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想像力が活動にかりたてる

2007-04-27 21:50:52 | 子ども・子育て・保育
■この文章は、知人が本を出版するに当たって書いた推薦文です。

 普段のなにげないモノや空間が、いったん子どもの想像力をくぐると、大人には思いもよらない世界ができるものです。子どもにとってそれが「うそっこ」であっても、いや「うそっこ」だからこそ自分たちの思い通りになる、大人には壊して欲しくない世界なのです。
 そんな子どもの世界に共感し一緒に楽しめる大人にこそ、子どもは仲間のような親しみ持ち心をゆるします。さらに子どもの想像力をかりたてるしかけをしてくれる大人には、心をゆだねる信頼の念を持つものです。
 この物語の、らいおん組の子どもたちは、想像力を刺激され現実のモノと空間を宇宙にしてしまいました。宇宙を探検する子どもたちは、想像を共有しながら、それを冒険的活動にしていきます。
 子どもならではの想像力は、バーチャルリアリティー(仮想現実)とは違い、現実といったりきたりするので、活動にかりたてる力があります。
 作者○○さんは、子どもの想像力に共感してあそべるので、親しみを持たれるとともに、子どものそれに点火し活動にかりたてられるので、信頼される保育者でした。子どもから親しみと信頼を得られるのは、保育者として当たり前のようで、なかなかできないことです。それを可能にしたのは、持ち前の明るさと子どもに、自分の持っている子ども性を発揮できたからでしょう。
 多くの大人は、すまし顔で本来持っているはずの子ども性を、卒業させて封印しています。年輪のように加齢していくわたしたちは、その内側に子ども性を備えているはずです。保育者は、封印されている子ども性を発揮することによって、子どもから親しみと信頼を得ていく仕事です。子ども性を発揮できるには、子どもじみたつたないことをするのではなく、大人ならではの状況によって様々な自分を表現できる人間であらねばならないのです。
 子どもの想像力を引き出せる保育者は、自分を多様に表現できる表現者であることが必要です。子どもたちは、日々の保育者の表現するコミュニケーションによって育つからです。○○さんは、いくつかの芸術活動をしている教養人でもあります。その表現力の深さに裏打ちされたコミュニケーションによって、見え透いた「子どもだまし」でなく、子どもが理解しやすい楽しい活動をつくり出したのでした。
 この物語は○○さんが、保育園を必要とされるようになった時代からの、34年間の保育者としての実践から生まれたものです。子どもをめぐる環境が、デジタルが多くバーチャルリアリティーが増大しているとき、このような想像力が活動をつくりだす体験を、物語だけにとどめず、保育実践としても引き継がれていかなければならないのです。 

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