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沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

【山本理顕03】コモンセンスとは空間を共有しているという感覚である

2015-08-24 | memories
この「社会という空間」に対立する空間が「世界という空間」であった。

それはそこに住む人たちのためにいつまでも存在し続ける空間である。
「社会」が私的利益のための空間であるとしたら、
その逆に「世界」はそこに住む人たちによって共有される空間である。

「世界はわれわれすべてに共有されるものである。…世界が共有されているからこそ、
われわれは世界のリアリティを判断することができるのである」(アレント)


リアリティがある、とは他者と共にその「世界」の内にいて
他者の存在を実感することができるという意味である。

すでに見てきたように「世界」は人工的な工作物によってできている空間であった。

「世界は、そこに個人が現れる以前に存在し、彼がそこを去ったのちにも生き残る」(アレント)

永続性、耐久性を持つ空間である。
その空間を共有しているという感覚が“common_sense”である。

「私たちの五感が[それぞれの人にとって]極めて個別的なものであり、
その五感が知覚する情報が[それぞれに]極めて特殊なものであるにもかかわらず、
それらの感覚を全体としてリアリティのあるものとして
実感させる唯一の感覚が“common_sense”なのである」(アレント)


“common_sense”とは他者と共に同じ空間の中にいて
それを共有しているという感覚である。

そして「リアリティ」とは、その共有された空間の中で、
私もまた他者と同じように感じているという感覚である。

他者と共に同じものを知覚して、
他者もまたそれを私と同じように感じているはずだとという
「共感の感覚」である。

「五感による知覚は、単に、私たち[個々人]の
神経の刺激あるいは肉体の抵抗感覚として感じられるばかりではない。
周知のように、それはリアリティ[共感の感覚]をも明らかにする。
それはこの“common_sense”のおかげである」(アレント)


  「私が知覚するものが実在的である[リアリティがある]ということは、
  一方では、私と同じように知覚する他人がいる世界と、
  この知覚されたものがつながっているということによって保証されるのである」(アレント)


つまり、「世界という空間」にあって、
そこで私と同じように知覚している他者を感じる、
という“共感の感覚”がリアリティという感覚である。

その感覚は他者と共に居るこの「世界」によって保証されているのである。

「見る、触る、味わう、嗅ぐ、聞く」という私の五感は非常に私的なものである。

「その感覚作用の質や程度を他人に伝えることができない」(アレント)

それにもかかわらずその私的な感覚にリアリティ
他者と共感しているという感覚)を確信できるのは、
他者と共有する「世界という空間」の内にいるからなのである。

アレントが強調するのはこの“リアリティ”こそが
「世界」の政治的生活を支えているということである。

「政治的」とは「多数性という人間の条件、すなわち、
地球上に生き世界に住むのが一人の人間(man)ではなく、
多数の人間(men)であるという事実に対応している」(アレント)


「世界という空間」の中に多数の他者と共にある。
その“共にある”という意識が“common_sense”であるとしたら、
政治的と言うのは、私という個人がその多数の人間(他者)によって
「見られ聞かれる」存在であるということである。

「世界という空間」は「私が他人の眼に現れ、他人が私の眼に現れる空間」なのである。

「他人によって見られ聞かれる」空間である。

政治的生活というのは、他者と共に住む「世界という空間」の中で
「他人によって見られ聞かれる」生活である。

「この空間を奪われることは、リアリティを奪われることに等しい。
…人間にとって世界のリアリティは、他人の存在によって、
つまり他人の存在が万人に現れていることによって保証される」(アレント)
のである。

労働者住宅においては、
そのリアリティが住宅の中に閉じ込められたのである。

それはその住人が政治的生活を奪われたに等しい。
それこそが統治する側の意図だったのである。



               (山本理顕著「権力の空間/空間の権力」より)


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