アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

自分の身に即して考える事の出来ない人たち

2007年07月01日 23時25分04秒 | お笑い安倍政権
 久間防衛相が6月30日に麗澤大学で講演した中で言った「原爆投下、しょうがない」発言を、その前後の文脈も含めて下記に引用しておきます。

(引用開始)
 日本が戦後、ドイツのように東西が壁で仕切られずに済んだのは、ソ連の侵略がなかったからだ。米国は戦争に勝つと分かっていた。ところが日本がなかなかしぶとい。しぶといとソ連も出てくる可能性がある。ソ連とベルリンを分けたみたいになりかねない、ということから、日本が負けると分かっているのに、あえて原爆を広島と長崎に落とした。8月9日に長崎に落とした。長崎に落とせば日本も降参するだろう、そうしたらソ連の参戦を止められるということだった。
 幸いに(戦争が)8月15日に終わったから、北海道は占領されずに済んだが、間違えば北海道までソ連に取られてしまう。その当時の日本は取られても何もする方法もないわけですから、私はその点は、原爆が落とされて長崎は本当に無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったんだ、という頭の整理で今、しょうがないな、という風に思っている。
 米国を恨むつもりはないが、勝ち戦ということが分かっていながら、原爆まで使う必要があったのか、という思いは今でもしている。国際情勢とか戦後の占領状態などからいくと、そういうことも選択肢としてはありうるのかな。そういうことも我々は十分、頭に入れながら考えなくてはいけないと思った。
(引用終了)
 http://www.asahi.com/politics/update/0630/TKY200706300263.html?ref=rss

 上記の発言ですが、これが何故「単に忸怩たる想いを語っただけのもの」(安倍総理)になるのでしょうか。これはどう読んでも「原爆投下は、ソ連の参戦を止めるためにはやむを得ない選択だったのだ」と言うのが当該発言の結論でしょう。

 当該発言は、まず歴史認識からして間違っています。「原爆投下はソ連の参戦を食い止める為に行われた」のではありません。ソ連の対日宣戦はヤルタ協定に沿って行われたものです。「食い止める」も何も、連合国同士が事前に合意した上での事でした。その上で、米国が戦後の世界でソ連に対して優位を保つ為に、既に日本の敗戦が濃厚だったにも関わらず敢えて原爆を投下したのです。

 だから、「そんな東西冷戦の論理、大国の論理の為に、多くの無辜の人命が犠牲にされたのだ。この様な事はもう二度と繰り返してはならない」となるのが普通の人の感覚です。また、日本国民は、戦争の犠牲者であると同時に、アジア諸国から見れば侵略戦争の加害者でもあったという立場も忘れてはなりません。だから、日本の人々にとってもアジアの人々にとっても「この様な事はもう二度と繰り返してはならない」のです。ところが、この人の場合はそうならずに、「もう二度と繰り返してはならない」という心の全然篭っていない、単に「しょうがなかったのだ」という、他人事の様な結論になるのです。
 
 要するに、自分の身に即して考える事が出来ないのです。そんなに「しょうがない」と言うのであれば、自分や家族・親戚の頭上に原爆を落とされても、一切文句が無い筈です。まさか、自分や自分の家族が殺されるのは許せないが、アカの他人だったら「しょうがない」というのではないでしょうね。

 戦争は宿命であって、抗う事の出来ないものであって、一旦お国が戦争をやると決めたら国民は無条件に従わなければならない―そんな事を本音で思っているから、こんな「米国の責任をばっさりと免責することにより、返す刀で日本政府・軍の責任についても切り捨て、蓋をしようとするような」(ヤメ蚊さんのブログ)他人事の様な発言が出てくるのです。道理で、安倍政権・自民党がワーキングプアの問題や年金の問題に冷淡な訳です。全て自分たちとは別世界の他人事なのですから。

 この久間発言が、単なる失言などではなく、「観測気球」「確信犯」の発言である事は明白です。今回は国民の反発が余りにも大きかったので、舌の根も乾かないうちに上辺だけの謝罪でお茶を濁しましたが、そんなに反発が大きくなければもっと暴走している筈です。そうして国民との距離を測りながら、徐々に「戦争宿命論」に国民を誘導していこうとしているのです。それは逆に言えば、自らの力を過信し国民世論を舐めきった発言だと言う事です。

 しかし、安倍内閣・自民党にはこんな人材しか居ないのでしょうか。この内閣の成立以来の経過を見ていると、安倍首相がいくら愛国心だの道徳教育だの言っても、周りの取巻きが寄って集ってそれを台無しにするような事ばかりしているとしか、思えないのですが。「田中宇」流に言うならば、差し詰め「安倍内閣を潰す為にワザとやっている」としか思えない様な。当人達としては、いろいろ観測気球を上げたりして精一杯計略を図っているつもりなのでしょうが。どうやら、自民党は沖縄・広島・長崎の票は要らないようです。ここまで来るともう漫画でしかない。

(追記)
 久間防衛相がとうとう辞任しました。安倍内閣になってから一体何人の閣僚が辞任に追い込まれた事か。そんな状況であるにも関わらず、その久間の後任が小池百合子とは(呆)。「お友達内閣は死ぬまで一緒」のつもりなのでしょうが、こんなアホの道連れにされる与党参院議員こそ堪ったものではないでしょうね。敵ながら、つくづくご心中察します。
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070704k0000m010182000c.html
 http://www.zakzak.co.jp/top/2007_07/t2007070323.html
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