ルノーは、クルマの製造以外にもいろいろなものを当時から作っていましたが、そのひとつに戦車があります。
ルノーに限らず、そもそも世界最古のメーカーの一つはパナールですし、
FFで最初の成功した量産車であるトラクシオンアヴァンを輩出したシトロエンなど、
クルマの世界に様々な「はじまり」を生み出してきたフランス。
実は、戦車も、現代まで続く基礎的なスタイルと設計は、フランスが編み出したものでした。
それが、このルノーFT-17なのです。
FT-17
それまでにも戦車はありました。代表的な例では、イギリスのマーク1型、
ドイツのA7V、同じくフランスのシュナイダーCA1、サン・シャモンなどです。
でもこれらの戦車は砲塔が車体と一体化していて、しかも乗員は8名とかで
いまでは考えられないほど多い!
これはマーク1型戦車 ひし形っす 世界最初の戦車
しかもエンジンルームが車内で分けられていなかった!という設計が多かったので
とにかく乗員は常に熱と気化したオイルや油、機関銃の硝煙などの中で過ごすことになり、
その環境は劣悪と言えるものだったそうな。そりゃあ暑かっただろうねぇ。
オーバーハングが長いサン・シャモン
なんとエンジンで発電し、モーターで動くというハイブリッド駆動(驚
当時の技術では左右のモーターの同調が取れずまともに走行できなかったそうな
そんな中このルノーFT-17は、はじめて旋回式の砲塔を装備し、
また、はじめて機関室と居住スペースを仕切った戦車だったのです
(トップ画像参照してね)。
この基本設計はいまでも戦車の基本形になっていますよね。
それまでの戦車がどれだけひどかったのか、という話になると、
マーク1は乗員8名のうち4名が操縦する(!)のだがそれでも立ち往生ばかり、しかも
走行が薄くすぐに破壊されてしまう...。
シュナイダーCA1は車内換気等が悪く居住性が劣悪で製造中止、
サン・シャモンは先端に75mm砲を装備するためオーバーハングが異様に長く、
荒れ地では鼻がつっかえて実際には役に立たず敵の格好の攻撃対象になった...。
ドイツのA7Vはもっとすごくて、そもそもがトラクター用のシャーシに
ぶあつい装甲を持った雑な箱組み車体を載せた「移動要塞」的な設計思想、
しかも18人もの乗員で操作し(汗
言うまでもなく車内環境は劣悪、しかもこれも機動性が悪くすぐに行動不能になった...。
A7V すげえ...ただの箱(涙
などなど、実際のところ戦場ではあまり(というかほとんど)役に立たなかったようなのです。
フランスは1916年、戦車開発に着手しますが、
すでに当時シュナイダー(=オチキス)、シトロエン、ルノーの3社で砲弾や小火器などを製造していた中で、
フランス陸軍省は戦車に関してはルノー1社だけに委託したのだそうです。
ルノーはすでにクルマの生産を大規模に行っていて、しかも当時はフランスいちのシェアを誇り、
パリのタクシーにルノーが大量導入された実績などもあって、
ルノーの祖であるルイ・ルノーはこの戦車の開発にも、クルマづくりの思想を持ちこみました。
他の戦車が大量生産で生産するという考え方を持っていなかった中、
クルマのようなコスト管理型製造と無駄を省く設計によって小型軽量化に成功、
しかもなんと乗員は2名を実現したのでした。
いかにもフランス(車メーカー)らしいエピソードではありませんか!
本来シュナイダーやサンシャモン戦車の援護用に作られたはずの「軽戦車」FT-17は、
当時の戦車がのきなみ3ケタ行くか行かないかの製造数の時代に
なんと4000台程度が製造されたとのことで、実際には主力として活躍。
戦車を「量産する」という概念を作り上げた立役者でもあったようです。
...ただし故障しやすかったそうで、途中で止まるのはよくあったそうです(涙
いかにもフランス(車メーカー)らしいエピソードではありませんか(号泣
>>ちなみにルノーの戦車はほかに、日本にも輸入され満州事変で使われたというNC型、
第二次大戦中の主力戦車であったR35などがあります。
R35 なんだかこの儚さってルノーぽい(汗
>>なおこれが現代のフランス陸軍の最新式戦車、Leclerc(ルクレール)!
足回りはむろん、ハイドロニューマチックです!