世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●前原・細野ら勝手に出ていけ 官邸側からの誘導、民主解党論

2015年11月15日 | 日記

 

日本人の底力
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●前原・細野ら勝手に出ていけ 官邸側からの誘導、民主解党論

前原、細野の民主党解体論は、おそらく、自分たちの政治家としての存在価値が危うくなったことによる仕掛けと解釈できる。ただ、海外逃亡のスケジュールを詰めこむに良いだけ詰め込み、逃げまくる安倍政権が憲法違反(奴らは解釈の違いと言っているが)までして、臨時国会を開かないのだから、永田町ネタが殆どなく、あちこちとほじくり返してパンツ泥棒でひと騒動していた状況だけに、マスメディアの政治部の連中にしてみれば、飛んで火にいる夏の虫並みの好材料、寄ってたかって弄りまわしている。

今や消滅の危機とさえ言われている民主党で、まともな役にも就いていない前原誠司にしてみれば、個人的にも存亡の危機に面していた。つまり、水面下の小沢一郎の裏工作が身を結び、共産党が『国民連合政府』などと云う構想をぶち上げたおかげで、岡田も目を白黒させただろうが、外野に置かれた前原誠司にしてみれば、生きた心地もしなかったに違いない。メディアへの露出が少なすぎると焦っていたのが実情だ。そこで、起こしたのが、口先介入政治は十八番なのだから、口先誠司たらんと行動するのは、彼の基本中の基本原理だ。

しかし、口先誠司だと知っていても、永田町ネタのないマスメディアの記者連中にしては、最高の餌だった。もうダボハゼ状態で入れ食い状態になっている(笑)。前原誠司は、テレビのニュース番組にも引っ張りだこで、もう有頂天だ。“共産党はシロアリだ”等と野田佳彦張りの嘘をかましている。共産党がシロアリなら、民主党や前原グループは蛆虫だろう(笑)。おそらく、松下政経塾出身者が、民主党の現執行部、岡田と枝野を突きまくっているのが真実だろう。現実には、マスメディアが取り上げている十分の一の力量もないものと思われる。

仮に松野や江田の維新と新政党作ったとしても、以前の“みんなの党”や“日本維新の会”のような第三局現象は起きないだろう。構造的には、市場原理主義、超親米体質、軍産複合企業体質なわけで、自民党の玉石混交よりも、より右寄りな連中の集団を想起させる。今は自民党内の反安倍勢力も、安倍官邸のあまりの強権支配に度肝を抜かれ、殻に閉じこもっているが、いずれ春が来たと思えば、ノコノコとリベラルな立場を取るだろうが、何せ「日本会議系」の勢力には、暴力辞さずの人間も多数いるだけに、政治生命の前に、生命そのものを奪われる恐怖を味わっているのだから、致し方ない部分もある。しかし、松下政経塾中心の彼らは、高市総務大臣よりも右派だ。

おそらく、裏官邸からの援護射撃もあるのだろうが、明らかに共産党の構想に度肝を抜かれて動きだした前原の動きだ。岡田と枝野が、共産党が提示した『国民連合政府』に一定の評価をしていることに焦ったのだろう。多分官邸も慌てている。江田にしても松野にしても、それ程政治力があるわけではないし、前原、細野に政治力がないのは、万人の知るところである。共産党が提示した「場合によれば、閣外協力も辞さない」に、民主党のコアは強く反応している。

前原は読売とのインタビューで≪なぜかというと自由党との合併が大きかった。小沢一郎さんという剛腕がいて『党名も民主党でいい』『政策も民主党のままでいい』とおっしゃった。小沢さんはおそらく軒先を借りて母屋を取るという自信があったのだと思うが、それぐらいの度量を持って、どうやって野党をまとめて自公の対抗勢力を作っていくか、これしか考えていない≫と言っている。そして、民主党を出ていく気はない。単に、問題提起だと言っている。昔の前原仙谷ライン時代と変わっていない。共産党の志位委員長の方が、よっぽど気風が良い。まさに、小沢一郎張りの勝負に出ている。

仮に本気であったら、事前に江田、前原、細野会談をするぞ、するぞと、マスコミに垂れ流すわけがない。検察のリーク以上に貧乏くさいが、あまりにも暇を持余していた永田町のメディアブローカーには美味しい政局話だったと云うだけだ。前原は、今頃になって、「理念や政策を一致させて」なんて幼稚園児のような事を言っている。理念や政策が一致しているのは日本会議や軍産複合企業との関係だろう。それでなくても「理念や政策を一致させて」が出来ないから、現存の政党があるわけだ。

明らかに、パワーがあり、インパクト抜群で、現実路線に近いのが、共産党の『国民連合政府』構想だろう。兎に角、理屈抜きに、立憲主義に徹した政治に戻ろう。つまりは、共産党から、民主主義の原点から出発し直しましょうと言われたのだから、如何に、現在の自民党や公明党、維新系の連中、民主党の連合頼り政党では、間違いなく民主主義の原点さえ違えている。

まあ、筆者の場合は、個人的に21世紀におけるデモクラシーの制度疲労。グローバル世界における、国の目指す方向は日本独自の道もあると思うが、その点は言い出すときりがないので、現時点では、前原らの、騒乱口出しにウカウカと乗らないことだ。まあ、枝野は、その辺は読んでいるだろう。そう期待する。

日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈
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●ネオコン+ウォール街代理人メディア 時事通信とWSJの悪さの検証

2015年11月14日 | 日記
海洋帝国興隆史 ヨーロッパ・海・近代世界システム (講談社選書メチエ)
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●ネオコン+ウォール街代理人メディア 時事通信とWSJの悪さの検証

WSJともあろう新聞社が、日本版とはいえ、安倍の寿司友・田崎史郎の時事通信のまさに典型的捏造世論調査の記事をそっくりそのまま掲載していたので驚いた。最近の守銭奴新聞・WSJ日本語版はどんな内容になっているのか覗いてみたら酷い、酷すぎる。まあ、日本国内の情報を掲載するのに時事通信を使うのは致し方ないとしても、時事引用情報も自己都合のつまみ食い。また、多くのコラムが安倍政権ヨイショな提灯記事に埋め尽くされていた。

逆に言うならば、ウォール街の望みを忖度して政治を行っている安倍の政治に応援歌をガナッテいるとしか思えない。つまり、安倍の政治は、安全保障であれ、アベノミクスであれ、ウォール街に超親和的政治をしていると云うことに他ならない。つまりは、安倍の政治は、アメリカ・ウォール街の為の政治であり、別に日本国民のための政治ではないと訝る現象だと云える。このことと同じことが、米国ネオコン勢力への貢献度においても手離しで安倍の戦争法案に理解を示している。こっちはアマゾンに握られたWPなのだろう(笑)。これも、逆から見れば、アメリカ・ネオコンの命じるままの政治が行われている証左である。

安倍の政治と云うものは、米国ネオコンとウォール街の連中の為に全力を尽くしていると云うことだ。日本と云う国の権力維持には、上述の二大勢力と親和的であれば良いわけで、別にホワイトハウスからの受けが良い悪いは、どうでも良い、と云うことになる。考えてみると、オバマ大統領自身が、フェイクな言動を演じているが、屋台骨を支えているのが、軍産複合企業とアメリカ金融勢力なのだから、同じ穴のムジナであり、目糞鼻糞の共演を演じている。まったくもって、情けない時代になったものだ。

せっかくWSJ日本語版のサイトを開いたので、目についた記事やコラムの見出しだけでも例示しておこう。そして、最後に、同志社大学学長で、最近再選を果たせなかった、悪徳学者・村田晃嗣の落選を嘆いているコラムを載せておく。そもそも、同氏を学長にしたこと自体が、同志社大学の大失敗であり、マスメディアにおいて露出度が多い学者などと云うものは、便利重宝な官僚制度のメッセンジャーであると云う事実を忘れた所業だったのだ。新戸部稲造もさぞかし嘆いているに違いない(笑)。

 WSJ日本語版が嬉々として≪野党統一候補、57%が「期待せず」=橋下新党も過半数は否定的—時事世論調査≫を載せたのには深い意味もあるかもしれない。時事通信が、今回の世論調査で、最も言いたかったのは、≪野党統一候補、57%が「期待せず」≫だと云うのは見え見えで、時事もWSJも、野党統一候補が成立することを、酷く怖れている表れなのだと解釈した。でなければ、まだ統一の影も形も見えない、“枯れ尾花”が存在すると云う設問を回答者に聞くこと自体が詐欺である。時事は世論調査設問詐欺まで実行している。

 ■目についた見出し
☆ アベノミクスの成果、実は思った以上…
☆ TPP合意で参加国の労働環境改善に期待
☆ 米、日本の軍事的役割拡大を支持―中国は懸念表明
☆ 【編集長インタビュー】広島に聞く「原爆投下を神に感謝」
☆ NY-DC結ぶリニア新幹線、米政府から初の補助金
☆ 【寄稿】同志社大学長選に見る日本の「言論の自由」
☆ 富の偏在、なぜ「貧富の差」より複雑なのか ‥等


≪ 野党統一候補、57%が「期待せず」=橋下新党も過半数は否定的—時事世論調査
時事通信の11月の世論調査で、来年夏の参院選に向けた民主党などによる野党統一候補模索の動きについて尋ねたところ、「期待しない」が57.3% と過半数を占め、「期待する」の26.2%を大幅に上回った。安倍内閣の支持率が持ち直しつつある中、野党勢力に対する国民の期待感が盛り上がりを欠く現 状が明らかになった。
 これに関連し、維新の党から分裂する形で新党「おおさか維新の会」を結成した橋下徹大阪市長らの政治姿勢について は、「支持する」が35.4%にとどまり、「支持しない」の51.7%を下回った。政党支持率は、おおさか維新が0.9%、維新の党が1.1%と、いずれ も低迷した。
 調査は6〜9日、全国の成年男女2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は63.1%。  ≫(WSJ/時事通信社)


尚、時事通信の世論調査の結果は、ねつ造ものだが、以下の調査結果も同日に公表している。以下、安倍内閣への支持率が大したことない結果の方をWSJはネグった模様なので、調査結果の本家本元も並行掲載すべきだと思う(笑)。

≪ 内閣支持4割回復=「1億総活躍」賛否拮抗-時事世論調査
時事通信が6~9日に実施した11月の世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比0・7ポイント増の40.5%で、4カ月ぶりに4割台に回復した。不支持率は同1.6ポイント減の36.1%。 ・内閣支持率は8月以降、安全保障関連法に対する批判などが響いて4割を切っていた。安倍晋三首相が今月初めに日韓、日中韓首脳会談を約3年半ぶりに行い、近隣国との関係改善に努めたことなどが支持率回復につながったとみられる。
 安倍内閣が重要政策に掲げる「1億総活躍社会」について聞いたところ、「支持する」は38.0%、「支持しない」は37.5%で、賛否がほぼ拮抗(きっこう)した。
 環太平洋連携協定(TPP)が日本経済にどのような影響を与えるかについて、「良い影響」とみる人は20.9%、「悪い影響」は15.8%だった。輸出入それぞれに複雑な利害が絡むため、「どちらとも言えない」が55.3%に上った。
  内閣を支持する理由(複数回答)は、「他に適当な人がいない」が17.1%と最も多く、「リーダーシップがある」12.8%、「首相を信頼する」9.7% と続いた。支持しない理由(同)は、「期待が持てない」17.5%、「首相を信頼できない」15.7%、「政策が駄目」15.6%の順だった。
  政党支持率は、自民党が前月比1.4ポイント減の22.8%、民主党が同1.5ポイント増の5.7%。以下、公明党4.3%、共産党1.8%などの順。分裂した維新の党は1.1%、新党「おおさか維新の会」は0.9%だった。
 調査は全国の成年男女2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は63.1%。  ≫(時事通信)


 ≪ 【寄稿】同志社大学長選に見る日本の「言論の自由」
反対意見封じ込めにリベラルな学識経験者が強硬手段

言論の自由の限界をめぐる衝突で混乱が生じているのは米国の大学だけではない。日本有数の名門大学のひとつでも、安倍晋三首相への支持を公言したこ とを背景に、誰あろう学長自身が同僚である教職員らによって退任に追い込まれる事態が発生したばかりだ。この騒動は日本の将来をめぐる、より深い国家的議 論を映し出している。
 
リベラルな学識経験者や活動家らが好むのは、日本は最も保守的な社会のひとつのままであるという論調だ。近年、彼 らの悪口雑言は安倍首相に向けられてきた。首相がリベラルな意見を抑圧し、かつ脅かしているという言い分だ。報道機関は圧力をかけられていると主張し、学 識経験者らは政府のさまざまな力が戦時中の日本に関する議論を封じ込めようとしていると警告する。
 
だが日本では、自由な言論を罰する ことは右派の特権ではない。先週行われた同志社大学の学長選挙で、現職の学長は再選を果たすことができなかった。議論の的となっていた安全保障関連法案へ の支持を先に公言していたためだ。敗れた村田晃嗣氏は日本での知名度が高く、尊敬を集める学識経験者であり、国民の知性だ。報道番組には欠かせない人物 で、粋な身なりの村田氏は外交政策と安全保障問題の専門家でもある。今年7月、数人の専門家らとともに衆院特別委員会の中央公聴会に出席した村田氏は安保 関連法案を支持する発言を繰り返した。

これを受け、同志社大の80人を超える教職員は村田氏を批判する声明を発表。自分たちは「平和を 希求する」としたうえで、「本学の学長職にある教授が公的な場で支持を表明したことについて、心から恥ずかしく思います」と言明した。村田氏には意見を述 べる権利があることへの言及はなく、安倍首相の法案が国民の議論に値する正当性をいくらかでも持っているという印象を与えるような内容でもなかった。

村田氏は同僚からの反論を歓迎し、同志社大には多くの意見を認める伝統があると述べた。その一方で、自由な意見交換に対する村田氏の強い思いを教職員らが 共有していないのは明らか。だからこそ衆院特別委での発言からわずか数カ月後の11月6日に実施された学長選挙で、村田氏を落選させたのだ。

日本の学術界はおおよそリベラルであることが知られているが、村田氏のケースにみる言論の自由をめぐる懸念は日本が抱えるより大きな問題を反映している。 根本にあるのは、日本がその過去と未来の両方にどう対峙していくのかという問題だ。安倍首相は、もはや日本は過去の行いのために永遠に「ざんげ」の状態に あり続けることはできないと決断した。首相は日本が過ちから学んだということを世界に示さねばならないと考えている。今現在の課題に日本は対応するという こともだ。

安倍首相は不必要に挑発的な声明を時折発することでそのことを示してきた。首相の周辺からはそれ以上に踏み込んだ言動も出ている。首相の全体的な政策を支持するウオッチャーの多くは、首相が米連邦議会上下両院合同会議で演説した際と、戦後70年の談話で、もっと直接的な謝罪と戦時中の日本の戦争犯罪に関する言及が欲しかったと思っている。

とはいえ、責任あるリーダーであれば誰でもそうだが、安倍首相は北朝鮮の核の脅威や威圧的な中国を含む、さまざまな脅威に対処する責任を負っていることは 否定できない。村田氏をはじめとする用心深い多くのウオッチャーは、日本に必要なものに対する安倍首相の判断に同意した。首相の安全保障政策に同意した人 を平和に対する敵だと批判することは、国益に関する責任ある真剣な議論を避けていることになる。同志社大の教職員が行ったことはこれだ。

言論の自由と学術的探求は左派・右両方の脅威から守られなければならない。ニューヨークに駐在する日本の外交官らは今年、米出版社のマグロウヒルに対し、世界史の教科書に書かれた戦時中の慰安婦に関する記述で、日本政府の立場をもっと反映させた内容に変更するよう求めた。日本研究者を含む200人を超える米国の学識経験者は、政府による操作や検閲、個人的な脅しを受けない歴史研究を求める公開書簡に署名した。
 
国内外のメディアは反対意見を強制的に封じようとしていると日本政府を非難するが、日本の文化的エリート層は、活動家に劣らない姿勢や、反対意見を黙らせ る強い手段を使おうという意志を見せている。村田氏を学長の座から引きずり下ろす中で、同志社大の教職員らは日本での自由な言論に伴う代償について身も凍るようなメッセージを送ることになった。村田氏の日本人および米国人の同僚らは、懲罰を恐れることなしに専門家としての意見を公表できるよう村田氏の権利を擁護する国際的な書簡に署名するだろうか?

  By MICHAEL AUSLIN  2015 年 11 月 13 日 10:22 JST
*筆者のマイケル・オースリン氏はアメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長で、ウォール・ストリート・ジャーナルのコラムニストでもある
 ≫(WSJ日本語版)

なぜ大国は衰退するのか ―古代ローマから現代まで
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●詐欺官僚、出鱈目尽くし安倍政権 見るも無残な民主党

2015年11月14日 | 日記
ドゥルーズの哲学 生命・自然・未来のために (講談社学術文庫)
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●詐欺官僚、出鱈目尽くし安倍政権 見るも無残な民主党

“法の網をくぐる”と云う言葉は、一昔前なら、詐欺師や悪徳弁護士に向かって放たれる言葉だが、少し前、今でもだが橋下徹の専売特許だとばかり思っていた。しかし、現在に至っては、違法性が明確に示されていなければ“やったもの勝ち”と云う風潮が、日本と云う国の中枢で起きている。沖縄辺野古新基地問題では、民間が行政の決定などに不服を審査して貰う制度を悪用、A行政がB行政の判断を不服だとして、A行政の仲間内に、その判断を仰ぐことも問題なしとした防衛省、国土交通省、官邸いる官僚らによる、「解釈お遊びゲーム」が横行している。

法治国家において、安倍内閣の集団的自衛権解釈改憲もそうだが、官僚らによる「解釈お遊びゲーム」は後を絶たない。日本人はピンと来ていないかもしれないが、「その法律を作った理由は?(法理)」と云う、“基本中の基本”を大切にする精神が絶対的に満たされている事が前提で、法治と云うものは成り立つ。一休さんが言ったのかどうか忘れたが、「このはし渡るべからず」と禁止立て札を見て“端じゃなく、真ん中歩けばイイってこと”とすっ呆けるのと何ら変わりない。トンチや網の目潜るような解釈で屁理屈で政治が執行されていたら、正直、安保法案が「戦争法案」になるのも、杞憂ではなくなる。

そんな折、またまた官邸は「このはし渡るべからず」の立て札(憲法53条)を、頓智だか歪曲解釈か判らんが、臨時国会召集の要件が整っているのに、「何日以内にと云う期限は書いていないのだから、出来る限り速やかにと云うことで、出来るだけを色々と真摯に吟味したが、年明け早々の召集にならざるを得ない」と書いていないから、自己都合解釈が許されると云う、本当にガキのトンチ問答のような憲法解釈を平気でやるようになっている。

たった二日間で、環太平洋経済連携協定(TPP)、「1億総活躍社会」、政府と沖縄県が真っ向から対立している辺野古新基地問題。オマケは、高木復興相のパンツ泥棒疑惑や政治資金問題などだが、まあ、こちらは為にする議論で、個人的には国家の重要事項ではないので、どちらでもお好きにだ。ただ、話を聞いてて、外野が「こんなのが大臣なのか?」と野次馬的な政治観を刺激するのなら、まあ、野党の政権攻撃のツールとして、あっても良いだろう。

たかだか、つごう10時間の議論で、TPPや意味不明の1億総活躍社会、辺野古新基地問題を議論し、熟議に至るわけはない。無論、安倍官邸は、日本の民主主義に「熟議」なんてものは端らか存在せず、如何に法の網をくぐり、自分たちのやりたいことや、宗主国アメリカの金魚の糞であるアイデンティティを成就させる為に、我が安倍政権の存在意義があると体現してしまっているのだから、法治国家も、民主主義も、“一見そのように見える外観を整えること”それに尽きると政権運営をしているのだから、どうにも悪質である。

しかし、本来であれば、このような法治の意味を歪曲し、見せかけ民主主義に徹する自民党政権を倒す“カウンターパワー”が、6、7年前であれば、存在した。小沢一郎と鳩山由紀夫率いる「民主党」だ。しかし、鳩山は在野にあり、居酒屋評論家のようになっているし、小沢一郎の政治的パワーも官僚組織の罠にはまり、政治勢力としての存在を充分に維持することが出来ていない。今の「民主党」と云う政党は、「連合お抱え政治家」と選挙上手な「市場原理主義、隷米主義」の二通りが政党シェアリングしている。

数日前から、この話題の「民主党」を解党出直しだとか、口先男の前原が言い出し、モナオの細野が同調し、岡田を揺さぶっている。これに玄葉とか云うのが出てくれば、自民党シンパの野党グループと云うだけでオシマイ。解党などとエラそうなこと言わずに、野党ぶるフリもせずに、自民党に逃げ込めばいいだろう。大阪維新とかいう奴らも、気取らずに「自民党」への入党を願い出た方が良いだろう。前原や細野、橋下、江田?こんな奴らに国なんて動かせるわけもない。「市場原理主義、隷米主義」では、安倍自民党のカウンター政治勢力にはなり得ないのだ。それに、民主党内では、今回の安保法案は「違憲ではない」と内心思っている連中の巣窟だ。

連合にしても、官公労や経団連企業の組合の寄せ集め、選挙での集票や活動には便利だろうが、それじゃ創価学会頼りの公明党と何ら変わりない。結局、「民主党」が割れるのであれば、3分割か4分割と云う選択はありだろう。そして、本気で安倍政治のNOを突きつける「国民連合政府」のようなビジョンをカウンターパワーとして提示し、一定の勢力を確保してゆく、幾分長期なスパンでの、「市場原理主義、隷米主義」とは異なる日本の形を提示していく方が、最終的には早道かもしれない。ある時期において、国民が塗炭の苦しみを味わうだろうが、それも良薬、一時は口に苦いものである。

コンヴィヴィアリティのための道具 (ちくま学芸文庫)
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●2016年、経済大予想 悪い予測が愉しみになる安倍の支持率

2015年11月12日 | 日記
社会という荒野を生きる。
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●2016年、経済大予想 悪い予測が愉しみになる安倍の支持率

自分の国の経済が悪くなって歓ぶ奴は稀だ。個人的には空売りを仕掛けている間は、下がることを祈願したわけでが、現在はすべて丸く手仕舞ったので、利益損得勘定はない。それでも、景気が早く悪くなり、一旦強い不況風が吹いた方が、世のため人のためだと確信している。

特に、安倍政権が今後も続くようだよ、内政外交のすべてが、官僚と大企業のためだけの政治になる。政治と言えば、我々に関係ないと思う人が多いが、多くの国民が一番気にしている生活の状況をじわじわと低下させる圧力になるわけで、危ないと気がついた時は、日本の議会制民主主義では、緊急停止ボタンはないので、ズルズルと深みに引き込まれてしまう。

そうであるならば、まだ、国民の個人資産が手元に残っている状態で、大不況はやってきた方がベターだ。アメリカや韓国のように、一般市民が貯蓄を持っていない。貯金の概念がないのか、月々残る金がないのか判らない国々と同じように、不況が、常に社会的パニックを起こすわけだが、その点で、日本人の多くは、数年は臥薪嘗胆するだけの手持ち金をリックサックに詰め込んである。

2016年の早期に、この週刊現代の大予測が実現すれば、早々に安倍晋三退陣の機運が高まることになる。多くの国民が関心を持っている「景気」が見る見る悪くなり、世界全体に不況は及ぶが、リセッションを隠ぺいしてたいた日本などは、とびっきりのしっぺ返しを食らうだろう。この特集の中で、円高に振れると云う考えには説得力がないので、現状に前後の円安のままだったら、生活必需品は軒並み高騰、景気どころか「生活直撃」の憂き目に出遭う。自分も含めて、そんな不幸な環境は望むべきではないが、そうなった方が安倍自民党の悪政を葬る時期が早まるわけで、悪い話ではない。

ただし、年金積立金(GPIF)などは、投機により10兆円どころか20兆円以上の赤字を出すだろう。日銀のバランスシートも傷つき、中央銀行の信頼を失墜しているかもしれない。安倍内閣の支持率が、国民から見れば「生活に支障の起きない政治」で判断しているのだから、残念だが生活に支障の出る状況が生まれることが安倍支持率低下させられる。このような機運が16年早期に起きれば、『国民連合政府』に一斉に靡くだろうが、ジワジワ不況になる場合、民主党や連合が、国家の一大事だと感じることはないだろう。


 ≪ 手遅れになる前に「売ったほうがいい銘柄」〜景気と経済大予測。 株価は来年8月「1万5000円」を割る

やや早めの総括をすれば、2015年は「冴えない一年」だった。株価は期待外れ、企業業績もボチボチ。ただ、2016年は違う。日本は意外な姿に大変化する—。激動の時代の幕開けだ。

■悪夢の「1万円割れ」も
「世界中が景気後退期に入り、株式市場は大幅な調整期に突入する。それが2016年の株式マーケットの風景となるでしょう。調整期に入れば、株価が3~4割ほど下落するのが当たり前。
 日経平均株価が2万円台から一気に1万5000円ほどまで落ち込んでもおかしくはない。私は2016年7月予定の参議院議員選挙の後、8月頃から本格的な『売り』が始まると見ています」
そう語るのは、BNPパリバ証券日本株チーフストラテジストの丸山俊氏である。
想像するだけで恐ろしい暴落シナリオだが、確かな根拠があるという。
丸山氏は続ける。
 「これまで日本株を底上げしてきたのは、日本銀行による金融緩和や、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など『クジラ』と呼ばれる公的資金の買いです。が、2016年にはこれらの公的マネーが『弾切れ』となります。 たとえば、GPIFは運用資産の約25%を日本株で運用する方針を掲げて、日本株を買い進めてきました。が、すでにこの25%近くまで買い終わり、2016年にはこれ以上の買い増しが期待できません」
GPIFの運用資産は約140兆円。その25%=約35兆円が日本株を牽引する「主力選手」だったことを考えれば、弾切れによる負のインパクトは、はかり知れない。 一方で、3共済(国家公務員、地方公務員、私学)の年金マネーは運用資産の約25%を日本株で運用すると決め、この10月1日から本格的に日本株の買いをスタートさせたばかり。
「が、これも2016年の春頃~夏先に目標の25%に達する公算大です」(丸山氏)
加えて、GPIF、3共済と並ぶ「クジラ」とされる日銀マネーは、追加緩和が許されるのはあと1回だけ。仮に年内にそれを実行すれば、2016年は、ハナから「弾切れ」となる。
「要するに、巨大な公的マネーが日本株を支える図式はいまがピーク。 もちろん安倍政権はこうした事情をわかっているから、株価下支えのための新たな策を打ち出してくるでしょう。しかし、それも参院選まで。ここから『日本売り』が本格化し、株価は1万5000円へと下降していくシナリオが濃厚です」 (丸山氏)
これまで海外の機関投資家たちは、GPIFが買いを入れていた「JPX日経インデックス400」の組み入れ銘柄に好んで投資してきた。が、弾切れ後はこうした銘柄から真っ先に売りの対象になりやすい。
「中でも、『JPX400』に組み込まれ、かつ、『日経平均株価』に 採用されている銘柄が狙われる。ソフトバンク、KDDI、ファーストリテイリング、ヤフーなどは値がさ株と言われ、これらの銘柄が値下がりすると株価全体への影響も大きい。こうした銘柄を売り浴びせて、カラ売りで儲けようとする投機筋も出てくる」 (大手運用会社ファンドマネージャー)
では、いつごろから「準備」を始めておけばいいのか。丸山氏が指摘するように、来夏の参院選前までに態勢を整えておけばいいのか。
 「いますぐにでも備えておいたほうがいいでしょう。日本株は10月27日にピークアウトし、ジリジリと下げる長い調整期に入ったからです」
ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表の菊池真氏が言う。
 「日本企業はいま中間決算ラッシュで、好業績が並んでいます。が、喜んではおられず、企業業績はここがピークの可能性が高い。来年2月に発表される10月-12月期決算からは下方修正が目立ち始め、来年5月に発表される次年度の業績予想では減益予想が並ぶことになるでしょう。 だから、いまから備えるのがベストな選択となる。株価は企業業績の先行指標。来期業績が減益だと読み取れるようになる半年ほど前から下がり始めます。それがまさにいま、なのです。 ・こうした企業の業績悪化に加えて、前述の通り、2016年には日本株の限界も露になる。これらのダブルパンチで悪夢の日本売りが始まれば、日経平均は1万円割れしてもおかしくないゾーン(領域)に突入する」

