全トヨタ労働組合(ATU)

トヨタ自動車および関連企業で働く労働者の企業横断型労働組合です。一人でも加入できます。

AKK吉田裁判の現況Ⅲ

2014年09月29日 21時17分01秒 | Weblog
「地位確認・損害賠償」裁判の現在
アイシン機工に対する裁判はどうなっているかということです。
 これまでこの裁判は、国に対する裁判と同時並行して進行してきました。裁判官も同じでした。しかし3月に判決が出たあと、裁判官が代わってしまいました。勝たせてもらった裁判官が代わってしまったということです。そして、新しい裁判官になったということで仕切り直しのようになっています。今は、今までやってきたことの復習のようなことをやっています。
 実はこのあいだ、裁判官の方からペーパーが出されました。自分としてはこういうことがこの裁判の争点になっていると思いますということで、裁判官の方から問題提起されてきたのです。その話がわかりやすいのでその話をします。
 アイシン機工に対する裁判で、争点になるのは、まず業務との因果関係です。業務によって吉田さんの手首の損傷が発症したのかどうか。二つ目は、業務との因果関係があったとしても、アイシン機工側に安全配慮義務違反があったのかどうかです。
 ひとつめの業務との因果関係があるのかということで、裁判官が言っているのは、スタットボルトをエンジンカバーに手でねじ込む深さ、ネジのかかり始めた位置についてもう少し客観的にはっきりさせたいということです。アイシン機工側が盛んに言っているのは、スタットボルトの先端部分2~3ミリは、接着剤がついていない。だから力を入れなくても簡単に入るよということです。 
 国との裁判では、そこはあまり問題にしていなかった。接着剤がついているかどうかはこっちも気にはしていたのですが、判決では、クネッ、クネッと手首を回旋させること自体で手首を痛めたのだという認定で、接着剤がついていて力が必要かどうかは問題にしていません。
 また、同種労働者について手首を痛めた人が何人かいるのですが、裁判官は、彼らの作業内容、業務量、勤続年数、過去の担当業務について比較表を作ってくれれば嬉しい、明らかにしてほしいと言っています。手首を痛めたのは全体の内のどれくらいか、1万人の中の一人なのか、3・4人の中の一人なのか、何人やって何人出ているのかそういう母数も明らかにしてほしいということです。判決では同種労働者の話は全くでていませんでした。
 二つ目の安全配慮義務違反のことですが、こちらの主張は、会社は労働時間、健康状態についてしっかり把握して健康管理しなければならない義務があるけれども、それをしなかったのだということです。具体的な内容については、日常的に繰り返す作業では、負担をある程度以下にしなければいけない。 スタットボルトの仮締め作業を手作業で行うラインと、そうでなく自動化されているラインと二つのラインがある。今回、手作業のラインで問題が発生しているので、早めにそのラインも自動化すれば良かったのではないかと主張しています。裁判官は、そのあたりに関心を持っているようです。
 今後の日程ですが、まずは、スタットボルトの仮締め作業を具体的にどのようにやっているのかを、確認したいという裁判官の意向で、10月10日に裁判所で実際に再現をすることになっています。つづく


フィリピントヨタ労組つぶしと闘って

2014年09月27日 09時25分17秒 | Weblog


9月18日に当ブログで紹介しました。労働組合つぶしと闘うフィリピントヨタ労組と日本の支援する団体との共同国際連帯行動について紹介します。
9月14・15日の二日間愛知行動をした取材がレイバーネットTVで公開しています。ぜひ視聴してください。
 フィリピントヨタ争議の解決を求めて、ことしもフィリピントヨタ労組(TMPCWA) のエド委員長とウィニー副委員長が来日した。かれらは日本の支援者とともに、9月14¬~15日トヨタ愛知本社への要請行動を行い、17日には東京本社に申し入れをした。「¬レイバーネットTV」は、東京本社前でエドさんとウィニーさんに話を聞いた。取材=レ¬イバーネットTV。
https://www.youtube.com/watch?v=FFyJJI5KT6k&feature=youtu.be

