Scarving 1979 : Always Look on the Bright Side of Life

1979年生な視点でちょっと明るく世の中を見てみようかと思います。

水平線を両手真似て

2004年06月09日 23時59分59秒 | 1分間スピーチ
今日は、水平線を両手真似てでした。

ひとつの薬を減らして以来、
ひとつの無理も出来なくなっている。

薬を減らしたから体調が悪いのか、
体調が悪いから薬が減っていくのか、
それは医者にも私にもわからない。

ただわかることは、
確実に私の体は人に戻り始めている。

以前は、何車線もある広い高速道路のように、
笑顔で堂々と走り抜けられた道。

今は命の海の上を綱渡りするように、
水平線を両手真似て、
険しい顔で確実に一歩一歩を踏み締めなければ、
向こう岸まで辿り着けない。

そして辿り着いたと同時に、
水平線を保ったまま、大の字に倒れてしまう。

ここに、命の鼓動を感じる。

これが機械仕掛けになった私が望んでいた、
人の体であるならば、こんなに嬉しいことはない。

ようやく人に戻れるのだから。
ようやく生きていることを実感出来るのだから。

こんなにも、嬉しいことはない。

私は人として、
色んな想いを強く、強く噛み締めながら、
生きる。生きていく。生き続けてやる。

伝えたいのは、あの日の夏。
思い出したい、あの日の僕。

色んな人が、若過ぎる、って言ったんだ。

「犬(dog)」第5回

2004年06月09日 17時00分00秒 | 物語
第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回
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 何気ない朝。

 トースターの焼き終わりの音。

 洗濯機の回る音。

 目覚まし代わりにコンポから流れる、地平線の風のような気持ちのいい音。

 家の前を通り過ぎる車の音。

 遠くに聞こえる踏切の音。

 なにかを焼く音。

 バターの香り。

 カーテンの隙間から朝の光。

 昨日の部屋。

 体はかおりんのもの。

(まだ、僕じゃない。)

 まず、靴下を左足から履き、セーラー服に着替えた。

 時間割を見つめ、教科書を入れ替え、ノートを入れ替え、ジャージを持った。

(僕の朝と変わらないな)

 “トースターの音とバターの香り”の部屋へ向かう。

「あ、おはよう」

「おはよう」

「おはよう」

 部屋に入ったとたん、家族からのお出迎えの言葉。何気ない、いつも通りの朝のあいさつ。

「おはよう」

(やっぱり異世界でも“おはよう”なんだ。昨日もそうだったし、あいさつはみんな、同じなんだな。さわやかだ)

 カリカリ音を立てて、トーストにマーガリンを滑らせる。いちごジャムを滑らせる。

 スクランブルエッグをそのまま食べる。バターの香り。

 少し焦げかけのベーコン。丸めて口に放り込む。

 フォークですくいながら、コーンポタージュスープを飲む。

 雪印3.5牛乳1lパックを、目の前のコップに注ぎ、口に入れ、よく噛んで飲む。

(こんなふうに穏やかな生活、いいな)

 父さんが一番先に食べ終える。食卓から離れる。会社へ向かう。

「いってきます」

「いってらっしゃーい」

「いってらっしゃい」

「いって、らっしゃ~い」

(なんか、家族、してる)

 隆司が食べ終える。トイレに入る。

 かおりんが食べ終える。新聞を読んでみる。

(やっぱ番組、全然違うな。あ、4コマもあるのか。スポーツも違うな。マラソンっていったら、行川でしょ)

 隆司が学校に向かう。

「いってきます」

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃ~い」

(普通だな~)

「かおり、あなたもそろそろ行かないと遅刻よ」

「は~い」

(そういや、どうやって行けばいいんだ?う~ん、ま、なんとかなるだろう)

「あ、お弁当、持ってきなさい」

「え、あ、はい」

(あれ?そういや、僕、これ、昨日カバンの中に入れっぱなしだったよね。いつのまに取り出したんだ?)

