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函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

文豪と漁師の父さんの酒

2018年10月16日 20時01分55秒 | えいこう語る

▼布団に入り読む宮本輝著「真夜中の手紙」が、抜群に面白い。宮本さんが駆け出しの頃、雑誌社の取材で文壇の大御所井上靖さん宅を訪問した時の話だ。

▼奥様が紅茶を出したそうだ。「何を持って来るんだい、宮本さんはお酒だよ。ウイスキーをお持ちしなさい。遠くから来てくださったんだ。今日は気楽な対談だから、少しお酒が入ってる方がいいんだ」。

▼奥様がウイスキーの水割りを運んで来てくれた。奥様が戻ったら、井上さんは宮本さんのグラスを持ち、一気に飲み干したという。そして空になったグラスを宮本さんの前に戻して、奥様を呼んだ。

▼「宮本さんのグラスが空だよ」。奥様が変わりを持ってきて出て行ったら、また一気に宮本さんのグラスを飲み干した。そして4杯目のウイスキーを飲み干し、奥様を呼んだ時「宮本さん、お若いのに、そんなに飲んでどうするのですか。アル中になりますよ」と奥様に言われた。

▼あのぉ、ぼく、一滴も飲んでいないんだけどぉ、とは言えず「申し訳ありません。緊張してまして、ちょとお酒の力を借りないと井上先生と対談なんてできそうもありませんので」。

▼すると井上先生「いいんですよ。お若いんだからお好きなだけ飲みなさい。いい飲みっぷりです。見てて気持ちがいいですよ。おい、もう一杯お作りしなさい」。

▼このユーモアある話、寝床から起き上がりウイスキーを飲みたくなったくらい楽しかったので、皆さんにもぜひ教えておきたいと思ったのです。

▼我が家から車で30分程の山間に、乳白色の硫黄温泉がある。この一帯縄文遺跡が多く、現在「世界遺産の登録」に向け運動している。43度が適温というこの温泉、ちょっぴり熱いがとても効能がありそうなのだ。

▼私は勝手に「縄文露天風呂」と呼んでいる。妻も大好きなので一緒に出掛ける。帰りは妻が運転するのが掟だ。野趣豊かな露天風呂上がりの冷えたビールほど、健康にいいと思うからだ。

▼その縄文露天風呂での話だ。以前ブログで紹介したことがあるが、井上先生の話がとても気に入ったので、再登場させてみようと思う。

▼温泉に入っていた80代の漁師の父さん二人の会話だ。最近「大五郎(4リットルの焼酎)」の野郎、ずんぶ減るのが早えんだ。おめ何時に晩飯食んだ。5時よ。寝るの何時だば。6時よ。そったらに早えがったら、何回も目覚めべ。その通りだ。1回目は9時頃よ。ションベの帰り、飲みたりねえから、流しで1杯ひっかげるのさ。1時ぐれえにまだションベさ起ぎるんだ。その時ぎ、みんな寝でいるから2杯飲むさ。そしたら、今度はションベんが近頃ぐなり、3時頃に目覚めでしまうのさ。そしたら調子しこいで、2~3杯ひっかけでしまうのさ。・・・それだば、大五郎も減るべさ。

▼縄文時代もこのような会話があったのではないかと思う、時間が止まったようなゆったりとした縄文露天風呂でのひとコマだ。

▼文豪のトークは知的でシャレているが、北の漁師の父さんたちの素朴なトークも、酒を愛する情熱は、それに劣るものではない。最後に私の酒好きのの父の話も付け加えておこう。

▼晩酌時、今日は00の誕生日だから乾杯したいとよく言っていたという。そばにいる母が「お父さんてよく他人の誕生日まで覚えているわね」と話していたというのを、今日のブログを妻に読み聞かせたら、そんな話を教えてくれた。

▼今晩はどんな楽しい物語があるか、今日は早めに布団に入ることにしよう。