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「手仕事の日本」 柳 宗悦 その2

2014年03月25日 00時31分46秒 | 民話の背景(民俗)
 「手仕事の日本」 柳 宗悦(やなぎ むねよし) 著  ワイド版 岩波文庫 2003年

 後記 P-239

 この一冊は若い方々のために、今までよく知られていない日本の一面を、
お報(し)らせしようとするのであります。
ここでは手仕事に現れた日本の現在の姿を描くことを主眼としました。
それは三つのことを明らかにするでありましょう。

 第一は手仕事が日本にとって、どんなに大切なものだかを語るでしょう。
固有な日本の姿を求めるなら、どうしても手仕事を顧みねばなりません。
もしこの力が衰えたら、日本人は特色の乏しい暮らしをしなければならなくなるでありましょう。
手仕事こそは日本を守っている大きな力の一つなのであります。

 第二に、この一冊は日本にどんなに多くの手仕事が今なお残っているかを明らかにするでしょう。
昔に比べたらずっと減ってはいますが、それでも欧米に比べますと、
遥かに恵まれた状態にあることを見出します。
それ故この事実を活かし育てることこそ、国民の賢明な道ではないでしょうか。

 第三には地方的な郷土の存在が、今の日本にとってどんなに大きな役割を演じているかを
明らかにするでありましょう。
それらの土地の多くはただに品物に特色ある性質を与えているのみならず、
美しくまた健康な性質をも約束しているのであります。
私たちはそれらのものを如何に悦びを以って語り合ってよいでありましょう。

 吾々はもっと日本を見直さねばなりません。
それも具体的な形のあるものを通して、日本の姿を見守らねばなりません。
そうしてこのことはやがて吾々に正しい自信を呼び醒まさせてくれるでありましょう。
ただ一つここで注意したいのは、吾々が固有のものを尊ぶということは、
他の国のものを謗るとか侮るとかいう意味が伴ってはなりません。
もし桜が梅を謗ったら愚かだと誰からもいわれるでしょう。
国々はお互いに固有のものを尊び合わねばなりません。
それに興味深いことには、真に国民的な郷土的な性質を持つものは、お互いに形こそ違え、
その内側には一つに触れ合うもののあるのを感じます。
この意味で真に民族的なものは、お互いに近い兄弟だともいえるでありましょう。
世界は一つに結ばれているものだということを、かえって固有のものから学びます。

 後略

 昭和18年正月  柳 宗悦



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
木版画 (cocoyo)
2014-03-25 19:08:40
横浜美術館で開催中の「魅惑のニッポン木版画」展へ行って来ました。
中でも江戸~明治の生活の中に息づく精緻な木版画はとても感動しました。
千代紙、うちわ、熨斗紙、広告、すごろく、足袋などの型紙…
時にユーモアを孕み、実用の中に美しさを求め、その頃生きた日本人に思いを馳せて嬉しくなりました。
日本の文化はすごいですね。
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RE木版画 (akira)
2014-03-25 22:17:21
 > 「魅惑のニッポン木版画」展へ行って来ました。

 すてきな時間を過ごせたようでよかったですね。
近ければわたしも行きたいです。

 >日本の文化はすごいですね。

 ほんと、すごいと思いますね。
わたしが小さい頃はまだ「日本の文化」が残っていたけど、
今はほとんどなくなってしまいましたね。
下駄は靴にかわり、桶はプラスティックにかわってしまった。
人が作ったものだという感覚がなくなってゆく。
モノを大事にしなくなるのも仕方ないですね。
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