アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

前原国交相を孤立させるな!

2009年09月24日 23時13分29秒 | 未完の政権交代
  

・八ッ場ダム交渉不発 意気込む前原国交相、住民「何を今さら」(産経新聞)
 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/304961/
・地方困惑 高齢者医療、公共事業…ダム以外にも政権交代の波(同上)
 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/localpolicy/303610/

 何?八ッ場ダム問題についての上記2つの記事の取り上げ方は?
 本来ならば、住民の反発や交渉不発といった現象面だけでなく、その背景にある八ッ場ダム建設計画の問題点や紛糾に至った経過などの、より本質的な事象に迫ってこそ、当該ダムの問題が初めて理解できるのに。それが上記記事では、肝心の紛糾に至った背景もそっちのけに、表層に現れた住民と国交相の対立劇について、ただ興味本位に面白おかしく取り上げているだけではないですか。

 確かに前原や鳩山にも、今回の事態を招いた責任の一端はありますよ。当人たちも、当時政権与党だった「さきがけ」の一員として、八ッ場ダムの着工を許可した事について、当事者としての責任は逃れられません。
 しかし、最も責任を負わなければならないのは一体誰ですか。地元の頭越しに数十年に渡ってダム建設を強行し、ダム反対運動をアメとムチで切り崩し、住民対立と地域崩壊を煽ってきたのは一体誰ですか。元はといえば、全て歴代自民党政府の為せる業ではないですか。

 そもそも八ッ場ダム建設計画が浮上してきたのは何故か。
 戦後間もない1950年に制定された国土総合開発法によって、全国21地域の特定地域総合開発計画が立てられた。いずれも戦災で疲弊した国土の復興・治山治水・電源開発を目的としたものだ。この下で、只見川・北上川・利根川・天竜川・黒部川などの電源開発が一気に推し進められ、水没地住民のダム反対闘争も各地で起こった。現在まで尾を引く熊本県の川辺川ダム建設問題も、この時に始まったものだ。
 当時「日本版ニューディール政策」とも謳われたこの電源開発だが、「特定」とは名のみに21もの地域指定が為された事でも分かる様に、実際は単なるダム乱造・公共工事バラマキ政策でしかなかった。治山治水には殆ど役立たず、逆に土壌堆積・河床上昇・海岸侵食などのダム災害が各地で多発した。得をしたのは、ダムで安価な電力を手に入れる事が出来た電力資本だけだった。
 そのうちに、やがて高度経済成長の始まりと共に、工業開発の重点も、農山村の電源開発から太平洋ベルト地帯での重化学工業コンビナート拠点開発に、徐々に移行していった。ゼネコン利権の対象もダムからコンビナートや高速道路・新幹線に移っていき、過疎地帯の巨大なダム群だけが後に残った。

 八ッ場ダム建設計画もその中で、利根川流域の特定地域総合開発の一環として浮上してきたのだ。(八ッ場あしたの会・八ッ場ダムを考える会HP、Wikipedia各項を参照)
 ただ八ッ場ダムについては、その後も長期間に渡り、着工は中断したままだった。それは、地元での反対運動に加えて、建設地の吾妻川の水質がダム建設に適さなかったからだ。上流部に多数の火山や硫黄鉱山を抱えた強酸性の吾妻川は、別名「死の川」とも呼ばれ、ダム建設に先立って、石灰の大量投入や中和用ダム・沈殿池の建設が必要だったからだ(品木ダムHPを参照)。
 この工事が一通り完成したのは60年代も半ばで、その頃には利根川水系には既に11ものダムが完成していた。建設理由に挙げられた首都圏の水需要も、その後の環境規制・省エネ政策の進展や、高度経済成長の終焉から構造不況に向かう時代の流れの中で、縮小の一途を辿る。既にダム建設の存在意義そのものが無くなっていたのだ。

 その後は、ただひたすらゼネコンを生きながらえさせ、国の面子を立てる為だけに、既に時代遅れと為ったダム建設が推進される事になった。その下で、さしもの数十年に渡る強固な反対運動も、カネの力で次第に切り崩され、移転補償と引き換えの条件闘争に変質させられていったのだ。
 何の事はない。青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場や、沖縄県辺野古の米軍基地の建設問題と、全く同じ構図がそこにあるではないか。原発交付金や基地対策費でカネやハコモノを地元自治体にばらまく見返りとして、安全性が確立されていない危険極まりないものを押し付けられ、住民はそんな故郷に早々と見切りをつけて出て行く。これの何処が産業振興か。後に残るのは、自然破壊、地場産業の衰退、住民分断、地域社会の崩壊だけではないか。

 長らく国に翻弄され続け、既に転廃業し他地域に出ていった人も多数いる中で、反対運動の旗も降ろした今となっては、ダム建設を前提とした生活設計を立てるしかないという人も、地域住民の中には大勢いるだろう。その事自体は、決して責められるものではない。私自身も同じ立場に立たされれば、同じ道を歩むかも知れない。群馬県・川原湯温泉観光協会のHP・掲示板の記述にも、そんな地域の人々の苦悩や無念が溢れている。
 私が心底から許せないのは、そんな原因を作った奴らが、何食わぬ涼しい顔して、加害者の癖に恰も被害者みたいに装っている厚顔無恥に対してである。そんな奴らが、未だ筋を曲げずに反対闘争の旗を掲げている人たちや、遅まきながら自分の非を改め謝罪に訪れた前原国交相を詰る資格なぞ、あろうはずがない。
 奴ら自民党・産経御用メディア・ゼネコン資本は、民主党批判と共に社民党批判も強めている。国交副大臣への就任をゴネて拒んでいる社民党の辻元清美を叩いている。しかし、「脱ダムはイヤだイヤだ」とゴネまくっている奴らの姿も、何の事はない辻元と全く同じではないか。そんな奴らが幾ら辻元を論った所で、傍から見れば目クソ鼻クソでしかない。

