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「附子(ぶす)」 狂言

2014年04月18日 00時32分32秒 | 伝統文化
 「絵で見てわかるはじめての古典」八巻  能・狂言・歌舞伎  監修 田中 貴子

 狂言「附子(ぶす)」

 太郎冠者(かじゃ)、次郎冠者は、主人から「そこから吹く風に当たっても死ぬほどの猛毒」
という附子を預けられます。
ところが、どうしても中が見たくなって、こわごわ附子の入った入れ物のふたを開けてしまう二人。
すると中には毒ではなくおいしそうな水飴が!二人はつまみ食いして全部食べてしまいます。
困った二人は、主人の大切にしている掛け軸や茶碗をこわし、帰って来た主人に
「死んでおわびをしようと、附子を食べましたが死ねません」と言い訳をするのでした。

 太郎冠者とは、狂言の演目にの中に出てくる代表的な役で、大名などの使用人のこと。
気のよいお調子者的な愛すべきキャラクターです。

 附子(ぶす)とはトリカブトという植物の根を乾かして作る猛毒のこと。

 原文

 主人「南無三宝(なむさんぽう)、秘蔵の台天目までみじんにしを(お)った。
おのれら両人生けておく奴ではないぞ」
 太郎「とても生けておかれまするまいと存じ、附子(ぶす)なと(ど)食(く)て
死な(の)うと思うて、な(の)う次郎冠者」
 次郎「オオ」
 主人「これはいかなこと、附子まで皆にしを(お)った。さてもさてもにくい奴でござる」
 太郎「一口食へ(え)ども死なれもせず」
 次郎「二口食へ(え)どもまだ死なず」
 太郎「三口四口(みくちよくち)」
 次郎「五口(いつくち)」
 太郎「十口(とくち)あまり」
 二人「皆になるまで食うたれども、死なれぬことのめでたさよ」

 現代語訳

 主人「びっくりした、大事な天目茶碗(茶道具)をあのように割って、
おまえたち、ただではおかないぞ」
 太郎「こうなったら生きてはいられないと思って、附子を食べて死のうと思ってなあ、次郎冠者」
 次郎「おお」
 主人「これはどうしたことか、附子まで全部なくなっている。いやまったく、にくいやつだ」
 太郎「一口食べても死ぬことができず」
 次郎「二口食べてもまだ死なず」
 太郎「三口、四口(みくち、よくち)」
 次郎「五口(いつくち)」
 太郎「十口(とくち)以上」
 二人「みんななくなるまで食べたけれども、死ぬことができないなんて、なんとありがたい」

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