Scarving 1979 : Always Look on the Bright Side of Life

1979年生な視点でちょっと明るく世の中を見てみようかと思います。

蝶々

2004年05月31日 23時59分59秒 | 1分間スピーチ
今日は、蝶々でした。

会社のPCを触っていたら、覚えてないくらい昔に保存した、
大学時代に愛した、女性の写真を見つけてしまいました。

過去の全てを認めて、
前を向いていたはずの私でした。

けれど、その写真を見ただけで、
いとも簡単に、想いを引き戻されました。

そして帰宅した私は、女性を想い、
こんな文章を綴ったことを思い出しました。

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『蝶々』


半分の左手で包み込めるような、

ホンの少しばかりの幸福が、僕を変えた。

 

こんな気持ちは、どこで忘れていたのだろう。

 

“好き”なのか、“愛”なのか、

今は、“恋”と呼びたい。

 

その日の僕は、

いつもより優しさが前に出ていて、

どこか、からまわりしてた。

 

誘われて、舞い上がっていた、

イチョウ林の、蝶々のように。

 

蝶々は、翔ぶことなく、

土のクッションに変わっていく。

 

でも、僕は、そんなクッションにさえ、なれなかった。

 

アスファルトの上、

竹のホウキで流される、羽根だけの蝶々。

 

そんな、僕だったのに。

 

半分の右手が、ひとつに繋いだ。

冷たい瞳に、氷の僕を、温めてくれた。

 

瞳よりも、この手の温もりが、

心の百葉箱で、こうして表している。

 

そう、思えて。

 

誕生日には、

お互いの好きなもの、半分づつ贈ったよ。

 

喜びと一緒に、

僕のこと、もう少し知って欲しかったんだ。

 

わかり合えなくても、

わかり会えれば、それでいい。

 

それでいいんだ。

 

留守電には、

おめでとうの吐息だけ吹き込んだよ。

 

旅行中だって、

緑のペンで白いメモ用紙を染めていたから。

 

羽根をひとつに添えて、小さな波を待ってるよ。

触角を高く伸ばして、みっつで待ってるよ。

 

ありがとうの台詞が欲しいわけじゃないんだ。

ただ、半月振りの声を聴ければ、それでいい。

 

今は、それでいい。

 

そして、いつか。

 

「大好き」よりも、「愛してる」よりも、「I love you」よりも、

僕は、「I do love you」の言葉を、そっと贈りたい。

 

英米語学科の耳で聴くと、

笑われそうな発音だろうけど。

 

そう、囁いてみたい。

 

I do love you...

 

ありきたりな台詞だけど、

君に恋してる。

 

蝶々。

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実のところ私は、
過去の全てを認められてなんかいません。

過ぎ去った女性に想いを馳せる哀れな男は、
多くの人に笑われてしまうことでしょう。

もっと素敵だと思える女性にも出会いました。
次の恋を踏み出そうとも思いました。

それでも私に夏は来ないのです。

いつまでも心の中を、
あの日の蝶々が飛び続けているのです。

早く心の中を、君の知らない場所にしたいよ。

もう、いいよね。

「犬(dog)」第2回

2004年05月31日 17時00分00秒 | 物語
第1回
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「え、何?」

 女の子は、不思議そうに振り向いた。

(僕のことか?僕の体の、この女の子は『かおりん』と呼ばれているのか?ということは、やっぱり僕は転神したって事か。あの人の言ってたことは嘘じゃなかったんだ。よし、僕もこの世界を十分に楽しんで有名人になっちゃおう)

「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」

 かおりんが推測してる間に、女子の話は進んでいた。

「あ、ごめん。よく聞いてなかった」

(この女子の話は、情報源になりそうだからしっかり聞いておこう)

「もー、しょうがないわね」

 学生カバンの奥から“タバコのボックス”を取り出す女子。

「何、これ」

「さっき言ったじゃない、あいつから手紙、預かったって」

「あいつって?」

「ほら、いつも話してるじゃない。かおりんが去年1年8組の時に、クラスメイトだったあいつの事」

「ああ、あいつね」

(誰だかわかんないけど、一応話合わせとこう。ま、たぶん『かおりん』の女友達のことだろう)

「そ。それでね、あいつがあんたのこと好きなんだって。これ、ラブレターらしいんだ」

「え」

(え、ラブレターってことは、あいつって女の子じゃないの?)