 かおりんは“白ブタ”のきんちゃく袋に入った弁当箱を学生カバンに詰め込んで、

「いってきま~す」

「いってらっしゃ~い」

 家を出た。とりあえず前の路地を左に折れてみた。

「おはよう」

 坊主頭で制服の男の子が左から声をかけてきた。

「え、あ、おはよう」

(誰だ、こいつ?ま、いいか。こいつの後付ければ学校行けるだろう)

「今日はゆっくりなんだね。あ、ブラバンの朝練がない日か」

「え、あ、そう」

(なんだ、その白々しい台詞は)

「今日の英語の訳やってきた?」

「え、そんなのあったの?知らなかった」

(宿題か・・・。でも所詮、中学の英語だろ。楽勝だな)

「あ、じゃあ俺の見せてあげようか?」

「え、いいよ」

(この下心見え見えの男はなんなんだ?もしかして手紙の主か?)

「遠慮しないでいいよ。いつも俺が見せてもらってるからそのお返しだよ。ね?」

「いや、本当に要らないよ」

(しつこい奴だな。そういうの嫌われるよ)

「でもさ~」

「学校行ってからやるから」

(も~、このガキ君は)

「あ、そう?でも、わからないとこあったら俺、教えるから」

「うん。そうして」

(わからないとこがあるわけないだろ)

 “坊主頭”はその後、自分の部活について話し続けた。

 かおりんはてきとうに返事をし続けた。

 そして学校に着いた。

「かおりん、おはよう」

 下駄箱でおかっぱの女があいさつをしてきた。

「あ、おはよう」

(だれ?)

「今日の英語の訳やってきた?」

「いや、やってきてないけど」

(またそれか)

「そう。昨日、教科書持って帰るの忘れちゃって、できなかったんだ」

「あ、俺やってきたよ」

「え、ほんと?」

「うん、なんならうつす?」

「でも、佐藤の訳は当てにならないんだよな」

(あ、この坊主、佐藤って言うのか)

「今日はちゃんと辞書見たから大丈夫だよ」

「そう?なら借りよっかな?」

「じゃあ教室で渡すよ」

「うん、お願いね。あれ、でも、かおりんはいいの?」

「いいよ別に。その場でやるから」

(なんでみんな、そんな気にするのかな?)

「でも、やってきてないのばれたら、先生に怒られるよ」

「大丈夫だって」

(でも、怒られるのやだな)

「後で後悔しても知らないよ」

「え、うん」

(後悔なんてしないよ)


 窓側の後ろから二番目の席に、男子が座っていた。

「おはよう」

 天川があいさつをし、隣に座った。

「おはよう。あ、昨日の渡してくれた?」

「え、昨日のって?」

「あの手紙だよ。手紙」

「あ、渡しといたよ」

「それで、どうだって?」

「どうっていわれても、なんか困ってたみたいだよ」

「え、あ、そう」

「でも、結構うれしそうにもしてたよ」

「ほんと?」

「うん、でもまだ、好きとか嫌いとかわからないって」

「へ~」

「ま、そのうち返事が来るでしょう。あんたなんか大嫌いって」

「そりゃないよ」

「冗談よ、冗談」

「は~、でも返事いつ来るのかな?」

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第6回

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『朝の色』

朝 の 色 は

ベ ー ジ ュ 色

カ ー テ ン の 隙 間 か ら 差 し 込 む

ヒ カ リ 色

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第5回あとがき

[当時]
今回も細かくし過ぎて、話がすごく鈍化してしまいました。
しょうがないから途中飛ばしてしまったところもあります。
それにしても、今回はこの作品よりも
他の作品に使った方がいいような文章でしたね。

[現在]
冒頭の短文の羅列は、今の私が好む作風な気がします。
展開のなにもないお話ですが、
全体から見ると、こんな部分も必要だったのでしょう。
それにしても誰がどの台詞を話しているかわからないですね。
多人数を書くのは、昔も今もずっと苦手なようです。