、これがスペインでも日本でもトップブランドで、サントリーが輸入販売しております。この人気に肖り、スペインではNO5のヴァルファルモサを日本でも5位くらいに押し上げなければいけません。

メーカーとしてはスペインでは一定の地位を確保しているので、日本でも当然同様の地位を確保できると思っているようです。経営コンサルタントの目で見ると、通常商品は、メーカー、価格、品質、日本総代理店の夫々が揃って市場の中の地位を確保できるのですが、メーカーが言っている事が事実とすれば、このなかで日本5位の地位を得るために弱いなと思うのは、日本総代理店の力ではないかと思います。

私見ですが、飲んでみるとブルットナチュレなんか辛口で繊細、ピュアーなとっても良いワインです。泡も細かく永く続き見ていても楽しいワインです。私は泡物はどうも苦手で、高いばっかりでちっとも旨くないと思っておりましたが、これを飲んだ後は意見を変えました。財布もそれほど軽くならない¥1500くらいだと思います。名の知れたシャンペンを購入するとぐっと財布が軽くなってしまうのが、泡物に対する反感の大きな理由でした・・・。

今日はワインジャーナリストやワインのプロが多くお見えになりますので、どのような評価をされるのかとっても興味しんしんです。でもそこで高い評価を受け、値段もとってもリーズナブルで、新ラベルも素敵なんて言われたら、やっぱり悪いのは日本総代理店だという事が証明されてしまいます。”どこなんだい、総代理店は!”・・・声が大きすぎます。もう少し小さな声でお願いします。”中部貿易という横浜の小さなインポーターなんです。この苦しい時代に結構頑張っている良い会社らしいですよ。

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湘南シーバスシーズンに想う

2006年12月01日 | Weblog
横浜は素晴らしい秋晴れの師走を迎えました。何だか素晴らしい年の終わりを予想させる出だしです。この季節湘南のショアからのシーバスシーズンでもあります。今日は以前に書いた大失敗した釣り人ワイン・シーバスについてお話いたします。

釣り人ワイン・シーバスは実際には”アングラーズワイン・シーバス”というブランド名で発売いたしました。かれこれ10年近く前になると思います。中身はヴーヴレでした。発売前個人的な道楽ワインとのご批判を多く受け、発売が危ぶまれましたが、ワインも釣りも道楽、遊び心を失ってしまったらこの世界お仕舞よ、と嘯いてかろうじて発売にこぎつけた稀有なワインでした。

私二宮に住んでおりますが、海まで歩いて10分、毎朝出社前にルアーをつけたロッドを1時間ばかり振り続けるのが当時の楽しみでした。二宮の海は波打ち際の向うは大きく抉られた急深の海、其処にお魚が待機しているショアからの釣りにはうってつけの場所です。この時期ロッドを振り続けていると、シーバス(鱸)、ヒラメ、マゴチ、ホウボウなどがルアーに思わず食いついて、ロッドを撓らせてくれます。外海なのでサイズはグッド、夫々の私の最長記録で言いますと、85cm、58cm、70cm、32cmです。これは釣り人の夢想ではなく実寸です。85cmのシーバスは6キロ近くありますから、朝の眠気を覚ますのに充分なファイトが出来るという寸法。家に持ち帰って捌いて、刺身にして朝飯にいただくという悦楽は何物にも変えがたい道楽でした。

時は釣りブームの絶頂期このチャンスを仕事に生かし、趣味と実益の一石二鳥、黄金がザックザックを夢見た私は馬鹿だったのでしょうか。早速鱸の洗いに合うワインの研究を始めました。このとき最も大きな問題は鱸は気まぐれで何時釣れるか分からないのですね、家にワインを用意して釣りに出かけても、ヒラメばかり釣れてヒラメの斜に構えたあの目を見るのが恨めしく思ったものでした。しかしある日待望の鱸が釣れて、二宮の海では小さくても65cmはありますので、ワインに合わせて研究するには充分な洗い刺身が確保できました。

洗いというのは魚の身を文字通り水で洗うのですが、釣り上げてその場で血抜きをし、死後硬直が始まる前に捌いて洗ったものは、身がちりちりになり最高の美味です。釣り人しか出来ない悦楽の極致なんです。そいつに白ワインを合わせてみました。シャルドネとソーヴィニヨンは魚の生臭さを強調してしまい、まったく不可。結論を言うとシェナンブランのある種の雑身と甘味が魚臭さをマスクする傾向があることに気が付きました。このときの研究が和食(刺身や寿司)とワインの関係について理解する大きな助けになりました。因みに刺身と寿司に合わせる酒はと問われたら清酒とお答えしています。

私見ではありますが、もし居酒屋さんのメニューに合わせられるワインを開発できたら、売上倍増黄金ザクザクも夢ではないと思っております。やはり外食で消費されるアルコールの最大消費地は居酒屋であり、日本人の行動パターンから、最初に刺身を注文するケースがとても多く、ワインは刺身に凄く合い難いアルコール飲料であり、一品目を如何にクリヤーするかがとても大きな課題です。その後の焼き物煮物揚げ物にはどうにか合うのです。

当社にルイ・パージュ VDP シェナンブランというワインがあります。これはまさに居酒屋で飲んでもらおうと開発したワインです。しかしながら、刺身をクリアーするには充分な品質ではありません、フルーティーで綺麗過ぎるのです。吟醸香のある綺麗でフルーティな造りの酒が刺身に合い難いのと同じかもしれません。日本で生息するワイン業者として、この問題は必ず解決しなければいけない重い課題と心得ております。





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