8月22日、全造船関東地協は中央労働委員会にフィリピントヨタ不当労働行為事件への再審査申立てをしました。
以下は、再審査申立書の内容です。関係者から送られてきたものを、皆さんにそのままお知らせします。
以下 転用開始
再 審 査 申 立 書
平成18年8月22日
中央労働委員会 御中
全日本造船機械労働組合
関東地方協議会神奈川地域労働組合
(当事者の表示)
再審査申立人 全日本造船機械労働組合
関東地方協議会神奈川地域労働組合
再審査被申立人 トヨタ自動車株式会社
再審査被申立人 三井物産株式会社
神奈川県労働委員会が、平成17年(不)第1号事件につき平成18年8月4日に決定し、同月8日に申立人に交付された却下決定は全部不服であるから再審査を申し立てる。
不服の要点
初審決定を取り消し、初審で請求した救済内容を認容すること
すなわち、
1)再審査被申立人トヨタ自動車株式会社は、フィリピントヨタ(TMPC)をして、同社が2001年3月16日にフィリピントヨタ労働組合(TMPCWA)の組合員227名に対して行った解雇を撤回し、すみやかに職場に復帰させる。
2)再審査被申立人トヨタ自動車株式会社は、TMPCをして、別紙記載の各組合員に対し、別紙記載の金員を支払うようにさせること。
3)再審査被申立人トヨタ自動車株式会社は、TMPCにTMPCWAを労働組合として認めさせること。
4)再審査被申立人らは、前3項目の労働問題につき、日本において再審査申立人(関東地協)と誠実に団体交渉をすること。
5)ポストノーティス(謝罪文の掲示)。
不服の理由
1、労働組合法の適用
初審決定は、本件で救済が求められているのは、フィリピン国内における労使関係であって、我が国からすれば「外国における労使関係」であるとして労組法の適用がないとした。
しかしながら、再審査申立人が求めた救済内容には、究極的にはフィリピン国内における労使紛争の解決に役立つのであるが、第一義的には多国籍企業であり日本国内の株式会社である再審査被申立人らが紛争解決に乗り出すこと、及びそのために再審査申立人と団体交渉をすることを求めているのであって、再審査被申立人らが紛争を解決せず、団体交渉にも応じないということ自体は「国内における」労使紛争であって、労組法の適用がないと決めつけることはできない。
この点でいえば、再審査申立人は、フィリピン現地法人であるフィリピントヨタに直接紛争解決をすることを求める申立をしているわけではなく、日本国内の法人である再審査被申立人らに対して彼らができる救済で、かつすべき救済を求めているだけであって、初審決定は、そもそも事案の捉え方が間違っている。
また、多国籍企業の社会的責任の観点からすれば、海外子会社で生じた紛争や問題について、それを本国の本社が放置しておくこと自体が問題視されるのであって、その本社の姿勢自体は本国たる日本国内で、日本国の労働組合法を含む諸軌範に照らして責任追求されてしかるべき問題である。
なお、米国NGOの「国際労働権利基金」はミャンマーの軍事政権と米国系石油会社のパイプライン建設で起きた強制労働を米国の裁判所に訴え、昨年、企業側が原告の労働者たちに和解金を支払って解決している。その際、米国で提訴する根拠となったのが、米国建国当時、領海外の海賊対策でできた「外国人不法行為請求権法」であるが、米国外の行為でも米国内で物やサービスを売る会社なら責任を問われると裁判所も認めたのである。不安定な政情や政府と企業の密接な関係から、現地での解決が難しいことが多い中で、米国の裁判によって、企業は世界のどこでも社会的責任が問われる時代に入ったことを示す事例である。
初審決定が、「外国における労使関係」であるとした本件紛争についても、米国において提訴される可能性は十分にあるわけで、多国籍企業の本社のある日本国内において労働委員会が「対岸の火事」として知らん顔できるような問題ではないはずである。
2、申立人適格
初審決定は、本件団体交渉は、申立人加盟組合であるTMPCWAのフィリピンにおける労使紛争に係るものであって、当該労使関係については我が国の労組法の適用がないのであるから、申立人適格がないとしている。
ここでも初審決定は、本件で再審査申立人が求めている救済が、第一義的には多国籍企業であり日本国内の株式会社である再審査被申立人らが紛争解決に乗り出すこと、及びそのために再審査申立人と団体交渉をすることを求めているのであって、再審査被申立人らが紛争解決をせず、団体交渉にも応じないということ自体は「国内における」労使紛争であることを看過している。