 唖然とするかおりんの手に、おばあちゃんが親に内緒でこづかいを手渡す時のように、その手を包み込み、手紙を握らせる女子。

「じゃ、渡したからね」

「で、でも、こんなものもらっても困るよ」

(僕は『かおりん』という女じゃなくて、『高山比呂(たかやまひいろ)』という男なんだから)

「それならあいつに、はっきり言ってやればいいじゃない。“あんたのこと嫌いだから、こんな手紙もらっても迷惑なのよ”って」

「いや、そうじゃなくて、好きだとか嫌いだとか、僕にはわからないんだ」

(だって、相手の男のこと全然わからないもの)

「僕?なに珍しい言葉使ってんの。さては、うれしすぎて舞い上がってんでしょ」

「そ、そんなんじゃないよ」

(うれしいわけないじゃない、僕ホモじゃないんだから)

「また、あわてちゃって。もしかして、かおりんもあいつのこと好きだったの?」

「だから、本当に違うんだって」

(僕は『かおりん』のことなんかわからないよ)

「はいはい、わかりました。……あんた達、青春って感じだねー」

「もー」

(ほんっとうに、もー)

「それじゃあ私は、お役目も終えたので帰らせていただきます。ダーリンからのお手紙は、お家に帰ってから読みなよ。“絶対他の奴に見せるなよ”ってダーリンが言ってたから。わかった?」

「う、うん」

(え、いま家って言ったよな。『かおりん』の家って何処にあるんだろう?)

 学生カバンを閉める女子。

「それじゃあ、また明日」

 右手を上げて、その場を立ち去ろうとした女子。

(そうだ、この女子に『かおりん』の家の場所聞こう)

「ちょ、ちょと待って」

「何?」

 振り返って、右手を机の上に置く女子。

「ぼ、私の家って何処にあるんだっけ?」

「何言ってるの?いくらうれしいからって、家がわからなくなる位舞い上がることないでしょ」

(またそれか…。それなら)

「い、いやそういうことじゃなくて、一緒に帰ろうって意味なんだけど…」

「一緒に帰るって言っても、私とかおりんの家まったく正反対じゃない」

「そ、そうだったね」

(ちくしょう、作戦失敗か)

「そんなにうれしいなら、早速ダーリンとお手手つないで帰れば。あいつ、まだ写真部の部室にいると思うから。それじゃあ」

 今度は右手も左手も上げず、その場を早足で立ち去ってしまった女子。音楽室の片隅に、一人きりで不器用にコントラバスを持っているかおりん。

(次から次へと、どうなってるんだ。男からのラブレター、『かおりん』の家、どうしたらいいんだろう。……とりあえず、家に帰ることを考えよう。じゃあどうやって帰る?このままここにいれば『かおりん』の親が迎えにきてくれるかもしれない。だけど問題を起こすのはまずい。『かおりん』がいつもと違うことがすぐにわかってしまう。それに、知らない人に怒られるのも嫌だ。だったらどうする?……そういえば「泥酔者が意識のないまま家に帰れるのは、自律神経のおかげだ」って生物の岡田先生が言ってたな。ってことは、『かおりん』の意識がこの体の中に残ってるとしたら家に帰ってくれるってことか。でも、未成年の女の子が酒を飲むのはまずいよな。その他の手段で意識を無くすためには、…何も考えないって手もあるけど、人間何にも考えないことは無理だって言うから、…別のことを考えればいいのか。家に帰るって事以外を。でも何を考えよう?…いや、ただ考えてるだけじゃだめだ。すぐに家の事が気になってしまう。…そうだ!さっき貰ったラブレターを読んで帰ろう。ものを読んでる間ならば、家の事なんか考えないだろうし、こんだけ厚みがあるんだから、家に着くまでの間読みつづける事ができるだろう。本来こういうの読むのはよくないけど非常事態だからしょうがないよな。これ書いた人ごめん。僕、読んじゃいます)