 ■海外勢はもう逃げた
実際、海外投資家たちはすでに日本株から逃げの態勢に入っている。
 アベノミクス開始当初から今年7月までに、海外投資家が日本株を買い越した額は約20兆円。それが8月からは売り越しに一転。ここ3ヵ月ほどで一気に5兆円近くを売り越す勢いで、大脱走さながらなのである。
「欧米だけではなく、中東のオイルマネーも急速に逃げ出している。オイルマネーに人気だったローム、横河電機、イオンモールなどの株価が大きく下げている」(前出のファンドマネージャー)
・これから「危なくなる銘柄」はどう見極めればいいのか。まず菊池氏は、「資源銘柄」、「中国銘柄」に注意をうながす。
「これから本格的に世界中の企業をむしばんでいくのが、資源安。資源投資で稼いできた三井物産など大手商社では、莫大な特別損失の計上を強いられる危険度が高まります。また、中国経済の悪化、なかでも自動車販売の激減も日本企業の経営を圧迫してくる。ロボット大手のファナック、安川電機などは影響大でしょう」
クレディ・スイス証券チーフ・エコノミストの白川浩道氏は、「米国銘柄」を懸念する。
「2016年は米国の景気悪化が懸念されます。中でも心配なのは、信用力の低い個人に貸している自動車ローン。いまはすごい勢いで伸びているが、景況感が悪くなると、一気に焦げ付く。新規のローンも減り、自動車販売が激減しかねない。また、米国ではいま住宅販売が伸びているが、それは金利が安いから。金利が上がれば、住宅や不動産も売れなくなっていくでしょう」
米国で絶好調なトヨタ、富士重工業、マツダなど日本の自動車メーカーは影響必至。米国で不動産事業を展開する大和ハウス工業、住友林業などの株価にも重石となりそうだ。
・シグマ・キャピタルのチーフエコノミストである田代秀敏氏は、「個人消費銘柄」に警鐘を鳴らす。
 「株価が1万5000円割れとなれば、GPIFの運用損が顕在化してきて、これが将来の年金不安から消費停滞を招く。2016年には消費税の10%への増税の可否が決断され、増税決定なら駆け込み需要が期待できるとされていますが、実はそれも期待薄。
そもそも増税される可能性が薄いし、万が一増税されるとしても、軽減税率がセットで議論される。『軽減税率の範囲が決まるまではモノを買わない』という心理が働き、駆け込み需要が起きづらいのです。食品、飲料、小売り、家電などの銘柄は、引き続き厳しい」

そもそも日本経済は、7-9月期のGDPがマイナス成長の公算大。4-6月期に続いて2四半期連続のマイナス成長となれば、定義上は「リセッション(景気後退)」入りが確定する。そんな「衰退国家」の株が大きく買われるはずもない。 まだ大丈夫と思っていたら、もう手遅れ—。 そんなことにだけはならないように注意したい。
【円は1ドル100円台に 2016年「景気と経済」大予測(2)】へつづく


≪ 日本一早い2016年大予測(2) 〜円安は終わる。
円は1ドル100円台に
 ■米国が利上げしても、円安にはならない
「米国が利上げに踏み切れば、日米間の金利差が広がるので、マネーはドルに向かう。米国の利上げ期待が続く限り、ドル円相場は1ドル=120円をはさんで上下数円の幅で動いていく」 (大手証券為替アナリスト)
これがよく語られる、ドル円相場の2016年の市場予測だ。が、マーケットの最前線ではいま、まったく別の予測が急浮上している。
米国が利上げをしても、円安にはならない。'16年は円高転換のアニバーサリー(記念年)になる、というのがそれ。経済アナリストの中原圭介氏が指摘する。
 「利上げが円安を誘引すると考える人は多いが、実は間違い。むしろ、過剰に進んだ円安を修正し、為替トレンドを円高反転させる引き金となる可能性が高い。
振り返れば、米国が'12年9月にQE3と呼ばれる量的緩和第3弾を開始した直後に円高は終わり、円安へ突入していった。今度はこれと逆。利上げが開始される時が円高の始まりとなる。
利上げ開始前後の1ヵ月以内に円相場の急伸が始まると見ています」
米国の利上げは早ければ'15年12月。となれば、この11月から来年1月にかけて、さっそく円高シフトが始まるわけだ。
 「その際には、1ドル=100~105円がひとつのターゲットになると見ています」 (中原氏)
現在の1ドル=120円水準から一気に100円近辺まで急騰するのだから、「超円高」の巨大インパクトが間近に迫ってきたといえる。
「米国の大手ヘッジファンドで、円安トレンドに賭けていたことで有名なフォートレス・インベストメント・グループが、10月にファンドを閉鎖すると発表しました。まさにこれから起こる『円高転換』の予兆のような事件。
・来年は機関投資家たちがこれまでためこんだ円売りポジションを一斉に転換し始めることになりそうです。きっかけは利上げ。私は3月と見ています」 (マーケットアナリストの豊島逸夫氏)

 ■米国が利上げに踏み切らなかったら?
では、米国が利上げに踏み切らなかったら円高にならずに済むのかというと、そう単純ではない。
 米国が利上げできないと見る市場関係者は多いが、彼らは同時に次のように口を揃える。利上げを断念しても、'16年が「円高イヤー」になることは避けられない——。
 FXプライムのチーフストラテジストである高野やすのり氏が言う。
 「米国の景気サイクルがすでに天井をつけている状況下で、FRBが金利を上げるのは正気の沙汰ではない。イエレン議長は利上げのタイミングを逸した。 為替はどうなるのかといえば、まず、'16年3月頃までは利上げ期待が残る中、ドルは堅調に推移。が、4月にも利上げができないと、『この先も利上げはないのでは』と市場が疑い出す。
夏頃には4-6月期の決算が発表され、業績悪化を確認。市場は『利上げは不可能だ』と見切りをつける。ここから一気にドル売り・円買いが進み、最も円高になるのは8月あたり。1ドル=100円程度までいくでしょう」
RPテック代表の倉都康行氏も言う。
 「いまFRBが無理をして利上げをすれば、米国の景気後退の時期を早めることにしかならない。仮に利上げができたとしても、それは1回限りと市場は考え始めている。となれば、円高シフトに向かうのは自然な流れ。1ドル=110円割れの円高は十分にありうる」

つまり、米国が利上げをしてもしなくても、円高になる。
そもそも、2016年は、利上げ以外にも、相場環境を円高に振れさせるイベントが目白押し。日本総研副理事長の湯元健治氏が言う。
 「来年は世界同時不況の可能性がある。震源は米国で、仮に米経済が急悪化した場合、即座にブラジルなどの新興国に波及。ロシアなどの産油国も道連れとなり、最悪の場合、世界同時不況に突入する。
この際には、安全資産とされる日本円とスイスフランにマネーが殺到し、1ドル=100円に近付くこともありうる」
ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏も指摘する。
「地政学上の最大リスクであるシリア問題が要警戒です。仮に来年米国が地上軍を投入して紛争が本格化すれば、マーケットへのインパクトは計り知れない。リスク回避のために『有事の円買い』が発生し、円が急伸することになるでしょう」

2016年、円安は終わる。

【中国経済はどんどん悪くなる 2016年「景気と経済」大予測(3)】へつづく 「週刊現代」2015年11月14日号より
 ≫(現代ビジネス:企業・経済ー「経済の死角」

 注:ここから先は、週刊現代次号を買いましょう!(笑)。

日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声 (ちくま学芸文庫)
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●日本人の興味は「景気と社会保障」 憲法が!株価と年金に負ける

2015年11月11日 | 日記
ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒 (講談社+α新書)
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●日本人の興味は「景気と社会保障」 憲法が!株価と年金に負ける

最近は、読者の方々には不興と取られるようなコラムを連発している所為か、人気ブログランキングにおける順位が番外地に向かって急降下している(笑)。まあ、反米キャンペーン的なコラムが多くなったし、経済成長を念仏のように唱えることに異議申し立てをしてみたりと、世論の潮流に逆らっているのだから、当然の結果だが、周りの空気に順応して、付和雷同な賛同を得ても意味はないから、それで良いのだと思う。また、人気ブログランキングを運営している会社の方針のようなものも、場合によると影響しているのかもしれない。どこまで下がるのか、或る意味で愉しみでもある。

まあ、そんなことはさて置いて、今日も人の褌でコラム風味なブログを書き連ねておく。最初の朝日の南欧から見たユーロと云うカルロ・セッキさんへのインタビューは興味深い。ユーロ圏の持つ弱点、通貨のコントロール能力を持たない欧州中央銀行(ECB)という存在、バラバラの財政事情と理念の鬩ぎあい。相当に難解な複雑な方程式だ。しかし、ドイツはトッドではないが、ユーロあってのEUチャンピオンなのだから、VW問題を乗り越えても、幾つもの真贋検査に対応しなければならないだろう。アメリカと云う既存のヘゲモニーに挑戦するのは容易なことではなさそうだ。

ロシアも挑戦しているが、徹底した魔女戦略に晒されている。ロシアの場合、中国と異なり、日米との経済交流が少ない点が、中国以上に敵視されやすい環境を持つ。無論、プーチンの持つ独特のカリスマ性も、アメリカにとっては癪のタネだし、強固で近代的な軍事力を保持している事も、プロパガンダ報道に油が注がれ、今度はリオ・オリンピックに参加させないぞ!と云う揺さぶりまで始まった。欧米罠研究所がどこかで日々研鑽に励んでいるとしか思えない(笑)。

今のところ、世論調査を見る限り、4~5割の日本人が安倍内閣を支持しているようなので、“ごまめの歯ぎしり”と云う按配だ。最近では河野太郎のブログで市民権を得た言葉だから、変節とか裏切りの代名詞になっているのかもしれない。NHK辺りの世論調査には、日本人に多い付和雷同する傾向があり、アナウンス効果やバンドワゴン効果は絶大であるに違いない。特に、召集令状でも届かない限り、自衛隊には、危ない目に遭って貰っても良いだろうくらいの認識が一般生活者にはあると思えば、驚きに値しない。それでも、考えるべきことを考もせずに、デモクラシーを享受出来るほど、日本と云う国の髄は生易しいものではない。劇薬を持ってしても、宿痾のような、お上に任せてぶーたれる体質は変わらない。つまり、国民の家畜化が加速化するわけで、黙認しておくわけには行かないと思う。

 ≪(インタビュー)南欧から見たユーロ 伊ボッコーニ大学元学長、カルロ・セッキさん
混迷が続くギリシャの経済危機。発覚以来、「借りたお金を返さない方が悪い」という批判が、ドイツなど欧州連合(EU)の北側の諸国から噴き出しているが、果たしてそれだけで済むのか。財政状況が芳しくない国は南欧に少なくない。南の立場も知るイタリアのマクロ経済の碩学(せきがく)に、問題の本質と解決への手だてを聞いた。

   ――ギリシャの総選挙で、チプラス首相が率いる与党・急進左派連合が勝利しました。世界経済、そして共通通貨ユーロ防衛のリスクとして懸念されてきたギリシャ危機は今後、どうなっていくのでしょうか。

 「与党は前回総選挙で、EUから求められた緊縮策拒否を掲げて政権に就きました。しかしその後、金融支援と引き換えに、公約を撤回して緊縮を受け入れた。こうした姿勢を続けるなら、債務返済をめぐるEUとの交渉は継続されるでしょう。とはいえ、ギリシャが財政再建や労働生産性を高める構造改革を進め、経済成長を促す政策を採らねばならない状況は、何ら変わりません」

 ――ギリシャ危機はこれまでの危機と異なるのでしょうか。

 「危機が一国にとどまらず、ユーロ圏の他の国に波及した点で決定的に異なります。財政の透明性がないとか、政府が改革に取り組む姿勢に信頼性がないといったギリシャ固有の問題がありました。しかし、ギリシャほど脆弱(ぜいじゃく)でないポルトガル、スペイン、アイルランドなども、財政の赤字体質が市場に嫌われ、新たに国債を発行したくても利回りが上昇して困難になるという悪影響を受けました」

 ――ギリシャのように信頼できない国をユーロに参加させたことが誤りだったのでは。

 「ギリシャはユーロが使えることで、独自通貨ドラクマの時代に比べ、低利でお金が借りられるなど、官民が分不相応の利益を享受しました。これは、ユーロ参加には経済的条件に加え、政治的意義が重視されたことも忘れてはなりません。EU加盟国は、独裁政権が支配したギリシャで民主的勢力を強化したいと考えたほか、欧州の境界を守る点も考慮しました」
 「それを今になって過ちだったと批判するのは、建設的ではありません。ギリシャのような国でも、EUのルールにのっとって行動するよう、粘り強く働きかけていくことこそが重要です」

     ■     ■

 ――累積債務国問題は、何度も世界経済の主要テーマになりました。1980年代から90年代にかけての中南米諸国の債務危機は、米国などが主導した減免策で解決しました。今回なぜ、減免が選択肢にあがらないのでしょう。

 「今後の減免が排除されているわけではありません。ただ、現状は問題解決に向けた第1段階です。チプラス政権が真剣に問題に立ち向かう姿勢を示せば、減免というメニューも俎上(そじょう)にのぼることはあり得ます。財政の持続可能性が高まり、かつ、経済の回復も成し遂げられれば、債務そのものが減っていくと期待できます」

 ――減免を罪悪とでも考える国があるのですか。短時間で処理することがベストとされる金融の常識からすると、ユーロを防衛しようという意欲が見えません。

 「日本には日本銀行、米国にはFRB(連邦準備制度理事会)と『最後の貸し手』の義務を果たす中央銀行があります。しかし欧州中央銀行(ECB)は『最後の貸し手』ではありません。例えばギリシャの市中銀行が資金繰りの危機に陥っても、ECBに救済の義務はなく、切り捨ても可能です」
 「おまけにユーロは新しい創造物です。通貨でありながら、流通する地域に真の中央銀行が存在していない。その結果、ユーロ自身の信用は市場から勝ち取らねばなりません。すなわち、市場に『ユーロは厳格なルールの下で運用されている』と信じてもらわねばならない。ドイツはとりわけ、こうしたルール重視の考えを厳格に守るべきだと考えているのです」

 ――ユーロ圏内のお金の動きを見ると、公的、民間両部門の投資が減っています。貸し渋りが起きているのではないですか。

 「財政再建を重んじたら成長が犠牲になりかねない、という二律背反は、ギリシャだけでなく、ユーロ圏全域の問題でもあります。投資や生産が停滞したり縮小したりしています。ドイツが主張するように健全財政は大切ですが、こだわり過ぎて、将来の成長の種も失っている面は否定できません」
 「ある逆説があります。今世紀初め、シュレーダー独政権は財政規律をさほど熱心に守らない一方、雇用規制の緩和など不人気の構造改革を熱心に進めました。その結果が今の成長につながっています。ドイツには、厳格さと柔軟さを使い分ける知恵が必要です」

 ――セッキさんが提唱するEU版の「4本の矢」でユーロ圏を強化できますか。

 「私たちを取り巻く問題は、複雑で複層的です。解決には継続的なアプローチが必要です。まず、金融政策ではECBを真の中央銀行にするため、『最後の貸し手』としての権限を与えねばなりません。二つ目に銀行同盟をつくり、金融機関を同一のルールの下で検査・監督する。これにより金融市場の信頼性が向上するでしょう」
 「三つ目の財政改革は、域内で強固な信用制度が確立すれば、構造改革や財政再建を担保にして、危機時の資金供与ができるようになります。ただし、申し上げた通り、財政には厳格さと柔軟性の両様が必要です。公共投資のような成長を促す財政支出と引き換えに、労働生産性を高める改革を義務づけるのが4本目の矢です」  

    ■     ■

 ――近年、各国でポピュリズムのうねりが高まっています。かじ取りを誤ると、ユーロ圏の南北分裂に発展しませんか。

 「EU各国は、南であれ北であれ、抜き差しならない状態まで、相互依存が進んでいます。イタリアもドイツと同様に貿易に依存しています。高度な統合と反対の方向、つまり分裂に進むことは、どの国の利益にもなりません」

 「しかし、様々な危機がポピュリズム台頭の誘因になり得ることは確かです。とりわけ『5年後、10年後、自分の子どもたちが、より悪い状況に置かれてしまうのではないのか』という不安が高まると、目先の問題に追われ、理想が忘れられます。政治家の中にも、ポピュリズムを利用しようというやからがいます。これからも危機は起きるでしょう」

 「2度の大戦で、欧州は大きく傷つき人命が失われました。この反省に立って、『力を合わせれば必ずいい結果が待っている』という理想から統合は始まったのです。原点を忘れてはなりません」

 「最も重要なのは教育です。ポピュリズムも 問題ですが、政治的無関心も心配です。背景には政治家の指導力低下がある。アデナウアー西独首相や、欧州石炭鉄鋼共同体を提唱したシューマン仏外相ら、 50年代の統合創世期の人たちと、今の政治家を比べると、小粒化は否定できません。民主制である以上、指導者を選ぶのは国民自身です。構想力と問題解決力を併せ持った政治家を選別できる、国民の眼力を培うしかありません」

 ――問題は経済だけではなく、シリアなどから大量の難民がEUに流入し続けています。メルケル独首相らは受け入れに積極的ですが、ハンガリーやポーランドは否定的です。

 「共通の利益を享受するには、共通の対策も考えなくてはなりません。流入を制限するため、にわかに域内で国境の壁を築くようなことは、開かれたEUという存在価値を自己否定することになります。仮に異論があっても、EU存続にとって、難民の引き受け分担が最も正しい道であり、現実もそれに向かう と思います」   
 *  Carlo Secchi 1944年イタリア生まれ。90年代に欧州議会議員、イタリア上院議員。2000年から4年間、ミラノのボッコーニ大学学長を務めた。  

■「現状維持」できるか岐路 慶応大学教授・竹森俊平さん
 政治学では「Status quo」というラテン語がよく使われます。「現状維持」という意味ですが、ドイツを含めEUの主要国は現在、まさに「Status quo」のためにきゅうきゅうとしていて、「統合の夢」を追うどころではありません。
 EUは、ギリシャ危機をめぐる市場とのせめぎ合いと、大量の難民をどうするかという、二正面作戦への対処を迫られています。
 ユーロ圏内の金融秩序を乱すギリシャに対しては、厳格な緊縮財政など「寒風」を浴びせている。
 一方、難民問題は「緊急事態に取った友好的な態度だったと、いまさら謝罪しなければならないのなら、これは私の国ではない」(メルケル独首相)などと「温風」を注いでいます。
 何か矛盾して見えますが、いずれもEUの維持、という目的では一致しています。
 ギリシャの言う通り債務減免を許せば、財政赤字に苦しむ南欧諸国も財政再建しなくなる。そうなるとユーロの信用を守るために、ドイツが一方的に南欧を財政支援し続ける形になりかねない。ドイツの本音は、通貨は共通でも、財政は共通化したくないのです。だからギリシャにきつくあたる。
 他方、欧州26カ国は、パスポートなど身分証明書の国境審査なしで移動できる協定に調印しています。ドイツは率先して難民を受け入れていますが、他の国も分担しなければ、国境を自由に越えて難民がドイツに集中する。それでは困るので、ドイツは国境審査を復活せざるを得なくなる。温風を吹かせながら、それでも良いかと他の加盟国に迫っているわけです。
 EUは国ごとに政治や経済の事情が異なるのに、無理に国境を開放し通貨を共通化したことから、経済危機や難民受け入れ問題が生じた。なんとか現状で落ち着いてくれればいいが、統合がばらばらに崩れるかもしれないのです。     
*  たけもりしゅんぺい 1956年生まれ。国際経済危機分析の専門家。著書に「欧州統合、ギリシャに死す」「ユーロ破綻(はたん)」など。  

■取材を終えて
 出生地のイタリアでは、経済学者出身の首相が誕生することがある。元首相のマリオ・モンティ氏は、セッキ氏と同じボッコーニ大学学長を務めた。ベルルスコーニ政権の混乱を沈静化するため、実務家の手腕が期待された。
 セッキ氏に政権のお鉢が回ってくるかは未知数だが、彼が唱える「4本の矢」の実現は簡単ではない。日本や米国と違い、EU域内のすべての国の了解を得ることは、想像を絶する困難が伴うからだ。さらに改革の行方を阻むのが、ポピュリズムという国民の心に根ざす病根の存在だ。EU分裂の火種にさえなりうる。病根は、経済の「負け組」で、より繁殖するだろう。
 しかし、ポピュリズムをはびこらせないために必要なのが、財政規律と経済発展の両立という二律背反の克服策だともいえよう。ならば、難路でも4本の矢を目指すしかないと感じた。 ≫ (朝日新聞デジタル:編集委員・駒野剛)


次の引用インタビューも面白い。こっちの方が、かなり国内的には、興味を引くインタビューだろう。「野党とは如何なるものか?」だから、具体的事例も頭に浮かぶので、読みやすい。吉田氏の民主主義の解説は非常に良く判る。しかし、民主主義の本質的部分を知ることで、成るほど日本に民主主義が定着する気配すらないのは、その所為かと納得してしまう(笑)。つまり、多くの主権者が、景気と社会保障にしか主な興味がなく、言論の自由、表現の自由、立憲主義など云うものに興味がなければ、安倍内閣による安保法制関連法の強行採決など、どうでも良いと云うことになる。

こうなると、安倍内閣の支持率が、右であれ左であれ、見識ある考えを持つ人々が、国家の根幹にかかわる問題で、重大な違反をした政権であっても、生活者として、各論的に被害を蒙っていると感じない以上、めんどくさいことは判らない、適当にやってよ。政治的な発言なんて、世間的にも変な目で見られるからね。こういう風潮は、未だに残っているだろうから、「ハイ、ハイ、良いんじゃないですか?」と云う当り障りのない回答をするのは自明と言えば自明。

これに、アナウンス効果やバンドワゴン効果が加わるわけだから、打つ手なしとなる。結局、結論を出すのは早すぎるだろうが、日本に民主主義を定着させることは、容易ではない気がしてくる。安倍晋三の強権政治で、一部では、民主主義や立憲主義の大切さは共有されてきたが、現時点ではメジャーな空気にまでは至っていない。次期参議院選までに、共産党が提案した『国民連合政府』の価値を評価して、所謂「野党」が自民党に対峙した時は、瞬間的に国民は「総論」として、政治を瞬間的に考えるだろう。現時点では、それすらも実現性が危うい状態のようだから、期待できる兆しがあるとは言えない。


 ≪(インタビュー)オポジション 野党を研究する政治学者・吉田徹さん
 「野党はだらしない」。正直、もう言い飽きた。この決まり文句の先へ行かなければ「1強多弱」が続き、政治のダイナミズムは損なわれる。しかし、さて、どうすれば。もんもんとしていたらドアをたたく人あり。政治学者の吉田徹さん。英語で言い換えると見方が変わるかも、と言う。「野党」じゃなくて「オポジション」と。

 ――自民党「1強」という政治状況の中、野党のだらしなさばかりが目につきます。

 「野党がだらしないという決まり文句は、『野党』という言葉のせいもあるかもしれません」

 ――どういうことですか。

 「そもそも『野党』という言葉は、明治期に一般的になった『在野党』から派生したもので、権力にあずかっているか否かという『引き算』によって定義されている。日本では最初からマイナスイメージがついて回ります」
 「英語で野党は『オポジション』、原義は『対抗(勢力)』。能動的で、むしろ積極的な意味を持っています。英国の野党は『陛下の野党』と呼ばれ、 有形無形の支援制度が優先的に割り当てられています。野党にげたを履かせて、与党との健全な競争を促さなければならない、なぜなら野党は、民主政治の維持 と発展のために不可欠だからという思想が、広く社会に受け入れられているためです。翻って日本は、英国流の二大政党制を『輸入』しましたが、その制度を支える思想は根付かないまま。結果的にげたを履いているのは、長く政権を担ってきた『自然な与党』たる自民党です」

 ――ただ、野党がいくら反対しても法案は通る。対案も出さず、野党は国会で騒ぐだけという冷ややかな見方も広がっています。

 「野党の使命は、何よりも与党権力をチェックすることです。対案はその手段のひとつに過ぎず、絶対視すべきではありません」
 「野党を通じて、多様な民意が政治の場にきちんと表現されることで、少数者の権利が守られたり、不満が『ガス抜き』されたりして、社会は安定す る。逆に、与党が反対勢力からも幅広い合意を取り付けようと努めなければ、社会は不安定になります。与党は政策を遂行する権利を持ち、野党は耳を傾けても らえる権利をもつ。民主政治がそのようなバランスの上に成り立っていることを、まずは理解する必要があります」

 ――野党を過大評価している印象を受けますが。

 「いえ、民主政治にはオポジションが重要だと言っているのであって、それが野党である必然性は必ずしもない。例えば、主要政党すべてが閣僚を出しているスイスでは、国民投票がオポジションとして機能するし、米国では司法がそうです。日本でもかつては自民党の派閥や、衆参の『ねじれ』などがオポジションの役割を果たしてきた。ところが今の安倍政権下では、そうした『オポジション力』が非常に弱まっています」
 「集団的自衛権の行使容認のために内閣法制局長官をかえる。『中立・公正』の名のもとにメディアを威圧する。権力にとって最強のオポジションであるはずの憲法をも軽視する。政治がある意味『ブラック企業』化しています」
 「議論をしている暇などないから『右向け右』で全員が右を向く。それが最も合理的なのだ、と。政治や企業のトップだけでなく、大学を含めて、社会全体がそういう雰囲気になっている。今の政治もその表れです」   