多国籍企業の本社に対して直接に団体交渉をしていくのは、日本国内の労働組合が現地の労働組合と連携して交渉するのが効果的・現実的であり、現地の労働組合が加盟している上部団体としての再審査申立人がまさに適任であるといえる。
3、使用者性の問題
初審においては、実は労組法の適用がありや否やということは殆ど争点化しておらず、その主張立証の大半は、いわゆる「使用者性」の問題に費やされてきた。その意味では、「労組法の適用なし」という理由で却下決定を下したのは、多国籍企業としての再審査被申立人らの立場を正面から問う姿勢に欠けたものであり、いわば「肩すかし」の決定である。
そして、本件で「使用者性」が最大の争点となったのは、親会社子会社より以上に結びつきの強い多国籍企業において、海外展開した先で不当労働行為を含む違法行為があった場合に、その責任を本国で問えるかが問われているからであり、その当然の前提として、もし日本人ないし日本法人が直接海外で不法行為をした場合には日本国内でその責任を追及することは当然できるとの考え方があるからである。
しがたって、本来「使用者性」の判断次第では、日本企業が海外で起こした不当労働行為につき、日本でそれを問題とし、その紛争解決を求める団体交渉につき、これを拒否した事案といえるのであって、その場合、当然に労組法の適用が認められることもありうるのであり、初審決定のように「使用者性」の論点に全く触れないまま、「労組法の適用なし」だけで門前払いすることは、論理的にも間違った判断遺脱の決定といわざるを得ないのである。
4、労働組合法の適用について
なお、初審決定は、労働組合法の適用につき、日本における労使関係に適用されるのが原則であって、本件のような外国における労使関係には、同法を適用しなければ公平さに欠けるとか不合理であるなどの特段の事情がない限り適用されないと考えられるとし、本件では、その特段の事情の存在を窺わせる具体的事実に関する主張・疎明がないとした。
そもそも、本件事案につき単に「外国における労使関係」と位置づけることの問題点については前述したところであるが、仮に万が一、これを「外国における労使関係」だとして、初審決定の枠組みに従ったとしても、本件紛争につき日本の労働組合法を適用しなければ不合理であるといえる特段の事情がある。
すなわち、本件紛争は単にフィリピン国内の労使問題にとどまらず、ILOやIMFといった国際機関や国際労働組織の場でも問題とされてきた事案であり、IMFはフィリピン政府に向けて、紛争解決の勧告を何度も出しているし、IMFはIMF-JCなどを通じて、日本国内で労使の直接交渉の場を設けてきたのである。このような国際機関の関与にかかわらず、本件紛争が解決に向わないのは、何よりも多国籍企業の中枢部たる再審査被申立人らが日本国内で何ら責任ある行動をとろうとしないからである。
その意味では、国際的に見れば、日本国内で本件紛争につき解決すべき舞台を設定することしか残された道はないのであり、おそらくはILOとしても本件問題を解決しようと努力しない日本政府に対して勧告を出さざるを得なくなるでろうし、すでに展開されているIMFの世界キャンペーンの最終目標として日本本社が名指しされるであろうことは明らかである。
かつて外国において日本企業が公害を輸出して国際的に避難を浴びたように、日本の多国籍企業の行動とくに労働分野での弾圧や組合つぶしは国際的な非難の的となりうるのである。その際、本件事件につき再審査申立人が、直接的に日本の多国籍企業を相手方として日本国内で団体交渉などの解決手段を求めてきたことはと特筆すべきことであるし、これに対して我が国の労働組合法の適用がそもそもされないとする合理的な理由は見いだせない。なお、先に見たように、本件についても、米国においては、「外国人不法行為請求権法」に基づき再審査被申立人らを提訴することは理論的には可能だと思われる。しかし、あえて米国の裁判所という舞台を借りるまでもなく、日本には労働委員会という労使紛争を解決する場が存在しているのであるから、多国籍企業の中枢部の存在している日本国内で問題解決をする場を設けるのが、労使双方にとって有意義かつ合理的であることは明らかであろう。そして、労使問題につき話し合いの場を設けることができる公的な機関として労働委員会しか存在していないのであるから、労働組合組織であるIMFにおいてすら日本で話し合いの場を澄w)%鵑院∨楫鑛響莢魴茲里燭瓩某堽呂靴討い訝罎如∀儖颪☝楫錣髻岾姐颪力㎅般簑蝓廚世箸靴栃響莢魴茲紡个啓蠅鬚海泙佑い討い襪里蓮餾歸Ⅳ妨㎠譴弌△泙気防垤舁④錣泙蠅覆い海箸任△襦br>
以上
再審査申立書原文(pdf)