AKK吉田裁判の現況Ⅱ

2014年09月25日 09時06分19秒 | Weblog


会社による「補助参加」と「控訴」の申立
 ご承知のように日本では、三審制となっており、一審判決に不服の場合は控訴して、さらに上告をすることができます。一審判決の場合は14日以内に控訴の手続きをすれば、裁判がもう一度始まることになります。
 先に述べたような一審判決について、控訴するかどうかは、悩みました。悩みましたが、左手については、控訴しないことにしました。国側はどういう議論になったかはわかりませんが、結果的に控訴を断念しました。本来ならばそれで確定して終わっていたはずなのです。
民事訴訟法上「参加」という制度があります。当事者でない第三者が裁判に入ってくることです。
 「補助参加」というのは、第三者が、原告か被告のどちらかの味方をして、助っ人として、裁判に加わる制度です。これは利害関係があればできるので、アイシン機工は判決が出る前に参加しようと思えば出来たはずです。それで争えば良かったのですが、アイシン機工は、油断していたんでしょうか、補助参加はしませんでした。
 ところが、判決が確定する寸前になって、国の側に補助参加を申し出てきました。と同時に、控訴も申し立てました。補助参加人は原告・被告と同じような訴訟行為ができるので、補助参加が認められれば、控訴も認められることになります。そこで、補助参加が認められるかどうかがいちばんの問題になってくる、という異例の話になっています。
 今、「補助参加」が認められるかどうかで、高裁で止まったまま宙ぶらりんの状態になっています。こちら側としては、アイシン機工の補助参加に対して、今までいつでも参加できる状態にあったにもかかわらず、今になって、負けそうになって申し出るのはいかがなものか等として、争っています。
つづき

AKK吉田裁判の現況

2014年09月23日 08時50分01秒 | Weblog
吉田裁判は今どのように進んでいるのか
 8月8日(金)刈谷市内にて裁判を支援する会総会が開かれました。5人の弁護団を代表して、豊田けやき通り弁護士事務所の梅村弁護士から報告をいただきましたので、数回に分けて掲載します。尚、補助参加の取り扱いについては高裁で今だ検討中です。支援する会は「参加」を認めないよう団体要請署名行動を行っています。協力していただける団体があればご一報ください。

二つの裁判
 今、吉田さんの裁判は二つ闘われています。一つは、国を相手にした裁判。もう一つは、アイシン機工を相手にした裁判です。
国を相手にした裁判は、吉田さんが、手首を痛めて労災申請しましたが、岡崎労働基準監督署西尾支所長が、業務外との決定を行ったので、その決定を取り消してくれというものです。これはすでに判決が出ています。
アイシン機工に対する裁判は、アイシン機工が吉田さんのケガが治らないということで休職期間満了による退職としてしまいました。しかし、吉田さんが手首を痛めたのは、業務によるものであるから、退職扱いはできないという労働契約上の地位の確認と、手首を痛めた原因は業務にあり、会社に責任があるので、損害賠償を求めるものです。この裁判は、一審で係属中です。

労災認定裁判の判決内容
実は、吉田さんは、利き手の右手だけでなく左手も痛めています。そこで、両手とも労災認定を求めていたのですが、2014年3月18日の判決では、右手については労災を認め、左手については認めませんでした。
この判決の内容を簡単に説明しておきます。
まず、判決では、右手も左手も手首に損傷があるということは認めています。
2つめに、手首が悪くなる原因、すなわち危険因子には、こちら側の証人である宇土医師が言われていた手首の回内・回外運動があると認定しています。
3つめに、吉田さんが、回内・回外運動を伴う作業を行っていたと認定しています。
吉田さんは、エンジンカバーの製造業務に従事していたのですが、その作業の中に、接着剤のついたスタットボルトをねじ込む作業がありました。それは、手で回しただけでは入らないのでインパクトレンチを使ってやるのですが、そのためには手であらかじめボルトの仮締め作業をしないと安定して入らない。その仮締め作業を1つのエンジンカバーをつくる作業に付き、2本のスタットボルトを、1回転から2回転、360度~720度、行っていました。それを、吉田さんは厚手のゴム手袋をつけてやっていましたので、しっかりとスタットボルトをつまんで回さないといけない。国側(会社側)は指先だけでつまんで、くるくると回して入れることができると主張していたのですが、判決では強くつまんで手首の回内・回外運動をやらないと入らないという認定をしています。
4つめに、判決では、回内・回外運動が手首を痛めたことの原因になったかどうかの判断をするための基準を示しています。
手首の回内・回外運動は、日常的に行うものであり、手首を痛める原因はいろいろあるのだが、業務での回内・回外運動が、他のいろいろな回内・回外運動より相対的に有力な原因だと言えないと業務起因性は認めませんよ、という基準を設定しています。
5つめに、判決は、スタットボルトの仮締め作業で行う回内・回外運動は、他の回内・回外運動より相対的に有力な原因となると認めました。
他の回内・回外運動としてどのようなものがあるかというと、裁判の中で国側の証人の藤澤医師は、吉田さんが高校時代に卓球をやっていて悪くなったと言っていますし、国側は、日常動作でも悪くなると主張しています。判決では、会社の作業の手順は決まっていて、スタットボルト2本を入れる作業を11秒以内にやらないといけない。急いでやっていた。それを1日に1400~2400回やらなければいけない。それも5年間の長期に渡ってやっていた。したがって、その作業は特徴的具体的でありかつ頻度の高いものであったと認定しました。それに比べて卓球は、高校時代のことで、時も経っている。日常動作もあるかもしれないが、抽象的なものであるとし、相対的に仮締め作業の回内・回外運動が有力であるとしました。
もう1つ、プラスバリアントの問題がありました。手首に尺骨と橈骨という二つの骨があるのですが、そのバランスが悪くて、手首が痛くなったのではないかという問題です。吉田さんの場合、右手首では、2ミリの違いがあり、国側は、それが原因ではないかとも言っておりました。このことについて、判決では、尺骨が長いというのはそうなのですが、右手については、そうたいしたことはない、特異なものとまでは言えない、ということで、尺骨が長いということがあったとしても、やはり業務が有力であるとして業務起因性を認めました。
6つめに、判決は、左手については、業務起因性を認めませんでした。その理由は、左手で作業をしたという証拠がないということでした。一般論としても左手でやるのは難しいし、いちばんの問題は、吉田さんが、労基署で聴取をされたときに、左手で作業をしていたとは言ってなかったということです。そのようなことを理由に、裁判所は左手で作業をやっていなかったと認定しました。だからあれこれ言うまでもなく業務起因性がないのだという判断です。また、判決は、それに付け加えて、骨の長さの違いが右手は2ミリだが、左手は5ミリあり、それが左手の損傷の原因であるとも言っています。
以上が、国に対する裁判の一審の判決の内容です。つづき

