レニングラード国立バレエ『バヤデルカ』

  1月6日(水)の公演に行ってきました。

  すご~く楽しかった!!!です。見ごたえありました。バレエをこんなに心から楽しんだのはほんとに久しぶりです。

  レニングラード国立バレエの『バヤデルカ』は「はしょり」がないせいか、バレエ作品としてはもちろん、物語としても完結していて欲求不満が残りません。第一幕50分、第二幕40分、第三幕45分という長丁場ですが、まったく飽きることなく、密度の濃い舞台を楽しむことができます。

  この日の公演では、女性コール・ドがなんというか、以前とは比べものにならないほどすばらしくなっていました。芸術監督だったファルフ・ルジマトフの取り組みが見事に結実したのでしょう。

  第三幕「影の王国」の冒頭、影たちが坂を下りてくるシーンと、それに続く群舞は凄まじいほど美しかったです。その後のニキヤの影とソロルとのパ・ド・ドゥでも、コール・ドは非常に美しい踊りを見せてくれました。この日の公演で最もすばらしかったのは彼女たちです。

  コール・ドと同じくらいすばらしかったのが、大僧正役のニキータ・ドルグーシンでした。大僧正は単なる生臭坊主のエロオヤジじゃなくて、心からニキヤを愛していることがよく分かりました。ニキヤが毒蛇に咬まれたときも、大僧正は解毒薬を交換条件にしてニキヤを脅すんじゃなくて、解毒薬をニキヤに渡して、どうか飲んでくれ、とニキヤに哀願するんです。

  また、神殿が崩壊した後、一人生き残った大僧正は、ニキヤの白いヴェールを天上に送ると、なおもいとおしそうに空を見上げながら祈っていました。大僧正がこんなに奥の深い役になり得るものだったとは思いもよりませんでした。

  久々に「太鼓の踊り」(デニス・トルマチョフら)を観てエキサイトしました。黒髪のおかっぱ頭に赤いハチマキを締め、赤いハーレム・パンツを穿いたたくましい兄ちゃんたちが走り出てきて、弾むような音楽に乗って脚を振り上げながら元気いっぱいに踊ります。途中からインドの踊りの二人(オリガ・セミョーノワ、アレクサンドル・オマール)も出てきて、全員がパワフルな動きで踊ります。「太鼓の踊り」が終わったとたん、会場は拍手喝采の嵐になりました。正月はやっぱり「太鼓の踊り」ですね。

  「壷の踊り」を踊ったナタリア・クズメンコがおかしなアイ・メイクをしていました。クレオパトラみたいな。クズメンコの独創かと思ったら、途中から出てきて一緒に踊る日本人の女の子2人も、クズメンコと同じアイ・メイクをしていました。個人的には、前のナチュラル・メイクのほうがかわいくてよかったのにな~、とちょっと残念。

  苦行僧マグダヴィアはアレクセイ・クズネツォフが踊りました。動きがしなやかでよかったです。

  ニキヤを踊ったイリーナ・ペレンは、以前よりも演技に深みが出ていると思います。あれぐらい演技できればいいんじゃないでしょうか。踊りのほうもすばらしかったと思います。いや、どうしてもスヴェトラーナ・ザハロワと比べてしまって、頭を白紙にしてペレンの踊りを観ることが難しかったのです。ザハロワと比べるのは酷だよね。

  オクサーナ・シェスタコワのガムザッティは相変わらず怖かったです。愛らしい顔をして、やることは冷酷そのもの。毒蛇に咬まれて瀕死のニキヤを微笑みながら見つめている。シェスタコワの演技がまた凄まじくて、怖かったけど(怖かったからこそ)本当に見ごたえがありました。

  ただ、シェスタコワの踊りは、私の気のせいかもしれませんが、「この人の踊りはこんな程度だったっけ?」と不可解に感じました。動きが少し重たいというか、パワーが足りないというか、もっとキレのある踊りをするダンサーだったと思うのですが。

  ソロルはファルフ・ルジマトフでした。イリーナ・ペレンがニキヤ役のとき、ルジマトフのソロルにはニキヤへの愛があまり感じられず、あっさりとニキヤからガムザッティに心を移し、瀕死のニキヤを見捨ててしまいますが、それはそれでソロルという役の一つの表現だと思います。

  よく分からないのはルジマトフの踊りとサポートでした。今まで、ルジマトフのソロルを何度か観てきましたが、これまた「この人の踊りはこんな程度だったっけ?」と今回は思ってしまいました。ただ、もちろん、ルジマトフの年齢を考えれば、逆に「あれほど踊れるのはすばらしい」と思うべきなのかもしれません。

  この日はルジマトフ、ペレン、シェスタコワが揃ってミスをしました。はっきりしたミスは、ルジマトフとシェスタコワ(第二幕)、ルジマトフとペレン(第三幕)とが組んで踊っているときに起こりました。シェスタコワ、ペレンがバランスを崩して足元が大きくグラついた、また身体が倒れかけたというものでした。最初は「まあなんてことない」と気になりませんでしたが、その後も立て続けに起こったので、「主役たちが揃って何やってんの」ともどかしく思ってしまいました。

  ルジマトフとシェスタコワ、ルジマトフとペレンのそれぞれどっちがわるかったのかは分かりませんが、一緒に絡んで踊っていたのですから共同責任でしょう。ペレンの場合は、「影の王国」の最初のパ・ド・ドゥ(3人の影のヴァリエーションが始まる前)の、まさにキメのポーズのシーンでミスが起こってしまいました。あまりに間が悪すぎました。

  実は、第一幕、ソロルとニキヤが密会するシーンでの踊りを観た時点で、なんかルジマトフとペレンのタイミングが合っていないな、となんとなく感じていました。二人が組むのは久しぶりだったのかもしれませんね。

  昨夜は主役たちが反省会を開いたでしょうから、明日(1月8日)の公演では改善されているでしょう。

  明日も盛り上がるといいですね。
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