この作品については、昨年からずっと楽しみにしてましたが、
5月8日にようやく
チネチッタ川崎で公開されるということで、
初日から観てまいりました。
いやはや待っていた甲斐があるくらい、
ホントに面白い作品でした。
私は大好きです。
CM撮影のためにひとり訪日して、
言葉の通じない日本のスタッフに振り回される、
結婚生活25年目のハリウッドの元大スター。
カメラマンの夫について訪日したけれど、
夫は仕事に出かけてしまい、なにもすることのない、
結婚生活2年目の若妻。
このふたりが体験する日本文化に対する戸惑い、疎外感と、
ふたりの心の交流をコミカルに、でも穏やかに描いた作品です。
海外では日本人が日本語を話す場面でも、
あえて字幕なしで上映され、
ふたりと同じように未知なる日本を体験することが出来て、
それが反響を呼んだそうです。
ということで、
出来る限り日本を知らない外国人の気持ちで観ると、
より面白く感じられます。
もちろん日本人の気持ちのままで見ても、
ごく普段通りの日本が画面の中にあり、
素直に笑うことが出来ます。
映画の演出のために作り込んだ街ではなく、
あえて普段生活する人達がカメラに映り込んでくる街中で、
とても好感が持てます。
そんな、私達には普通であり、外国人には異質な日本を、
外国人であるふたりの視点で見ることになるのですが、
ひとりでいる場面には不安感があり、
ふたりでいる場面には安心感があるのです。
ひとりでいるときには、日本を知っている私達でさえ、
孤独を感じ、どうにもドキドキ緊張した感覚になります。
ふたりでいると、その緊張感が解け、
異質だった街並みは、ふたりの背景となり、
素直に楽しむことが出来るようになります。
それでいて、同じ外国人同士でも、
ふたりがふたり以外の人と接し合う場面では、
とても違和感があります。
この感覚に関して、目に映る演出として、
外国人同士以外については、
特別なにかをしているわけではないのですが、
言葉では表現できない空気感を観客に感じさせる、
この演出は素晴らしいです。
また、なにも演技をしていないと思わせるくらい、
自然な演技も素晴らしいです。
ビル・マーレイ好きとしては、
ぜひともこの演技でアカデミー賞を受賞して欲しかったです。
自然を演じることの難しさと言ったら。。。
なんにしても、この作品をつくった、
ソフィア・コッポラ監督は天才である、
と断言してもいいでしょう。
かの『
2001年宇宙の旅』は、
宇宙旅行ドキュメント、
と呼ばれたこともありました。
この作品についても同様に、
言語も文化も未知なる日本をさまようドキュメント、
と呼んでもいいのかもしれません。
人間の感情の移り変わりを、
ドキュメントレベルまで客観視して撮ることが出来る、
いわゆる神の視点で演出が出来るということは、
私的に
キューブリックの跡を継ぐ存在になるかもしれません。
こうなったら、
AIR好きでサントラだけ持ってる、
前作『
ヴァージン・スーサイズ』も観なくてはなりませんね。
とにもかくにも、観たい映画がないな、とお悩みの方、
また、どこか旅行に行ってみたいけど時間がないな、という方、
どうぞ、この作品を観てください。
ホントに、とてもとても面白いです。
全く新しい経験が出来ます。
やっぱり映画って面白いものだな、
と、強く感じさせられました。
それで僕も、風をあつめて~♪