世界連帯支援活動

2014年09月18日 09時30分12秒 | Weblog

名古屋ミットランド前と本社ビル前

フィリピントヨタ労組を支援する愛知行動が行われました

 9月14、15日の両日、フィリピントヨタ労組のエド委員長、ウイニー副委員長を迎えて、フィリピントヨタ労組を支援する会はトヨタ自動車に対する抗議・要請行動に全トヨタ労働組合も参加し取り組みました。
 フィリピントヨタ労組は2000年に結成されました。だがトヨタ自動車の現地資本・フィリピントヨタ社はこの労組を承認しないばかりか、233名の組合員を解雇したのです(のちにさらに4名を解雇)。ここにフィリピントヨタ労組の苦難に満ちた闘いが始まりました。フィリピントヨタ労組は解雇撤回を掲げ、組合つぶしに抗議して現在まで団結を崩さず闘い続けています。このフィリピントヨタ労組を支援していくために、関東と愛知で支援する会が結成され、毎年この時期に東京と愛知でトヨタ自動車に対する抗議行動と要請行動を取り組んでいます。
愛知行動では、エド、ウイニー両氏と関東から駆けつけた仲間、地元愛知の仲間が、14日はトヨタ名古屋本社が入居するミッドランドスクエアビル前での情宣・抗議行動、夜には豊田市内に会場を移しての連帯交流集会、翌15日は早朝からトヨタ本社前での抗議集会とトヨタ自動車への要請行動を行いました。
 この要請行動へのトヨタの対応は、じつに酷いものでした。エド、ウイニー両氏を先頭にした要請団に対して、トヨタは総務部の天野課長、三好係長が対応に出て来ました。しかし彼らは「トヨタは労働争議の早期解決に乗り出せ」という「要請書」を受け取ることを拒否したばかりか、要請を「上には伝えるのか」という問いに対して「聞き置きます」と繰り返すばかりでした。しかもメモの一つさえ取りません。形だけ会うが要請については完全に無視する態度を取ったのです。おそらく上層部からの指示があったのでしょう。後進国フィリピンの労働者の要望などは頭から無視するという世界の大トヨタの傲慢さが露骨に現れた対応でした。
 しかし、これは追い詰められたトヨタの焦りでもあります。ILO(国際労働機関)からは数度にわたってフィリピン政府に対して紛争を「国際労働基準」にのっとって解決せよ、という勧告が出されています。そしてフィリピン政府が解決に乗り出しトヨタも対応せざるを得なくなっています。いくつかの国際的人権団体もトヨタを非難する声明を出しています。フィリピントヨタの労働者の願いを無視する傲慢な態度をトヨタがとり続けることは、国際的なトヨタ糾弾の声につつまれトヨタの社会的信用の失墜を結果することにしかならないでしょう。

