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子育て支援を担う保育現場では

2006-07-02 15:02:58 | 子ども・子育て・保育
       
 89年に合計特殊出生率が1.57と発表され、1.57ショックといわれた。子どもの減少が、経済、労働、社会保障(年金など)などに影響を与え、日本の将来像が描きにくくならないための、政策展開が必要になった。
 少子化対策のために子育て支援として、94年の「エンゼルプラン」から始まって、現在展開している「子ども・子育て応援プラン」(04年から)と、途切れずに様々な施策を展開してきた。しかし事態は変わらず、05年は、出生率が最低の1.25で出生人口が106万2604人と、人口減少に転じた。
 あるべき人口を定めることは、結婚と出産、家族のあり方という個人の権利を、国が管理することになりかねない。さりとて人口のなりゆきは、国のあり方を考える重要な条件であるので、看過できないことでもある。
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 子育て支援は、子どもを産み育てやすい環境づくりのための施策を展開することである。その施策は、経済的支援、保育環境、労働環境などの分野がある。ここでは子育て支援と保育環境、とくに保育現場の保育条件についての課題を考えてみる。
 保育所は、現行の保育指針(00年改訂)から、子育て支援とのかかわりで機能の拡大を大幅にはかった。病気の子どもの保育、虐待などへの対応、障害児保育、延長保育、夜間保育、一時保育、地域活動事業、保育に関する相談、家庭や地域との連携、地域活動などの事業である。
 また、子育て支援として保育が応え得ること(保育サービス)として、待機児童解消への取り組み、規制緩和による認可外保育施設(東京都の認証保育制度、横浜市の保育室制度など)による対応、幼稚園の預かり保育、さらに10月から新しい制度として認定こども園を発足させる。
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 これらは子育て支援として、親の要求すること全般にわたって実施されている。本来新しい事業が付加される場合は、それに必要な物的人的環境と条件が必要である。しかしその条件は用意されないばかりか、悪化しているのが現状である。
 保育所の運営は、児童福祉施設最低基準に示されている。職員配置では「保育士の数は、乳児おおむね三人につき一人以上、満一歳以上に満たない幼児おおむね六人につき一人以上、満三歳以上満四歳満たない幼児おおむね二〇人につき一人以上、満四歳以上の幼児おおむね三〇人につき一人につき一人以上とする。」(第33条)となっている。
 これは文字通り「最低基準」であり、保育のあり方と勤務や運営条件が困難なため、都市部の保育所では、様々な必要性から加配されてきた。たとえば0歳児が9人だと、基準の保育士3人に加えて1人の保育士と1人の保健職、というようにである。これとて保育や運営上ゆとりがあるわけではない。しかし90年代になってから「最低基準」を基に職員数を減らすことを実施している。
 さらに最近の顕著なこととして、大都市近郊の市では正規職員の採用を抑制し、臨時職員が増えている。取材したある市の保育所の例では、職員27人中正規職員が14で、臨時職員(パートも含む)が13人である。
 臨時職員は延長保育、土曜日保育等への対応もあるが、幼児クラスを1人で担任をしていることが常態化しているとのことである。その市では、子育て支援で掲げている延長保育(12時間保育)、土曜日の特別延長保育、一時保育、地域の子どもへの開放、公園に子どもを集めての「出前保育」、保育相談などの事業をおこなっている、とのことである。しかも待機児童ゼロ作戦への対応として、乳児は20%ぐらいの定員増をしているという。大都市への通勤している利用者の保育の、実態である。
 また山間部は、もともと「最低基準」の職員配置である自治体がほとんどである。保育時間が短い(基本が9:00~15:30など)、あるいはクラス人数が30人に達していないなどで、やりくりしている状況が多い。そういった地域で、乳児保育をするようになってきている。年齢ごとのクラスにするほどの人数でないため、いわゆる混合クラスとなる。それはよいとして、自治体単独の財政持ち出しをしないために「最低基準」の職員配置であり、きわめて厳しい保育条件のため、子どもに行き届いた保育をするのは困難となる。
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 保育士としての誇りで仕事の質を低下させないための努力をしていても、いかんせん個人の力では限界があることは明らかである。子育て支援として、至れり尽くせりの保育サービスの施策を掲げているが、それを実行する財政がともなわないため、質的劣化の道を歩んでいるのが、実態ではなかろうか。
 また、子どもの育ちのあり方として12時間の保育、土、日の保育、正月の保育、あるいは夜間保育の一般化してよいのか等、大いに疑問である。子育て支援は目先の多様な保育サービスを並べるのではなく、根本は労働条件の改善であろう。シフトワークが30%であるが24時間型社会ではなく、朝食と夕食を家族で一緒に食べられるような暮らしを取り戻す社会へと転換することではないだろうか。
 現在展開している施策である「子ども・子育て応援プラン」を実施するために、政府と企業の真摯な実効性が問われているのである。


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