   ■     ■

 ――「決められない政治」が批判されたのはつい数年前。オポジションを排した政治は、民意の要求であるとも言えませんか。

 「短期的にはオポジションを排した方が『生産性』は上がるようにみえる。だけど長期的にみれば、持続可能性は減ります。ブラック企業がそうでしょう。民主主義は手間がかかりますが、だからこそ続いてきたのです」
 「組織や政策が行き詰まった時、全員が右を向いていたら方向転換できません。右を向かない人間を抱えて多様性を確保し、違う道を進めるようにしておくほうが集団は生き残れる。野党は、既存制度がダウンした時のバックアップシステムのようなものです」

 ――だからこそ野党は、与党との対立軸を描きだし、政策を競わねばならないということですね。

 「二大政党制を、与党と野党どちらがダンスがうまいかを競っているかのようなイメージで捉えるのは、間違いです。グローバル化と社会のフラット化が進んだこの時代にあっては、明確な対立軸を描き、世界観を競うような政党政治はもはや成り立ちません」
 「与党と野党はペアダンスを踊っているようなもの。相手がこうステップを踏んだらこっちはこう、相手が賛成なら反対、反対なら賛成と。2009年と12年の政権交代はいずれも、政権与党が信任されなかったから。有権者が民主党や自民党に政権を取らせたいと積極的に選択した結果ではありません。身もふたもない言い方をすれば、小選挙区制のもとでの政権交代は、与党の失墜があって起こるものなのです」

 ――敵失なくば交代なし。確かに身もふたもないですね。しかし、安保法制で世論の反発を招いた安倍内閣の支持率はさほど下がっていません。なぜでしょう。

 「有権者の関心は、景気と社会保障に集中しています。そこでミスをおかさなければ、『致命傷』にはなりにくい。安倍内閣はそれをよくわかっています」
 「タイムマネジメントと言葉づかいも、とても巧みです。安保法制のほとぼりをさますため、秋の臨時国会を開かない。取り得る最善の策です。そして『アベノミクス』『積極的平和主義』『一億総活躍社会』。言葉の意味はあいまいだけれども、とにかくポジティブ。無党派層からすると、それを批判する野党は、揚げ足取りをしているようにしか見えません。ノリの悪いやつだと、ね」

 ――景気よく行こうぜ、と。

 「だからこそ、言わせっぱなしにしないために、国会審議が野党にとっては重要です。具体的な事例で相手を問いただし、答弁の矛盾をつき、言葉づか いの巧みさで押し切られがちな点をひとつずつピンで留めていく。誰が『正しい』かを決めるのが選挙で、何が『正しい』かを決めるのは国会です。決定と熟 議。この両輪がきっちり回ってこその民主主義です」   

   ■     ■  

――今は討議の車輪の回りが非常に悪い。そのことへの不満が、人々をデモへと押し出したと。

 「デモというオポジションが当たり前になったのは歓迎すべきことです。ただ、野党がしっかり民意を転換できていれば、本来、主権者が時間と労力をかけてデモをやる必要はないはずです」
 「代表民主制はいわば民意の『風景画』を描くようなもの。画家が色を加えたり遠近感を演出したりして風景を再現するがごとく、民意を政治の場で表現するための翻訳力、意訳力こそが政党の底力です。民主党は、それを十分に理解していない。民意をそのまま代表するのでも、自分たちが正しいと思う政策を追求するだけでもいけない。選挙に勝った我々こそが民意とばかりに振る舞う自民党に対抗する意味でも、民主党は民意とコミュニケーションし、意訳する力をこそ磨くべきです」

 ――デモでは「野党は共闘!」の声もあがっています。

 「国会の外から吹く『追い風』に、野党が帆をどう張れるのかが問われています。非自民ブロックが分裂している限り政権交代は ないというのは過去2回の選挙の教訓です。『国民連合政府』の構想はその学習の結果のひとつでしょう。政治学者の阿部斉(1933~2004)が言ったよ うに、政治とは『ありあわせの材料』で『まにあわせの解決』をすることです。どのような方策でも不満は残るでしょう。しかし、野党各党がそれぞれ生き残る ための合理的選択をした結果、票を食い合うという不合理を生んでいる。この『合成の誤謬(ごびゅう)』を何とか乗り越えないと、自民党という『自然な与 党』が君臨し続けます」   

   ■     ■

 ――「政権交代可能な二大政党制」を目指した政治制度改革の弊害は、予想以上に大きかった。見直すべきではないですか。

 「選択肢としてはあり得ますが、こっちの方が便利だとか新しいとか、百円ショップで買い物をするように制度をとっかえひっかえしていても、この国 の民主主義はいつまでも成熟しません。政治とは結婚生活のようなもの。関わり、育て、折り合いをつける。その忍耐力がなければ使える制度も使えなくなりま す」

 ――だらしない野党も、忍耐強く育ててしっかりさせろと。

 「野党は民意の尖兵(せんぺい)隊のようなもの。野党がだらしなく見えるのは、もしかしたら私たちが、自身の民意のありようを了解していないから かもしれません。どんな社会に生きたいか。どんな意思を政治に反映させたいか。それを考え、実現させるために、与党も野党もツールとして使いこなすのが主 権者の使命です。ないものねだりも、観客でいることも許されない。それが民主主義ですから」  (聞き手 論説委員・高橋純子)    
 *  よしだとおる 75年生まれ。北海道大学教授。専門は欧州比較政治。著書に「感情の政治学」「ポピュリズムを考える」、編著に「野党とは何か」など。  ≫(朝日新聞デジタル)

感情の政治学 (講談社選書メチエ)
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●世界の喧騒を尻目に 文明の瀬戸際「日本」だから出来ること 

2015年11月10日 | 日記
経済と人間の旅
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●世界の喧騒を尻目に 文明の瀬戸際「日本」だから出来ること 

9日の東京株式市場で日経平均株価の 午前の終値は前週末比412円高の1万9678円と大幅に続伸、終値も377円高となり、終値は1万9642円と2万円の大台にもう一歩まで来た。アメリカFRBの年内利上げの確率が上がったことで、円安・ドル高が進み、輸出関連企業の業績改善期待で賑わった。つまり、円安で輸出採算が改善し、円換算後の利益の伸びにつながる(為替差益)との期待が高まった事が要因のようだ。しかし、あいかわらず、輸出関連企業の数量的伸びは見当たらず、知らない内に儲かってはいるが、企業自体、実感なき儲けに戸惑いさえみられる。

足元の企業利益が円安株高の流れに乗って、利益は最高益更新等と褒めそやされているが、肝心の数量ベースは下げ止まりまでは見えているが、成長する要素が少ないと見る向きが多い。つまり、新規の設備投資はプログラムの変更などの投資はあっても、生産設備への投資は控えられたままである。為替による利益金は、企業にとって見せかけの利益でもあるわけだから、円高に振れた時には、すべてを吐き出すリスクを抱えている。謂わば、心理的には、預かり利益金のような性格になる。つまり、固定的な経費になる、賃金の上昇は、賞与を中心とするべきで、ベースアップと云う方向は極力避けたいのが本音だ。派遣法の改正で、正社員数を縮小できる法案で一息ついたが、企業人は、今の利益が、一時預かり金的の性格を有することを承知している。

つまり、輸出の拡大と云う成長神話に、口にこそ出さないが、懐疑的だ。企業経営者が、成長しない企業戦略などと言い出せば、銀行、株主、社員から、総スカンを喰うだろう。しかし、実際に経営判断として行われている事は、日本経済の成長神話に、身を委ねている企業は見当たらない。主だった企業の全体的な流れとしては、世界のマーケットを睨みながら、市場パイの拡大を目指し、自ら拡大するのではなく、M&A中心に、市場のパイを増やすと云う世界戦略に出ていると見て間違いはない。つまり、日本市場における、経済成長は、既に飽和状態と云うことだ。そのことを企業人は知っているが、口では経済成長余力はあると宣う。

金融関係も、そのように強気な企業が好ましいと思っているのだから、そのように見せないわけにはいかない。経産省、財務省中心に、安倍政権の経済政策は作られているだろうが、企業人含めて、誰も本当のことを言わない状況で、幾年もが過ぎてゆく。生き残るためには、売り上げを伸ばさざるを得ない。既存のマーケットで増やせない以上、人の持っている市場を買いに行くしかない。それがM&Aであり、その為には、魔女扱いされている「企業内部留保」の資金こそが、生き残りの最後の味方なのである。

アンチ経団連の筆者にしては、企業人に対して物わかりの良い話をするのだが、実態は、そう云うことだ。曲がりなりにも、上場企業の企画部長であった筆者には、その辺はよく理解出来る。しかしだ、謂わば、人の褌で相撲を取らないと、成長企業の体裁が整えられなくなった産業の限界点は、明らかに見えている。成長なき企業に明日はない。この神話は本当なのか、そろそろ考えるべき時代が来ていると思うのが筆者だ。世界全体の経済が、縮小しているからこそ、グローバル企業は、国境なき経済体制、グローバル経済を編み出したわけで、世界中の企業が内心知っているけど、言い出しっぺにはなりたくないままにここまで来ている。

10代、20代、30代と物を欲しがらない世代が後ろから追いかけてきている時に、50代以上の人々が、幾ら「成長こそ力なり」と叫んでも、笛吹けど踊らずになるわけだ。財務省も日銀も、ここを見誤った。シェアリングと云う概念が、市民生活に馴染む時代が来るとは思わないのが、団塊世代以前の人々だ。モーターショーなども年々人手が減っている。昨日のコラムで書いた部分だが、再掲しておく。経済成長が必要だ!と口にしている大人たちも、消費増税や社会保障の削減に遭遇して、倹約と云う経済成長の足を引っ張る生活を愉しんでいるのだから、酷く狡い!

■昨日のコラムより抜粋
『 日本経済を考える時に、定番化した「内需」と云う論点がある。総需要は、国内の民間需要と政府需要と輸出の合計で、国内の民間需要が全体のおよそ65%、ほぼ3分の2を占めているため、国内の民間需要の増減がGDPのそれに与える影響力は大きい。また、国内の民間需要においては、家計の消費支出と住宅建設が全体の8割を占めていると云う実情を考えると、トンデモナイ分野(グローバル展開出来る輸出製造業)に光を当ててしまった。
 財務省が放ち続けた「国家の借金は1000兆円!国民一人当たり800万円!」のマスメディア総動員体制のプロパガンダが功を奏し、何が起きたのか?そもそもは、国家が日本の場合、国民からの借金をしているにもかかわらず、「お前らは赤ちゃんまで含めて、一人当り800万の借金がある」と倒錯した言説を振りまいたことに端を発する。一定の範囲で生真面目な日本人は、「これは大変だ。国家が赤字だと騒ぐと云うことは、社会保障を徹底的に削減してくるだろう」そう読んだわけだ。
 そのような考えが浸透したことで、「財政のバランスは大切だ」と云う言葉は、政治家、役人、国民に至る部分で、合言葉のようになった。しかし、個々の国民は、自分の家庭の支出は抑えなくてはならない。いずれ、支払われる保証は削減され、取られるものは増加の一途に違いない、そう思ったわけだ。つまり、政府のやることに反対しても、大した効果はないのだから、自営本能が働くのは当然だ。そこに、追い打ちをかけるように消費税が5%とから8%に上がった。消費生活における税金が6割も上がったのだから、益々倹約精神は強固になる。
 これで、国民の消費生活のパターンは決定的になった。NHK初め日本のマスメディアは、日銀の金融緩和による円安と株高で、僅かに発生したバブル族の映像を流し、高級品が飛ぶように売れている、株高景気だと煽ったが、多くの国民は冷静で、そのような情報を歯牙にもかけていなかった。国家は、国民を締めあげることしか考えられない立場に追い込まれたのだから、必ず締め上げだけが到来する。こうなると、日本の国民のような人々は、想像以上にしぶとい。論理的には、国家と国民の我慢比べになっているのだが、絶対的に国民の我慢強いのである。また、もの言わないが狡猾で強かだ。』


以下は民主党衆議院議員・篠原孝議員のメルマガの一文だが、中々思い切ったことを書いている。本来、政治家は、こういうことを発信できなければならない。滅多に出遭わない、政治家の意見だけに、興味があるので、一読願いたい。ただし、同議員への支持を表明したわけではなく、ここに書いてあるような目線を発信したことを褒めている。

注:篠原議員は『成長主義という宗教に陥った人たちには、縮小とか小日本とかはとても受け入れられないのはよくわかる。しかし、軍事大国主義も経済大国主義も小国日本には分不相応であり、必ず破綻する。余計な物は造るなと財界人に言っても拒否するだろう。余計な物を買ったり使ったりするなと言っても、消費者はキョトンとするばかりである 。』の部分だが、前半はその通りだが、最後の『余計な物を買ったり使ったりするなと言っても、消費者はキョトンとするばかりである 。』は若い世代の状況把握が幾分不備に思われる、とあいばは思った。


≪縮小社会研究会』の主張がいつ日本で受け入れられるか-日本は分際をわきまえた生き方が必要-
 <流れが止まった京大キャンパス>
この秋、久方ぶりに母校京大のキャンパスを訪れた。
私の学生時代は、東大入試がなくなるなど、大学紛争が華やかな時代である。大学のキャンパスは中国の漢字(簡略体)の立て看板があちこちにあり、建物にもペンキでスローガンが掲げられていた。いってみれば雑然とした小汚いキャンパスだったが、何か温かそうな雰囲気も漂っていた。私はというと先輩からただで譲り受けた愛車(といっても古自転車)に乗り、大学のちょっと北にある上終町の3畳の下宿を往復していた。
40数年前と比べ、きれいになっていた。多分木々は大半がまだ同じだろうが、自転車は皆新品ばかりで、前輪を固定する自転車置き場に整然と並んでいた。土曜なのに本部の図書館の前に平日のように学生が群がっていた。私もあの中の1人だったと思うと、月日の流れを感じてじ~んと来るものがあった。

<京都ならではの縮小社会研究会>
しかし、私は感慨に浸っているわけにはいかなかった。丸一日かけて作成したレジメ(「環的中日本主義の勧め」)をもとに、「縮小社会研究会」で1時間講演をしなければならなかったからだ。
「縮小社会」などと言えば、それこそしみったれており通常は相手にされない。特に威勢のい いことばかりを並べ立てなければならない政治家にはとても受け入れられまい。そういう点、首都東京の喧騒から離れた京大だからこそ、まじめになって「縮小」について語り合えるのだろう。
この研究会は全国的には知られていないが、2008年に松久寛京大名誉教授(振動土学)を代表に京大の博士(教授)の皆さんが中心となって結成したグループであり、それ以来地道に研究会を重ねてきている。先輩格のグループに「エントロピー学会」がある。名称は異なるが、目指すべき理想社会は全く同じである。

<農的小日本主義>
世間はまだ経済成長の夢を捨てきれずにいるが、資源は枯渇に近づきつつある上に環境上の制約もあり、成長路線を突っ走ることはできなくなっている。 市場拡大も発展途上国に少し残されているが、それぞれに国が自ら必要なものを作り出している。
日本がいつまでも加工貿易立国を続けられるはずがなく、低成長は当然のこととして、縮小も視野に入れて将来設計をしていかなければならない、というものである。
詳しくは「縮小社会への道」( B&Tブックス 松久 寛編者)をお読みいただきたいが、こうした考えで本をまとめたのは私の方がずっと先であり、1985年「農的小日本主義の勧め」を上梓している。今回、同好の士ということで、私にお呼びがかかった次第である。

 <世界の先達の警鐘>
こうした考えは、世界ではケネス・ホールディングの来たるべき宇宙船地球号という考え方(1966)に始まり、「成長の限界」(ローマクラブ) (1972)、「Small isbeautiful」(人間復興の経済)(フリードリッヒ・シューマッハー)(1973)、「沈黙の春」(ルイチェル・カーソン)(1974)、「ソフト・エネルギー・パス」(エイモリー・ロビンズ)(1979)、「エントロピーの法則」(ジェレミー・リフキン)(1980)、「西暦2000年の地球」(アメリカ国務省)(1980)と続いた。
私も何となく世界がこのまま進んでいいのだろうかと漠然と考え始めていた。そして、これらの書物により、まんざら間違っていなかったと一安心した。
一方、石橋湛山の小日本主義に魅かれて書いたのが、上述の「農的小日本主義の勧め」である。資源・環境・エネル ギーの限界から導き出される、当然の帰結である。

 <気づいた日本の見識ある人々>
日本でいうと、「自動車の社会的費用」(宇沢弘文)(1974)、「エネルギーとエントロピーの経済学」「水土の経済学」(室田武)(1979・1982)、「人間復興の経済学」(小島慶三)、「石油文明の次は何か」(槌田敦)(1981)、「生命系のエコノミー」(玉野井芳郎)(1982)、「破滅にいたる工的くらし」(1983)、「未来へつなぐ農的くらし」「共生」(槌田劭)(1981-83)が同じ考えにより書かれている。
今でこそ多少現実味をもって受け入れられるが、高度経済成長のまっただ中の1980年代では、とてもまともに相手にされなかった。 私は、いろいろなきっかけで上記の室田、槌田兄弟等と知り合いになり「エントロピー学会」に入り、交流・勉強を続けてきている。
近年では、さすが感性の豊かな日本の若手も同様の主張をし始めた。
「定常型社会」(広井良典)(2001)、「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫)(2014)、「里山資本主義」(藻谷浩介)(2015)といった人たちである。

 1時間の講演の内容をここに再現するには紙数が足らない。そこで私のレジメのエキスをなぞる形で紹介するので、我々の考え方を読み取っていただきたい。
<日本型農業こそ21世紀の持続的農業
 縮小社会を農業でみると、
①労働生産性よりも土地生産性重視、
②鉱業的農業(資源収穫型農業)よりも環境保全型農業(資源循環型農業)、
③大規模単作農業よりも中小規模複合農業、
④安全、新鮮、味等の質を重視する日本人に原産地表示を徹底して国産を後押しするといった具合である 。
<食の世界の縮小社会化>
 世界各地で農場と食卓の距離を短くする方向に動き始めている。TPPの下、日本の農産物を輸出すればよい、などとトンチンカンなことが言われているが、縮小社会では食料の貿易量は減らさなければならならい。
① スローフード(イタリア)は、1986年北部の小さな町ブラに始まる。ファストフードに対抗したもので、世界中に広まっていった。
② 身土不二は、そもそも仏教で別の使われ方をしていたが、日本で大正時代から「地元の旬の食品や伝統食が身体に良い」という意味で使われ始めた。この考えが韓国に広がり、有機農業の標語として開花する。
③ 英語を話せるインテリフランス農民ジョゼ・ボベは、マクドナルドを「多国籍企業による文化破壊の象徴」に見立てて、中部の小村ミヨーに建設中だった店舗を破壊した。以後、反グローバリズムの旗手と評されることになる。
④ 1994年、イギリスの消費者運動家の旗手ティム・ラング教授がフードマイルを短くすることを提唱し出した。私が農林水産研究所所長時代に「フードマイレージ」(重量×距離:tkm)として発展させた。
⑤ 地産地消、旬産旬消(Produce Locally、Consume Locally:Produce Seasonally、Consume Seasonally)は、私が地のもの旬のものを食べるとよいということを四字熟語にしただけのことである。今は世界に広まっている。この延長線上でWood Mileage, Goods Mileage(韻を踏んでいる)を使い、環境の世紀には貿易量もなるべく少なくしたほうが良いという論拠にしている。これは自由貿易こそ世界の基本ルールと考える人には、狂った考えとしか映らないであろう。
<地産地消は縮小社会の理想を具現化
①農政:地域自給率が向上し、不耕作地(耕作放棄地)の有効活用ができる。
②消費者:顔が見える範囲で安心、トレーサビリティ(追跡可能性)の確保される。
③生産者:食べる人の顔が見えることは何よりの励み、高齢者の生きがいとなる。もちろん小遣い稼ぎにもなる。
④環境:フードマイレージはゼロに近い。
⑤地域経済:地域通貨(エコマネー)などいらない。
⑥地域社会:食が結ぶ連帯感が醸成される。食と農の世界で縮小社会にピタリのもとなる。
 <江戸時代は宇宙船地球号の考え方を実現していた>
 縮小社会の根幹は既に江戸時代にみられた。日本江戸末期から明治にかけて日本に来た外国人(ペリー、ハリス、イザベラ・バート、モース、 オルコック等)の多くが日本紀行文なり日記に、江戸期の日本の素晴らしさを記している。
それを渡辺京二が『逝きし世の面影』という名著で紹介しているが、 現在と比較列記してみるといかに日本が変わってしまったかが見えてくる。
(1)皆が幸せそうで笑顔であったが、皆しかめ面になってしまった。
(2)子どもを大切にしていたが、育児放棄や児童虐待の報道が絶えなくなる。
(3)あまり働かなかったが、形式上はワーカホリックに陥ってしまった。
(4)お祭り好きは同じだが、大きな祭りだけが残り、町や村の祭りは消えつつある。
(5)街や村も今もきれいだが、一昔前はもっときれいだったと思う。特に中山間地は、今は空き家と耕作放棄地だらけになってしまった。
(6)金持ちの生活も簡素だったが、今はどの家庭も部屋にモノがあふれている。
(7)余裕があり文化は贅沢だったが、今は経済優先、余裕がなくなりケチり始めている。
(8)何事も器用だったが、だんだん失われつつある。
(9)犯罪がなく安全な生活も、国際化の下過激化の傾向がある。
(10)人口は安定(中期以降3000万人)していたが、明治以降急激に増え、今は減少期に入っている。

 それから150年余、日本はうまく西洋方式を取り入れて今日に至ってい る。しかし、当時開国を迫り自分達の方式を押し付けんとした外交官たちの大半は、本音ではこのおとぎのような国、日本に変わってほしくないと願っていたのであろう。
 それと今、日本はTPPで日本の仕組みをかなぐり捨てて、日本的なるものを全て失おうとしているのだ。愚かとしか言いようがない。

<日本は分際をわきまえていきるのが賢明
 成長主義という宗教に陥った人たちには、縮小とか小日本とかはとても受け入れられないのはよくわかる。しかし、軍事大国主義も経済大国主義も小国日本には分不相応であり、必ず破綻する。
余計な物は造るなと財界人に言っても拒否するだろう。余計な物を買ったり使ったりするなと言っても、消費者はキョトンとするばかりである 。
 そこで私は「環的中日本主義」なる造語で中庸を得た生き方を説明しようと思って、このタイトルの講演をした。どこまでわかっていただいたかわからないが、同じ価値観を持つ人が徐々に増えていることは実感できた。
≫(篠原 孝 メールマガジン438号 1104 から転載  〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/ 〔opinion5759:151106 〕)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)
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●崩壊寸前の新旧アベノミクス 笛吹けど民は踊らず、専守防衛

2015年11月09日 | 日記
財務省と政治 - 「最強官庁」の虚像と実像 (中公新書 2338)
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●崩壊寸前の新旧アベノミクス 笛吹けど民は踊らず、専守防衛

以下のダイアモンドONLINEの嶋矢氏の“アベノミクスの矢がいつまでも的外れな「本当の理由」”と、野口氏の“安倍内閣“新3本の矢”は 経済政策失敗の目くらましだ”を連続して、掲載しておく。旧アベノミクスが相当な失敗をした上に、その失態を覆うように、新アベノミクスの矢を放つと言い出した、安倍晋三だが、完全に竹中平蔵中心のエセ経済学者の口車と、財務省マフィア、経産省マフィアの綱引きの中で、迷走していただけと云う事実が、かなり明確になっている。

しかし、わが国のマスメディアの中心に位置するNHK、朝日、読売、日経等々に至るまで、アベノミクスの大失態を総合的な視線で分析指摘しているメディアはゼロである。流石にダイアモンドサイトを見るくらい経済に興味がある連中は、90%、新アベノミクスに期待しないとアンケ―トに答えているが、嶋矢氏や野口氏のコラムでは、旧三本の矢と新三本の矢を比較しながら論を進めているのだから、「旧アベノミクスは成功したと思うか?」と云う設問も用意すべきだった。筆者の感覚では「旧は失敗」と見る向きは70%程度になるともうのだが、残念ながら、その設問は用意されていない。

二人のコラムには、それ相当の説得力はあるが、どこかに、幻想的な空気が漂う。共通している問題は、日本経済を考える時に、定番化した「内需」と云う論点がある。総需要は、国内の民間需要と政府需要と輸出の合計で、国内の民間需要が全体のおよそ65%、ほぼ3分の2を占めているため、国内の民間需要の増減がGDPのそれに与える影響力は大きい。また、国内の民間需要においては、家計の消費支出と住宅建設が全体の8割を占めていると云う実情を考えると、トンデモナイ分野(グローバル展開出来る輸出製造業)に光を当ててしまった。

財務省が放ち続けた「国家の借金は1000兆円!国民一人当たり800万円!」のマスメディア総動員体制のプロパガンダが功を奏し、何が起きたのか?そもそもは、国家が日本の場合、国民からの借金をしているにもかかわらず、「お前らは赤ちゃんまで含めて、一人当り800万の借金がある」と倒錯した言説を振りまいたことに端を発する。一定の範囲で生真面目な日本人は、「これは大変だ。国家が赤字だと騒ぐと云うことは、社会保障を徹底的に削減してくるだろう」そう読んだわけだ。

そのような考えが浸透したことで、「財政のバランスは大切だ」と云う言葉は、政治家、役人、国民に至る部分で、合言葉のようになった。しかし、個々の国民は、自分の家庭の支出は抑えなくてはならない。いずれ、支払われる保証は削減され、取られるものは増加の一途に違いない、そう思ったわけだ。つまり、政府のやることに反対しても、大した効果はないのだから、自営本能が働くのは当然だ。そこに、追い打ちをかけるように消費税が5%とから8%に上がった。消費生活における税金が6割も上がったのだから、益々倹約精神は強固になる。

これで、国民の消費生活のパターンは決定的になった。NHK初め日本のマスメディアは、日銀の金融緩和による円安と株高で、僅かに発生したバブル族の映像を流し、高級品が飛ぶように売れている、株高景気だと煽ったが、多くの国民は冷静で、そのような情報を歯牙にもかけていなかった。国家は、国民を締めあげることしか考えられない立場に追い込まれたのだから、必ず締め上げだけが到来する。こうなると、日本の国民のような人々は、想像以上にしぶとい。論理的には、国家と国民の我慢比べになっているのだが、絶対的に国民の我慢強いのである。また、もの言わないが狡猾で強かだ。

