世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●覇権国の警鐘 2015年の悪夢、ドイツ魂、自動車とソーセージにケチ

2015年11月05日 | 日記
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
クリエーター情報なし
文藝春秋


応援に感謝、励みになります!
にほんブログ村 政治ブログへ

●覇権国の警鐘 2015年の悪夢、ドイツ魂、自動車とソーセージにケチ

先日から、エマニュエル・トッドの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』を時間の合間に読んでいる事をコラムでも言及していたが、トッドの指摘する“メルケル首相率いるドイツの危険性”に強く警鐘を鳴らしているのだが、その予言を証明するように世界的出来事が、ドイツの勢いに水を差している。トッドは、人口学の立場から“ソ連邦の崩壊”を小室直樹同様に予言していたが、今回は、予言が当たったと云うか、彼の警鐘に、欧米の根底にあるアメリカン・デモクラシー陣営が、強く反応したのではないかと云う重大事がドイツを軸に起きている。国民食ソーセージにまでケチがつくとは……。

筆者もソーセージは嫌いではないが、親からは、加工肉は身体に好くないと云う言説を聞かされていたのだが、皮なしウィンナーなどは、スナック菓子より健康的だと、よく口にした食品なのである。まあ、ドイツの家庭の食事風景を見る限り、やたらとソーセージ、ベーコンとジャガイモを食している映像が目に入ってくる。後はキャベツの酢漬けだったかな?筆者もドイツ人並みに、ジャガイモも好きなので、よく食べている。ただ、食べていながら思うことだが、到底リッチな食べ物だと思ったことはない。日本料理などに比べると、乱暴にして粗雑だ。

しかし、ドイツは、最も21世紀において成功した国と云うイメージは定着していた。敗戦国であるにも関わらずだ。トッドではないが、ポーランド生まれのユダヤ人で、根っからのロシア嫌いのズビグネフ・カジミエシュ・ブレジンスキーの『ブレジンスキーの世界はこう動く―21世紀の地政戦略ゲーム』は、多くの点で的確な分析をしていたが、ロシアに対する考えでは、残念ながら色眼鏡の色が濃すぎて、前方が視界不良になってしまったようだ。一方の共和党の頭脳・キッシンジャーと並び称されるが、二人ともユダヤ人であることを記憶に留めておくべきだろう。ドイツに対する感性も、大いに問題なのだと思う。

メルケル首相率いるドイツは、福島原発事故後に、科学的だけではなく、倫理や宗教観を含めた熟議によって“脱原発”再生可能エネルギーへの転換を国是とした。しかし、世界の中枢のエネルギー政策は、石油と原発と云う二大エネルギーによって秩序が構築されているので、この点に関して、日米英仏露中等々の既得権勢力にとっては、不都合な決定だったと見るべきである。しかし、厳しいエネルギーへの政策転換にも拘らず、ドイツ経済は世界経済の優等生状態が続いていた。

このままだと、ドイツの国家運営こそが正しい選択であると云う言説が定着する勢いにまで到達していた。トッドの言う通り、ユーロ通貨を通じて、ドイツは構造的に独り勝ちを謳歌したことになる。エネルギーのコスト高を吸収しても、断トツの経済成長と財政の健全化を両立させているのだから、21世紀のモデル国家であり、世界が見倣う国家となる寸前だったと言っても過言ではない。しかし、そこに“VW排ガス問題”が、三叉神経痛のトリガーのように引き絞られたのである。

おりしも21世紀においても、20世紀最後の海洋帝国米英には凋落の兆しはあるものの、余力が残っており、ドイツの抬頭は看過できないところまで到達していたのだろう。脱原発も欧米文化の約束事を違えていたわけで、愉快ではない海洋帝国勢力だった。アメリカが、異様とも思える自動車の排ガス規制に乗り出したのも、考え方によると、米英の罠であった可能性がある。シェールガス革命で、湯水のごとく石油を消費して欲しいと云うのに、ドイツはそれに逆らった。

アメリカの異様な排ガス規制値をクリアー出来るのはトヨタだけだろうと云う読み通り、VWはプログラムを違法に操作して、その基準から逃れようとした。逆に言えば、苦しくなったVWは違反をするに違いないと云う想定が成り立っていたことも考えられる。アメリカの大方針に脱原発で逆らい、ユーロで大儲けしたドイツの力は、中国との接近等も考慮すると、海洋帝国の寿命を縮めさせる解毒剤になりかねないと危惧した可能性は、戦略的にあり得るシナリオだ。

VW排ガス問題は、波紋は拡大するばかりで、ポルシェ・アウディにまで波及し、VWと云う大衆車の信頼の失墜に止まらず、謂わばドイツの顔である高級車のイメージまで傷が深くついたことになる。その上、VWの主流車であるガソリン車にまで、不正があったと報道される悪夢になっている。

