「ねずみのすもう」 日本の昔話 瀬田 貞二 再話 おはなしのろうそく 18 収録
あるところに、ろくにその日のけむりもあげられないほど、
びんぼうな、じいさんとばあさんがあった。
ある日、じいさんが山へしばかりにいくと、おくのほうから、
デンカショ、デンカショ
という声がきこえるから、はて、なんだろうとおもって、その音をたよりにいってみると、
森のあき地で、ねずみが二ひき、すもうをとっているところだった。
木(こ)のまにかくれて、よくよくみると、
こちこちにやせたやせねずみが、じいさんの家のねずめで、
ころころにふとったこえねずみが、村の長者どんの家のねずみだった。
そして、二ひきのねずめが、
デンカショ、デンカショ
と、かけ声をかけて、とっくんであそんでいるのだが、じいさんとこのやせねずみのほうが、
まるでよわくて、長者どんとこのねずみに、すてん、すてんとなげられていた。
それをみて、じいさんは、かわいそうになって、家にかえると、ばあさんにわけをはなして、
「うちのねずみがかわいそうだから、もちでもついてくわせて、力をつけてやっとくれ」
と、たのんだ。
そして、じいさんばあさん、力をあわせて、もちをついて、
そのもちを、とだなのなかにいれておいた。
さて、あくる日、じいさんはまた、山へしばかりにいくと、きのうのように、
デンカショ、デンカショ
と、かけ声がきこえてきた。
その音をたよりに、森のあき地にいってみると、また、きのうのように、
ねずみたちがすもうをとっていた。
じいさんが、木(こ)のまから、そっとみると、じいさんとこのねずみと、
長者どんとこのねずみが、もみあって、なかなかしょうぶがつかないので、
じいさんは、こっちで、
「どっこい、どっこい」
と、そっと声がけして、気をいれているうちに、じいさんとこのねずみが、
「えっ!」と、力をだして、長者どんとこのねずみを、すてんと、なげてしまった。
そこで、長者どんとこのねずみが、
「たまげたぞ、力のでるほう、おしえろや」
と、たのんだところが、じいさんとこのやせねずみは、
「そりゃ、わけねえことだ。おら、じいさん、ばあさんから、力もちこさえてもらって、
それをくったから、こんなにつよくなったのさ」
「それじゃ、おらもいくから、ごちそうしてくれろ」
「でも、おらとこのじいさんばあさん、びんぼうだから、めったにもちなどつけねえさ。
もし、おめえが長者どんのぜに金でももってきてくれたら、ごちそうしてやろう」
「そいじゃ、そうする」
じいさんは、ねずみたちの話をきいてかえると、
また、ばあさんに、山でみききしたことをはなして、
そのばんも、もちをついて、二ひきぶん、とだなのなかにいれておいた。
ばあさんは、そのそばに、赤いふんどしを二(ふた)すじ、そえておいた。
あくるあさ、じいさんとばあさんは、
「きのうは、だいぶごそごそしていたども・・・・・」
と、いいながら、とだなをあけてみると、もちとふんどしはなくて、
そのかわりに、ぜに金が山のようにおいてあった。
それから、ふたりが、山へでかけていくと、いつもより声たかく、
デンカショ、デンカショ
と、かけ声がきこえてきた。
木(こ)のまからそっとのぞくと、二ひきのねずみは、おなじように赤いふんどしをしめて、
げんきにかけ声をかけてとりくんでいたが、じいさんとこのねずみも、長者どんのねずみも、
どっちもひくことなく、いくらとっても、しょうぶがつかない。
じいさんもばあさんも、また、あしたも、すもうをみせてもらうべ、と、いってかえったが、
長者どんのねずみが、まい日もってくるぜに金で、ずいぶんな金もちになったということだ。
おしまい
あるところに、ろくにその日のけむりもあげられないほど、
びんぼうな、じいさんとばあさんがあった。
ある日、じいさんが山へしばかりにいくと、おくのほうから、
デンカショ、デンカショ
という声がきこえるから、はて、なんだろうとおもって、その音をたよりにいってみると、
森のあき地で、ねずみが二ひき、すもうをとっているところだった。
木(こ)のまにかくれて、よくよくみると、
こちこちにやせたやせねずみが、じいさんの家のねずめで、
ころころにふとったこえねずみが、村の長者どんの家のねずみだった。
そして、二ひきのねずめが、
デンカショ、デンカショ
と、かけ声をかけて、とっくんであそんでいるのだが、じいさんとこのやせねずみのほうが、
まるでよわくて、長者どんとこのねずみに、すてん、すてんとなげられていた。
それをみて、じいさんは、かわいそうになって、家にかえると、ばあさんにわけをはなして、
「うちのねずみがかわいそうだから、もちでもついてくわせて、力をつけてやっとくれ」
と、たのんだ。
そして、じいさんばあさん、力をあわせて、もちをついて、
そのもちを、とだなのなかにいれておいた。
さて、あくる日、じいさんはまた、山へしばかりにいくと、きのうのように、
デンカショ、デンカショ
と、かけ声がきこえてきた。
その音をたよりに、森のあき地にいってみると、また、きのうのように、
ねずみたちがすもうをとっていた。
じいさんが、木(こ)のまから、そっとみると、じいさんとこのねずみと、
長者どんとこのねずみが、もみあって、なかなかしょうぶがつかないので、
じいさんは、こっちで、
「どっこい、どっこい」
と、そっと声がけして、気をいれているうちに、じいさんとこのねずみが、
「えっ!」と、力をだして、長者どんとこのねずみを、すてんと、なげてしまった。
そこで、長者どんとこのねずみが、
「たまげたぞ、力のでるほう、おしえろや」
と、たのんだところが、じいさんとこのやせねずみは、
「そりゃ、わけねえことだ。おら、じいさん、ばあさんから、力もちこさえてもらって、
それをくったから、こんなにつよくなったのさ」
「それじゃ、おらもいくから、ごちそうしてくれろ」
「でも、おらとこのじいさんばあさん、びんぼうだから、めったにもちなどつけねえさ。
もし、おめえが長者どんのぜに金でももってきてくれたら、ごちそうしてやろう」
「そいじゃ、そうする」
じいさんは、ねずみたちの話をきいてかえると、
また、ばあさんに、山でみききしたことをはなして、
そのばんも、もちをついて、二ひきぶん、とだなのなかにいれておいた。
ばあさんは、そのそばに、赤いふんどしを二(ふた)すじ、そえておいた。
あくるあさ、じいさんとばあさんは、
「きのうは、だいぶごそごそしていたども・・・・・」
と、いいながら、とだなをあけてみると、もちとふんどしはなくて、
そのかわりに、ぜに金が山のようにおいてあった。
それから、ふたりが、山へでかけていくと、いつもより声たかく、
デンカショ、デンカショ
と、かけ声がきこえてきた。
木(こ)のまからそっとのぞくと、二ひきのねずみは、おなじように赤いふんどしをしめて、
げんきにかけ声をかけてとりくんでいたが、じいさんとこのねずみも、長者どんのねずみも、
どっちもひくことなく、いくらとっても、しょうぶがつかない。
じいさんもばあさんも、また、あしたも、すもうをみせてもらうべ、と、いってかえったが、
長者どんのねずみが、まい日もってくるぜに金で、ずいぶんな金もちになったということだ。
おしまい