政治家も役人も企業人も、人様の金を動かすのだから、大胆であったり、乱暴であったり、大雑把なものだ。金の流れにさえ不正がなければ、ミスジャッジそのもので責任を取ることは稀である。仮に、取ると言っても、落選であり、辞任であり、退任天下りであり、社長から会長か顧問になる。エセ経済学者は、有識者であり、特段の責任はないように組まれている。それに対して、国民一人一人は、すべての判断と選択が、己に降りかかるわけだから、必死に防衛本能を発揮する。動物的な臭覚や肌感覚もあるだろう。国民一人一人の人生は、その個人が、常に責任を取る。この違いは、驚くほど違うものだ。財務省もマスメディアも、そこを誤った。

筆者の場合、経済成長なき国家、定常経済国家が正しい姿であり、仮に経済が成長することがあると云うことは、あくまで自然増であり、放置しても成長する要因があれば成長する。経済成長の要因を人為的な政策で作り出すと云う行為自体、過ちで、社会構造に歪みだけを残す。国内の需給バランス、国際的需給バランスで、それらは決定されるわけでマクロ経済政策云々で、簡単に作動させられるものではない。飽和的物質文化、飢餓的ではない生き方、少子高齢化これらを踏まえれば、定常経済の国家観を土台に置かない限り、永遠に経済政策は誤る。

以上のように、いま、国家の企みは、国民が復讐するつもりもないのだが、事実関係として、復讐劇が展開されている。酷く滑稽なわけだが、ありもしない経済成長余力を、幻影的な目的化している限り、永遠に日本の経済政策は失敗に帰する。おそらく、欧米先進国の経済成長神話も、早晩行き詰る。一歩でも早く、成長率ゼロ経済の発想を打ち出した国家が、事実関係に裏打ちされるわけだから、生き延びることが可能なのだろう。ただ、民主主義と云うものが、政治家の目標を「成長ゼロ社会」を目標に掲げた瞬間に、国民はソッポを向く。少なくとも、政党に政治をさせていると、どこの国でも、真実は日の目を見ない。政治の仕組みとは、げに奇怪なものだ。


≪ アベノミクスの矢がいつまでも的外れな「本当の理由」
■現実離れした新・三本の矢は
旧・三本の矢の失政隠しか?
 アベノミクスが第2ステージへ移った。安倍首相は「強い経済」を最優先に、新たな3本の矢を提唱した。これまでの「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」という3本の矢に加えて、「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」という新たな3本の矢を掲げて、「誰もが家庭で職場で地域で、もっと活躍できる1億総活躍社会」を目指す、と宣言した。
 強い経済では、2014年度に約490兆円であったGDP(国内総生産)を2020年には同600兆円に増やすことを目標に掲げている。子育て支援では、欲しい子どもの数をもとに算出する希望出生率1.8の実現を提案している。社会保障では、介護離職ゼロをはじめ、生涯現役社会の構築、待機児童ゼロや幼児教育無償化、3世代同居拡大などの支援策を掲げ、50年後も人口1億人を維持するという国家としての意思を明確にする、と明言した。2017年4 月に予定している消費税率の10%への引き上げについても、「リーマンショックのようなことが起きない限り、予定通り実施する」と強気である。
 来年夏に参院選を控えているとはいえ、安倍首相は先の第3次内閣の発足に際し、国民へ向けて発したメッセージとしてはいかにも軽く、言葉だけが踊 り過ぎていて、空しさを禁じ得ない。とりわけ「GDP600兆円」とか「希望出生率1.8」とか、揚句には「介護離職ゼロ」に至っては、いずれも現実離れした無責任な夢物語で、いかにも客寄せのセールストークに近い。
 国民が切望しているのは、地道で実現可能な政策目標であり、より具体的な施策の着実な有言実行である。そのためにも、第1ステージの総括が必要不 可欠であるが、安倍政権には今のところ総括する気配はない。むしろ、第2ステージの「新・3本の矢」は第1ステージの失政を覆い隠すための目くらまし政策であり、プロパガンダ(喧伝、吹聴)ではないのか、との厳しい批判も広がっている。
 アベノミクスの第1ステージがスタートしたのは、2012年12月のこと。間もなく3年になるが、結論を先に言えば、3本の矢はいずれも初めから的が外れており、焼き石に水ではなかったのか、と言わざるを得ない失政である。 第1ステージでは当初、円安や株高が進み、企業業績は回復、改善し、好転した。しかしデフレ脱却を決意して掲げた、物価を2年以内に2%へ上昇させるというインフレ目標はいまだ叶わず、GDPも今なお伸び悩んでいる。待望の景気回復や経済成長の押し上げ効果も芳しくない。打ち出してから2年半に及ぶ 異次元緩和の第1の矢は、年80兆円の国債購入など、かつてない大胆な施策を繰り出したが、笛吹けど踊らずで、物価にも景気にも響かず、期待外れに終わっている。最近は、追加緩和への待望論まで取り沙汰されている。
 機動的な財政運営の第2の矢は、計19兆円規模の3度にわたる財政出動などで、いわゆる有効需要政策を繰り出したが、これも眼に見えるほどの需要 効果を発揮しているとは聞いていない。民間投資を喚起する成長戦略の第3の矢に至っては、規制改革をはじめ、女性が輝く社会の実現など、多くの施策を次々と公表したが、そのほとんどが手つかずのままで、期待を裏切っている。
 円安効果は、確かに外国人観光客の増大で「爆買い」が低迷する内需を下支えしているが、その一方で輸入価格の上昇が個人消費を冷やしている。異次 元緩和による国債の大量購入も、課題解決の負担を先送りしているだけで、決して賢い善政ではない。日銀が大量に買い入れた国債はいずれ売却しなければならず、それまで国債価格を下落させずにいかに保全するか。いわば出口で軟着陸するための出口戦略が至難である。出口戦略は米国でも10年、20年の先行き見通しを要しており、日本ではさらなる歳月を要することは必至である。

 ■アベノミクスの放つ矢は
なぜ的が外れているのか?
 それにしても、アベノミクスはなぜ、的が外れているのか。その要因には3つある。1つには、政策立案の大前提となる現状認識に決定的な事実誤認が あること。2つには、日本経済の長期低迷の要因分析をあえて怠り、そのすべてを非科学的な「バブルの崩壊」で片づけ、それ以上の真摯な追求を蔑ろにしていること。そして3つには、視点と問題意識が総じて、企業などの供給や生産サイドへの配慮を優先し、消費者や生活者などの需要や消費サイドへの配慮を無意識のうちに後回しにしていることである。
 安倍政権にとっては、いずれもその背後に「不都合な真実」が隠されているため、故意に覆い隠したかったがための手抜き策ではなかったか、と勘繰っている。
 さて、前述の第1の要因は、アベノミクスの原点から検証していく必要がある。2013年1月の国会において、安倍首相は所信表明演説の中で、次のように述べている。 「我が国にとっての最大かつ喫緊の課題は、経済の再生です。(略)これまでの延長線上にある対応では、デフレや円高から抜け出すことはできません。だからこそ、私はこれまでとは次元の違う大胆な政策パッケージを提示します。断固たる決意を以って、強い経済を取り戻していこうではありませんか」
 これがアベノミクスの趣旨と狙いであるが、そのアベノミクスを必要としている日本経済の現状認識については、閣議決定した「基本方針」の中で次のように記述している。 「1990年代初頭におけるバブル崩壊を大きな節目として、日本経済は現在に至る約20年間、総じて低い経済成長に甘んじてきた。(略)我が国が取り組むべき課題は、先ず第1に長期にわたるデフレと景気低迷から脱出することである。(略)安倍内閣は相互に補強し合う(略)3本の矢、いわゆるアベノミクスを一体として、これまでと次元の異なるレベルで強力に推進していく」

 ■「失われた20年」は事実誤認?
日本経済は1997年まで成長を維持した
 この現状認識には極めて基本的な事実誤認があり、看過できない。真実は1つなので、いかなる統計を見ても同じであるが、事実は1990年から 1997年までは一貫して右肩上がりで成長を続けているということだ。90年を100とすると、97年は112で、この間の年平均成長率は2.2%であっ た。それが右肩下がりの低迷期に陥るのは98年からである。97年を100とすると、2013年は91で、この間の年平均成長率は0.6%のマイナス成長 である。
 したがって、日本経済が長期停滞に陥り始めたのは、98年以降のことなのである。「失われた20年」と言われてからすでに久しいが、その起点は決して90年ではなく、実は98年からのことであったわけである。今、改めて「失われた20年」を正確に言い換えれば、今年は「失われてから18年」目を迎えている。    日本経済の長期低迷を脱して、再生させる狙いはアベノミクスの本命中の本命の狙いで、3本の矢はいずれもこの的を射抜くために集中させていたと言っても過言ではない。それにもかかわらず、肝心な長期低迷の実態把握を「90年代の初頭におけるバルブ崩壊を大きな節目として、日本経済は現在に至る約 20年間、総じて低い経済成長に甘んじてきた」とは一体、どういうことか。あまりにも大雑把で、事実を大きく誤認、逸脱している。
 これでは、長期低迷から脱して、再生させるために欠かすことができない要因の分析、究明も正確にできなければ、把握もできず、ましてや的を射た政策や対策を打ち出すことができるはずもない。

 ■1998年から始まった長期低迷で
 雇用者報酬と国内民間需要が下落
 では、日本経済はなぜ1997年をピークに、98年から右肩下がりのマイナス成長に陥ったまま、浮上できずにきてしまったのか。国民所得統計によると、長期低迷の背後には98年を起点に低迷傾向を辿り出したGDP(国内総生産)の増減傾向とほぼ軌を一つにして、雇用者報酬の下落傾向と国内の民間需 要の減少傾向を見て取ることができる。
 雇用者報酬とは、国内で雇用されて働く人々が1年間に受け取る給料や賞与、手当などの総額である。これが97年までは一貫して右肩上がりで、それも急カーブで増え続けるが、98年からは右肩下がりに転じて、下降線を辿っている。
 国内の民間需要とは、家計の消費支出と住宅建設で、全体の8割を占めている。これも97年までは右肩上がりで増化傾向を辿るが、98年からは若干の増減を繰り返しながらも、減少傾向を辿っている。
 雇用者報酬と国内の民間需要とGDPの相関関係は、極めて高い。雇用者報酬が下がれば、国内の民間需要は減るし、国内の民間需要が減れば、日本経 済の総需要が減る。総需要が減ればGDPを減らし、押し下げることになる。逆も真なりで、雇用者報酬が上がれば、最終的にGDPを増やし、押し上げること になる。
 総需要は、国内の民間需要と政府需要と輸出の合計で、国内の民間需要が全体のおよそ65%、ほぼ3分の2を占めているため、国内の民間需要の増減がGDPのそれに与える影響力は大きい。
 日本経済が97年をピークに、98年以降は長期低迷に陥り、「失われてから18年」を余儀なくされているのは、よく世界経済のグローバル化や新興国の台頭など、その主因を外圧に求める向きもある。しかし、国際比較統計からはそれを認めることはできない。なぜならば、97年を100として98年以降のGDPと平均賃金の推移を国際比較すると、欧米の主要各国はいずれも右肩上がりの上昇傾向を辿っている中で、日本だけが取り残され、GDPも平均賃金も共に緩い下降線を辿っているからである。
 98年からの日本経済の長期低迷の要因は、紛れもなく国内要因によることは明白である。だからと言って、これをも非論理的な「バブルの崩壊」でフタをして、終わりにしては真相の究明にならない。

 ■「賃金の上がらない」構造が体質化 これこそが日本経済の長期低迷の主因
 実は第2の要因はこの真相の中に隠されていたのである。つまり、総需要やGDPを押し下げてきた先行要因の雇用者報酬が97年までは順調に増加傾向を辿ってきたのに、98年からは急に下降線を辿り出したのはなぜか。この背景にこそ、真相の核心が隠されている。
 結論から先に言えば、その時々の政権が96年以降に繰り出してきた日本経済の構造改革政策が、日本経済の秩序をいわば「賃金の上がらない」構造へ 改革し、体質化させてすでに久しく、その構造と体質が今や骨肉化して、今日に及んでいる事実と現実こそが日本経済の長期低迷の主因である、と確信している。
 それはどんな事実で、現実なのか。ひとことで言えば、戦後の高度成長以来、日本経済の成長、発展の歯車を底辺から支え、推進してきた企業戦士と いった、いわゆるエンジン役を果たしてきた「雇われ軍団」が、取り返しのつかないモラールダウン(やる気の委縮)に陥っていることである。
 歴代の政権が歳月を費やして労働者派遣法の相次ぐ執拗な改正で同軍団を正規、非正規に分断し、差別と格差で疎外し、労働分配率の低下で蔑ろにして きたため、雇われ軍団のやる気をはじめ、生産性の向上力や購買力、さらには生活力から生きる力まで萎えさせてきた事実と現実は、日本経済の足腰を弱め、再生への復元力を失わせている。「失われた20年」で言うところの失ったものとは何か、と問われれば、残念ながら「雇われ軍団」のモラールダウンと言わざるを得ない。
 当時の構造改革政策は、橋本政権の96年からの同政策をはじめ、2001年から09年にわたる小泉、安倍(第1次)、福田、麻生の各政権がそれぞれに同名の政策を次々と繰り出して、日本経済を「賃金の上がらない」構造と体質へ、いわば上塗りしてきた経緯がある。このことは、07年版の『経済財政白 書』や12年版の『労働経済白書』も認めている。両白書とも、企業業績や景気が回復、改善して、企業の収益構造には賃上げの余地が十分に出てきているにもかからず、雇用者の賃金が上がらなくなっている実態を分析している。
 ただ、白書はこの実態分析の結果を客観的に認めているだけで、これがその時々の各政権が繰り出してきた構造改革政策によってもたらされたものと は、触れていない。しかし、日本経済を「賃金の上がらない」構造と体質へ十数年にわたって改革し、その構造と体質が日本経済を長期低迷へ追い込んだ悪循環の因果関係は疑う余地もなく、この事実と現実に対する現状認識への欠如が的外れの元凶である、と筆者は確信している。
  政府の繰り出す規制緩和策が労働者派遣法の相次ぐ改正などで、企業の雇用形態を大幅に緩和、多様化した結果、非正規雇用労働者がこの十数年にわたって緩やかに増え続け、14年には全雇用者の37.4%、1920万人に及んでいる。非正規雇用とは、臨時、契約、派遣、パートタイマー、アルバイトなど、 いわゆる正規雇用以外の有期雇用のことである。最近の雇用形態は正規雇用を減らして、相対的に賃金の低い非正規雇用を増やす傾向へ傾いているため、雇用者数は増えても、賃金水準を下げて、購買力を弱め、内需やGDPを押し下げるだけで、押し上げることはない。

 ■労働者派遣法改正が象徴する
強きを扶け、弱きを挫く政策
 これが、的外れの第3の要因である。安倍首相は「アベノミクスで雇用は100万人以上増えた」と自画自賛する。安倍政権が発足する前の12年春からの3年間で、非正規雇用者は確かに約178万人増えたが、正規雇用者は逆に約56万人も減っている。企業は正規雇用者が退任しても、新規採用は非正規雇用者で補充し、なかには企業側の都合だけで正規社員を非正規へ、勝手に切り下げる傾向も広がっている。
 先の国会で成立した労働者派遣法の改正では、企業は働く人材さえ代えれば、派遣社員を雇い続けることができるようになるため、労組側は「正規を非正規へ置き換える動き」に拍車がかかるのは必至、と恐れている。
 労働者派遣法は、価値観やライフスタイルが一段と多様化していく中で、働き方や社会参加への選択肢を豊かにしてくれる点で、ごく一部の人たちに とっては確かにプラス面も無視できない。しかし、同法の思想をはじめ、趣旨や狙い、理念や目的が非正規の雇用形態を法的に正当化する点で、雇う側には圧倒的に利するが、雇われる側には絶対的に不利となる悪平等な法律である。
 アベノミクスは、意図的か否かは別として、結果として紛れもなく「強きを扶(たす)け、弱きを挫(くじ)いて」いるのが最大の欠点であり、労働者派遣法の規制緩和はその象徴である。
 アベノミクスは、日本経済の「賃金の上がらない」構造と体質からの脱皮策を最優先課題として、出直しを急ぐべきである。

 ■筆者紹介――――嶋矢志郎 ジャーナリスト/学者/著述業。東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社(記者職)入社。 論説委員兼論説副主幹を最後に、1994(平成6)年から大学教授に転じ、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授などを歴任。この間に、学校法人 桐朋学園理事兼評議員をはじめ、テレビのニュースキャスターやラジオのパーソナリティなどでも活躍。専門は、地球社会論、現代文明論、環境共生論、経営戦 略論など。著書・論文多数。
 ≫(ダイアモンドONLINE:経済・時事―DOL特別レポート・嶋矢志郎)


 ≪ 安倍内閣“新3本の矢”は
 経済政策失敗の目くらましだ
安倍晋三総理大臣は、新しい3本の矢を放つとした。これは、「金融緩和政策から足を洗う」という政府の政策転換の表明だ。2%のインフレ目標は、政府にとって重荷になっている。

 ■金融緩和政策からの撤退が 明白に表明された
 安倍晋三総理大臣は、9月24日、総裁選出後初めての記者会見を行なった。その中で、「本日からアベノミクスは第2ステージに入る」とし、(1)国内総生産(GDP)600兆円、(2)出生率1.8、(3)介護離職ゼロという新しい3本の矢を放つとした。
 この中に、金融緩和政策や2%のインフレ目標は入っていない。これまでアベノミクスの金看板だった金融政策は、第2ステージでは消えたことになる。
 マクロ政策(金融緩和政策や財政拡大政策)からの撤退は、すでに6月の成長戦略(「日本再興戦略」)の中で、「デフレ脱却を目指して専ら需要不足 の解消に重きを置いてきたステージから、人口減少下における供給制約の軛を乗り越えるための腰を据えた対策を講ずる新たな『第二ステージ』に入った」という形で示されていたが、それがより明確な形で表明されたことになる。

 ■転換の理由は、経済政策失敗から 国民の目をそらすこと
 マクロ政策から撤退する理由として、それが失敗したからだとは、もちろん言っていない。安倍総理は、これまでの経済政策の成果に言及し、「(経済情勢は)もはやデフレではないという状態まで来た。デフレ脱却はもう目の前だ」と述べた。
 しかし、次項で述べるように、消費者物価上昇率はマイナスになっている。多分、今年いっぱい程度はこの状態が続くだろう。そして、さまざまな指標が経済の停滞を示している。今回の政策転換の本当の理由は、これまでの経済政策の失敗から国民の目をそらすことだ。
 ・安倍内閣が政権を取って以来、円安が進行して企業の利益が増加し、それによって株価が上昇した。アベノミクスの支持者は、これが成果だと言うだろ う。しかし、円安による企業の利益は、健全なものとは言えない。しかも、円安によって本来期待される輸出増大効果は実現していない。
 したがって、私は株高がアベノミクスの成果を表すことにはならないと思う。株価の上昇は所得分配の悪化をもたらすだけであり、日本経済を回復させるものでも、回復の結果でもない。 ただ、それにもかかわらず、投機家や経済界が株高を支持してきたことは間違いない。株価こそが安倍内閣の経済政策に対する信頼をつなぎとめてきた。
 ところが、その最後の砦が崩れつつある。8月末以降の株価下落は、アベノミクスにとって深刻な事態である。しかも、次項で見るように、インフレ目標は実現に程遠い。したがって経済政策論議をマクロ経済の問題から引き離すことが必要と考えられているのである。

 ■間違いが明白になった2%目標 日銀はハシゴを外された
 政府がいま最も触れたくないのは、「2%インフレ目標」だろう。
 原油安を背景に、日本銀行が目安とする生鮮食品を除いた消費者物価(コアCPI)の前年比上昇率は、2015年8月にはマイナスに落ち込んだ(図表1参照)。
  消費者物価は、輸入物価の動向で大きく影響を受ける。その半面で、国内の需給関係にはほとんど影響されない。だから、簡単に予測できる。
 図表2に示すように、輸入物価の変化がほぼ半年程度の時間遅れを伴って、対前年比で10分の1程度の規模で、 消費者物価指数の変化となって現れる。最近の状況を見ると、円安による物価上昇効果が薄れ、そのかわりに原油の影響が明確になっている。このために消費者 物価の伸びがマイナスになったのだ。
 15年秋の消費者物価上昇率がマイナスになるだろうことは、拙著『2040年問題』(第2章、ダイヤモンド社、15年)ですでに予測したところだ。
 輸入物価指数の最近の対前年比はマイナスなので、消費者物価指数前年比も、少なくとも今年いっぱい程度は、マイナスの状態が続くだろう。したがって、日銀の目標は達成できない。


  

 ただし、これは、日本経済にとっては望ましいことだ。とくに原油価格下落は、明らかに望ましい事態だ。国民にとって望ましい事態が日銀の目標に反するという事態は、なんとも説明に窮する。
 一方、円安の影響で食料品価格が上昇するという傾向が明確に表れている。食品については確かにデフレ脱却が実現しつつある。しかし、その結果、何が起こっているかといえば、買い控えだ。そして、これが消費全体の伸びを抑制する。
 問題は、2%目標を実現できるかどうかではない。「物価が上がれば経済が活性化する」という基本的な考えが誤っていることである。

■GDP600兆円の実現には 物価の安定・消費増加が不可欠
 GDP600兆円は実現できるだろうか? もちろん、想定する数字を操作すれば、どのような結果を示すこともできる。実際、内閣府による「中長期の経済財政に関する試算」(2015 年7月)によると、「経済再生」ケースでは、21年度におけるGDPは、616.8兆円となる。ただしこれは、18年度からの実質成長率が継続的に2%を超えるとか、17年度の消費者物価指数が3%になるなど、かなり非現実的な想定を置いた上での結果である。この数字は、GDP600兆円が実現できそうであることを示すものではなく、逆に、それがいかに難しいかを示すものだ。
 実際、より現実的な見通しである「ベースラインケースケース」では、試算の限界である23年度までにGDPが600兆円を超えることはない。20年度では552.1兆円だ。
 過去の実績を参照すれば、GDP600兆円の実現はかなり困難と考えざるをえない。
 日本の名目GDPは、1990年以降(2007年を除いては)510兆円未満だ。リーマンショック後は、14年まで500兆円未満の状態が続いた(図表3を参照)。
 IMFの予測では、日本のGDPは今後成長すると予測されているものの、20年においても534兆円である。
  

 


 成長のパタンも重要だ。公共投資を増やすことによって政策的に成長率を押し上げるのも、原理的には可能である。ただし、現実に重要なのは、GDPの約6割を占める個人消費を増やすことだ。
 現実の経済では、消費税率引き上げに伴う反動減の影響一巡後も、個人消費は低迷を続けている。最近では、先に述べたように、食料品などの物価上昇が原因だ。
 だから、個人消費を増やすには、物価を安定させることが必要であり、そのためには、金融緩和を停止する必要がある。
 政府部内にも、円安・物価高は望ましくないので、2%のインフレ目標は望ましくないとの意見が出てきているようだ。

■金融緩和の巨大なコスト いま必要なのは追加緩和ではなく出口戦略
 2013年に金融緩和を導入したときの論理から言えば、いまインフレ率が低下し株価も下落しているのだから、追加緩和が必要ということになるだろう。実際、10月末の追加緩和を予測する声もある。しかし、そうしたことをしても、成果は得られないだろう。
 中国で株価対策をとったにもかかわらず、株価の下落を阻止できなかったのと同じことが起きる。だから、追加緩和をしても政策に対する信頼が低下するだけのことである。
 多くの人は、追加緩和がないと金融政策の効果がないような錯覚に陥っている。しかし、金融緩和政策は現に継続中なのであり、追加緩和が行なわれなくても、大量の国債購入が実行されていることに注意しなければならない。
 これによって、市中に存在する国債が品薄になる。また、国債発行に対する制約がなくなる。そして、財政規律が弛緩する。実際、来年度予算に対する要求は膨れ上がっている。
 ・また、日銀に巨額の国債残高が積み上がる。仮に金融が正常化して金利が上昇すれば、巨額の損失が発生する。
 金融緩和のこうしたコストを考えると、いま必要なのは、追加緩和でなく、緩和政策の出口を探ることである。

■生産性向上のための 構造改革はどこに消えた?
 今年の6月に発表された「日本再興戦略」では、生産性の向上が必要であるとした。この認識は正しい。しかし、今回の安倍総理大臣の会見では、それはどこかに姿を消してしまった。
 新しい技術によって新しい可能性が開けている。それを現実化するためには、参入規制を緩和する必要がある。これができるかどうかが、日本の将来にとって大きな意味を持つのだが、そうした議論はなくなってしまった。
 いまひとつ興味深いのは、「日本再興戦略」では、人工知能やビッグデータなどかなり高度な技術について言及されていたのだが、それが今回は消えて しまったことだ。年金機構の情報漏出問題が明るみに出て、日本のサイバーセキュリティは人工知能やビッグデータを使うにはあまりにお粗末であることが露見したことの影響だろうか?
 一昨年の成長戦略では、コーポレイトガバナンスが重要だと強調されていた。しかし、ガバナンスの最先端の仕組みを備えていると言われた東芝で、不正経理事件が発覚したため、コーポレイトガバナンスという言葉は、どこかに吹き飛んでしまった。
 生産性の向上こそ構造政策の柱である。それを実現する具体的な手立てが、流行語を追いかけるだけで、このようにコロコロ変わるのでは困る。

 ■見えない社会保障制度の方向性 出生率引き上げより移民を検討すべき
 「需要政策から構造政策へ」ということの実態は、マクロ政策の効果が怪しくなったので、社会保障や出生率の問題にすり替えようということだ。
 社会保障制度への取り組みが必要なことは、誰でも認める。ただし、それは、「介護離職ゼロ」というような狭い範囲の問題ではない。
 問題は、社会保障制度全体としていかなる方向を目指すかだ。とりわけ、需要を所与として負担増加を求めるのか、それとも負担を抑えて需要をそれに 合わせるのかについての基本戦略が必要である。この2つは財政収支という点からいえば同じだが、政策の内容はまったく異なる方向のものだ。負担増加を求めるとすれば、どこまで求めるかが問題だ。
 安倍総理大臣は、出生率を引き上げるという。出生率が上昇するのは、望ましいことである。しかし、それによって経済問題が解決されるわけではない。これが何らかの政策を行なっているという免罪符に使われては困る。
 雇用情勢が好転していると言うが、その実態は、若年者労働力の減少による人手不足の顕在化だ。労働力不足が問題であるのであれば、まず何よりも、移民を検討すべきだ。

 ■消費税率を10%に引き上げても 財政再建目標は達成できない
 もうひとつの重要な課題は、消費税率の引き上げである。2017年4月からの消費税率10%への引き上げについて、前記の会見で安倍総理大臣は、「リーマンショックのようなことが起こらない限り、予定どおり実施する」と述べた。ここには、つぎの2つの問題がある。
 第1は、予定どおりの引き上げが行なわれるかどうかに、まだ不確実性があることだ。税率の引き上げが行なわれなくても、直ちに財政赤字が拡大するわけではない。しかし、財政再建に対する政府の基本的な姿勢を示すという意味で、これは重要なのである。
 第2は、消費税率を10%にしたところで、財政再建目標は実現できないことだ。しかも、政府は財政再建目標としてプライマリーバランスを用いているが、財政再建の問題は、プライマリーバランスの問題だけではない。
 すでに日本国債の格付けは引き下げられている。それが進んで日本経済に対する信頼が失われ、日本売り的な資本流出が生じれば、日本は破たんするだろう。

 ■これまでの経済政策に関する 「中立的第三者評価委員会」が必要だ
 いま必要とされるのは、思いつき的キーワードを乱発することではない。まず、これまでの経済政策についての客観的な評価が必要だ。
 金融緩和は、本当は何を目的にして行なわれたのか? そして実際にはどのような効果を発揮したか? これらが不明なまま、2年間半が過ぎてしまった。
 税制面では、法人税減税を行った。その効果の検証も必要である。また春闘に介入して賃金を引き上げようとしたが、実質所得ははかばかしく増加せ ず、消費も増加しない。設備投資も増加しない。輸出も増加しない。結局のところ、これまでのGDP成長は、消費税増税前の駆け込み需要と財政拡大によって実現しただけのことなのである。
 経済財政白書は、本来は以上のような問題に関して客観的な評価を示すべきだ。しかし、実際には、政権に気を使って、その役割を果たしていない。
 最近では、「中立的第三者評価委員会」がはやりだが、そうした評価が最も必要とされるのは、政府の経済政策ではないだろうか? もっとも、本来なら、国会の委員会がその役割を果たすべきなのであるが。

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〈主な目次〉
第I部 デフレ脱却で経済落ち込む
 第1章 円安で得した人と損した人
 第2章 日米逆の金融政策の帰結
 第3章 実体経済はなぜ落ち込む?
第II部 労働力不足と社会保障の膨張
 第4章 労働力不足経済に突入する
 第5章 医療と介護の問題はどうすれば解決できるか
 第6章 公的年金の問題はどうすれば解決できるか
 第7章 財政の将来はきわめて深刻  第8章 どうすれば成長を実現できるか?
 