参考:企業に責任ある行動を働きかける米国の弁護士 (朝日新聞 2006/08/17)
以下は、再審査申立書の内容です。関係者から送られてきたものを、皆さんにそのままお知らせします。
以下 転用開始
再 審 査 申 立 書
平成18年8月22日
中央労働委員会 御中
全日本造船機械労働組合
関東地方協議会神奈川地域労働組合
(当事者の表示)
再審査申立人 全日本造船機械労働組合
関東地方協議会神奈川地域労働組合
再審査被申立人 トヨタ自動車株式会社
再審査被申立人 三井物産株式会社
神奈川県労働委員会が、平成17年(不)第1号事件につき平成18年8月4日に決定し、同月8日に申立人に交付された却下決定は全部不服であるから再審査を申し立てる。
不服の要点
初審決定を取り消し、初審で請求した救済内容を認容すること
すなわち、
1)再審査被申立人トヨタ自動車株式会社は、フィリピントヨタ(TMPC)をして、同社が2001年3月16日にフィリピントヨタ労働組合(TMPCWA)の組合員227名に対して行った解雇を撤回し、すみやかに職場に復帰させる。
2)再審査被申立人トヨタ自動車株式会社は、TMPCをして、別紙記載の各組合員に対し、別紙記載の金員を支払うようにさせること。
3)再審査被申立人トヨタ自動車株式会社は、TMPCにTMPCWAを労働組合として認めさせること。
4)再審査被申立人らは、前3項目の労働問題につき、日本において再審査申立人(関東地協)と誠実に団体交渉をすること。
5)ポストノーティス(謝罪文の掲示)。
不服の理由
1、労働組合法の適用
初審決定は、本件で救済が求められているのは、フィリピン国内における労使関係であって、我が国からすれば「外国における労使関係」であるとして労組法の適用がないとした。
しかしながら、再審査申立人が求めた救済内容には、究極的にはフィリピン国内における労使紛争の解決に役立つのであるが、第一義的には多国籍企業であり日本国内の株式会社である再審査被申立人らが紛争解決に乗り出すこと、及びそのために再審査申立人と団体交渉をすることを求めているのであって、再審査被申立人らが紛争を解決せず、団体交渉にも応じないということ自体は「国内における」労使紛争であって、労組法の適用がないと決めつけることはできない。
この点でいえば、再審査申立人は、フィリピン現地法人であるフィリピントヨタに直接紛争解決をすることを求める申立をしているわけではなく、日本国内の法人である再審査被申立人らに対して彼らができる救済で、かつすべき救済を求めているだけであって、初審決定は、そもそも事案の捉え方が間違っている。
また、多国籍企業の社会的責任の観点からすれば、海外子会社で生じた紛争や問題について、それを本国の本社が放置しておくこと自体が問題視されるのであって、その本社の姿勢自体は本国たる日本国内で、日本国の労働組合法を含む諸軌範に照らして責任追求されてしかるべき問題である。
なお、米国NGOの「国際労働権利基金」はミャンマーの軍事政権と米国系石油会社のパイプライン建設で起きた強制労働を米国の裁判所に訴え、昨年、企業側が原告の労働者たちに和解金を支払って解決している。その際、米国で提訴する根拠となったのが、米国建国当時、領海外の海賊対策でできた「外国人不法行為請求権法」であるが、米国外の行為でも米国内で物やサービスを売る会社なら責任を問われると裁判所も認めたのである。不安定な政情や政府と企業の密接な関係から、現地での解決が難しいことが多い中で、米国の裁判によって、企業は世界のどこでも社会的責任が問われる時代に入ったことを示す事例である。
初審決定が、「外国における労使関係」であるとした本件紛争についても、米国において提訴される可能性は十分にあるわけで、多国籍企業の本社のある日本国内において労働委員会が「対岸の火事」として知らん顔できるような問題ではないはずである。
2、申立人適格
初審決定は、本件団体交渉は、申立人加盟組合であるTMPCWAのフィリピンにおける労使紛争に係るものであって、当該労使関係については我が国の労組法の適用がないのであるから、申立人適格がないとしている。
ここでも初審決定は、本件で再審査申立人が求めている救済が、第一義的には多国籍企業であり日本国内の株式会社である再審査被申立人らが紛争解決に乗り出すこと、及びそのために再審査申立人と団体交渉をすることを求めているのであって、再審査被申立人らが紛争解決をせず、団体交渉にも応じないということ自体は「国内における」労使紛争であることを看過している。
