民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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説き語り「源氏物語」 村山 リウ その9 明石の上

2015年11月19日 00時07分56秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その9 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 明石の上―――中流ゆえの哀しい愛にたえて

 中流の身を厳しく受けとめ、さらに源氏に人間として対等の愛を求めた女性。品性と母としての強い愛で結局安定した人生を送ります。

 愛し、愛されて真実の愛に生きるものは、愛の前に平等です。愛に、身分の差や貴賎があろうはずはありません。けれども愛する二人に身分の差があれば、その真実が通らなかった時代がありました。今でもどこかにあるかもしれませんが・・・。
 その時代、身分の高いことがすべてに優先する時代に、中流の身分の自分を厳しく受けとめ、さらに対等の愛を源氏に求めた女が、明石の上です。彼女は源氏の愛を受けた女の中で、もっとも身分の低い女の一人です。にもかかわらず幸せな人生をまっとうしました。知性と、母としての強い愛で。


説き語り「源氏物語」 村山 リウ その8 槿(あさがお)の君

2015年11月17日 00時34分32秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その8 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 槿(あさがお)の君―――プラトニック・ラブを貫いて

 葵の上亡き後の正妻候補のひとり。結婚が女の幸福を保証しないと考えるこの知性の持ち主はついに源氏の求愛を拒み通す源氏のいとこ。

 源氏の君ほどの人に思いをよせられ求愛されながら、最後まで拒みとおした女性がいます。愛のつらさと男に依存して生きていくつらさを、見抜いていたからこそのことでした。
 その女性を、 槿(あさがお)の君といいます。源氏に執心されながら、とうとう一度もちぎりを結ぶことなく、毅然と生き抜いた女君です。

説き語り「源氏物語」 村山 リウ その7 朧月夜の君

2015年11月13日 00時02分22秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その4 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 朧月夜の君―――奔放な愛を生きて

 皇太子妃に内定しながら、源氏との危険な愛の境地を開いてゆく、才気煥発な美人。心ならずも源氏失脚のきっかけとなる恋の相手。

 紫式部は、源氏物語の中に実にさまざまな女の生き方、あり方を描いています。愛の姿ひとつをみてもそれぞれに違っています。ただ、描かれた時代ゆえに、受身の愛、男に翻弄される愛が多いのはしかたないことです。ところが、そんな中で、愛されるだけが喜びではなく、愛しきる喜びに生きた女もいるのです。
 朧月夜の君、愛される以上に愛し、自分で愛の境地を開いていった女です。

説き語り「源氏物語」 村山 リウ その6 空蝉と末摘花

2015年11月11日 00時05分04秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その6 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 空蝉と末摘花―――個性的な中流の女たち

 決して美人ではないけれど、賢さも洗練されたセンスも心がけしだい。ともに中流の女性ながら、その生き様は自ずと違ってきます。

 女とは、女の心のあり方とは、いったいどんなものなのか。紫式部はいつも心の中で自分に問うていたのではないでしょうか。本人しだいで賢さも、洗練されたセンスを持ち合わせることもできれば、何もできずに終わってしまうこともある。そんな女の生き方とは―――。
 源氏がふとしたでき心でかかわりを持った二人の女性、空蝉と末摘花はともに身分は中流貴族で、同じ時代に生きたのですが、その生きようはあまりに違っておりました。


説き語り「源氏物語」 村山 リウ その5 若紫

2015年11月09日 00時10分06秒 | 古典
 説き語り「源氏物語」 村山 リウ その5 講談社文庫 1986年(昭和61年)

 若紫―――マイ・フェア・レディ

 愛らしく聡明な少女を自分色に染め上げる。それは源氏にとって藤壺のような女性をつくること。期待に応え理想的な女になってゆく。

 まだ幼くて、どんな色にも染まっていない少女。けれども成人したときには、たいそう美しい女性になるだろうと確信できる少女。そんな少女を自分の手で自分の好みに染めあげてみたい、というのは多くの男性の共通した願いかもしれません。”マイ・フェア・レディ”といったらよいでしょうか。