キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

浪費は美徳か

2008年11月08日 | Weblog
尾崎一雄という作家をご存知でしょうか。私が卒業した小田原高校出身で戦前に芥川賞を受賞され、晩年を小田原の下曽我という梅の産地で過ごされた方です。私は高校在学中から、芥川賞作家が母校からも出ているとの事でお名前は存じておりましたし、当事新潮文庫で「暢気眼鏡」「虫のいろいろ」が出ていて書店でよく見かけました。しかしながら、名前といい年齢といい髄分爺臭い感じを受け、その著書を読んだ事がありませんでした。故もなくなく敬遠していた作家のお一人でした。ここのところこちらが爺むさくなって来ましたので、何とか著書を探して読んでみたいと思っておりましたら、読売新聞の広告で講談社文芸文庫から「単線の駅」という雑文集が発売されたと知り、お馴染み伊勢佐木町の有隣堂で買い求めました。

講談社文芸文庫は他の文庫で絶版になったあまり売れそうもない良書を出版してくれるのでとても有り難いのですが、文庫本の本来の姿であるプアーな人間に文化の香りを届ける使命から逸脱して、リッチな人しか買えないような高価な値がついております。この「単線の駅」もその方針に漏れず1,400(税別)の値がついており、一大決心をして買い求めた次第です。そうなると平凡社ライブラリーから“15周年名著復活”として出されている見田盛夫さんの「メニューの読み方」うんちく・フランス料理、値1,200(税別)も断然安く感じられ、ワイン業者として当然持っておくべき書籍ですので比較的躊躇無く買い求めました。これらの本は3階にあったのですが、1階に降りて新刊文芸書を眺めていると、新潮社で堀江敏幸「未見坂」が出ており値は1,400(税別)、これが安い文庫本を買い求めているときには手も出せないような値に思うのですが、ひどく安く感じられやはり比較的躊躇無く買い求めました。

人間浪費をしているときは精神が高揚して日頃心の襞の奥に溜まった欲求不満が解消されるとの事ですが、このように一時に4,000以上を書籍に投下したのはブックオフヲ知り染めて依頼久し振りで、実に痛快な気分で有隣堂を後にいたしました。この程度のことで痛快がっているようでは、私という人間も知れたものです

時差による早起きのためこれらの書籍は実に有効に働き、「単線の駅」は近所の下曽我の自然や風景、昔語りや社会批判の小文が沢山詰まっており、馴染み深く懐かしく、「メニューの読み方は」この二週間に渡るフレンチレストランでのメニューを見た際の困惑疑問を氷解させる優れた案内書で、眠れぬ夜を実に楽しい夜明け前に変えてくれました。


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