Scarving 1979 : Always Look on the Bright Side of Life

1979年生な視点でちょっと明るく世の中を見てみようかと思います。

「犬(dog)」第3回

2004年06月01日 17時00分00秒 | 物語
第1回 / 第2回
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【Dear工藤かおり様】

(うあー“Dear”だって“Dear”。“親愛なるもの”だよ)

【こんにちは。いや、こんばんはかな?それともおはようかな?ま、そんなことはさておき】

(どんな文だよ)

【突然の手紙驚かれたとは思いますが】

(そりゃそうだろ、異世界の男に手紙もらったんだもん)

【僕は君の事が好きだ】

(もう、それ言うんだ)

【だからこないだ体育館でやったコンサートのとき、隣にいた君の手を握ろうとしてたんだ】

(そんなことやっちゃだめでしょ)

 ……そうこうしているうちにかおりんは校門を出ていた。“窓側の後ろから2番目の”女子とは反対方向に向かって歩いていた。今のところ作戦は成功しているように思える。

 「市民グラウンド」という名を持つ、篠塚も来た野球場の横にある路地を抜けたときにはちょうど4枚目を読み始めたところだった。

【ってね。僕らもそんな風になれるといいね】

(何かこの人の文、もう付き合ってる気になってるな)

 床屋の前の踏み切りを横断したときには、6枚目に入っていた。

【僕は自分のことを呼ぶときに、普段しゃべってるときは“俺”を、頭の中で考えてるときは“僕”を、文章を書くときは“私”を使ってるんだ。知ってた?】

(知らないよ。…もーどうでもいい話ばっかりよくこんなに書けたな。こんなラブレターもらっても『かおりん』喜ばなかっただろうな)

 サッシ屋の看板のところを右に折れときには、もう2枚しか残っていなかった。

【じゃあ君のために書いた詩を読んで下さい】

(うあー男のくせに詩だって)

【告白】

(そのままだ)

【君のことが好きだ

僕のことより好きだ

どのくらいI LOVE YOU?】

(なぜいきなり英語?)

【ムツゴロウさんの動物に対する気持ちと同じくらい、いやそれ以上に好きだ

でも、ムツゴロウさんだとうそ臭いから

遠い空の神話さえ信じられぬほど好きだ】

(どういう意味?)

【僕が君に恋をした夜

気づかずに眠ったんだろう

星に願いをピノキオさん

どこへ向かうの流れ星

僕と君のように

好きですか

好きですよ

その一言が聞きたくて】

(なんだコリャやばいよ)

【どうも下手な文ですいません。でもこれが僕の気持ちですわかってくれました?】

(どうやってわかればいいの?)

 青い屋根の家の前を通り過ぎたときには、最後の2行になっていた

【さい。もしOKならば今度の日曜日にでもどっか行きませんか?映画とか動物園とかともかくどっか行きましょう。それじゃあ、また。SeeYa!】

(はー、やっと読み終わった。それにしてもこの男すごいな。よくこんなにどうでもいい事を書けるものだ。)

 かおりんは白い壁に黒い屋根の家の前でちょうど読み終えた。そこには「KUDO」というアルファベットが貼られた表札がかかっていた。

―MISSION COMPLETE―

(やった。ここがかおりんの家か。うちらの世界と同じだな。)

 かおりんは手紙を左手で制服の左ポケットにしまい、右手でドアを開けた。カバンは足元だ。

「ただいま」

(あ、やべ異世界だった。あいさつとか違うのか?)

「おかえり」

(ふーよかった同じか。あ、そうだ。かおりんの部屋って何処なんだ。母親に聞くわけにもいかないし。…まあ全部屋まわってみればいいか)

 かおりんは「おかえり」の部屋へ入った。

「かおり、今日は早かったわね」

(この女性は『かおりん』の母親だな)

「あ、うん。ちょっと部活が早く終わったから」

(こう言えば心配しないよな)

「そう」

(ほらね)

「あ、この洗濯物上持ってきなさい」

(上?上ってことは『かおりん』の部屋は二階にあるのか。…ありがとう、ママ)

 かおりんは学生カバンを賞状を受け取ったときのように持ち、その上に洗濯物をのせ、階段を上がった。二階には3つのドアがあった。そのうちの1つは一目見ただけでトイレとわかるものであった。残るドアは引き戸式とノブ式の2つだ。

(どっちだろう。でも自分の家なんだからどの部屋開けても大丈夫だよね)

 かおりんは左手だけで“賞状”を持ち、近い距離にある引き戸式の方を右手で開けた。

「なんだよ、姉ちゃん」

 その部屋には、ぶ厚いけどサイズの小さい漫画雑誌を読む男の子がいた。

「あ、いや別に用はないけど」

(まずいなミスったよ)

「じゃあ、出てってよ」

「はいはい」

(やっぱ女で引き戸はないよな)

 かおりんはドアノブ式の部屋に入った。

(あーなんか女の子の部屋の匂いがする)

 “賞状”を学習机の上に置き、それに付随している椅子に座った。

(はー疲れた。あ、これは)

 本立ての一番端に立っていたアルバムを抜き出し、開いた。たくさんの写真。それぞれの下に一緒に写っている人の名前が書いてあった。

(あ、これさっき私にラブレター渡した女子だ)

【天川とツーショット!!inディズニーランド】

(あの女の子の名前「天川」って言うんだ。『かおりん』の顔ってこんなのか…あ、この写真はさっきの母親と男の子が写ってる)

【お母さん、隆司とin熱海】

(お母さんって呼び方でいいんだ…。それであの男の子は「隆司」か。…うあこの女の子めちゃくちゃかわいい)

【裕子&天川とin吹奏楽コンクール】

(へー「裕子」さんか。でも、こんなかわいい子がお友達なんだ)

 かおりんはそれを読み終わると、アルバムを元の場所に戻し、立ち上がりながらその3つ隣にあった保健体育の教科書を取って、ベッドに倒れこみ、それを読んだ。

「…ナプキン、か」 

 かおりんは胸の膨らみの確認、膨らみのない股の確認、そしてセーラー服を着替えることもなく、一時の眠りについた。

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第4回

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『手紙』

文 字 を 集 め れ ば

星 空 に 見 え る

 

そ ん な 古 い 言 い 伝 え

信 じ て い た か ら

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第3回あとがき

[当時]
この作品の中で書きたかった台詞の一つが出てきました。
今までの男女入れ変わり作品だと
胸と股間の膨らみにしか興味がいかなかったけど、
男にとって本当に謎で、興味があって、不安なものっていうのは
このことだと思うんです。
だから、別に変態的な意味ではなく、
リアリティーを追求した結果の台詞なんです。
昔、ある人に自分が書いた文の意味を説明するのは最低だ。
って言われたんだけど、
この場合は自分の尊厳を守るためだから、
しょうがないですよね。

[現在]
痛々しいのを楽しんでくださいという感じです。
たまごっちとかポケベルとかあったね、
みたいな温かな目で読んであげてください。
笑えない笑いほど辛いものはないですが。。。
というか、あとがきの言い訳長過ぎ。
さすが勘違いインタビュー好きらしく、
りありてぃーとか言って、
いい痛さの演技してますね、この人は。

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