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「無名の人生」 その5 渡辺 京二

2018年02月06日 00時14分36秒 | 生活信条
 「無名の人生」 その5 渡辺 京二  文春新書 2014年

 序 人間、死ぬからおもしろい その5 P-13

 太宰治は、『二十世紀旗手』に「生まれてすみません」と記しました。その感覚は太宰流の自虐的な意味だけではなく、自分に対する慎ましさみたいなものを表現しています。そしてその慎ましさを、ある時代までの人間はみんな持っていたのです。

 『苦海浄土』の著者で詩人の石牟礼道子さんの文学の根本には、小さな女の子がひとりぼっちで世界に放り出されて泣きじゃくっているような、そういう姿が原形としてあります。一個の存在が世の中に向かって露出していて、保護してくれるものがない、この世の中に自分の人生が露出していて誰も守ってくれないところから来る根源的な寂しさ――それがあの人の文学の中核なのです。


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