≫(ダイアモンドONLINE:経済・時事―野口悠紀雄・新しい経済秩序を求めて)

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●なんか変?ロシア機爆発 英米がISテロ実行黙認手助け疑惑

2015年11月08日 | 日記
空海
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●なんか変?ロシア機爆発 英米がISテロ実行黙認手助け疑惑

エジプト上空で起きたロシア民間機の木っ端微塵事故は驚きだ。欧米メディアの話では、おそらくIS関係の人間が、貨物室に爆薬を仕掛けたものだと云う情報に覆われた。メディアリテラシー能力を発揮するのであれば、何ゆえ容易に、ロシア機の事故をアルカイダとか、ISの仕業に決めつけようとするのか、変だな?と思うべきである。このロシア民間機の墜落が、航空機の不備なのか、テロによる爆破なのか、エジプト上空における撃墜なのか、早々に決着させようとしている米英の姿勢に疑惑の目線を向けておくことは、国際的事実認識の中で重要だ。

筆者は、このロシア機の事故で、速攻頭に浮かんだのはウクライナ上空におけるマレーシア機の事故のことだ。この墜落事故の解明には、非常に大掛かりな国際的な調査団と称する調査体制を準備し、並々ならぬ大仰ぶりで、公正公平な調査をするような素振りを演出したのが、米欧陣営の態度だった。そして、同じ陣営に属するオランダで、あらゆる公正公平な演出を準備して、緒機関に渡る調査をしている振りをして、地対空ミサイルによる撃墜だった、と結論づけた。しかも、そのミサイルは、ロシア製のブークだと断定した。ただ、国際情勢を考慮したのか、ウクライナ軍なのか、ウクライナ東部の反政府軍のものなのか特定しなかった。

この事件と、今回の問題がリンクしているかどうか、それは筆者にも判らない。ただ、記憶を呼び戻しただけだが、この時の、米英陣営の指導者たちの多くが、口をそろえたステートメントを発しているのが印象的だった。誰も、どうなったのかを目撃もしていないのに、西側の政治かもメディアも、犯人はウクライナ東部の親ロシア反乱軍のブークによる撃墜だと言わんばかりだった。そのような記憶を参考に、今回のロシア機墜落事故の顛末を見る必要がある。

 ■マレーシア機墜落時の参考発言
・オランダ ティメルマンス外相「200名近い国民の命を失い、オランダ国民の心に穴があいた。家族を亡くした悲しみと民間の航空機が撃墜されたことへの怒りは計り知れない。」
・オーストラリア ビショップ外相「野蛮な行為が徹底的に捜査され、犯罪者に裁きが下るまで、できることはすべてやり続ける。」
・アメリカ パワー国連大使「われわれは現場を仕切る親ロシア派を非難しているが、ある国からはほとんど非難の声が聞こえてこない。それはロシアだ。」
・アメリカ オバマ大統領「プーチン大統領には、親ロシア派を調査に協力させる直接的な責任がある。」
・EU アシュトン上級代表「プーチン大統領に責任を果たすよう求めた。 できるはずだし、やらなければならない。」
・ドイツ シュタインマイヤー外相「きょう結論を出さなければならない。 (ロシアに)より大きな圧力をかける必要がある。」


まあ、以上のような感じで、調査に入る前から、ロシアが悪い、プーチンは素直に協力すべきと云った言説に溢れかえっていた。結局、中途半端な結論でお茶濁しが行われたのだが、このような半端な結論しか書けなかった理由は、ロシア軍が、彼らの情報網を元に、多くの欧米のロシア説に反駁情報を提示したからだろう。オランダに仰々しく国際調査と銘打って作られた機関でさえ、ウクライナ東部の親ロシア反政府軍の仕業とまでは断定できなかった。にも拘らず、上述のように、政治家たちは、調査が緒につかない段階から、ロシアやプーチンをやり玉に挙げて、口汚く罵ったのである。

このマレーシア機事故の経緯を念頭において、公正公平を意識して、エジプトにおける、ロシア機事故を観察しておく必要がある。今回は、英国キャメロン首相が、口火を切った。そして、欧米メディアが、これを裏づけるように、様々な傍証情報を流しはじめた。そして、とどめの積りかどうか判らないが、オバマまでが断定的発言をしている。欧米に属するすべての者がISの声明と相通じてでもいるように、IS乃至はアルカイダ勢力が仕掛けた爆弾によって、爆破炎上木っ端微塵説を声高に喧伝している。

ここで、最も重視しなければならないのは、なぜ、こんなに早々に飛行機の貨物室に積まれていた爆弾によるものだと認定できたのか、と云う問題だ。マレーシア機の場合と違い、今回のロシア機の場合、事前に相当の情報を米英が入手しており、黙認した可能性が非常に強いと云う点だ。仮に、シリアにおける活動で大きなダメージを受けたイスラム国の犯行であったとしても、多くの情報を米英は共有していながら、ロシア当局に一切伝えず、テロ行為を黙認したと云う事実の方が衝撃的だ。もっと疑えば、イスラム国の犯行だと見せかけるくらいの事は、米英諜報機関でも行えることなのだと云う現実も考えの片隅に置いておいても良いだろう。


■喧伝(プロパガンダ報道)注:これを日本のメディアで探すなら、時事通信が悪の巣窟化しているので、大変に便利と云うか重宝する(笑)。以下が時事が伝える、主に米英勢力の喧伝情報である。

 *標的の約9割は反体制派=ロシアのシリア空爆批判-米高官
【ワシントン時事】パターソン米国務次官補(中近東担当)は4日、下院外交委員会の公聴会で証言し、ロシアによるシリア空爆の「85~90%が穏健な反体 制派を標的にしたものだ」と批判した。オバマ政権は、反体制派に年間1億5000万ドル(約180億円)相当の支援を行っている。
 シリアのアサ ド政権と同盟関係にあるロシアは9月末から、過激派組織「イスラム国」を攻撃する名目で、シリアで空爆作戦を展開。米治安当局者らがロイター通信に語った ところよると、シリア国内には現在、約4000人のロシア兵がいると推定されている。 (2015/11/05-06:42時事通信)

 *ロシア機墜落、「爆破」か=過激派組織関与も-英米
【ロンドン、ワシントン時事】英首相官邸は4日の声明で、ロシアの旅客機が10月31日にエジプト・シナイ半島で墜落したことについて、「新たな情報によ り、爆破装置が墜落原因である可能性が高いことを懸念している」と明らかにした。また、米CNNテレビは、米政府当局者が過激派組織「イスラム国」などが 爆弾を仕掛けた可能性を示唆したと伝えた。 英政府は墜落機の出発地であるシナイ半島のシャルムエルシェイクと英国間の航空便を4日夕以降、一時停止する措置を取った。さらに、航空専門家をシャルムエルシェイク空港に急派。現地で取られている安全手続きを調査し、今後何らかの対策が必要かどうか決定する。
 キャメロン英首相は4日夕、関係閣僚による緊急閣議を開き、この問題を協議した。シャルムエルシェイクはリゾート地として英国でも人気があり、BBC放送によると、現在も約2000人の英国人が滞在している。
 エジプトのシシ大統領は4日夜にロンドン入りし、5日にキャメロン首相と会談することが、今回の措置の前から決まっている。会談ではロシア機墜落問題も議題になるとみられる。
 複数の米メディアは4日、情報機関当局者が「ロシア機は爆弾で墜落した」と分析していると報道。CNNテレビは「イスラム国、あるいは関連組織が爆弾を機内に設置した」とする当局の見方を紹介する一方で、情報機関は墜落原因に関して最終結論を出していないとも伝えた。
 カービー国務省報道官は4日の記者会見で、一連の報道について「現在進行中の事故調査にはコメントしない」と述べるにとどめた。一方、アーネスト大統領報道官によると、米航空各社は現在、シナイ半島の上空を運航していない。 (2015/11/05-10:30時事通信)

*過激派の交信、衛星で傍受か=ロシア機墜落爆弾説-英報道
【ロンドン時事】エジプトのシナイ半島で起きたロシア旅客機墜落に絡み、英紙タイムズは6日、過激派組織「イスラム国」がシリアとエジプトの間で行った交信の内容を米英両情報機関が「衛星を使って」傍受していたと報じた。情報源は明らかにしていない。
 米英両国からは、墜落原因について「爆破の可能性が高い」と爆弾説が出ているが、こうした情報が基になっている可能性がある。
 タイムズ紙は「乗客か空港職員によって爆弾が機内に持ち込まれていたと分析官らは(交信の)内容や調子から考えている」と伝えた。英首相官邸はこの報道について「情報活動の詳細については否定も肯定もしない」と答えている。 (2015/11/06-23:05時事通信)

 *「機内に爆弾の可能性」=ロシア機墜落で-米大統領  
【ワシントン時事】オバマ米大統領は5日、エジプトのシナイ半島でロシア旅客機が墜落した原因について「機内に爆弾が設置されていた可能性がある。これ を真剣に受け止めている」と述べた。米大統領がロシア機墜落でテロの可能性に言及したのは初めて。米メディアのインタビューで語った。 一方で大統領は、米政府として事故原因を特定するまでに時間がかかるとも話した。
 アーネスト大統領報道官も5日の記者会見で、ロシア機墜落の原因に関して「テロリストの関与の可能性を含めて、いかなることも排除しない」と語った。ハモンド英外相は5日、過激派組織「イスラム国」の犯行の可能性が高いとの見解を示していた。
 アーネスト氏はまた、複数の空港からの米国行き旅客機の安全確保で新たな措置を検討していることも明らかにした。措置の内容が決まれば、国土安全保障省が発表するという。
 ロシア機墜落の原因をめぐっては、クラッパー米国家情報長官が当初、テロを示す直接の証拠は関知していないと述べていた。 (2015/11/06-09:10時事通信)


*爆破説に不快感=英首相と電話会談-ロシア大統領
【モスクワ時事】ロシアのプーチン大統領は5日、キャメロン英首相と電話会談し、英国がエジプト東部シナイ半島のロシア旅客機墜落の原因を「爆破」と公言していることに不快感を示した。大統領は「墜落原因の評価には、公式な捜査情報を利用する必要がある」と指摘した。
 ペスコフ大統領報道官も「可能性がある原因を提示できるのは捜査チームだけだ。他の仮説は未確認情報や推測にすぎない」と述べた。
 また、ザハロワ外務省情報局長は、英国が墜落原因に関する独自情報があると主張しながら、ロシア側に提供していないとして「ショックを受けている」と語った。
 一方、コサチョフ上院外交委員長は、英国がシナイ半島シャルムエルシェイクとの航空便を停止した背景には「ロシアに心理的な圧力をかける狙いがある」と主張した。 (2015/11/06-00:23時事通信)


このような流れでロシア機墜落事件は進んでいるが、ロシアは、完全に疑心暗鬼に陥りつつある。ロシア・プーチンの米英への不信は頂点に達しても可笑しくない状況を、米英は徹底的にやってくるようだ、とプーチンが再確認するには、明確な米英のメッセージだったかもしれない。堪忍袋が破裂寸前のプーチンだろうが、先ずは自国民の安全第一と云う行動に着手した。

プーチンを追詰め、ロシアの手足をもぎ取ろうとする米英の必死さが伝わってくるが、筆者には、何ゆえ覇権国アメリカは英国やドイツやフランスと手に手を取って、ロシアプーチンを此処まで意識した行動しなければならないのかか、頭を捻る。寄ってたかって、潰すべき国家でもないし、指導者でもない筈なのだが、筆者が考えている以上に、ロシアの脅威と云うものは、米英中心の戦後世界を好き勝手に扱ってきた国にとって厄介なのかもしれない。ただ、最近のフォーブスでは、世界の注目すべき指導者としてプーチンが3年連続で選出された辺りも考慮に入れると、米英は、必要以上にロシア及びプーチンを怖れているのかもしれない。


≪ エジプト滞在のロシア人、出国開始 手荷物以外は別便
エジプトのシナイ半島でロシア機が墜落したことを受けて、ロシア政府は7日、エジプトに滞在しているロシア人を航空機で出国させ始めた。搭乗客は10キロ以下の手荷物しか持ち込みを認められず、スーツケースなどは別便でロシアに送られる。墜落が機内に持ち込まれた爆発物によるテロだった疑いが浮上したことを受けての措置とみられる。
 ロシア政府は7日、緊急会議を開いた。会議後、ドボルコビッチ副首相は、現在エジプトに約8万人のロシア人旅行客が滞在していることを明らかにした。ほとんどがシナイ半島のシャルムエルシェイクと、紅海沿岸のハルガダに滞在しているとみられる。
 ロシア政府はエジプトとを結ぶ航空便の運航中止を決めたが、航空会社の協力を得て空の飛行機を送り、両都市と首都カイロの3空港からロシア人をピストン輸送する。スーツケースなどは、貨物便で後からロシアに運ぶ計画だ。
 ドボルコビッチ氏は、モスクワの空港でも保安措置が強化されていることを明らかにした。
 一方、エジプトのシュクリ外相は7日、カイロで開いた会見で、英米が情報機関などの情報をもとに、墜落は仕掛けられた爆弾によるテロの可能性があると相次いで提示したことについて「テロに関する情報は、エジプトの治安当局には知らされていなかった。我々はマスコミで発表される前に、まず優先的に我々に連絡されると思っていた」と不満を述べた。墜落がテロだった場合、米欧にも責任があると印象づける思惑とみられる。
 シュクリ氏は「我々は重大なテロ防止に(エジプトと)共同で取り組むよう、友好国に協力を依頼してきた。だが、多くの国は積極的に協力しなかった」とも述べた。  ≫(朝日新聞デジタル:モスクワ=駒木明義、カイロ=春日芳晃)

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●似た者同士 ルールを歪め勝利した習近平、立憲無視で勝誇る安倍晋三

2015年11月07日 | 日記
半市場経済 成長だけでない「共創社会」の時代 (角川新書)
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●似た者同士 ルールを歪め勝利した習近平、立憲無視で勝誇る安倍晋三

以下のコラムは、中国がインドネシア高速鉄道建設計画で、中国が欧米先進国型のルールを歪め、卑怯な手を使って、騙し討ちのように受注してしまった顛末を語っている。つまり、利益度外視した上に、民間のフェアな競争原理のルールまで無視し、国家一丸となって、受注にこぎつけたのは、卑怯である。また、中国の建設するインフラ整備は、その地域の住民の権利を無視した強制力が働き、尚且つ、その品質への疑問も積み残したままだ。このような選択をインドネシアがしてしまったことは、結果的にインドネシアの将来的計画の足を引っ張るのではないだろうか、と中国準国営企業のルール無視を批判するとともに、インドネシアにも警鐘を鳴らしている。

たしかに、このコラムの書き手のような考え方にも一理ある。しかし、中国は日欧米と初めから異なるルールで運営されているわけで、日欧米が自画自賛するルールはあなた方のルールでしょう、と考えているのだろう。安倍晋三は、アジアの一国であり、まさしくアジア人であるのも関わらず、欧米価値観こそが無比な普遍的価値観だと、真理のように口にするが、どこの世界に、欧米価値観が無比な価値観などと書いてあるのだろうか。そして、世界の国々や民族や地域が、それを認めているフシはまったくない。

先進経済圏におけるルールと云うものは、先進経済圏にとって都合の良いルールに過ぎないわけで、開発途上国や未開発地域にも適用された当たり前と云う思考停止は、驕りに過ぎない。アメリカのルールを、今現在TPPを通じて押しつけられている日本と云う立場を考えれば判ることだが、上のルールに合わせて、下が動くのは日本社会くらいのもので、そうそう、従属に甘んじる国や民衆は少ないものである。彼らは常に狡猾であり、反撃の精神を忘れないものだ。つまり、自分たちが従属したルールが、絶対的なものだと思うくらいおバカな勘違いはないわけで、それが永遠に守られるだろうと考えることは根本的に間違いだろう。

考えてみれば、わが国日本においても、立憲主義に基づき、政府の統治はいわゆる日本国憲法の原理に従って行うことが義務付けられているわけだが、条文に書いていないことに関しては、立憲の法理に関わりなく、政府に一定の解釈を加えることは許される。このような立憲主義の法理を、具体的に書いていないから、時の政府の解釈で行うことが出来る。まさかと思うが、今の安倍政権は、それを正々堂々、正義の執行のように行ったのだから、ルール無視の典型のようなもので、民主主義だと云う日本でさえ起きているのだから、中国共産党独裁体制の中国がルールを守らないのは、或る意味で当然だと思っておくのが、筆者などは常識じゃないか思う次第だ。

中国にしても、イスラム教が支配的な国や地域にしても、独裁的大統領制が敷かれている国も、欧米先進国にとって都合の良いルールが普遍的だなどと受けとめている人々は存在しない。そんな、俺たちに無関係なルールを、良い思いをしている連中に言われてなるものか。その反骨精神があるからこそ、その発展途上国には、それなりの未来展望が存在する。小金持ちの裕福に満足して、従属の方が楽じゃないか。そう云う国や人々の未来展望は、21世紀においては絶望的に見つけることは出来ないようだ。

 たしかに、インドネシアが中国企業に高速鉄道を建設を発注と云うか丸抱えでお願いしたのには、それなりに意味がある。仮に、食うものがない時に、食えそうなものがあれば、それを喰らって、生き延びるわけで、将来の健康被害まで思いが及ぶことは稀である。つまり、インドネシアにとって、中国企業の提案は、非常に魅力的で、国家100年の計などは糞喰らえだったと云うことだ。また、中国政府のインフラ整備の呼び水は、途上国にとって常に蠱惑的で、金持ち達のルールなんて、絵に描いた餅に映ると云う事実を政府も企業も肝に銘ずるべきである。

ルールに従わないと非難したければ、まず足元の日本政府の立憲主義のルール違反を厳しく詮議した上で、語るのが筋だろう。原発立地地域問題も、似たようなニアンスがある。同じニアンスを抱えた沖縄県が、徹底抗戦に出ているのは、おそらく、沖縄のアイデンティティから来ているのだろうが、注目に値する。蟻が不遜な木偶の坊を懲らしめる、お伽噺が正夢になることを祈りつつ、今夜のコラムを締めくくる。


≪ 中国が競争ルールを歪める限り
  途上国開発で日本は敗北し続ける
 インドネシアの高速鉄道の建設計画の受注をめぐり、日本の新幹線案が中国に敗退したことは周知のとおりだ。その後、計画は着々と進み、先月16日にはインドネシアと中国の企業連合が合弁会社の設立で正式な契約調印に至った。
 中国による受注の背景には、いくつかの要素が存在した。その決定的な要素となったのが、中国側からの「インドネシアの財政負担をなくし、債務保証を求めない」という提示だった。
 ことの経緯はこうである。
  この東南アジア初の高速鉄道は首都ジャカルタと西ジャワ州バンドン間150kmを結ぶもので、将来的にインドネシア第二の都市である東ジャワ州スラ バヤへ延ばすという計画がある。これに、日本と中国が入札を争っていたが、今年9月3日、インドネシア政府はこの計画を白紙に戻すと宣言した。
 もともと日中は「インドネシア政府の支出がある」ことを前提に競り合っていたが、その前提がここで揺らいでしまった。そして、インドネシア政府は 計画を凍結させると同時に、「高速ではなく低速に」と計画を変更させ、挙句は「政府は建設コストを負担しない」と条件を二転三転させて行ったのである。
 その後、わずか4週の間に、インドネシア政府は中国案の採用を決定してしまう。同月29日のことだ。「インドネシアの財政負担をなくし、債務保証を求めない」という中国の提案が決定的となった。
 この要求の変化をものともせずに食らいついて行ったのが中国だ。国際問題に詳しい専門家は、この間髪入れずしての提案をこう分析する。
 「インドネシア政府の要求に合わせてすかさずカードを切り返したのが中国。内容の精度はさておき、中国は(上記の政府支出ありから出資なしまでの)“3枚のカード”を携えていたと見ることができる」

 ■激しいロビー活動と 実績に対する自信も勝因
 また、この専門家は「民間企業が主体となることで、政府の支出を低減させるやり方は、途上国のニーズがインフラの質よりも財政的負担の軽減にあることを中国は見抜いていたという証左だ」と指摘している。
 一方で、インドネシアには公的資金はジャワ島以外の他の島に振り向け、人口や経済が集中するジャワ島の開発は民間投資に委ねようとする政策がある。中国案はこの政策とうまく合致したとも言える。
 これに対し、日本案は債務保証に拘泥した。これが敗北につながったという説は有力だ。ちなみにこの「債務保証なし」というのは、事業主体への融資 に返済リスクが生じた場合、それを相手国政府が返済するのを通例とするが、中国案はそのリスクも中国が負うことを意味するものだ。
 計画が最終的に中国の手に落ちた理由は他にもある。外交的揺さぶりもそのひとつだろう。
 党中央、国務院、国家発展改革委員会、外交部、国家開発銀行、そしてこれに中国鉄路公司が一丸となった激しいロビー活動である。
 また、“揺るぎない自信”もそのひとつだ。世界で最大規模にして最速の技術と管理――は彼らが自認する強みである。中国には、たった12年間で1 万7000キロの高速鉄道を敷設したという成功体験があり、北京-上海を結ぶ1300キロの高速鉄道に至ってはわずか3年ほどで正式運行にこぎつけてい る。
 こうした経験を背景に、中国はインドネシアのジャカルタ-バンドン間の150キロを結ぶ高速鉄道も「3年でできる」と誇示した。完工は2018年。これは日本案の2021年の半分の工期に過ぎない。

 ■中国の「一帯一路構想」に インドネシアの思惑が合致
 中国にとっては、初の高速鉄道の海外輸出大型プロジェクトとなるだけに高揚気味だ。150キロの走行距離とはいえ、これを契機に今後はインドネシアの鉄道市場を独占できると見るからだ。
 中国はジャカルタ-バンドン沿線での「経済回廊」の構想も描く。インフラ建設とともに不動産開発や工業団地開発を進めれば、中国国内の産業チェーンの輸出にもつながると期待を深める。
 また、中国の受注をめぐって注目すべきは、中国の掲げる「一帯一路構想」とインドネシアが掲げる「海洋国家構想」のドッキングである。「一帯一路構想」が重視するのは「連結」、他国の交通を連結させながら、中国発の複数のルートを作り上げるこの構想に、インドネシアも利点を見出した可能性は否めない。
 ちなみに2013年10月、習近平国家主席は首都ジャカルタで「21世紀海上シルクロード」構想を発表したが、中国は互いに首位の貿易相手国であること、インドネシアがアセアンでも最多の人口を有する国家であることを理由に、2つの経済体が連結することの利点を強調している。中国にとってさらに重要なのは、マラッカ海峡、ロンボク海峡、ナトゥナ海峡などを有するインドネシアを、海上戦略上の攻略地点に組み込むことにある。
 他方、日本の経済界からは嘆息が漏れる。日本の商社幹部のひとりは失望を隠さない。
 「今回の一件で明らかになったのは、インドネシアの経済発展に最大の貢献国として認知されてきた日本が、中国にとって代わられたということだ。今後、インドネシアには中国資本が大きく投下されるのは間違いない」

■ルールを無視する中国の前に 健全な競争原理が歪んでいく
 一方、日本政府の内部からも強い危機感が伝えられる。インドネシアの高速鉄道の受注に関わる一連の流れをつぶさに見つめてきた政府関係者はこうつぶやく。
 「これはOECD陣営の『透明性を確保したモデル』の敗北だ……」
 これまで途上国のインフラは、先進国を中心とするOECD(経済協力開発機構)による支援という枠組みを中心に整備がなされてきた。そこに中国が割り込んでくることの影響は小さいものではない。
 この高速鉄道計画はインドネシアと中国の企業連合により進められるが、これはPPP方式(Public-Private Partnership)による実施であることを意味する。鉄道案件をビジネスとしてやろうというわけだ。では、その資金調達や返済期間をどう見積もるのか。参加する民間企業はそれぞれにソロバンを弾くところだが、中国の場合は違う。実質、政府が采配を振るってしまうのだ。しかも、中国の民間企業といって も政府と民間の線引きが曖昧で、その実態は純粋な民間企業でないものが多い。
 他方、日本企業にとってPPP方式は、日本政府のサポートを離れたところでの単体での闘いを意味し、リスク増大の懸念からインフラ案件の受注が遠ざかる可能性がある。その結果、蓋を開けてみれば中国企業の跋扈――、こうした展開となることは容易に想像がつく。
 また今回の案件に見るアンフェアは、政府組織を総動員しての手練手管の裏工作、「同じ土俵での闘い」がいつの間にか「水面下の交渉」に切り替えられてしまった点にある。中国側は「透明性の確保」など歯牙にもかけていないのだ。
 「ビジネスをするなら“ビジネスの掟”があるはずだ。だが、“ビジネスの掟”を無視する国がいとも簡単にそれを落札した。途上国のインフラ市場は今後ますます競争原理が働かない市場となってしまう」(同)
 透明性を維持すればそこに市場が発生し、よりよい企業が集まることができる。企業が集まれば競争原理が働き、質のいい技術が適正な価格で提供されるという好循環を生む。しかし、中国が割り込んでくることでこうした当たり前の競争原理ですら維持できなくなる懸念がある。
 そもそも、すべてのインフラ需要を中国が独占して受注できるわけなどない。「世界の途上国の需要に対して、各国で協力して整備に当たる」というのが本筋だ。当然、そこにはルールが必要であり、そのルールこそがOECDがまとめる行動指針である。ところが、中国は「我々はそんなルールに縛られない」と開き直る。「それはあくまで先進国を対象としたものであり、中国は関係ない」という立場だ。
 「一定のルールに基づいて公明正大な競争をすれば、ひいてはみんながハッピーになる、そういう思いで世の中が動いているはずなのだが……」(同)

 ■中国で短期完工が可能なのは 政府による“強制”があるから
 今回の中国による受注、それがインドネシアの未来にとって最善の選択だったかという点についても疑問が残る。
 筆者は、上海の街の変遷を通して「中国式インフラ建設」というものを目の当たりにしてきた。それは住民の強制立ち退きに始まり、民衆と政府の対 立、環境破壊と多くの矛盾と摩擦をもたらした。その本質を一言でいえば“政府による強制”である。インフラ建設には莫大な予算がつぎ込まれたが、その恩恵 に浴したのは一部の独占企業である。
 今の中国の自信の根底には、「北京-上海の高速鉄道の3年の完工」があるが、不可能を可能にしたのは “強制”が働いたからに他ならない。しかもスピード重視となれば、当然アンフェア、不正を招き透明性が失われてしまう。果たしてそれは他国において支持されるモデルなのだろうか。
 ちなみに今年3月、スリランカ政府はコロンボ港で進められる「中国城」の建設に中止命令を出した。この計画は520万平米にショッピングセンター やホテル、オフィスビルや3戸の住宅を含む不動産開発だが、法律の抵触と環境破壊が顕在化した。ミャンマーでも2012年に銅山開発をめぐり、民衆が大規模な抗議運動に乗り出している。
 途上国で日本モデルは「展開が遅い」と不評を買っているのも事実である。だが、それには一定の合理性も認められる。経済効果の追求のみならず、住民や環境とのバランスを取るにはある程度の時間も必要なのだ。しかも、日本モデルの根底には「産業を興し、人を育て、それを裾野にまで広げる」という息の長さがある。
 残されているのは、途上国による「賢い選択」だ。そのためには、まず目先の利益を捨ててもらうしかない。「国家100年の計」を立てた国づくりにこそ、日本モデルは大きな効果を発揮するだろう。
 ≫(ダイアモンドONLINE:国際China Report-姫田小夏)

さらば、強欲資本主義―会社も人もすべからく倫理的たるべし
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●出鱈目尽くしでも問題なしの安倍政治 いつ来るのか天罰は?