≪ VW排ガス不正、ポルシェ・アウディでも 米当局が指摘
独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れ問題で、米環境保護局(EPA)は2日、VW傘下の「ポルシェ」など高級車に搭載されたディーゼルエンジンでも新たにソフトウェアの不正が見つかったと発表した。ただ、VWは同日、発表内容を否定するコメントを出した。 EPAが新たに指摘したのは、ポルシェの「カイエン」やアウディの「A8」、VW「トゥアレグ」などの7車種で、2014~16年のモデル。9月中旬にVWの不正を初めて公表した時点では、エンジンの排気量が2リットルの車が対象だったが、その後の調査で排気量3リットルの車でも違法ソフトが搭載された不正が確認されたという。
 EPAによると、排ガス試験の時だけ有害物質の排出を低く抑え、実際に路上で走った時は最大で当局の基準の9倍の窒素酸化物を出していたという。米国内で少なくとも1万台が販売されたとみられる。VWとアウディのディーゼル車は、日本での販売はないという。
 VWは「排気量が3リットルの車のディーゼルエンジンには、不正なやり方で排ガス量を操作するソフトウェアは搭載されていない」との声明を発表し、EPAの指摘を否定した。一方で「実態解明のため今後も当局の調査に全面的に協力する」との姿勢も改めて示した。 ≫(朝日新聞デジタル:ニューヨーク=畑中徹)


≪ VW不正ガソリン車に波及 9・8万台、CO2排出問題
【ベルリン共同】ドイツのドブリント運輸相は4日、新たに二酸化炭素(CO2)の排出量をめぐる不正が見つかった自動車大手フォルクスワーゲン (VW)の車両、最大約80万台のうち、約9万8千台がガソリン車だと明らかにした。連邦議会(下院)に報告した。9月に発覚したVWによる排ガス規制逃 れはディーゼルエンジン車だけが対象だった。自動車で主流のガソリン車にも不正が波及したことで、VWのブランドイメージがさらに傷つくのは必至だ。
 VWは新たな不正が見つかった詳しい車種などを明らかにしておらず、日本へ輸出されたものが含まれるかどうかは不明。 ≫(東京新聞・共同)


まあ、この問題の成り行きいかんでは、ドイツ車への信頼性は、大きく傷つく。トヨタの問題もアメリカ発だが、今回もアメリカ発で、アメリカは、戦争も好きだが、真正面からの戦いに負けそうになると、何でもありの奥の手を出してくるので、到底、フェアな国家でない点は、これだけでも十分だ。しかし、この原発関連の決定から、中国市場を独り占めする勢いのドイツ車の進撃を食いとめる方策を、満を持して引き金を引いたであろうことは、アメリカ的で納得できる。

これで、ドイツの災難が終わるのであれば、またアメリカの意地悪が勃発したか、何という闘いのルールを知らない成り上がり国家だ。人工国家で、歴史的な伝統文化もない国家の恐ろしさくらいで締めくくれるのだが、国連機関WHOが、ドイツ叩き第三段のような情報を公表するに至っている。遂には、ドイツの国民食を血祭りにする積りかどうか判らないが、覇権的なこれ以上の行動は、絶対に許さないと云う、米英の意思表示が見られるようだ。以下は、WHOの杜撰な加工肉バッシングに対する、ドイツの怒りを伝える記事だが、歴史無きアメリカは、ドイツの伝統文化にまで、ケチをつけだしたのでは?と穿ち過ぎな考えさえ思い浮かぶ状況だ。トッドの警告を、アメリカは真に受けたのかもしれない(笑)。


 ≪ 独:「発表ずさん」…「加工肉に発がん性」に反発広がる
【ベルリン中西啓介】世界保健機関(WHO)の専門機関がソーセージなどの加工肉に発がん性があると発表したことに、ドイツで反発が広がっている。食肉業界だけでなく、ノーベル医学生理学賞受賞者も「ずさんだ」と批判するなど、国民食に注文を付けられたドイツ人の怒りは収まる気配 がない。
 「詳細な研究内容を示すことなくメディアの注目を集めるやり方で発表したことに憤りを感じる」。独精肉職人協会副会長のクラウス・ゲルラッハさん(64)は語気を強める。ソーセージ職人らで作る協会は、加工肉の安全性に関する情報収集も行っている。 2008年のノーベル医学生理学賞受賞者で元独がん研究センター所長のハラルド・ツア・ハウゼンさん(79)も「赤身肉や加工肉の発がん性は20年以上前から指摘されていた。必要なのは肉の何ががんを起こすのかという研究だ」と批判する。
 さらに、大腸がんリスクについて「世界中の人が、加工肉に含まれる発がん性物質を摂取している。だが、それによってがんになっている人は、ほとんどいない。加工肉を毎日50グラム摂取することで発症率が18%上がるなどと言えるはずがない」と述べた。
 WHOの専門機関、国際がん研究機関(IARC)は10月、加工肉の摂取が大腸がんを引き起こす「十分な証拠がある」と発表。5段階評価の発がん性リスクで、喫煙やX線照射と同じ最高レベルに分類した。
 ドイツには、国内の都市名を冠したフランクフルトや、バイエルン州で愛される白ソーセージなど地域ごとに2500種類以上のソーセージがある。製造に関する国の統一指針があり、種類ごとの基準や添加物が厳しく規定されている。
 ゲルラッハさんは「ソーセージのないドイツなど考えられない。日本から訪れる人にも安心して食べてもらいたい」と話した。  ≫(毎日新聞)

ブレジンスキーの世界はこう動く―21世紀の地政戦略ゲーム
クリエーター情報なし
日本経済新聞社


応援に感謝、励みになります!
にほんブログ村 政治ブログへ


よろしくお願い

https://blogimg.goo.ne.jp/img/static/admin/top/bnr_blogmura_w108.gif