▼私が中学生の時だと思うが、NHKテレビで「ケペル先生」という子供向けの教養番組があった。「何でも考え・何でも知って・何でもかんでもやってみよう」という、ケペル先生の言葉で番組が始まり、楽しみにしていたのを記憶している。
▼なぜケペル先生を思い出したというと、総理が嘘をつけば、大臣も官僚も嘘をつく。さらに、政府と一心同体の大企業もだからだ。アベ総理に近い体制が国民を騙すのが今の我が国ではないかと、腹立たしくなったからだ。
▼「福島の汚染水は完全にコントロールしています」と世界に嘘をついたのはアベ総理だ。この嘘で、2020年の「東京五輪」をゲットしたのだ。
▼総理の嘘でお墨付きを得たか、福島原発の東電が、これまた大きな嘘をついたのだ。溢れかえる汚染水と貯蔵タンク。汚染水は「ALPUS=多核種除去設備」で処理されていて、トリチウム(三重水素という放射性物質)だけは取り出せないのでタンクに沈殿している。トリチウムは人体に影響がないので?処理した汚染水は海中に放出したいと説明していた。
▼ところが、東電のデーターには【半減期が1570万年】といわれる「ヨウ素129」や「ストロンチウム90」などまだたくさんの放射性物質が含まれているというのがあるという。
▼私が今までに読んだ原子力に関する本から抜粋した、私の「原子力ノート」を読み返して見た。1980年に福島原発周辺のホッキ貝から「コバルトやマンガン」の放射性物質が抽出され、東電が漁協に補償していると書いてある。
▼炉心がメルトダウンしデブリが溜まり、そこに地下水が流れているので、汚染されるのだ。汚染水というのは多種の放射性物質が混在した水のようだ。
▼汚染水が溢れたので海中に放出するなどというのは、福島沖のみならず太平洋が汚染されるということだ。
▼1954年の米国のビキニ環礁の水爆実験で、その周辺で操業していた日本のマグロ船団。捕獲したマグロがすべて廃棄処分されたということと、酷似してはいないか。
▼多種の放射性物質を含む汚染水の海中放出などすれば、福島沖の魚介類は全部廃棄処分しなければならないのではないかと、考えてしまう。
▼原子力発電所は発生エネルギーの「3分の1」程度しか電力に換算できないという。残る「3分の2」は温排水のかたちで海に排出している。
▼建設中の大間原発は、1秒間に91トンの温排水を海中に放出し、その時の温度は海水より7度上昇するという。炉心の燃料を冷やした温排水には、どれほどの放射性物質が混入しているのだろうか。
▼私も今までは、炉心を冷やすために海水が必要だから、原発は海の近くにあると思っていた。本当の理由は、海に放出するために海の近くにつくったのだ。
▼取水するだけなら川の近くでもいいはずだが、狭い川では魚の死骸が目立つ、大海ならそれは心配ないからだ。こんなことすら理解できなかったのだ。
▼原発の温排水=【熱毒水】という呼び名も、私の「原子力ノート」に記載されていた。
▼原子力は学者や専門家の領域で、国民は知らなくてもいいと考えていたのが「原発は安全・安心でクリーンエネルギー」だと信じてしまった最大の原因だ。
▼国防を異常に煽り立て「憲法改正」へと突き進む、アベ総理。この人は政治家としてまた日本国民として、何か決定的な過ちをしていることに気が付いていないのではないだろうか。
▼「民主主義の原理を越えた、さらに高いところに絶対的価値を置く、旧憲法を支えた市民感情は、半世紀に及ぼうとしている民主主義の憲法のもとで、単に懐かしまれるよりもさらにリアルに、生き続けています。そこにつないで、戦後の再出発のモラルより別な原理を、日本人があらためて制度化することになれば、いったん瓦解した近代化の廃墟で、普遍的人間性をめざしたわれわれの祈念は、ついにむなしかったというほかなくなるでしょう」。1994年ノーベル賞受章記念講演・作家大江健三郎「あいまいな日本の私」より。
▼第4次アベ内閣。「あいまいな日本の総理」を戴く私たち国民に、ケペル先生の声が再び呼びかけているような気がする。
▼「何でも考え何でも知って何でもかんでもやってみよう」と。