国内総生産(GDP)7.1%減少の示すもの

2014年09月10日 23時00分49秒 | Weblog
賃金引き上げはあったのか? 
 9日の朝刊に各紙は、内閣府が発表した2014年4~6月期の国内総生産を載せています。物価変動の影響を除いた実質で7.1%(前年比年率)減少しました。
 企業の設備投資は5.1%減少、個人消費も5.1%減少と軒並み下方修正しています。背景に何があるのか?、企業の設備投資といっても主要な大企業は海外に工場を作り日本を捨てて企業活動をしています。せいぜい国内の設備投資は老朽化した設備の更新ぐらいでしょう。
 儲けた利益は日本経済のためならず、投資活動に一生懸命です。有り余るほどの金があるのに、それでも宝くじを買いあさるようなものです。アベノミクス効果で今年は労働者の賃金が通常よりもベースが上昇したなどと、政労使が大ぼらを吹き、安倍総理と会って自慢した自動車の社長がいました。
 なのになぜ、GDPの約6割を占める国民消費が内需拡大に貢献しないのか、財布のひもが固いのだろうか。ぜひ皆さんの声を聞かしてほしいと思います。
 言えることは、今年の賃金引き上げ分は物価上昇で帳消しになりマイナスにさえなっているのです。
 今年のトヨタ自動車は、組合がベースアップ平均4000円を要求しました。会社回答は2700円でした。世間では2700円がまともに賃金に反映されたと思っていたでしょう。とんでもありません。賃金のベースには全く反映されなかったのです。しかも定期昇給平均7300円から50円引いた分を2700円に足した2750円を60歳以降の無年金対策として積み立てる原資として差っ引くトリックがあったのです。積み立て原資は、賃金に反映してから決まった額を反映するのがあるべき姿でしょう。
 したがって、実質賃金引き上げは限りなくゼロに近かった(昇格者は反映されましたが)ことが真相でありGDP減少の要因です。これでも来年消費税を10%に引き上げるのでしょうか。国の借金は国民一人当たり約900万円です。狂気の沙汰です。

災害情報パートⅡ

2014年09月08日 21時40分48秒 | Weblog
 トヨタ自動車で死亡災害が発生していた
 トヨタ自動車では8月9日から夏季休暇に入ったのですが、二日後の10日(日)に衣浦工場(愛知県碧南市)で外部工事関係者が、恒温炉出口扉のパッキン交換中に、ワイヤーで約180kgの扉を吊って作業していたところ、ワイヤーが切れて落下し51歳の作業者が頭部を挟まれ死亡しました。(災害情報を見る限り、どこの会社で起きたか書かれていません)
 トヨタ自動車では、死亡災害とは言わず、重大災害として処理するところが特異です。修理発注側であるトヨタ自動車の監督責任が問われます。

労働災害情報

2014年09月03日 13時47分59秒 | Weblog
 労働安全衛生法違反で書類送検
最近気になった災害情報がありました。豊田労働基準監督署が7月25日に2社に対して、労働安全衛生法違反で書類送検をしました。
 1社は、豊田市広久手町にある自動車金属部品製造「豊田プレス工業」です。派遣社員が誤って踏み台を踏んでしまったために、機械のスライドが下降して左手首を切断する重傷を負った事故です。
 労働安全衛生法で義務づけられている安全ブロック装置を設置していなかったことで災害を防止できなかったことです。慣れない労働者の災害として実例です。いまだにこのような不安全作業がまかり通っていることは労働基準監督署の監督不届きです。それに災害情報展開に不備があるということでしょう。
 もう1社は、名古屋市守山区にある「ハーツ」という会社で、豊田市内の工場エレベータ工事の更新作業で、工具で切断作業中左手首を切る重傷を負ったというもので、本来なら豊田労働基準監督署に届けなければならないのに、負傷現場を自社でやったと虚偽の報告を名古屋の労働基準監督署に提出していたというものです。
 この種の違反がいまだに繰り返されていることは猛反省すべきでしょう。つまり、工事をする側が発注した企業に迷惑をかけたくない、仕事が貰えなくなるから災害を隠してしまうというものです。
 災害が起きてしまったことに対しては、被災者の救済をすること、そして二度と同じ災害を起こさないために原因を究明し対策を取ることです。ほかの部署、あるいはほかの企業に情報を展開して災害を未然に防止する連携が必要です。ここでも労働組合があれば主体性を持って事故防止のために活動することが求められます。
労働災害にあったら、まず当労働組合に相談してください。