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梅佳代-『うめ版』

2007-09-19 18:39:26 | 生活・教育・文化・社会
 いくつかの用事で街へ出て半日費やした。ついでに駅ビルの書店に立ち寄ったら、『うめ版』があった。写真集のコーナーだが、平積みになっていたので、さっそく手に入れた。
 家にいる時は外食をしないのに、めずらしくとんかつを食べに入った店で開いてみた。

 ユーモアあふれる左ページの写真に対して、右ページにキャンプション代わりに写真のテーマの言葉を配し、その言葉の意味を『新明解国語辞典』から掲載している。
 日常の暮らしにある人間の営みと行為を写真に切り取り、それにテーマがつくと写真に力が吹き込まれ、そうとうなパワーとなって訴えてくる。写真をテーマの切り口でも見るとユーモアにとどまずシリアスにもなり、人間の多面性を見る思いがする。
 つい国語辞典の意味をすぐに読んでしまいがちになるが、テーマである言葉から写真を読み取り、気が向いてから文章を読むと写真が見事に本質をついているかのように思えてくる。なるほど、おかしぞ、こんな捉え方もできる、といったように本との対話ができる。
 たとえば、保育園にわが子を迎えに来た父親が、背広姿に前に子どもを紐で抱っこ、後ろにリュック右手に革鞄を持ちにっこり笑っている写真が、「鑑」ということばになる。つい辞典の記述も読みたくなるというもの。また、家の建売販売の客を待ってじっと座っている男のそばをこともなげに人が通っている人々のコントラスの写真が、「辛抱」となる。

 この本は企画とその編集の力がよい。目次に編集協力と企画・編集と記名があることからしても、そのことが理解できるというもの。
 梅佳代の写真に、当人もびっくりしているかもしれないパワーを吹き込んだ写真集である。製本紙質もいわゆる写真集のつくりをせずに、カジュアルである。値段を1400円に抑えてたくさん売りたい考えの編集ようだ。人間を一ひねり違った見方ができて、楽しくもあり考えさせられる、価値のある本になっている。

 *『うめ版』 梅佳代著 三省堂 07年7月25日発行

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