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自然に働きかけて人間生活に有用な財やサービスをつくりだす経済活動、つまり、生産活動や消費活動、余暇活動は、もともと人間にとって手段であって、目的ではありません。経済活動の目的は、本来、人間生活を豊かにするために「生活の質」を向上させることであり、経済成長率を高めることではないはずです。
経済活動の規模や成果をあらわす経済成長率の基礎データは、すべて金額で表示されています。従来の経済学は貨幣に換算できない関係は無視し、貨幣による関係だけで人間社会の活動を評価してきました。経済学には、「資源・エネルギーの流れ」が十分にインプットされていないのです。こうした枠組みにとらわれた経済学者やエコノミストには、環境問題の本質は見えてこないでしょう。
これからの経済学は、「モノやサービスの流れ」を「金の流れ」で見るのではなく、「資源・エネルギーの流れ」で見なければなりません。環境問題は、「経済学の枠組みを現実に合わせるために早急に変えなければならないこと」を示唆しています。環境負荷を最小限に抑えながら製品やサービスを供給し、消費するためには、どのような経済のあり方が必要なのか。これこそが、21世紀の経済学の主要なテーマであるはずです。
そのためにはたとえば、GDPや「個人消費の拡大」「民間住宅投資の拡大」「設備投資の拡大」「貿易の拡大」「巨大構造物の建設」といった、これまでの拡大志向の考え方やその考えを支えてきた「経済指標」を変えなければならないでしょう。いうまでもなく、こうした指標が「資源・エネルギー・環境問題」の現状をまったく反映できない性格のものだからです。
たとえば、「景気動向を最も的確に示す」といわれている指標の一つに、内閣府が毎月公表する「景気動向指数(DI)」があります。私がまず変えるべきだと思うのは、この指標です。景気動向指数は、景気と深いかかわりを持っている30の景気指標からなっています。景気に先行する「先行指数」(11指標)、景気と一致して動く「一致指数」(11指標)、景気に遅れて動く「遅行指数」(8指標)ですが、そのうち「先行指数」は高度成長期に入る1960年頃創設され、80年頃に現在の指数に定着したものです。
20数年前に定着した11の指標は、生産指数(鉱工業)、大口電力使用量、稼働率指数(製造業)、商業販売額(小売業および卸売業)、営業利益(全産業)など、すべて「経済規模の拡大」を前提とした指標です。
また、統計資料の表示の仕方も、変えるべきだと思います。資源・エネルギーの供給量や消費量、廃棄物の量や汚染の程度などの統計資料は、可能なかぎり総量で表示することが望ましいでしょう。なぜなら、環境問題は総量によって決まるからです。また、廃棄物問題に代表されるように、環境問題は基本的には「蓄積性の問題」だからです。
したがって、環境問題を理解するには、単年度の統計資料では不十分で、経年変化がわかるような時系列、あるいは累積の統計資料が必要でしょう。現時点で、日本の環境関連の統計資料には、国民一人当たり、「原単位」(「鉱工業製品の一定量を生産するのに必要な原料・動力・労働力などの基準量)当たり、GDP当たり、ppm、ある年を基準とした指数など、相対量を示す統計資料が多いのですが、これは改めるべきでしょう。
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