多国籍企業の本社に対して直接に団体交渉をしていくのは、日本国内の労働組合が現地の労働組合と連携して交渉するのが効果的・現実的であり、現地の労働組合が加盟している上部団体としての再審査申立人がまさに適任であるといえる。
3、使用者性の問題
初審においては、実は労組法の適用がありや否やということは殆ど争点化しておらず、その主張立証の大半は、いわゆる「使用者性」の問題に費やされてきた。その意味では、「労組法の適用なし」という理由で却下決定を下したのは、多国籍企業としての再審査被申立人らの立場を正面から問う姿勢に欠けたものであり、いわば「肩すかし」の決定である。
そして、本件で「使用者性」が最大の争点となったのは、親会社子会社より以上に結びつきの強い多国籍企業において、海外展開した先で不当労働行為を含む違法行為があった場合に、その責任を本国で問えるかが問われているからであり、その当然の前提として、もし日本人ないし日本法人が直接海外で不法行為をした場合には日本国内でその責任を追及することは当然できるとの考え方があるからである。
しがたって、本来「使用者性」の判断次第では、日本企業が海外で起こした不当労働行為につき、日本でそれを問題とし、その紛争解決を求める団体交渉につき、これを拒否した事案といえるのであって、その場合、当然に労組法の適用が認められることもありうるのであり、初審決定のように「使用者性」の論点に全く触れないまま、「労組法の適用なし」だけで門前払いすることは、論理的にも間違った判断遺脱の決定といわざるを得ないのである。
4、労働組合法の適用について
なお、初審決定は、労働組合法の適用につき、日本における労使関係に適用されるのが原則であって、本件のような外国における労使関係には、同法を適用しなければ公平さに欠けるとか不合理であるなどの特段の事情がない限り適用されないと考えられるとし、本件では、その特段の事情の存在を窺わせる具体的事実に関する主張・疎明がないとした。
そもそも、本件事案につき単に「外国における労使関係」と位置づけることの問題点については前述したところであるが、仮に万が一、これを「外国における労使関係」だとして、初審決定の枠組みに従ったとしても、本件紛争につき日本の労働組合法を適用しなければ不合理であるといえる特段の事情がある。
すなわち、本件紛争は単にフィリピン国内の労使問題にとどまらず、ILOやIMFといった国際機関や国際労働組織の場でも問題とされてきた事案であり、IMFはフィリピン政府に向けて、紛争解決の勧告を何度も出しているし、IMFはIMF-JCなどを通じて、日本国内で労使の直接交渉の場を設けてきたのである。このような国際機関の関与にかかわらず、本件紛争が解決に向わないのは、何よりも多国籍企業の中枢部たる再審査被申立人らが日本国内で何ら責任ある行動をとろうとしないからである。
その意味では、国際的に見れば、日本国内で本件紛争につき解決すべき舞台を設定することしか残された道はないのであり、おそらくはILOとしても本件問題を解決しようと努力しない日本政府に対して勧告を出さざるを得なくなるでろうし、すでに展開されているIMFの世界キャンペーンの最終目標として日本本社が名指しされるであろうことは明らかである。
かつて外国において日本企業が公害を輸出して国際的に避難を浴びたように、日本の多国籍企業の行動とくに労働分野での弾圧や組合つぶしは国際的な非難の的となりうるのである。その際、本件事件につき再審査申立人が、直接的に日本の多国籍企業を相手方として日本国内で団体交渉などの解決手段を求めてきたことはと特筆すべきことであるし、これに対して我が国の労働組合法の適用がそもそもされないとする合理的な理由は見いだせない。なお、先に見たように、本件についても、米国においては、「外国人不法行為請求権法」に基づき再審査被申立人らを提訴することは理論的には可能だと思われる。しかし、あえて米国の裁判所という舞台を借りるまでもなく、日本には労働委員会という労使紛争を解決する場が存在しているのであるから、多国籍企業の中枢部の存在している日本国内で問題解決をする場を設けるのが、労使双方にとって有意義かつ合理的であることは明らかであろう。そして、労使問題につき話し合いの場を設けることができる公的な機関として労働委員会しか存在していないのであるから、労働組合組織であるIMFにおいてすら日本で話し合いの場を澄w)%鵑院∨楫鑛響莢魴茲里燭瓩某堽呂靴討い訝罎如∀儖颪☝楫錣髻岾姐颪力㎅般簑蝓廚世箸靴栃響莢魴茲紡个啓蠅鬚海泙佑い討い襪里蓮餾歸Ⅳ妨㎠譴弌△泙気防垤舁④錣泙蠅覆い海箸任△襦br>
以上
再審査申立書原文(pdf)
参考:企業に責任ある行動を働きかける米国の弁護士 (朝日新聞 2006/08/17)