 かおりんはその手に持ったコントラバスをケースにいれ、近くにあったミッキーマウスのキーホルダーのついた学生カバンを持ち、音楽室を出た。

(あ、そういえばさっき、男と帰れとか女子言ってたよな。その方が楽かな?でも一緒に帰るって事は付き合うのOKって事になるから『かおりん』の了解取らなきゃまずいよな。それに一緒に帰る途中、男にキスとかされたら気持ち悪いからな。やっぱ一人で帰るか。…それにしても『かおりん』って「かおり」っていう名前のあだ名だよな。もし留学生かなんかで『香林』なんていう名前だったらどうしよう。ラブレター読み終わって気づいてみたら背中から“ニーハオ”なんて言われて、北京郊外の精肉店の前かなんかにいたらどうしよう。でも、これは僕の世界の事だからこの世界には中国なんてないのかな?でも異世界に来たと思い込んでるだけで、ただ同じ世界の別人になってたってこともあるだろうしな。だって日本語使ってるしな…うーん、なんかこういうのも嫌なんだけど)

 かおりんは音楽室のドアの向かい側にある柱に寄り掛かって学生カバンをあさりだした。まず最初に“キティちゃん”のきんちゃく袋に入った弁当箱を取り出した。

(なんだ?このひげの生えた白ブタは。どういう趣味してるんだろう?それに、このねずみのキーホルダーといい、なんか動物愛護協会の会員なのかな?)

 一番上ででかい顔していた“白ブタ”を床に置いて、次にノートを取り出した。

(うあーやばいな『かおりん』字がすごいうまいよ。それにこの漢字のうまさは半端じゃないな。やっぱ中国人だよ)

 核心に迫るために学生手帳を取り出した。

(えーと、名前は…。あーよかった『工藤かおり』中国人じゃないや日本人だ。それで、ここは千葉県八街市って所か、やっぱり異世界だ、こんな地名知らないもの。八街中学校2年1組3番・・・・・・僕の3っつ下か)

 かおりんは学生カバンを整理すると下駄箱に向かった。運が良い事に下駄箱は音楽室の隣にあったので、探す手間が省けた。そして手帳に書いてあった番号の所にあった黒い革靴をはいた。そして手紙を開いた。

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第3回

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『波』

波 が

そ っ と

で は な く

ど っ と

押 し 寄 せ て き て も

僕 は

ほ ん の 少 し だ け

下 を 向 く か も し れ な い

け れ ど

自 分 の 足 で

歩 い て

み せ よ う

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第2回あとがき

[当時]
説明的台詞(ひとりじょうず)が長すぎて
読みづらくなってしまいました。
でも、あれはあれでしょうがないんじゃないかと思うんです。
自分があの立場に立ったら?
…そう思うと、(確かに読者用の余分なものがあるものの)
どうしてもああいう風に考えざるをえないような気がします。

[現在]
やっぱり若い。さすが18歳。
なによりもあとがきが痛々しい。
これを書いた7年前、キティちゃんは枯れたキャラクターでした。
復権した今は今で違う意味を持っていますが、
笑いというのは時代背景が反映される難しいものです。

飛鳥涼詩集「オンリー・ロンリー」

2004年05月31日 02時11分05秒 | 音楽
時間潰しに寄った荻窪のBOOKOFF。

何気なく棚を見ると、見覚えのある言葉があり、
気付いたら私の手の中に、それはあった。

飛鳥涼詩集「オンリー・ロンリー」。

私が10年来探し求めていた、幻の本である。

それと出会えた。

この喜びをどう表現しようかと思い巡らす、
その思いの巡らせさえも喜びに感じる。

私は小説が嫌いであるが、
綺麗な言葉が、テンポ良く配置された、
そんな散文詩を好む。

やがてこの本を読み終えたとき、
私の中にある言葉の壁が、ひとつ崩れ落ちるだろう。

そして、ひとつの目標が達成された今、
次に出会うのは、生涯をかけて愛すべき人であろうか。

今回のように、出会いは偶然に急に訪れる。

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あんまり今日が退屈なので
どんよりひろがる雨雲の街をぶらぶらしていたら
通りすがりの恋につまずいてころんだ

恋はいつでも突然すぎて
よける間もなく足を取られてしまう

言い換えれば
恋とはするものじゃなく
つい してしまうもの

そう
気づいた時にはしてるもの

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恋することは 誰でも出来る
愛することは 大変だ