民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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説き語り「源氏物語」 村山 リウ その4 夕顔

2015年11月07日 00時13分42秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その4 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 夕顔―――灼熱の恋のはかなさ

 ある夕暮れ、偶然に始まったひと夏の恋。夕顔の花にも似て短くも激しく燃え、唐突に終わりを迎える。もっとも哀しくコケティッシュな女性。

 はかないといえば、これほどまでにはかない愛はないでしょう。夏の夕暮れ、お互いの存在を知り、結ばれる。そして、月の美しい秋の夜、はじめて素顔を見せあう。けれどもそのときはまた恋の終わりでもあったのです。灼熱の恋は一瞬にして、女性の死で終わりを遂げてしまったのですから。十七歳の光源氏と二十歳の夕顔の恋は、夕暮れに咲いて散る夕顔の花に似て、あまりにもはかないものでした。

説き語り「源氏物語」 村山 リウ その3 六条御息所

2015年11月05日 00時15分46秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その3 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)―――誇りゆえ燃える嫉妬の炎(ほむら)

 才色兼備のサロンの女王。生霊(いきすだま)となるまで源氏を愛して愛しぬいた、知性や教養でも抑えきれない激しい愛。源氏には気のおける恋人。

 愛して愛しぬいて、いつしか魂が身からはなれて生霊(いきすだま)となってしまう、それほどに激しい愛とは、どんな愛なのでしょうか。愛の尊さと悲しさをきわめた愛。極限の愛とでもいったらよいでしょうか。
 物の怪になるほどまでに源氏の君を愛した女性、それは六条御息所でした。

説き語り「源氏物語」 村山 リウ その2 葵の上

2015年11月03日 00時02分22秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その2 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 葵の上―――愛のない結婚の哀しさ

 正式な結婚で結ばれた夫婦も、愛がないとその生活は冷えびえとした日々でしかなく、心が通うのは残酷にも葵の上の死の直前のこと。

 愛のない結婚が、どんなに不幸せなものか、昔から、私たちはいくつもの悲劇を目にしています。形だけの結婚なんて、と今では思いがちですが、結婚に描く夢が大きければ大きいほど、不幸せとも隣り合わせなのかもしれないのです。
 そんな愛のない結婚のさびしさ、やりきれなさ、悲劇を、源氏と葵の上の結婚は私たちに教えてくれます。(P-32)

説き語り「源氏物語」 村山 リウ その1 藤壺

2015年11月01日 00時31分20秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その1 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 藤壺―――禁断の恋

 源氏はわが子、許されないと知りつつ燃え上がる恋。その命がけの愛を貫いた瞬間から罪を背負う。源氏の母代(ははしろ)であり、永遠の恋人。

 愛とは、人が人を愛するとは、いったいどんなことなのでしょうか。そして、愛するゆえにもたらされる幸せとは。いつの世も人は幸せを求めて人を愛そうとしているに違いありません。
 けれども愛の激しさは、いつしか本人にも想像もつかぬところへ流れ着いていきます。源氏と藤壺の愛もそうでした。知性も教養もこれ以上は望めないまでにそなえた二人。それなのに二人の愛は生きている限り悩み、苦しまなければならないものを残してしまう。愛に翻弄された二人です。(P-17)