2015年11月06日 | 日記
23区格差 (中公新書ラクレ)
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●出鱈目尽くしでも問題なしの安倍政治 いつ来るのか天罰は?

今夜は体調不良と多忙が重なり、頭がまわらない(笑)。以下、安倍政権嫌いの鈴木哲夫氏の憤懣やるかたないコラムを掲載するにとどめる。日本社会の中間層が益々溶けていく中で、日本人は、本当にグローバル資本主義経済の世界に身を置く決意は出来ているのか、とても疑問に思う。ちっぽけな個々の力であっても、集合することで、官邸など一発で吹き飛ばせるのだが、まだ、日本人の多くは、本気で物事を考えていないフシがある。まあ、日本に限ったことではないだろうが、グローバル資本主義経済の世界が地球上に災いを呼び込むであろうことは、何となくだが想像がつく。なにせ、このような経済社会は、人の心を蝕み、凶暴にしていくだろうから……。


≪安倍政権「一億総活躍」の意味が、ようやく分かった
~なるほど、進次郎に逃げられたのも納得

■「船の名前を変えただけ。他はまったく同じだ」
安倍政権にも通じている経産省OBが、「一億総活躍社会」という第三次安倍改造内閣のキャッチフレーズについてこんな説明をしてくれた。

「発足以来の安倍政権を船に見立てれば、いまの内閣の問題がよく分かります。船長も船員スタッフも同じ、向かっている方向も同じ、船の大きさも同じ、スピードも同じ。ただ、船の名前や外側の色を変えているだけです。

船長は安倍首相、スタッフは経産省を中心にした側近たち。方向は長期政権維持や憲法改正、財界と連携した経済政策など。船の名前はこの前までは統一地方選挙を見据えた『地方創生号』でしたが、今は参院選へ向かって『一億総活躍社会号』と名前を変えただけです」

10月27日。第三次安倍内閣の発足を受けて新しい自民党のポスターが公表された。安倍首相の語りかけるような顔がほぼ全面に配置され、新内閣のスローガンである「一億総活躍社会へ」が中央下に書かれた。

このスローガンにかける自信のようなものが伝わってくるが、しかし安倍首相のこれまでの記者会見を見ても、「一億総活躍社会」については、従来の政策とダブる部分が多いうえ、あいまいな言葉が入り乱れているため、首相や新内閣がどんな理念、どんな軸、そして具体的に何をしようとしているのか分からない、という印象を多くの人が持つのではないか。

まず、安倍首相の説明はこうだ。

あらたに「新三本の矢」と銘うって、GDP600兆円、出生率1・8、介護離職ゼロを掲げ、これらを実現することで50年後も人口1億を維持し、みんながもう一歩前に出ることができるような日本に変えていかなければならない――、それが「一億総活躍社会」である、と。

ただし、具体的な中身を検討するのはこれからで、今後民間議員なども加えた国民会議を開き、11月中には緊急対策を打ち出すという。

やはり聞いていてもスッキリしない部分が多い。安倍首相は、「アベノミクスの第二ステージに移る」と言いながら、一方で「第一ステージの成果」は総括されていない。成長戦略の規制緩和などは十分に進んでおらず、道半ばだと指摘する財界関係者や経済専門家も多い。

また、「矢」という表現について言えば、前回の「三本の矢」は手段だったが今度の「新三本の矢」は具体的な数値目標で、そもそも「矢」の意味合いが違う。

私が特に矛盾していると疑念を持つのは、子育てや介護などの社会保障の部分だ。これらはすでにプログラム法を成立させて(2013年)、国の負担を減らし地方自治体や各家庭に押し付ける方向で進めていた。いまさら制度や施設建設や補正予算など手厚くするつもりだろうか。

 ■「政策」ではなく、「国民運動」だった
言うことがバラバラ。これでは安倍政権の政策理念の一貫性が問われるのではないか。

とにかく「一億総活躍社会」だと言ってやたらいろんなことをぶち上げたが、身内からでさえ「あまりにもとっ散らかっている」(自民党ベテラン議員)との声も出ている。

だが、こうした状態になっていることについて、冒頭の経産省OBの「名前を変えただけの同じ船」という解説は「なるほど」と頷かせるものがある。

「よく見れば分かるんですが、一億総活躍社会という概念は、第二次安倍政権になって出てきた様々な政策を言い換えているだけです。それを新たにまとめなおして、キャッチフレーズを作りたかったんでしょう。目的は参院選対策と世論対策という側面が大きいのです」(同OB)

確かに、安倍首相が記者会見で多少説明した「新三本の矢」なるものを見ても、たとえば「GDP600兆円達成」はこれまで進めてきた地方創生政策と関連するし、「出生率を上げる」点についても、これまでの女性活躍政策で同じようなことをやってきていた。

「つまり、新しい何かをやろうとしても、並べる政策がもう頭打ちという現状がありますね。(経産省の)現場からそんな声も聞かされます。新味を出すためには、今までのものを名前を変えて並べ替え、新たなキャッチフレーズを付け直すしかないということです」(同OB)

事実、10月19日には加藤勝信・一億総活躍担当相と、石破茂・地方創生担当相との間で初の政策のすり合わせが行われたが「そこで行われたのは、新しいものを考え出すのではなく、これまでにある地方創生政策のどれを一億総活躍に移動させどれを残すか、といったすみ分けに過ぎなかった」(自民党政調幹 部)という。

また、女性や介護など社会保障に関わる部分も、すでに厚労省が進めている政策について「一億担当とのすみ分け調整になると思う。新しいものをとはならない」(厚労省幹部)という。

さらに、この「一億総活躍社会」の官邸の狙いについて、ある自民党ベテラン議員は「国民運動」という言葉を使い、こう説明した。

「中身がないないとあなたは言うが、そもそもそれは当然、まったく不思議じゃない。だってこの一億総活躍社会は、官邸が『政策』ではなく、『国民運動』として考えたみたいだからね」

■キーマンは、進次郎だった
このベテランが言う「国民運動」とは、大きくスローガンだけ掲げ、担当大臣などが全国を回ってタウンミーティングや車座集会などを各地で開催し、国民の意見を聞きながら政権への期待や人気を高めていくというもの。

PR活動、世論対策が主たる目的で、「政策」として何かを実現しようというのではない。だから、そもそも中身はアバウトでいい。いろんなものをまとめ直して化粧して、「政権浮揚や来年の参院選にプラスになればいい」(同ベテラン)ということらしい。

加藤氏と協議した石破氏もその後「加藤さんと一致したのは(一億総活躍は)国民運動なんだよねということ」と本音を漏らしたという。

さらに、この「一億総活躍」の担当大臣には、官邸は小泉進次郎氏を充てることを想定していたというのだ。 

自民党の選対幹部経験者が言う。

「中身がないというのは、逆に目的が『国民運動系』だという証明ですね。ならば進次郎氏は適役です。私が首相周辺から聞いたのは、彼を一億担当大臣 にして全国を回らせ、若い人たちや若いお母さんなどと50年後の日本について対話集会などでムーブメントを起こす、というプランでした。

官邸がこの『一億総活躍社会』で狙ったのはやはり参院選対策。進次郎氏が入閣拒否したことで、結局加藤さんにお鉢が回った格好です。

加藤さんは仕事師ですから淡々とやるでしょうけど、それでも、『政策』でなく単なる『国民運動』的な意味合いが強いという辺りのことは分かっていて、人事の直後に『何やるんですかね』と不満げに言っていたという話も聞きました」

中身を議論する国民会議の民間のメンバーも、選ばれてみれば15人のうち7人は政府のほかの会議との兼務。野党幹部は「これまでの政策や路線を整理 し直して選挙用にデコレーションするだけだからメンバーは同じでいいということ。いい加減さが、この人選で証明された」(民主党幹部)と指摘する。

安保法制成立後、ひたすらアジア外交などで点数を稼ぐ安倍首相。だが、内政の目玉である「一億総活躍社会」のほうは、参院選や世論対策のための単なる「大風呂敷」にすぎないのかもしれない。(了)  ≫(現代ビジネス:オトナの生活・賢者の知恵―鈴木哲夫)

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●覇権国の警鐘 2015年の悪夢、ドイツ魂、自動車とソーセージにケチ

2015年11月05日 | 日記
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
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●覇権国の警鐘 2015年の悪夢、ドイツ魂、自動車とソーセージにケチ

先日から、エマニュエル・トッドの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』を時間の合間に読んでいる事をコラムでも言及していたが、トッドの指摘する“メルケル首相率いるドイツの危険性”に強く警鐘を鳴らしているのだが、その予言を証明するように世界的出来事が、ドイツの勢いに水を差している。トッドは、人口学の立場から“ソ連邦の崩壊”を小室直樹同様に予言していたが、今回は、予言が当たったと云うか、彼の警鐘に、欧米の根底にあるアメリカン・デモクラシー陣営が、強く反応したのではないかと云う重大事がドイツを軸に起きている。国民食ソーセージにまでケチがつくとは……。

筆者もソーセージは嫌いではないが、親からは、加工肉は身体に好くないと云う言説を聞かされていたのだが、皮なしウィンナーなどは、スナック菓子より健康的だと、よく口にした食品なのである。まあ、ドイツの家庭の食事風景を見る限り、やたらとソーセージ、ベーコンとジャガイモを食している映像が目に入ってくる。後はキャベツの酢漬けだったかな?筆者もドイツ人並みに、ジャガイモも好きなので、よく食べている。ただ、食べていながら思うことだが、到底リッチな食べ物だと思ったことはない。日本料理などに比べると、乱暴にして粗雑だ。

しかし、ドイツは、最も21世紀において成功した国と云うイメージは定着していた。敗戦国であるにも関わらずだ。トッドではないが、ポーランド生まれのユダヤ人で、根っからのロシア嫌いのズビグネフ・カジミエシュ・ブレジンスキーの『ブレジンスキーの世界はこう動く―21世紀の地政戦略ゲーム』は、多くの点で的確な分析をしていたが、ロシアに対する考えでは、残念ながら色眼鏡の色が濃すぎて、前方が視界不良になってしまったようだ。一方の共和党の頭脳・キッシンジャーと並び称されるが、二人ともユダヤ人であることを記憶に留めておくべきだろう。ドイツに対する感性も、大いに問題なのだと思う。

メルケル首相率いるドイツは、福島原発事故後に、科学的だけではなく、倫理や宗教観を含めた熟議によって“脱原発”再生可能エネルギーへの転換を国是とした。しかし、世界の中枢のエネルギー政策は、石油と原発と云う二大エネルギーによって秩序が構築されているので、この点に関して、日米英仏露中等々の既得権勢力にとっては、不都合な決定だったと見るべきである。しかし、厳しいエネルギーへの政策転換にも拘らず、ドイツ経済は世界経済の優等生状態が続いていた。

このままだと、ドイツの国家運営こそが正しい選択であると云う言説が定着する勢いにまで到達していた。トッドの言う通り、ユーロ通貨を通じて、ドイツは構造的に独り勝ちを謳歌したことになる。エネルギーのコスト高を吸収しても、断トツの経済成長と財政の健全化を両立させているのだから、21世紀のモデル国家であり、世界が見倣う国家となる寸前だったと言っても過言ではない。しかし、そこに“VW排ガス問題”が、三叉神経痛のトリガーのように引き絞られたのである。

おりしも21世紀においても、20世紀最後の海洋帝国米英には凋落の兆しはあるものの、余力が残っており、ドイツの抬頭は看過できないところまで到達していたのだろう。脱原発も欧米文化の約束事を違えていたわけで、愉快ではない海洋帝国勢力だった。アメリカが、異様とも思える自動車の排ガス規制に乗り出したのも、考え方によると、米英の罠であった可能性がある。シェールガス革命で、湯水のごとく石油を消費して欲しいと云うのに、ドイツはそれに逆らった。

アメリカの異様な排ガス規制値をクリアー出来るのはトヨタだけだろうと云う読み通り、VWはプログラムを違法に操作して、その基準から逃れようとした。逆に言えば、苦しくなったVWは違反をするに違いないと云う想定が成り立っていたことも考えられる。アメリカの大方針に脱原発で逆らい、ユーロで大儲けしたドイツの力は、中国との接近等も考慮すると、海洋帝国の寿命を縮めさせる解毒剤になりかねないと危惧した可能性は、戦略的にあり得るシナリオだ。

VW排ガス問題は、波紋は拡大するばかりで、ポルシェ・アウディにまで波及し、VWと云う大衆車の信頼の失墜に止まらず、謂わばドイツの顔である高級車のイメージまで傷が深くついたことになる。その上、VWの主流車であるガソリン車にまで、不正があったと報道される悪夢になっている。

≪ VW排ガス不正、ポルシェ・アウディでも 米当局が指摘
独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れ問題で、米環境保護局(EPA)は2日、VW傘下の「ポルシェ」など高級車に搭載されたディーゼルエンジンでも新たにソフトウェアの不正が見つかったと発表した。ただ、VWは同日、発表内容を否定するコメントを出した。 EPAが新たに指摘したのは、ポルシェの「カイエン」やアウディの「A8」、VW「トゥアレグ」などの7車種で、2014~16年のモデル。9月中旬にVWの不正を初めて公表した時点では、エンジンの排気量が2リットルの車が対象だったが、その後の調査で排気量3リットルの車でも違法ソフトが搭載された不正が確認されたという。
 EPAによると、排ガス試験の時だけ有害物質の排出を低く抑え、実際に路上で走った時は最大で当局の基準の9倍の窒素酸化物を出していたという。米国内で少なくとも1万台が販売されたとみられる。VWとアウディのディーゼル車は、日本での販売はないという。
 VWは「排気量が3リットルの車のディーゼルエンジンには、不正なやり方で排ガス量を操作するソフトウェアは搭載されていない」との声明を発表し、EPAの指摘を否定した。一方で「実態解明のため今後も当局の調査に全面的に協力する」との姿勢も改めて示した。 ≫(朝日新聞デジタル:ニューヨーク=畑中徹)


≪ VW不正ガソリン車に波及 9・8万台、CO2排出問題
【ベルリン共同】ドイツのドブリント運輸相は4日、新たに二酸化炭素(CO2)の排出量をめぐる不正が見つかった自動車大手フォルクスワーゲン (VW)の車両、最大約80万台のうち、約9万8千台がガソリン車だと明らかにした。連邦議会(下院)に報告した。9月に発覚したVWによる排ガス規制逃 れはディーゼルエンジン車だけが対象だった。自動車で主流のガソリン車にも不正が波及したことで、VWのブランドイメージがさらに傷つくのは必至だ。
 VWは新たな不正が見つかった詳しい車種などを明らかにしておらず、日本へ輸出されたものが含まれるかどうかは不明。 ≫(東京新聞・共同)


まあ、この問題の成り行きいかんでは、ドイツ車への信頼性は、大きく傷つく。トヨタの問題もアメリカ発だが、今回もアメリカ発で、アメリカは、戦争も好きだが、真正面からの戦いに負けそうになると、何でもありの奥の手を出してくるので、到底、フェアな国家でない点は、これだけでも十分だ。しかし、この原発関連の決定から、中国市場を独り占めする勢いのドイツ車の進撃を食いとめる方策を、満を持して引き金を引いたであろうことは、アメリカ的で納得できる。

これで、ドイツの災難が終わるのであれば、またアメリカの意地悪が勃発したか、何という闘いのルールを知らない成り上がり国家だ。人工国家で、歴史的な伝統文化もない国家の恐ろしさくらいで締めくくれるのだが、国連機関WHOが、ドイツ叩き第三段のような情報を公表するに至っている。遂には、ドイツの国民食を血祭りにする積りかどうか判らないが、覇権的なこれ以上の行動は、絶対に許さないと云う、米英の意思表示が見られるようだ。以下は、WHOの杜撰な加工肉バッシングに対する、ドイツの怒りを伝える記事だが、歴史無きアメリカは、ドイツの伝統文化にまで、ケチをつけだしたのでは?と穿ち過ぎな考えさえ思い浮かぶ状況だ。トッドの警告を、アメリカは真に受けたのかもしれない(笑)。


 ≪ 独:「発表ずさん」…「加工肉に発がん性」に反発広がる
【ベルリン中西啓介】世界保健機関(WHO)の専門機関がソーセージなどの加工肉に発がん性があると発表したことに、ドイツで反発が広がっている。食肉業界だけでなく、ノーベル医学生理学賞受賞者も「ずさんだ」と批判するなど、国民食に注文を付けられたドイツ人の怒りは収まる気配 がない。
 「詳細な研究内容を示すことなくメディアの注目を集めるやり方で発表したことに憤りを感じる」。独精肉職人協会副会長のクラウス・ゲルラッハさん(64)は語気を強める。ソーセージ職人らで作る協会は、加工肉の安全性に関する情報収集も行っている。 2008年のノーベル医学生理学賞受賞者で元独がん研究センター所長のハラルド・ツア・ハウゼンさん(79)も「赤身肉や加工肉の発がん性は20年以上前から指摘されていた。必要なのは肉の何ががんを起こすのかという研究だ」と批判する。
 さらに、大腸がんリスクについて「世界中の人が、加工肉に含まれる発がん性物質を摂取している。だが、それによってがんになっている人は、ほとんどいない。加工肉を毎日50グラム摂取することで発症率が18%上がるなどと言えるはずがない」と述べた。
 WHOの専門機関、国際がん研究機関(IARC)は10月、加工肉の摂取が大腸がんを引き起こす「十分な証拠がある」と発表。5段階評価の発がん性リスクで、喫煙やX線照射と同じ最高レベルに分類した。
 ドイツには、国内の都市名を冠したフランクフルトや、バイエルン州で愛される白ソーセージなど地域ごとに2500種類以上のソーセージがある。製造に関する国の統一指針があり、種類ごとの基準や添加物が厳しく規定されている。
 ゲルラッハさんは「ソーセージのないドイツなど考えられない。日本から訪れる人にも安心して食べてもらいたい」と話した。  ≫(毎日新聞)

ブレジンスキーの世界はこう動く―21世紀の地政戦略ゲーム
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日本経済新聞社


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●原発再稼働の卑しいメカニズムと「核廃絶決議案」の不可思議

2015年11月04日 | 日記
君臨する原発 どこまで犠牲を払うのか
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東京新聞出版局


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●原発再稼働の卑しいメカニズムと「核廃絶決議案」の不可思議

経産省は、原発を再稼働する立地自治体に新たな交付金制度を導入した。飢えて痩せこけた自治体の鼻面に、「ほら、三回まわって、ワン」と腐肉を政府が差し出すのだから、驚がく的だ。東京新聞は以下のように報じている。

≪ 原発1基再稼働で最大25億円 立地自治体に新交付金、経産省
経済産業省は31日までに、原発が再稼働した際の立地自治体に対する支援策として、最大で25億円の交付金を 支払う新制度を導入した。すでに官報に掲載し、運用を始めた。立地自治体への交付金を手厚くすることで、原発再稼働に対する地元の同意判断を促す狙いがあるとみられる。
 10月16日付の官報などによると、国は原発がある道県と立地市町村に、原発1基の再稼働につき年間最大5億円の交付金を5年間支払う。
 地元の原発が再稼働した自治体は、原発が停止したままの自治体より多くの交付金を得られる仕組み。財源は電力利用者が納める「電源開発促進税」が充てられる。 ≫(東京新聞・共同)


疲弊した限界地域の議会や住民にとって、年間5億円。5年で25億円の交付金は垂涎であることは言うまでもない。原子力発電には、様々な考えがあることを承知の上で言うのだが、原発事故を目の当たりにしていながらも、現実には、こういう垂直統合的支配のメカニズムは壊れないことが証明されている点を見ていると、生活者が権力から支配されることは、判り切った結論を導くのだろうかと、残念に思うが、現実なのだろう。

「限界集落」と云う言葉が今年は随分と語られたが、集落どころか、市区町村にも当てはまり、県政にも当てはまる状況になっているのだろう。原発事故が起きた福島の現地においては、もう放射能の危険は去った、安心して以前の地域に戻りましょう、そんな為政がなされている。その地域が、本当に安全かどうかは、議論のあるところにも関わらずに、国家がそれを奨励している。その結果、経済的に限界値に達している地域を生きながらえさせる、それが良い事なのか悪いことなのか、筆者には判断がつかない。

共同体の存続が、補助金や交付金でしか運営できず、ただひたすらに、命が尽きるのを、北原白秋の“待ちぼうけ”ではないが、政府は“木の根っこ”で一休みする積りなのだろう。一種のサボタージュのようなものだが、これといった経済処方箋の見えない地域への扱いは、この種の型枠で、役人は処理していくと云うことだ。本来であれば、経済的に立ち行かなくなった地域について、立ち行く経済モデルは、幾つか考えられるわけだが、面倒臭いし、事例集がないから、怖くて手が出せない。でれば、先例に倣った愚行であっても、それを続けることが賢明と云う結論になる。個人的には、自治体の延命治療のような事は、根本的に住民を含めた熟議が最も必要な場だろうと考えている。山河がある以上、その地は、それ相当の息吹が誕生する期待感を持つ。

また、そこに暮らす人々にも、先例通り、生活者目線の問題が軽減されるのであれば、この際良いじゃないか、と云う考えは、マイナーどころかメジャーなわけだから、日本においては、起きるべくして起きている、それこそ“生かさず殺さず”な幕府政治と変わりがないことになる。そして、住民も、江戸時代さながらの、弱者ぶる農民の如く振舞い、得るものは得る姿勢になる人が多い。新潟県の泉田知事のような地方行政を担う逸材が出てこない限り、多くの地方行政は、中央の腐肉で生きる道を模索するのだろう。この辺の事を、古い記事だが、産経が住民蔑視な姿勢で報じていた。


≪ 原発「地元議論」に周辺自治体が入りたがる“事情”とは…
  再稼働合意に影落とす「地元」の定義づけ
九州電力川内(せんだい)原発1、2号機をめぐり、立地自治体の鹿児島県薩摩川内市が再稼働に同意し、近く県も同意する方向だ。これで「地元同意」 は完了し、後は原子力規制委員会による残りの資料の確認と検査を待つばかり。しかし、いったん事故が起これば被害が及ぶ周辺自治体は、「地元の議論に入れてほしい」と不満をあらわにしている。地元の範囲をめぐっては、法的な定めや明確な定義はない。果たしてどこまでが原発の「地元」と言えるのか。今後再稼働を目指す他の自治体にも影響してくる。(原子力取材班)

■地元経済は疲弊、待ち望む再稼働
 「日本の経済発展のため、国が責任を持って再稼働させられる原発は動かしてほしい」
 10月28日、川内原発の再稼働の同意を表明した薩摩川内市の岩切秀雄市長は記者会見を開き、時折、厳しい表情を見せながら、こう強調した。
 同日午前、臨時議会は再稼働反対派によるやじと怒号に包まれながら、再稼働に賛成の陳情を賛成多数で採択した。
 陳情書には、再稼働について「疲弊する地域経済の活性化につながる」と記されている。原発停止からすでに3年以上が経過しており、経済の大半を原発に頼っていたまちが限界に近づいていることがひしひしと感じられる。
 川内商工会議所の試算では、原発2基の再稼働に伴い、経済効果は年約25億円とはじき出した。 ただ、岩切市長は会見で「原発に依存していては日本が成り立たなくなる。次世代のエネルギー研究も進めないといけない」と将来的には廃炉の可能性にも言及した。
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は28日、同県薩摩川内市が再稼働に同意したことを受け、「薩摩川内市の議会、市長や県議会の意向などを総合的に勘案し、今後、川内原発の再稼働について判断したい」と慎重な姿勢を示すコメントを発表した。
 ただこれまでも伊藤知事は再稼働に前向きな発言をしており、地元同意は果たせるとみられる。
 鹿児島県議会も同日、原子力安全対策等特別委員会を開き、川内原発をめぐる請願・陳情を審議した。
 そもそも、原発の再稼働に向けた「地元の同意」は、法律上明記されたものではない。同意なくして再稼働も可能だが、現政権はその前提として同意は必要との認識を示している。

