▼親しい人の死に接した時、心中を伝えるのに、的確な言葉が選べず、苦慮することがある。目と目で語るなどというのもあるが、意思を伝える手段としては、言葉ほど有効なものは他にないのも事実だ。
▼弔辞で、経歴や実績を上げて称えることも必要だが、死んだ者にとってそのようなものを称賛されても、歯がゆいだけのような気がする。
▼それより、その人の言動が如何に多くの人々に勇気と感動を与えたかを、正確に表現してあげることではないかと思う。
▼医師の中村哲さんが、活動中のアフガニスタンで、テロ集団に狙撃された。23日の北海道新聞夕刊で、評論家の佐高信さんが【中村さんを悼む】というテーマで『歩く日本国憲法。行動で理念体現』という文章を掲載している。
▼中村さんは「だれもが行きたがらないところ、だれもがやりたがらないことをするというのが私たちの基本方針」だという。今まで活動できたのは【日本人であることは一つの安全保障】だったという。
▼戦後、我が国が世界に向かって宣言した「戦争放棄」。この【日本国憲法第9条】が「お守り」だったに違いない。テロ対策特別法が国会で審議された時、参考人として招致された中村さん。
▼「アフガニスタンの対日感情はひじょうにいいのに、自衛隊が派遣されると、これまで築いた信頼関係が壊れます」と発言したという。
▼自衛隊の度重なる海外派遣は、中東諸国にとってみれば、米軍との軍事作戦に参入と思われているのではないか。それをしなれば、中村さんは撃たれなかったのではないかと、佐高さんは言う。私も同感だ。
▼中村さんは2016年に旭日双光章を受賞している。その時は、政府の医療援助なども中東に届いているので、総合的に判断して、断ることはできなかったに違いない。
▼中村さんの棺を飛行機まで担いだのは、アフガニスタンの7人の軍人と大統領だ。アベ総理は出迎えにもいかなかった。今回の勲章は、前に貰った勲章より一つ上位の「旭日小綬章」だ。死亡で階級上がるという類のものか。
▼授賞式は官邸で行なうという。【死亡叙勲】など、中村さんは「アベ総理の自画自賛・パフォーマンス」はまっぴらだと思っているに違いない。
▼公務で功績のあったものは瑞宝章が授与される。私の知っている方で、公務員を長く勤め、教育長で退職された方が81歳で病死した。
▼「叙勲されることに決まりました」との報告に「死んでからそんなものいりません」と、妻が断ったというのを聞いた。
▼世界に胸を張れる「憲法第9条」を、改正しようなどという、非平和主義者からの勲章授与など、辺野古基地の埋め立て現場に捨ててしまいたい心境にもなる、クリスマスイブだ。
▼中村さんはクリスチャンだという。医師という職業以外に、戦場に生命を蘇らせる川を作った。
アフガンに中村哲という天の川あり
三等下