 前原国交相といえば、名うての改憲・新自由主義者であり、ある面では「昔の自民党以上に自民党的」とも目される人物である。こと安保・自衛隊・憲法の問題については、彼は私にとっては敵ともいえる立場にいる。
 しかし、ことこの八ッ場ダムの問題については、彼の言っている事こそが正論である。確かに、彼にも以前与党だった時期に八ッ場ダムの着工に手を貸した責任はある。その責任はとってもらわなければならない。但し、その事によって、彼の主張する正論まで否定される謂れはない。
 私は、この問題については、喧嘩両成敗などという曖昧な立場には立たない。明確に彼の側に立つ。正しいのは前原国交相であり、間違っているのは奴ら自民・公明・産経などの利権・反動勢力のほうだ。

(参考資料:引き続き追記・更新中)
・八ツ場あしたの会、八ツ場ダムを考える会
 http://yamba-net.org/index.php
・八ツ場ダム工事事務所
 http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/
・八ツ場ダム - Wikipedia
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E3%83%83%E5%A0%B4%E3%83%80%E3%83%A0
・品木ダム水質管理所HP:吾妻川上流部での中和事業の解説
 http://www.ktr.mlit.go.jp/sinaki/index.html
・河川総合開発事業- Wikipedia
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B3%E5%B7%9D%E7%B7%8F%E5%90%88%E9%96%8B%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%A5%AD
・前原誠司HP
 http://www.maehara21.com/index.php
・副大臣就任に「やだ、やだ、やだ!」 社民ドタバタ劇に民主が溜息(同上)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090920/stt0909201806007-n1.htm
・かわら版~今日の川原湯温泉(川原湯温泉観光協会HP)
 http://www.kawarayu.jp/
・「川原湯温泉・ワイワイ掲示板」・・今日の日直だ~れ(^_-) (同上)
 http://www.kawarayu.jp/yy060517kinkyu-arasiyoke999/yy/bbs/joyful.cgi
・止めよう!六ヶ所再処理工場(原子力資料情報室)
 http://cnic.jp/modules/rokkasho/index.php?content_id=7
・八ッ場ダム 地元の声聞く 生活再建と完成に期待 国交相の対応批判「一方的中止、民主的でない」 山口代表ら視察(公明新聞)
 http://www.komei.or.jp/news/2009/0923/15494.html
・「生活再建しっかり」と塩川氏/八ツ場ダム地元住民と懇談(しんぶん赤旗)
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-09-25/2009092501_02_1.html
・八ッ場ダム、ユキダルマ式にふくれた「もったいない」の嘘(保坂展人のどこどこ日記)
 http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/7e9bb4637bf027ef7fffcf57c8019bda
・八ッ場ダム報道でヤラセ発覚(きっこのブログ)
 http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2009/09/post-39f8.html
・八ッ場ダム関連に国交相176人天下り!(格差階級社会をなくそう)
 http://blog.goo.ne.jp/fugimi63119/e/ac41a45be3f8e6454de9eab0d53923f4
・八ッ場ダムは中止するべきか(雑感)
 「八ッ場ダムは、品木ダムという爆弾を抱えたダム建設なのである。・・・もし八ツ場ダムができたら砒素を含んだ濃縮をされた水と、砒素中和生成物も自然にたまっていく可能性が大である。」(同ブログより)―この品木ダムこそが「青森県六ヶ所村核燃料再処理工場のダム版」とも言うべきものではないか。
 http://udonenogure.iza.ne.jp/blog/entry/1230873/
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既成事実の死重 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2009-09-25 10:10:16
公共工事だけじゃなく、基地問題や原発問題なんかも長年の「既成事実」が社会進歩の足枷になるんだろうね。
こりゃ「本物の改革」の道も、けっして平坦じゃないってことを「進歩派」は心しておくべきなんだろうな。

ところで、今日の『赤旗』には建設中止賛成派の声も出ているよ(「建設的野党」を標榜する共産党も、もっともっと働かないといけないみたいだよねっw)
Unknown (AIU)
2009-09-25 20:33:39
民主党には責任など無いんですよ。
真相は、酷いものです。
私のブログにリンクが貼ってあるので、どうぞ‥http://blog.goo.ne.jp/aiu_project
Re:既成事実の死重 (プレカリアート)
2009-09-25 23:18:03
 バッジさん、サンクス。その「赤旗」記事も、上記本文中の「参考資料」に早速追記させてもらいました。「公明新聞」の建設賛成派ヨイショ記事と一緒にね(こちらは勿論”当て馬”としてw)。
 ところで、肝心要の民主党が、この八ッ場ダム問題について、いまだに党のHPで見解を明らかにしていないのが、妙に気になります。9月18日以降、更新された形跡がありません。本来ならば、前原大臣を出しているこの党こそが、他党よりも先に見解を明らかにすべきだと思うのですが。
AIUさん、ようこそ (プレカリアート)
2009-09-27 08:30:36
 挨拶が遅くなり申し訳ありません。情報提供有難うございます。大変勉強になりました。早速こちらも参考資料に追加させて戴きます。
わざわざご丁寧に (ごまめの翁)
2009-09-27 19:37:09
わざわざご丁寧に有難うございます。
80前の老人はブログ作りがて一杯で、皆様と疎遠になってご迷惑かけています。

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