 ■カネも絡む「地元」の線引き
 これに対し、「地元」から外された周辺自治体が反発している。
 川内原発から最も近いところで約5キロしか離れていないいちき串木野市は9月末、「議会と首長の同意なしに再稼働することは許されない」として、同意対象に同市も含めるよう求める意見書を議会で可決。日置市も同様の意見書を可決した。
 反発の背景には、東京電力福島第1原発事故後、原子力防災計画の策定を義務付けた自治体の範囲が昨年、原発の半径10キロから30キロ圏内に拡大されたことがある。 半径30キロ圏内には日置市といちき串木野市を含め、9市町が含まれる。30キロ圏内にわずかに9世帯しか入らない姶良(あいら)市も、市議会が川内原発の再稼働反対と廃炉を求める意見書を可決した。
 反発の裏側をのぞくと、“カネ”が絡んでいるのがわかる。
 電源三法によると、立地自治体などには、電源立地地域対策交付金や使用済み核燃料税が入ってくる。薩摩川内市は毎年約10億円以上ももらってきたが、いちき串木野市はその10分の1以下で、姶良市はゼロだ。
 地元の範囲を考える際には、電力会社と立地自治体が結ぶ協定も参考になる。電力会社が自主的に結んでいる「安全協定」では、原発の施設設置のために事前協議の義務を定めている。事故時の通報義務や自治体による立ち入り調査なども盛り込んでいる。
 九電によると、川内原発で安全協定を締結しているのは鹿児島県と薩摩川内市だけ。周辺市町とは情報提供などの覚書を結んでいるが、事前協議などの規定はないという。

 ■大飯原発は、関西地域で「理解」
 伊藤知事は地元同意を「県と薩摩川内市で十分」との方針を示す一方、宮沢洋一経済産業相は地元の範囲を「地域の実情に応じて判断する」と、「地元任せ」にしている 川内以外の原発はどうか。
 東京電力柏崎刈羽原発の場合、東電は昭和58年10月に新潟県のほか、立地自治体となる柏崎市、刈羽村の計3自治体との間で「安全協定」を締結している。
 平成24年1月には全国で初めて、3自治体以外の県内全市町村と協定を結んだ。3自治体の協定では、施設の増設や変更の際に「事前に了解を得る」と規定されているが、再稼働についての同意規定はない。
 福島第1原発事故後、「地元」の範囲は拡大傾向にある。関西電力大飯原発(福井県)が24年6月に再稼働を決定した際には、隣接する京都府や滋賀県も含めて関西広域連合が関与し、「理解」を得る必要があった。
 最終的に民主党政権の野田佳彦首相(当時)が「私の責任で判断する」と踏み込み、福井県の西川一誠知事と会って同意を取り付けた。
 こうした経緯があることから、地元の範囲の線引きは地域ごとに、政府や電力会社に大きな難問として持ち上がってくるだろう。 ≫(産経新聞)


まあ、原発一基が動けば、年間の経済効果が約25億円あるとあると、地方行政にとっては“麻薬”のようなもので、身体に悪いがやめられません、そう云う現実もあるのだろう。また、各電力会社の地域社会貢献も盛んだから、それを目当てに共同営活動がなされているメカニズムまで存在するわけで、根が深い。こういう人々にとって、「原発電力は最も高い」と云う科学的、行政的証明がなされても、それは俺たちの日々の役には立たんじゃないか、と云う反論に出遭うのである。

しかし、代替のエネルギー源がないわけではなく、有力なものもあるにも拘らず、将来的リスクが山積みで、その処方箋一つ描けない現状で、それを繰り返し推奨していく政府の姿勢は、猿の自慰行為に似ている。過度の疲労で死ぬまで止めないことになる。まあ、筆者は猿の何とかを見たわけではない(笑)。中には、真面目な顔つきで、「いや、プルトニウム温存、核開発に、原発は欠かせない」と主張する人々も出てくる。そう云う人は、「だから本当の独立が手に入らない。中国にまで馬鹿にされる」と憤慨する。かと思えば、日本政府は国連でピエロのような繰り返しで恥をかいている。本気なのか、通過しないから出した決議案なのか判らないが、表面上、原発と核開発は表向き否定しているようだ。

朝日の記事で読んでみたが、原発事故の処理において、必ずしも住民側の目線で、放射能に対する処置が実行されているとは言いがたく、世界的に日本政府を大国(安保常任理事国・核保有国)が手厳しい非難をしていないと云うことは、大国にとっても、原発や核と云うものは存在を確保する安全保障上のメリットや、すそ野の広い産業として、世界的な認知があることを窺わせる面もある。筆者の興味は、ドイツが核を持っているのか、或いは、イスラエルのように、いつ核保有国だと暗黙の了解事項になるのかな?と思っている。


≪ 日本提出の核廃絶決議案、米英仏が棄権 国連で採択
 国連総会の第1委員会(軍縮・安全保障)は2日午後(日本時間3日午前)、日本が提出した核兵器廃絶決議を156カ国の賛成で採択した。だが、昨年まで共同提案国だった米国に加え、英国、フランスが棄権。中国が反対するなど、核保有国の賛成は得られなかった。
 日本は被爆70年を機に「核保有国と非核保有国の橋渡し役」(岸田文雄外相)として、核廃絶に向けて国際社会で主導的な役割を果たそうとした。核保有国の棄権や反対は、こうした日本の狙いが否定されたことを意味する。
 日本の核廃絶決議案採択は、1994年以来、22年連続。今年は初めて「Hibakushas(被爆者たち)」という表現を使って世界の指導者らに被爆地訪問を促し、核の非人道性を強調した。一方、廃絶時期を示さない穏健な内容で、核廃絶は安全保障を考慮して段階的に進めるべきだ、と主張する米国など核保有国の賛同も目指した。
 日本外務省が特に衝撃を受けているのは、同盟国・米国の棄権だ。米国は「核なき世界」を提唱するオバマ政権になった2009年以降、毎年、共同提案国に加わっていたためだ。
 米国などが棄権に回った背景には、日本の決議案が核の非人道性を強調する内容を含んでいたことがある。今年5月に核不拡散条約(NPT)再検討会議が決裂した後、一部の非核保有国は核の非人道性の認識をテコに「核兵器禁止条約」の実現に動いている。米国など核保有国にはそれに対する強い警戒感があり、日本の決議案への賛同に消極的になった可能性がある。
 日本の佐野利男軍縮大使は採決後、「(核保有国と非核保有国とに)核軍縮の進め方、核兵器の非人道性の問題、核軍縮の効果的な措置について立場に大きな隔たりがある」と記者団に語り、目算が外れたことを認めた。
 日本の決議案に反対したのは中国、ロシア、北朝鮮の3カ国。棄権したのは米国、英国、フランスなど17カ国だった。(武田肇、ニューヨーク=金成隆一)

■日本の核廃絶決議案(骨子)
「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動」
●すべての国が核兵器の全面的廃絶への共同行動をとるとの決意を新たにする
●核兵器国に、透明性を向上させる努力を広げ、核軍縮努力の詳細な報告提出を含め、相互信頼を向上させることを促す
●指導者、若者らの被爆地訪問、被爆者による被爆証言など、核兵器の非人道的影響に関する認識向上へのすべての取り組みを促す  ≫(朝日新聞デジタル)

終わりなき危機~日本のメディアが伝えない、世界の科学者による福島原発事故研究報告書~
ヘレン・カルディコット(監修)
ブックマン社


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●奇妙な相関図 中国を敵視して得るものなき日米韓の経済

2015年11月03日 | 日記
地球の履歴書 (新潮選書)
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●奇妙な相関図 中国を敵視して得るものなき日米韓の経済 

本日は多忙につき、軍事評論家田岡氏の南シナ海・米中対立の行方に関するコラムを紹介しておく。以前紹介し、糞味噌に貶した長谷川幸洋の米中対立構図で、徹底的に中国蔑視、隷米を貫いた“アンポンタン・コラム”に比べれば千倍まともな解釈なので、ここにお口直しと云う意味で掲載する。

正直、田岡氏が指摘するように、中国海軍や軍隊全体の近代化は、緒に就いたばかり、軍事力は実際問題、月とスッポンなのだろう。ただ、安心できない点は、中国には、そこそこの命中率のあるミサイルはあるわけで、日本の米軍基地は格好の標的になるし、ヤケクソになれば、核をアメリカ本土に闇雲に撃つだけの一応の核も保有している。

しかし、中国がアメリカの日本軍事基地を攻撃する可能性はゼロだろうし、現実に核を使うと云うことは、北半球人類の破滅に等しいわけだから、自分たちの国や国民がいなくなる判断をするはずもない。また、米中の経済的相互依存関係は半端ではなく、習近平が訪米の中で、最終的にオバマを怒らせた等とまことしやかに解説している記事もあったが、軍事行動を嫌がるオバマだと云う言説自体が眉唾なわけで、飽食を貪る1%の人間に支配されているホワイトハウスが、単独で行動できるはずもない。

まあ、出来レースという程、茶番ではないとしても、阿吽の呼吸があるのは事実だろう。日本人には、米中が21世紀の大国と云う図式で対峙すると思っている。そして、中国は木っ端微塵になるのだろうと予測と云うか願望を持つ人が多いらしい。おそらく、近接した地域における諍いや紛争の類を、マスメディアが喧伝し過ぎるために、地球上の中心に日中が位置した地球をいつも何時も眺めているために起きる、思考停止なのだと思う。世界の火種の多くは、EU独り勝ちのドイツの抬頭であり、ロシアを魔女化している事だろう。中国が本当に世界のプレーヤになるには、底上げとあらゆるものの近代化の時間が必要だ。そこまで、中国共産党が持てばの話だが。中国大国論はかなりの部分で作られているように思える。今夜はこの辺で……。

 ≪ 南シナ海の米中対立は「出来レース」だ!
 横須賀を母港としている米海軍のイージス対空ミサイル搭載駆逐艦「ラッセン」(9425t)は10月26日夜、南シナ海の南沙諸島で中国が埋め立て、滑走 路を造っているスビ礁付近の12海里(22km)以内を航行した。この行動は米国がこれらの人工島を中国領と認めず、その周囲12海里は中国領海ではない ことを示すためだ。
 米海軍が今後あまりに頻繁にこうした行動を取り、もし中国側と武力衝突になれば、がんじがらめの相互依存が成立している米中の経済関係は断絶し、双方の経済は多分麻痺する。昨年の日本の輸出の23.8%は中国向け(香港を含む)、18.7%は米国向けだから、日本にとって2大市場の混乱は致命的な打撃だ。しかもそれは欧州、アジア地域、そして全世界に波及するだろう。
 だが、実際には武力衝突に発展する公算は低い。中国は米国がこのような行動に出ても武力行使をしないことを事前に示唆しており、暗黙の了解があった、と考えられるのだ。

 ■「領土問題でも武力行使を軽々しく 言わない」と中国上将が表明
 北京西部の紅葉の名所、香山で10月16日から18日にかけて開かれたアジア・太平洋地域の安全保障協力を目指す討論会「第6回香山フォーラム」 には、南沙諸島問題で中国と対立するベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイや、インド、インドネシア、シンガポールなど16ヵ国の国防大臣が出席し、米、英、仏、独なども公式代表を参加させた。
 昨年招待されたが断った日本も今年は防衛研究所の大西裕文副所長を派遣した。参加国は計49ヵ国と5国際機関、出席者は約500人に達した。このフォーラムが2006年に始まった当時は「中国軍事科学学会」など、研究機関の主催で、参加者も研究者がほとんどだったが、いまでは中国政府の「軍事科学 院」が後援する半官半民の国際会議になっている。
 今回基調講演を行った中国の中央軍事委員会副主席(委員会の主席は習近平氏)範長龍・陸軍上将はその中で「たとえ領土主権に関る問題であっても、 中国は決して武力行使を軽言(軽々しく言う)しない」と述べた。こうした発言は中国国内のタカ派の反発も招きかねないから、範長龍上将の一存で言えることではなく、習近平主席の意を受けた発言だろう。
  習主席は9月25日、ワシントンでオバマ米大統領と会談し、南シナ海での埋め立て問題は主要議題の一つだった。オバマ大統領は、それまで米海軍やタ カ派議員達が主張していた「12海里以内での艦艇、航空機の航行」に対し、中国との関係の悪化を案じて慎重だったが、この会談後その実施を許可した。おそらく習近平主席から、間接的表現ではあっても、中国は武力行使はしない、との感触を得たと考えられる。
 現に「ラッセン」が人工島周辺を航行した際、中国海軍は「中国版イージス艦」とも言われるミサイル駆逐艦「蘭州」(7112t)と、フリゲート艦 「台州」(1729t)を出したが、相当距離を置いて後方から「追跡、警告をした」だけで並走はせず「ラッセン」の航行を妨害しなかった。
 一方米国も「中国敵視」と言われないよう「ベトナム、フィリピンなどが領有を主張している岩礁から12海里以内を航行した」とも発表して、公平さ を示そうとした。また米国務省のカービー報道官は27日の記者会見で米中関係への影響を問われ「世界のいかなる国との関係にも悪影響を与える理由はない」と答えた。これも事前に中国と暗黙の了解があったことをうかがわせる。
 中国が埋め立て、飛行場建設を行っているスビ礁、ミスチーフ礁は満潮時には水面下に没する「干出岩」だから海底の一部とみなされる。その上に構造物を造ったり、周囲を埋め立てても、海底油田の櫓と同様の「人工物」で領土ではなく、その周囲は領海にはならない。
 沖ノ鳥島のように満潮時にも一部がなんとか水面上に出ている場合には、それを補強して保存すれば周囲は領海になりうるが、スビ礁などはそうではない。
 南沙諸島には島と言えそうなものは12あるが、ベトナム、フィリピンが5島ずつ、マレーシア、台湾が1島ずつを抑え、それぞれ飛行場一ヵ所を造った。出遅れた中国は他国が目を向けなかった岩礁しか確保できず、飛行場を造るには大規模な埋め立てをするしかなかったのだ。
 中国の弾道ミサイル原潜は、かつては対立したソ連に近い黄海の最奥部の遼東湾を基地にしていたが、遼東湾の水深は25m程度、黄海北部も浅いか ら、船底から司令塔の上端まで20m余ある大型の原潜は延々と浮上航走しないと出動できず、丸見えになる。このため中国海軍は深い南シナ海に面した海南島の三亜付近に潜水艦基地を造り、潜水艦が隠れるトンネルも掘っている。
 米海軍は中国海軍との交流にも熱心で、中国との戦争が迫っているとは考えていないが、将来の万が一の事態に備え、原潜や哨戒機で中国潜水艦を追尾 し、プロペラ音や原子力機関のタービン音、減速ギア音、ポンプ類の音など「音紋」を採取して貯え、識別の資料としたり、季節、時間ごとの水温、潮流など、水中の音波伝播状況のデータを収集して潜水艦探知に役立てようとしている。
 中国海軍は当然それを嫌がり、哨戒機や海洋調査船の行動を妨害しようとする。2001年4月には米海軍の電子偵察機EP3が中国海軍のF8IIと海南島沖で空中衝突し、戦闘機が墜落、EP3は海南島の中国軍航空基地に不時着する事故も起きた。

 ■米国が唱える「航海の自由」は 実は「情報収集の自由」だ
 米国は今回の「ラッセン」等の行動を「航海の自由の確保」のため、と言うが、領海を外国商船が通過したり、漁船が操業せずに通る「無害通航」は自 由で、中国もそれを妨げようとはしていない。世界最大の貿易国、漁業国、造船国である中国にとって世界的な「航海の自由」の確保はまさに「中核的利益」だろう。軍艦にも無害通航権はあるが、沿岸国の防衛、安全を害するような情報収集は許されない。米国などの商船が南シナ海を通ることには何の支障もないことを考えれば、米国の言う「航海の自由」はもっぱら「情報収集の自由」を意味する。
 公海とその上空ならば哨戒・情報活動は自由に行えるが、中国が南沙諸島海域に人工島を築き、それを領土だと主張して、その周辺での米軍艦や哨戒機 の行動を規制すると米海軍の情報収集が妨げられる。国連海洋法条約でも人工島は領土とは認められないのは明らかだから、米海軍としてはその周辺海域を航行し、情報収集を行う実績を作っておこうとする。
 中国も人工島自体を「領土」とし、領海の根拠にするのは難しいことを承知しているから、南シナ海のほぼ全域を囲む9本の断続的な線、牛の舌のような形の「九段線」を示し、「それが歴史的な中国領海だ」と主張している。だが、その明確な根拠は示していない。
 中国は宋の時代(960~1279年)に磁石が発明されるなど、造船、航海術が著しく発達して巨大海洋国となり、南シナ海を多数の中国の大型帆船が往来し南海貿易が盛えたが、中国がその海域を「領海」として支配していた訳ではない。仮にその当時南シナ海で支配的地位にあったとしても、故に今日も中 国の領海だ、との論は「ローマ帝国が地中海を支配していたから、今日も地中海はイタリアの領海だ」と主張するような無理な説だろう。
 ただ、「九段線」は中華人民共和国が唱え出したのではなく、蒋介石の中華民国政府が1947年に南シナ海に11本の線を引いた地図を発行し、それが中国の権威が及ぶ範囲、としたのが始まり、とされる。1953年に中国はそのうち2本を削除した地図を発行し「九段線」となった。
 蒋介石が残した負の遺産とも言える「九段線」を中国が撤回すれば良いのだが、一度「自国領だ」と主張すると、その根拠が不明確であり、主張を続けるのは対外政策上不得策であっても、それを取り下げるのはどの国でも国内で非難の的になるから、難しい。
 南沙諸島の岩礁の大規模な埋め立て、飛行場建設は相当な準備期間を要するから、おそらく習近平氏が2013年3月に国家主席に就任する以前に計画が決定していたと考えられる。前任の胡錦濤主席といえども、軍が「自国領の防衛を固めるため」と言えば、それを抑えにくかったのではないだろうか。
 中国としてはこの問題で米国との関係を悪化させたくはない一方、中国が主張してきた領有権を否定する米国の行動を座視していれば国内の“愛国者” 達が騒ぎ立て、それに乗じて習氏の失脚を狙う者が出かねない。だから一応米国に抗議し、軍艦2隻で「ラッセン」を追尾させ「追跡、警告を行った」と発表 し、実際には妨害はしない、という手緩い対応を取るしかなかったのだろう。
  また中国は「建造中の飛行場に軍用機は常駐させない。海難救助の拠点にもなる」と表明して米国、近隣諸国の非難をかわそうと努めている。幸い、中国では今回の米艦の行動に対して反米感情が高まった様子はなく、デモなども起きていない。

■経済的に依存しあう米中は 衝突をなんとか避けたい
 尖閣諸島については2014年11月、日中首脳会談を前に、双方が「異なる見解を有している」ことを認め「不測の事態の発生を回避する」ことで合意した。両者は従来どおりの主張は続けるが、現状は変えず、衝突は避ける、という事実上の棚上げで当面はおさまった。南沙の岩礁問題でもこれに似た玉虫色 の状況になる可能性が高いのではないか。
 以前にも本欄で述べたが、米国にとり中国は、
(1)米国債1兆2000億円ドル余を保有し、危機にある米国財政を支えている。
(2)3兆7000億ドル(ドイツのGDPに匹敵)の外貨準備の大半をウォール街で運用し、米国の金融、証券の最大の海外顧客
(3)米国製旅客機を毎年約150機輸入し、米国の航空・軍需産業の最大の海外顧客(今後20年間の中国の旅客機需要は6300機以上)
(4)GMの車が年間約200万台(中国全体では2300万台)売れ、中産階層が爆発的に増加する巨大市場で米企業2万社が進出
 などの要素から、中国への依存は決定的に大きい。
 中国にとっても米国は最大の輸出市場であり、最大の融資・投資先だから、米国との友好関係と米国経済の成功を願わざるをえない。
 中国海軍の増強、海洋進出が喧伝されるが、中国の空母は1隻、その搭載戦闘機は約20機であるのに対し、米海軍は戦闘・攻撃機55機を搭載可能な原子力空母10隻(近く11隻に戻る)を保有し、搭載戦闘機数は550対20だし、技術の差は極めて大きい。
 実用になる中国の原潜は5隻、米原潜は71隻で、中国の対潜水艦能力(探知技術など)は無きに等しい、などを考えれば、中国海軍が米海軍に対抗して、全世界に伸びた長大な海上通商路を守ることは将来も不可能に近い。
 中国は海外市場、輸入資源への依存度が高まれば高まる程、世界的制海権を握る米国との対立を避けざるをえない立場にある。
 また中国は今日の世界秩序、経済システムの第一の受益者であり、それを覆すことは経団連が体制転覆をはかるに等しく、世界の体制護持のために大局的には米国と協調せざるをない。
 もちろん日本にとっても、米中の武力衝突による経済関係の断絶、両国経済の破綻は致命的だ。反中国感情を抱く日本人の中には、米中が岩礁埋め立て問題で対立することを喜ぶ気配も感じられるが、それは大津波の襲来を期待する程の浅慮と言うしかない。 ≫(ダイアモンドONLINE:経済・時事――田岡俊二の目からウロコ)

総理にされた男
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●“作られた中国脅威論”への過大評価、気がつけばドイツの抬頭

2015年11月02日 | 日記
ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱 (光文社新書)
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●“作られた中国脅威論”への過大評価、気がつけばドイツの抬頭 

最近、時間の合間にエマニュエル・トッドの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』をポツポツと読んでいる。トッドの人口学から導かれる、EU、とりわけドイツの一人勝ちのメカニズムを分析、その危険性を唱えている。現在のヨーロッパは最終の危機に瀕している。彼がフランス人であることから、フランス民主主義の崩壊、ドイツのヨーロッパ圏全体を網羅する覇権。ウクライナ危機などは、明らかにドイツの仕掛けによってなされた。

昨日の拙コラムで長谷川幸洋が、アメリカ絶対神な論調で持論を展開していたが、筆者も含め、アメリカが一方の雄になるであろうが、一国主義で覇権は唯一無比だと断言できる時代は終わっているのだ。トッドの予測によると、アメリカと明確に対峙できるのはドイツになると云う仮説である。トッドは、なぜか中国の抬頭をあまり重要視していない。おそらく、ユーラシアと云う勢力の括りに入れているだけと云う見方が出来る。

トッドは、ドイツ人の有能さを認めつつも、その有能さゆえに、権力意欲も旺盛になる面を強く意識している。日本人にも、その傾向あると指摘するが、筆者的に観察する限り、思考停止からの脱皮に悶絶寸前なわけで、精々、アメリカ覇権のユーラシアにおけるATMメッセンジャーとして組み込まれてゆくだけの傾向が一層強くなっている。安倍がイスラエル外交やロシア外交に一定の舵を切るのも、アメリカ覇権の対ユーラシア覇権(ドイツ覇権)への楔の一環の一つと捉えておいて良いのだろう。

トッドの見立てだと、世界の真のプレーヤーは米・露・独の三ヶ国に限定される。英仏中、そして日本は含まれない。この割り切った考えは、多くの人々の夢を打ち砕くだろうが、それなりに納得可能な予測である。オバマのリーダーシップ云々は別にして、(オバマ)・メルケル・プーチンによる世界観が、現状の地球の表面を覆っているのだろう。だからと言って、属人的パワーバランスではなく、その国の経済軍事地政、その他の哲学から導き出される見通しと云うことになる。最近、問題になっているVWディーゼル排気ガス偽装問題の露呈も、政治的タイミングの一つとして利用されたフシがある。この辺の現象は、トッドの危惧に対するアメリカの反撃の表れかもしれない。

筆者が、なぜアメリカ一国主義に異を唱えているかと言えば、グローバル世界を提供した故に出てきた、地域格差であり、人々の経済的格差であり、国家の格差に結びついている。色んな立場があるのは、それなりの正当性はあるのだが、基本的にすべての人々には、公平な扱いを受ける権利がある。どのような立場にいようと「正義」とか、「なんか変」と云う感性を失うことが、最も怖い。この世の中の権力に鎮座している人々は、どの国であれ、地域であれ、民族であれ、単に権力を消費しているだけで、フェアネスと云う原点を放棄している。

まあ、ゴタゴタ語っても退屈だろうから、この辺で止める。ただ、トッドの本を読んでいて、中国が重視されていないのには、幾分不安を感じる。長谷川のように、中国糞味噌も如何かと思うが、トッドに至っては無視に近い(笑)。日本のマスメディアで伝えられる話とは、かなりの開きがある。考えてみると、南シナ海でドンパチが始まっているわけでもない。しかし、ヨーロッパのお隣では、シリアだウクライナだパレスチナだと大きくはないが戦渦を交えているのだから、リアルだ。現時点では、中国覇権と云う脅威は、日本のエリートが都合良く作り上げているものの一つと云う見方も可能なのだろうか。以下はロシア人から見た中国のEEUと中国の「一帯一路(新シルクロード 経済圏)」についての論評だが、これも、案外言葉以上の意味がない場合もあるのだろう。


 ≪ ユーラシアの約束
2015年10月30日 セルゲイ・カラガノフ
 独立国家共同体(CIS)」首脳会議および「ユーラシア経済連合(EEU)」最高評議会会議が10月16、17日、カザフスタンの首都アスタナで開催された。これによって、EEUと中国の「一帯一路(新シルクロード 経済圏)」の連結や、EEUと中央アジアの軍事・政治分野を含めた協力拡大の一端が明らかになった。EEU・一帯一路連結問題でのEEU加盟国の協調に関する文書も採択された。
 これと並行して、EEUの執行機関である「ユーラシア経済委員会(EEC)」協議会議長は、「ヨーロッパ連合(EU)」の執行機関である「ヨーロッ パ委員会(EC)」に、極めて一般的な両連合の連結作業に関する提案を送った。同様の提案は相手側でも作成されていることが明らかになっている。
 ユーラシア・プロセスを分析しているロシアの専門家は、少しホッとした。というのも、これまで、歴史的となるであろうウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平主席の「連結」合意は、EEUの一部加盟国の官僚の混乱あるいは能力欠如に振り回されて、”疲弊する”という不安が増大していたからだ。

 ■逆宣伝も活発に
 代わりに、ロシア、中国、その他のユーラシア諸国の接近を阻止しようという動きが活発化している。アングロサクソン系のプロパガンダ的な報道など はそれを象徴している。ユーラシア・プロジェクトには将来性がない、参加国すべてにとって無益、または中国だけが得をする、ロシアだけが得をするといった内容の記事が登場した。
  外交ツールまで使われている。中央アジアの旧ソ連諸国は、互いの接近を阻止するような圧力、またこれらの国とロシアや中国との接近を阻止するような圧力を、アメリカから受けていると、ことあるごとに伝えている。
 この話は、中央アジア周辺の不安定化を目指す新たな活動が起こるという、専門家の予測と一致する。不安定化の目的とは、この地域を通じたロシアと中国の接近、また中国とヨーロッパのみならず、中国およびロシアとイラン、インドを中心とした南アジアを結ぶ、新たな経済・物流センターの中央アジアへの創設を困難にすること。カザフスタンおよび中央アジアの多くの国で不可避な最高指導者の交代に乗っかり、親アメリカ勢力の政権発足とまではいかなくとも、ウクライナ作戦のような不安定化を中央アジアにもたらすといった、現実的な専門家文学もある。

