節分と立春

  2月3日は節分でした。去年の節分に近所のスーパーマーケットに行ったら、いつも働き者で客(と店員)に対して非常に腰の低い店長が、率先して赤鬼のコスプレをして「恵方巻き」を売ってました。

  んで、今年も興味本位でそのスーパーに行ってみました。そしたら、やっぱし店長、二本の角がついた金髪アフロのヅラをかぶり、赤い全身タイツを着て、トラの皮模様のパンツを穿いて、「らっさいせ~!!!」、「あざーす!!!」と元気に「恵方巻き」を売っておられました。

  でも、恵方巻きは外の特設カウンターで売ってるので、寒さに耐えかねてか、店長はこっそりと(?)赤いジャンパーを着てました(笑)。

  去年に引き続いて今年も店長の熱意に感動したので、いちばんお高い「特上海鮮恵方巻き」(798円)を買いました。

  今年の恵方は西南西だそうです。が、私は東西南北くらいは辛うじて分かる(←太陽の位置からテキトーに判断する)ものの、西南西なんて細かい方角はさっぱり分かりません。

  更に、恵方巻きはまるごとかぶりついて一気に全部を食べなければなりません。吉縁を「切らない」ためだそうです(←テレビのクイズ番組でやってた)。でも、去年それを実践した結果、食べ終わらないままに途中でギブするという苦い経験を味わったため、今年は思いっきり包丁で切っちゃいました。

  で、(たぶん)西を向いているテレビを観ながら、東向きで食べました。縁起が悪いって?大丈夫です。凶縁を「切って」食べたからね。おいしゅうございました(ビールも飲んだ)。

  そして2月4日、寒いながらも昨日は立春でした。そんな日に、朝青龍の横綱引退と民主党の小沢幹事長の不起訴が決まったわけですわ。

  昨日と今日は、日本でいちばん「品格」という薄気味悪いコトバが使われたんじゃないでしょうか。

  テレビがあまりにも品格品格と連呼するので、私はいいかげんうんざりしてしまい、「ヒンカクヒンカクとうるせーんだよこのヒンカク野郎」とひとりで秘めやかにヒステリーを起こしておりました。

  朝青龍はかわいそうです。日本社会独特の陰湿な嫌がらせにとうとう追いつめられて、ついに排除されてしまいました。排除される者に自ら身を引く、という表面的な形を取らせるところなんかも、いかにも日本的陰険さにあふれたやり口です。あれだけ散々バッシングしておいて、引退したら今度は「あれだけの横綱がいなくなるのは寂しいですね」などと平然と言ってのける。ああいやらしい。鳥肌が立つわ。

  日本のあらゆる組織は、家庭から会社に至るまで、ホメオスタシス(恒常性)というものを持っています。相撲界だってそうです。ホメオスタシスを脅かす存在は自然に排除されます。ホメオスタシスを脅かす存在とは、他とは「異質」な要素を持つ者たちです。

  朝青龍は異質な存在で、早い話が「優等生」、「模範生」、あるいは「いい子ちゃん」ではなく、強い自我と個性を持っていた。そのまま放置しておいては相撲界のホメオスタシスを崩壊させる危険がある、と目されたのでしょう。

  朝青龍が排除されることは、彼自身も言っていたように、「いつかはこうなる運命」だったのだと思います。私は朝青龍のこの言葉を聞いて、朝青龍は「日本の伝統文化が理解できない」どころか、逆に「日本の伝統文化」、ひいては日本の社会が持つ「出る杭は打たれる」的本質を直感的に見抜いていたのだな、と思いました。

  相撲界と日本のマスコミは、朝青龍が何か失敗するその都度、それを大仰に騒ぎたてて彼に非難の大合唱を浴びせました。そんなことが何年間も、何度も続けば、誰だっておかしくなるに決まってます。つまり、お前はダメだ、と長い間、また繰り返し言い続けると、ダメだと言われた人は無意識のうちに周囲のそうした「期待」を受け入れ、そのとおりの行動を取るようになります。

  これは非常に日本的な、巧妙かつ陰険な罠です。朝青龍はそれにはまってしまったように思います。でも、そもそも、彼はどんな「失敗」をしたのでしょう?自分の故郷と家族を愛して、頻繁に帰って何が悪いのか?腕を怪我していたときに、足だけでできるサッカーをして楽しんで何が悪いのか?土俵上で闘志をむき出しにして何が悪いのか?

  朝青龍に「品格がない」というのなら、自由投票であるはずの選挙で談合を行なうことは品格のあることなのか?自由投票した者を裏切り者と罵って追い出そうとすることは品格のあることなのか?

  相撲は日本の伝統文化であり国技である、といいますが、現在の相撲興行の祖形ができあがったのは、たかだか江戸時代でしょう?現在の形態に定まったのは明治時代。長くても300年、厳密にいえば100年ちょっとの歴史しかない。実はこんなに歴史の浅い相撲が、何が「日本の伝統文化」か、何が「国技」か。カタハラ痛いわ。

  「伝統文化」だの「国技」だのといくら気取ったところで、相撲界も結局は日本的利権集団の一つに過ぎません。同じような利権集団であるマスコミも相撲界に追随する。角界ではよそ者である朝青龍の失敗は許されませんが、角界のサラブレットである貴乃花の失敗は許される、どころか英雄視される。よそ者に厳しく、身内に優しい。

  日本の社会の嫌な面を見せつけられて、ほんとにうんざりしました。私は朝青龍に言いたい。日本人の偽善の批判など気にする必要はないよ。将来はぜひモンゴル大統領になって、日本と断交して見返してやりなさい。

  民主党の小沢幹事長が不起訴になったことについては、あ~あ、という感じです。東京地検特捜部の優秀な検事といえど、しょせんは坊ちゃん育ちで出世街道を順調に歩んできた苦労知らずのエリート役人、世の中の清と濁、政界の表と裏、人間の善と悪、美と醜など、すべての相反する要素をまぜこぜにして塑造したような「人間ブラックホール」小沢幹事長の敵ではなかった、ということなのでしょうか。

  今度は鳩山首相を狙うのでしょうか。でも、鳩山首相は小沢さんとは違って高貴な生まれ育ちですからね。鳩山首相のお血筋は、さかのぼれば明治の元老、大名・公家をはじめとする旧華族につながるのではないでしょうか?それに戦中戦後の新興実業界が結合した完璧な家系です。捜査は別の意味で難しいような気もします。

  鳩山首相が母親から1ヶ月に1,000万円のお小遣いをもらっていたことを、野党は「非常識」とか非難してるけど、まったくナンセンスです(まあ、野党の人々はナンセンスなのは承知の上で、国民に向けたパフォーマンスとして敢えて攻撃してるのだろうけど)。

  街頭インタビューとかでも、批判して怒ってる市井の人々が多いけど、鳩山首相は上流階級の人なんです。桁外れの額のお小遣いは、上流階級では当たり前のことなんです。だから、庶民の尺度を当てはめて批判したり怒ったりするのはお門違いです。批判して怒るべきなのは、鳩山首相のような上流階級の人間でないと政治に携わることが事実上不可能な日本の政治システムそのものでしょう。

  また日本には鳩山首相みたいな上流階級が存在すること、ひいてはそうした上流階級の人々が日本の政治・経済・文化を壟断していることも、鳩山首相のおかげで明らかになりました。

  むしろ、憲法の下に人はみな平等であるはずの「民主主義国家日本」の化けの皮がはがれて、日本という国の正体がむき出しになったことに対して、私は鳩山首相に感謝してさえいるのです。 
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )