幼少期より、クラシックバレエに親しんでいたミツコ。
都民芸術フェスティバルや、日本バレエ協会の公演は、
毎年、楽しみに観ていました。
いまでも、こころに残っているのが、こちら。
'93都民芸術フェスティバル参加 日本バレエ協会公演「白鳥の湖(全4幕)」。
1993年2月、東京文化会館大ホール。
オデット/オディール:リュドミラ ワシリア
王子ジークフリード:ウラジーミル マラーホフ
なかでも、第1幕と第3幕に登場した、
道化:岩田守弘さんの存在感が、圧倒的でした。
特に第3幕。
場面は、城内の大広間。
大賑わいのなか、道化は踊りまわり、
王妃は、我が息子・ジークフリートの花嫁が見つかることを、心待ちにしています。
ところが、数多の花嫁候補がアピールするも、
オデットのことで頭がいっぱいのジークフリートは、乗り気になれません。
そこへ、悪魔ロートバルトと娘オディールが現われ、
たちまち、ジークフリートは虜になります。
オディールへの永遠の愛を誓うと、瞬時に辺り一面、闇に。
ロートバルト)ワ~ッハッハッハ!愚かなジークフリートよ、見よ!
今ごろ湖畔では、オデットが、嘆き悲しんでいるんだろうなあ。
ジークフリート)・・・あっ!オデット!!・・・やい、だましたな!
ロ)やっと気づいたかね。・・・ワ~ッハッハッハ!
オディール)オ~ッホッホッホ!
ジ)オデット、違うんだ、誤解なんだ!僕はだまされたんだ!
待ってろ、いますぐ、駆けつけるぞ!(湖畔へ向かう)
ロ&オ)ワ~ッハッハッハ!オ~ッホッホッホ!
このあまりの出来事に、王妃はめまいをおこし、
取り残された周囲の者も、呆然自失の態。
大混乱のなか、幕。
となるのですが
(ご存じのとおり、バレエには台詞がありませんので、
ミツコによる当て台詞です)、
このときの、岩田守弘さん演じる道化。
王妃の膝元で、片膝立ち、片腕を曲げ、
オ~イオイと、泣くのです。
その姿ときたら、
なんというか、もう・・・。
一家の破滅への嘆き、
こころを誑かす悪魔に対し、無力な人間というものへの嘆き、
突然襲いかかる悲劇に対し、無力な自分への嘆きなどが、
ない交ぜになったのでしょうか。
よもや「白鳥の湖」第3幕の幕切れで、涙が出るとは。
道化に、こんなに泣かされるとは。
自分でも、驚きました。
蛇足ですが、
跳んだら降りてこないんじゃないかというジャンプ、
軸のぶれない回転など、卓越なテクニックを有し、
徹底的に、剽軽者を演じていたからこそ、
そのシーンが、胸に迫ったことを付記します。
そんな岩田守弘さん。
2012年、第1ソリストまで務めたボリショイ・バレエ団を退団。
現在は、ウラン・ウデの、
国立ブリャート歌舞劇場バレエ団の芸術監督をなさっているそうです。
ウラン・ウデ。東シベリアにあるそうです。
(バレエの)腕が、売らんほどある岩田さんですから、
きっときっと、唯一無二のバレエ団になることでしょう。
明日もがんばるぞ!