 ■“大ユーラシア連合”の潜在力
 挑発の問題は一旦脇に置き、可能性を見てみよう。それはロシアの経済的な東方転換と関係している。ロシア極東に「先行発展領域(TOR)」が創設され、活動を始めている。ウラジオストク自由港圏は、ロシアの東海岸の港の多くに広がる。天然ガス・パイプライン「シベリアの力」、宇宙基地「ボストチヌイ」と関連インフラの建設が行われている。投資の流入、その後の経済成長の加速化を期待すべきではないか。
 別の大きな期待があるのは中国の西方転換。これは客観的である。中国経済はこれまでの「世界のためのアジア」モデルではなく、「アジアのためのア ジア」モデルに沿っている。アジア域内市場と近隣市場は中国にとって、より可能性のある市場に映っている。加えて、中国はアメリカとの建設的な協力がうまくいかないことを理解した。貿易は別として、アメリカは太平洋にソフトパワー冷戦のような封じ込めシステムの構築を行っていることが明らかになってきている。この状況において、中国政府は、イラン、パキスタン、インド、ペルシャ湾の方向でヨーロッパ市場をめざす物流関係の発展を通じた、西および南西への経済的拡大に重きを置いた。中国は「16+1」コンセプト、すなわち中央ヨーロッパおよび東ヨーロッパの16ヶ国への自国の投資拡大を発表した。

 ■ロシアの立ち位置は
 さて、ヨーロッパ、中央アジアとの物流関係の構築などを通じた中国の西方転換は、ロシアにとって客観的に極めてプラスである。ロシアは経済的な東方転換を行っており、また太平洋および南アジアへの経済・政治的進出の拡大を必要としている。
 「連結」を宣言してから最初の5ヶ月は、ロシアが「勝利の手から敗北を奪い取る」のではないかという大きな不安が国内であった。だがアスタナで行 われた会議によって、この不安が全部とはいかなくとも一部払拭された。ぐずぐずしている時間などない。それでなくとも、客観的にはソ連崩壊によって、主観的にはエリートの精神的な怠惰、無教育、ヨーロッパ中心主義によって、アジア、特に中国の経済成長の第1波に乗らずに、20年を丸々無駄にしているのだから。
 ロシアの極東への転換は、官僚制度の弱点を筆頭とした原因により、最近までブレーキがかかっていた。大ユーラシア共同体の構築、その内部での重要かつ有利な地位の確保には、いまだに存在するような中途半端な活動ではなく、体系的な作業が必要である。
 「連結」は、何よりも経済戦略の問題であり、政治の最高レベルの指揮を要し、省庁のみならず、専門家社会、経済界が参加した首相、大統領府長官、 または特別副首相が率いるユーラシア協力作業部会の創設を求める。ロシアだけでなく、近隣諸国の参加も必要になる。このような委員会は、EEUと一帯一 路、EEUとEUの対話(始まった場合)を統合することができる。そして、建設中の大ユーラシアの主要な組織になり得る、非常に有望でありながら、いまだ に半睡眠状態にある上海協力機構を、活性化させるのである。  
*セルゲイ・カラガノフ、ロシア国立研究大学「高等経済学院」世界経済・世界政治学部長
*記事全文(露語)  ≫(ロシアNOW)

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
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●化け皮剥がれた長谷川幸洋と軍事専門家が解説、南シナ海の米中

2015年11月01日 | 日記
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●化け皮剥がれた長谷川幸洋と軍事専門家が解説、南シナ海の米中

長谷川の論調は、あいもかわらぬ隷米思想に貫かれているが、これが日本の既得権勢力の中で生きている多くの人々の目線に近いと云う意味で、意義深い。米軍が抑制的な振舞いに徹していると書きながら、長谷川幸洋自身が戦意高揚しているのだから、話にならない(笑)。ネオコンのプロパガンダをマケイン議員から聞かされている錯覚に陥る。推測の域を出ない憶測を、見てきたように書けるのだから、アメリカ絶対神と考えている長谷川幸洋らしい(笑)。

長谷川の論調だと、米軍、海上自衛隊共々万事怠りない“戦時体制”に入っているが、それ以上の行動に出るか出ないかは、中国次第だと。まさに、戦時における、軍国的国民へのメッセージ状態の論調になっているのだから吃驚だ。常にアメリカは正しいジャッジをする国であり、そう云う外交、軍事の戦略を持つ。つまりは、アメリカ絶対神の無謬性に論拠を置く、キチガイ信者の戯言と言っても過言ではないようだ。アメリカが間違わないのなら、リーマンショックもなかったし、大量破壊兵器捏造イラク戦争もなかった。

アメリカが第一次大戦以降、圧倒的軍事力を持ちながら、介入した戦場で勝利の雄たけびを上げたと言うのだ?敗戦を認めたくないばかりに、曖昧な撤退に次ぐ撤退を繰り返し、戦場と化した、遠くアメリカから離れた地域に、混乱と飢餓と難民と怨念を生み出し、各民族や各部族らの内戦を惹き起こして、ウォール街のマネーゲームに今でも現を抜かす、新大陸の歴史なき移民人工国家、ただそれだけの国なのにだ。長谷川は最後の方になって、書くことがなくなったのか、中国の悪口を並べ立て、ネトウヨな味つけで終わらせている。東京新聞よりも産経新聞か夕刊フジがピッタリの職場なのだが?(笑)。単に、安倍官邸の広報隊嘱託に過ぎない。

≪ 中国よ、南シナ海はもうあきらめなさい!
~アメリカを怒らせた習近平政権。たどり着くのはソ連と同じ運命だ

■アメリカは本気だ
・米国のイージス駆逐艦が南シナ海で中国が軍事基地化を進める人工島周辺12カイリ(約22キロ)内に進入した。中国は「強烈な不満と断固たる反対」を表明し「あらゆる必要な措置をとる」と対抗する構えだ。米中対決の行方はどうなるのか。
・米国側は進入したものの、姿勢はきわめて抑制的だ。それは駆逐艦が進入したときの映像をいっさい公開していない点に象徴される。進軍ラッパを鳴り響かせて突入したような印象を避けたい意図がにじみ出ている。
・だからといって、作戦に参加しているのは報じられたように、たった1隻の駆逐艦とP8A哨戒機だけだったのかといえば、そうではないだろう。
・中国を過度に刺激したくないために公表していないだけで、実はもっと多くの艦船や作戦機、衛星が総動員されているとみて間違いない。原子力潜水艦も 周辺海域をパトロールしている可能性が高い。中国の軍事的能力を推し量るうえで、今回の作戦は絶好の機会になる。そんなチャンスをみすみす逃すはずがない。
・それは日本も同じである。菅義偉官房長官は会見で「米軍の作戦の1つ1つにコメントするのは控える」としながら「(米側と)緊密な情報交換は行っている」と認めた。駆逐艦「ラッセン」が所属するのは米海軍第7艦隊であり、母港は神奈川県の横須賀基地だ。
・横須賀には海上自衛隊の基地もある。横須賀基地は日米とも緊張しているだろう。 ・これはまぎれもない軍事行動である。相手が対決姿勢を示している以上、米国も日本も自らすすんで手の内をさらけだすわけがない。日本の海上自衛隊も姿は見えないが「緊密な情報交換」を基に事実上、米国と一体となって動いているとみていいのではないか。
・一方、中国の側も事前の勇ましい言葉とは裏腹に、これまでのところ抑制的な姿勢を保っている。2隻の軍艦が駆逐艦を追尾したものの、それ以上の敵対 行動はとらなかった。両国の海軍トップ同士は29日にテレビ会談するとも報じられた。これも偶発的な衝突を避けるために意思疎通を図る狙いである。
・こうしてみると、緊迫した事態であるのは間違いないが、侵入後も両国は事態をしっかりコントロールしているとみていい。そのうえで、さて今後はどうなるのか。
・結論を先に言えば、習近平政権はどうやっても米国には勝てないとみる。 中国は強気だが、確実に負ける ・それには、かつての米ソ冷戦の経験が参考になる。冷戦は1945年の第二次大戦終結直後から始まり、89年のブッシュ・ゴルバチョフ会談で終結するまで半世紀近くにわたって世界各地を舞台に激しく戦われた。
・スプートニクの打ち上げ成功(57年)など一時はソ連の力が米国を凌ぐと思われた時期もあったが、共産主義体制の非効率性は克服できず結局、体制内 改革であったはずの民主化政策が引き金になってソ連が崩壊した。決め手になったのは経済である。東側の経済が西側に大きく遅れをとってしまったのだ。
・米国の政策立案者たちは今回の人工島進入にあたって当然、かつての冷戦を強く意識したに違いない。カーター国防長官は上院軍事委員会の公聴会で「今後、数週間から数カ月にわたって作戦を継続する」と述べた。しかし、これはまったく控えめだ。
・米国は数カ月どころか数年間、もしかしたらそれ以上の長期にわたって作戦を継続する覚悟を決めているはずだ。それは当然である。いったん進入した以上、中国が退かなければ、米国側から退く選択肢はありえない。そんなことなら、そもそも進入しない。
・国防長官が長期にわたって作戦を継続する意思を公に表明しなかったのも、また当然である。そんな覚悟をあからさまにいえば、中国に向かって「米国はこれからずっと中国と対決していく」と宣言したも同然になってしまう。
・相手にそんな宣言をしてみたところで問題は何も解決しない。それどころか悪化させてしまう。百害あって一利なしである。だからといって、米国に長期戦の覚悟がないという話ではない。分かっているが、おおっぴらに言わないだけだ。
・冷戦は結局、ソ連崩壊の形で終わった。では中国はどうなるのか。 もしも中国がいま米国に反撃すれば、目下の軍事力は圧倒的に米国優位なので中国は確実に負ける。中国もそれが分かっているから、強気な台詞を吐き続けてきたものの、いざ進入されたら追尾するくらいしかできなかった。
・だからといって中長期的な持久戦に持ち込んだところで、やはり勝てない。なぜかといえば、軍事力を支える肝心の経済がいまや崩壊寸前であるからだ。躍進した中国経済の秘密はなんだったか。パクリと庶民生活を犠牲にした安価な労働力だ。
・中国自身が開発した画期的な技術など、ほとんどないに等しい。ブランド品から半導体、冷凍ギョーザに至るまで日本や米国の商品、先進技術をパクってきて真似してきた。軍事力の核心部分もパクリだ。パクリが本家にかなわないのは当然である。

 ■ソ連と同じ運命をたどる
・安価な労働力はいまやミャンマーなどに追い上げられ、繊維産業はじめ中国から撤退する企業が相次いでいる。不動産も上海株もバブルはとっくに弾けた。経済成長が止まる一方、政治的には権力闘争が熾烈になる一方だ。
・そんな情勢で軍事力だけが突出して米国を中長期的にしのいでいくのは不可能である。
・目先の冒険主義に走って軍事衝突を選べば、敗北が政権基盤を揺るがす。といって米国とにらみ合いを続けても、長引けば長引くほど、経済力が基盤になる国力バランスは中国不利になっていく。加えて日本やオーストラリアも中国に対峙する体制を整えていく。
・中長期的にみれば、中国はソ連と同じような運命を辿るだろう。中国がそんな自滅シナリオを避けようとするなら、いまは自ら軍事基地建設を凍結する以外に選択肢はない。どちらにせよ、中国は米国に勝てないのだ。
・今回、米国や日本が断固たる態度を示しながらも、けっして抑制を忘れていないのは、最終的には勝つと分かっているからだ。ただし、この対決は短期で終わると楽観しないほうがいい。長く目に見えない神経戦が続く。もしかしたら、何年も。そういう覚悟が必要だ。
・それにしても、先の安全保障関連法をめぐって「やれ戦争法案だ。徴兵制復活だ」と騒いでいた野党は、この事態をどう受け止めるのだろうか。米国に向かって「戦争反対!」と叫ぶのか。南シナ海は日本の重要なシーレーンではないか。
・野党のトンチンカンぶりは安保関連法成立からわずか1カ月であらわになってしまった。こんなタイミングで民主党の重鎮、松本剛明衆院議員(元外相)が離党したニュースが民主党の現在を象徴しているようだ。  ≫(現代ビジネス:長谷川幸洋の「ニュースの深層」)


以下は、よく判らん人物を日経ビジネスがインタビューしている記事である。それこそ、軍人の興奮が伝わるものなので、深く考えずに掲載している。ただ、読んでみると、長谷川幸洋よりは断然フェアな目線を持っている。どちらも、中国が負けると云う結論は同じでも、中国嫌いと云うより、アメリカ絶対神の長谷川の論調は、中国の崩壊を念じて書いている(笑)。小原氏の方には、念ずると云うよりも自衛隊的知識の範囲で、中国が軍事力でアメリカに敵うことはないと結論づけているだけだ。まあ、ケネディーとフルシチョフの時の核ミサイルに触れていないのが面白い。中国習近平の気が狂ったボタンを押さない前提のようだが、さてどうなるのだろう?


≪ 南シナ海の軍事行動、米国は絶対に引かない
米海軍が10月27日、南シナ海の人工島12カイリ内の海域に駆逐艦を派遣し、哨戒活動を行った。
ここは中国が「領海」と主張する海域だ。
中国は、事前の許可なく外国の軍艦が「領海」に入ることを拒否しており、今後、米中間の対立が深まることが懸念される。 米国の意図はどこにあるのか。中国はどのように対応するのか。 元自衛官で、中国の政治・軍事活動をウォッチしている、小原凡司・東京財団研究員兼政策プロデューサーに話を聞いた。(聞き手は森 永輔)

―――中国が埋め立てを進めている南シナ海の岩礁、スービ礁から12カイリ以内の海域に、米海軍が駆逐艦「ラッセン」を派遣し、哨戒活動を行いました。ここは中国が「領海」と主張する海域です。米国の狙いはどこにあるのでしょうか。

小原:「航行の自由」を守ることが米国の狙いです。「航行の自由」というと商船が自由に行き来できることを思い浮かべますが、米国がこの言葉を使う場合は「米軍が自由に活動できること」も意味します。何かあれば、いつでも必要な場所に駆けつけられる状態を維持する。
 中国は「南沙諸島とその周辺の海域」、すなわち南シナ海のほとんどの海域に「主権」を持つと主張し、米国の軍事行動を排除する意図を示していま す。1992年に領海法を制定して、他国の軍艦が中国の「領海」を無害通航する権利を否定しました*1。国連海洋法条約は、他国の軍艦の無害通航権を認め ています。米国は今回、中国のこの意図を挫こうとしています。
*1:沿岸国の安全を脅かさない限り、外国船が自由な航行を認められる権利

―――中国が南シナ海で取っている行動は、いろいろな面で問題視されています。それらのどの面に米国はフォーカスしているのでしょう。例えば、スービ礁の位置づけを問題視しているのか。岩であれば領土となりますが、岩礁ならば領土と主張することはできません。それともスービ礁を埋め立てたことが問題なのか。はたまた、埋め立てて造った人工島を軍事利用する可能性が問題なのか。

小原:スービ礁は暗礁です。領土 と主張することはできません。埋め立てて人工島にしても、領土とはなりません。オイルリグが領土とはならないのと同じです。従って、この人工島から12カイリ以内の海域も領海とはならず、公海です。公海であれば、米海軍が哨戒活動を行っても何の問題もありません。米国は哨戒活動をすることで、この海域が公海であることを実力をもって示そうとしたのです。そして、同様のロジックが南シナ海全体に及ぶと主張したいのです。

―――中国は南シナ海に九段線と呼ぶ線を設定し、この域内に主権ともとれる権利を主張しているからですね。

小原:その通りです。

―――小原さんは中国が南シナ海で進める核戦略も重視しています。

小原:はい。中国は核ミサイルを 搭載できる原子力潜水艦4隻を南シナ海に配備しています。その射程距離は8000キロ程度でしょう。これらの潜水艦が南シナ海から太平洋に出れば、米本土を射程に収めることができます。太平洋に出てしまった潜水艦を探知するのは、米海軍といえども、大変困難です。
 南シナ海における米海軍による対潜水艦哨戒活動が阻害されることになっては問題です。これも、米国が南シナ海における航行の自由を重視する理由の1つです。

―――中国の核戦略に関連して、フィリピンの西にあるスカボロー礁に注目されていますね。中国が実効支配しています。

小原:中国が南シナ海を面で支配しようと考えた場合、スカボロー礁を軍事拠点化することは有効な手段です。以下に挙げる3つの拠点と相互支援する体制を築けば、南シナ海における航空優勢と海上優勢を高めることができるからです。3つとは、中国海軍の基地がある海南島と、その南東にあり、既に滑走路が出来上がっているウッディーアイランド。そして、南沙諸島の一つで滑走路の建設が進むファイアリークロス礁です。
 中国はまだスカボロー礁の埋め立てには手を付けていません。米国の今回の哨戒活動は中国が行うかもしれないスカボロー礁の軍事拠点化を思いとどまらせる意図もあるでしょう。

 ■米国は決して譲歩しない
―――米国が哨戒行動を始めたことについて、小原さんはどこに注目していますか。

小原:「口で言っても聞かないなら実力を行使する」という方針に舵を切ったことです。米国は中国に対して、南シナ海での姿勢を改めるよう何度も要求してきました。しかし、変化はなかった。
 米国は中国と軍事衝突することを恐れていません。中国が譲歩するまで一歩も引くことなく、主張を押し通そうとするでしょう。米国は、水面下で中国と協議することはしないことを示したわけで、これは、中国が求めている新型大国関係を否定したのと同義です。
 米国防総省は5月ごろから実力行使を主張していましたが、軍事行動に訴えたくないオバマ大統領が決断を留保していました。しかし、9月25日に行われた米中首脳会談の場で習近平国家主席が姿勢を変えなかったため、決断に至ったようです。

■もし負ければ共産党による統治が揺らぐ
―――中国は譲歩するでしょうか。

小原:目に見える形で譲歩することは難しいでしょう。そんなことをすれば、国内世論が納得しません。  ただし、軍事衝突に至る事態は避けたい。
 米中が軍事衝突に至る可能性はゼロではありません。中国は今回、追跡・監視・警告という対応をしました。しかし、米国が哨戒行動を続ければ、対応 を強化せざるを得ません。米艦の進路を妨害することなどが考えられます。もし米艦に被害を与えることがあれば、米国は自衛権を発動して一層多くの部隊を南シナ海に派遣するでしょう。中国海軍がこれを阻止しようとすれば、最悪の場合、軍事衝突になってしまいます。
 もし中国が負けるようなことがあれば国内問題化し、共産党による統治が危機に陥ります。習近平政権としては、それはなんとしても避けなければなりません。
 このため、表面上は米中がともに退いた形を取りつつ、実質的には中国が米国に譲歩する形を模索することになるでしょう。しかし、どのような具体策 が考えられるのか、今のところ私にもアイデアがありません。もしかすると、サイバーや宇宙の分野で何かしらの妥協をするのかもしれませんね。これらの分野は米国が最も懸念している分野。加えて、中国が譲歩をしても、表に見えづらいですから。

―――中国は、米国が哨戒活動を繰り返すならば、埋め立て活動を強化すると発言しています。今のところ、譲歩する気配はないですね。

小原:米軍を排除し続けるという意図を、そのような表現で示しているのでしょう。「中国軍が対応する」などと言えば、それこそ軍事衝突になる可能性があります。そんなことは危なくて言えません。

 ■「やれるものなら、やってみろ」
―――ここからは、米国による哨戒活動の細部の話をお伺いします。まず、中国が実効支配する南沙諸島の7つの岩礁のうち、米国はなぜスービ礁を選んだのでしょう。

小原:米国の活動に関する支援の輪を広げたかったからだと思います。スービ礁は1988年に中国がベトナムから奪ったものです。従って、ベトナムの理解が得やすい。次の哨戒活動は、中国がフィリピンから奪ったミスチーフ礁の周辺で行うかもしれません。フィリピンは、アキノ大統領が既に米国の今回の行動を歓迎していますね。

―――駆逐艦「ラッセン」を選んだことに何か意味はありますか。

小原:これも、米国がいかに本気かを示すものだと思います。ラッセンはミサイルを装備しているイージス艦で、戦闘することが可能。同艦を派遣することは、中国に「やれるものなら、やってみろ」と言っているようなものです。
 ラッセンが1隻で活動したことも重要です。もし複数の艦船が編隊を組んで行動していたら、中国が「米国は戦闘する意思がある」と受け取りかねません。「米軍が南シナ海においても自由に活動することを中国に示す」ことが目的ですから、これでは行きすぎになってしまいます。
 もちろん、最悪の事態に備えて、他の米艦船が離れた海域で待機していたことと思います。これは証明のしようがないことですが。

―――米国には、駆逐艦による哨戒活動以外に意思を示す方法がなかったのでしょうか。先ほど指摘していただいたように、軍による活動はどうしても不測の事態につながる危険があります。例えば経済制裁とか。

小原:なかったでしょうね。「米軍が自由に活動すること」を示すのですから、軍が動くしかありません。
 ただし、これは最後通牒ではありません。米軍は段階的に行動しており、まだいくつもの手段を手元に残しています。

―――例えば、どんな手段があるのですか。

小原:今回は、船を派遣しました。航空機を派遣するとステージが上がることになります。船の場合は先ほどお話しした無害通航権があり、一定の条件を満たせば軍艦でも領海を通航することが可能です。しかし航空機の場合、領空に入れば即座に領空侵犯となる。許容範囲が狭いのです。

*小原凡司(おはら・ぼんじ)
東京財団 研究員兼政策プロデューサー 専門は外交・安全保障と中国。1985年、防衛大学校 卒。1998年、筑波大学大学院修士課程修了。1998年、海上自衛隊 第101飛行隊長(回転翼)。2003~2006年、駐中国防衛駐在官(海軍武官)。2008年、海上自衛隊 第21航空隊副長~司令(回転翼)。2010年、防衛研究所 研究部。軍事情報に関する雑誌などを発行するIHS Jane’sでアナリスト兼ビジネス・デベロップメント・マネージャーを務めた後、2013年1月から現職。  ≫(日経ビジネス:政治・経済―キーパーソンに聞く(森永輔)


*ものは序でではないが、米国防総省と結びつきが深い有力シンクタンク、米ランド研究所のレポート要約を伝える日経新聞の記事も紹介しておく。あまり中国軍を舐めない方が良いと思うのは、日欧米の人々と中国の人々が考える、一人当りの生命の価値、そう云うものが議論から抜け落ちている。戦争と云うもの、その価値の差によって、多くの想定外な結果に結びついている。最高の事例がベトナム戦争だったのだと思うのだが……。


≪ 米中激突なら……、米研究所が衝撃予測  編集委員 秋田浩之
アジアの安定や日本の防衛は、米軍に大きく頼っている。いざというとき、在日米軍が大打撃を受け、機能がマヒしてしまったら、大変だ。そんな危険を警告する報告書が最近、有力な米シンクタンクから出された。
 この報告書を発表したのは、米国防総省と結びつきが深い有力シンクタンク、米ランド研究所。中国軍の増強により、アジアにおける米軍の活動がどのような影響を受けるか、公開情報をもとに予測した。

■脅威高まる在日米軍基地
  題名は「米中軍事得点表~部隊、地理、進化する勢力バランス、1996―2017」(The U.S.-China Military Scorecard. Forces, Geography, and the Evolving Balance of Power, 1996―2017)。  この報告書の特徴は、中国軍による(1)台湾への進攻(2)南シナ海の南沙諸島への進攻――の2つのシナリオを想定し、米軍が介入した場合にどうなる か、詳しく分析していることだ。
 しかも、おおざっぱな比較ではなく、航空優勢や航空基地への攻撃力、水上戦能力といった10種類の戦力に分け、1996年、2003年、2010年、2017年の時系列で比べている。
  その結論は、日本にとっても不安を抱かざるを得ない内容だ。報告書はまず、米中の軍事力の差はなお大きいとしながらも、中国軍は、米軍の介入を阻む能力を 急速に強めていると指摘する。 日本にとってとりわけ深刻なのは、中国軍の攻撃力が増し、在日米軍基地や、空母を中心とする米艦隊への脅威が大きく高まっているという点だろう。た とえば1996年時点では、中台紛争に米軍が介入したとしても、中国軍は在日米軍基地を攻撃できるミサイルをもっていなかった。
 ところが、2010年までに、ミサイル攻撃により、米空軍の主力拠点である嘉手納基地(沖縄県)を4~10日間、閉鎖に追い込める能力を手に入れた。2017年には、16~43日間の閉鎖を強いることができるようになるという。
 報告書はさらに、米空母が中国の潜水艦に探知され、攻撃される危険が急速に高まっているとも警告する。中国軍は、潜水艦艦隊をスリム化する一方で、偵察衛星などを使い、水平線をこえた「目標物」を見つける能力を強めているからだ。

 ■空母も標的に
 そこで気がかりなのが、こうした現状を踏まえた提言だ。
  紛争の初期段階では、中国から離れた海域に空母を展開することも検討すべきだ――。 報告書はこう明記し、紛争が始まったばかりで米軍が優勢を確保できていない段階では、空母を日本周辺から太平洋の南に下げるべきだ、と提案している。中国 軍の増強により、もはや、空母を自由自在に東シナ海に展開できない、と認めたにひとしい。
 日本の防衛は戦後、米軍が圧倒的な強さを保ち、アジアの警察役をはたしてくれるという前提で成り立ってきた。なかでも「動く基地」である空母の存在は、米軍の強さの象徴ともいえた。  こうした前提が崩れているとすれば、日本への影響も大きい。
  「米軍は日本防衛への決意を示すため、空母を横須賀に配備してきた。だが、空母はもはや、中国軍の格好の標的になりかねない。これからは潜水艦など、目に見えづらい部隊を在日米軍の主力にすべきだ」。米軍戦略にかかわる元米政府高官からは、すでにこんな意見が出はじめている。
 在日米軍基地が危 険になっているという認識は、すでに日米両政府も抱いている。複数の日米両政府筋によると、その対策として、(1)米軍と自衛隊の基地共同使用を広げ、互 いの部隊の配置を分散させる(2)戦闘機の格納庫などの強度を高める(3)ミサイル防衛の連携を深める――などの案が検討されている。
 先の国会では、安全保障関連法が成立し、米軍などへの自衛隊の支援を拡充できることになった。日本はこの運用も含め、米側とじっくり、戦略をすり合わせるときにきている。

秋田浩之(あきた・ひろゆき) 1987年日本経済新聞社入社。政治部、北京、ワシントン支局などを経て編集局編集委員。著書に「暗流 米中日外交三国志」。  ≫(日経新聞電子版)

忠誠と反逆―転形期日本の精神史的位相 (ちくま学芸文庫)
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