アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

社畜の裕福より非正規の自由!

2020年12月23日 22時22分00秒 | 当ブログと私の生い立ち

兵庫ゴールドトロフィーの馬券を買いに訪れたDASH心斎橋に、園田競馬の馬券の買い方を説明した漫画のパンフレットが置かれていました。私はその漫画を読んで、「そう言えば、今、非正規雇用で勤めている物流センターや、今住んでいる西成あいりん地区にも、こんな人が一杯いるなあ」と思いました。刹那的ではあっても、その日一日を精一杯生きている、そんな漫画の登場人物の気持ちが、今ではかなり分かるようになりました。

漫画の説明をすると、大隅春香という競馬ビギナーの女の子が、中央競馬(JRA)のテレビ・コマーシャルに出て来るようなイケメン男子との出会いを求めて、園田競馬場にひょっこりやって来ます。そこで、競馬ファンと思しき同年代の女の子と出会います。その女の子の名前は山田火酒。火酒と書いてウォッカと読みます。いわゆるキラキラネームです。酒飲みの親父が、女の子にそんな名前を付けたのです。

山田火酒の親父はもう肝臓がんで亡くなっています。その代わりに、競馬場で山田と知り合った労務者風のオッサンが大隅春香の前に登場します。大隅が労務者に名前を尋ねても「何でそんな事聞くねん?名前なんか何でもええやないか」と返されてしまいます。そしてパンフレットには「ビギナーズアドバイス」として「競馬場で出会った人の個人情報や過去を深く詮索するのは避けましょう。人それぞれ色々とふれられたくない過去があるのです」と書かれているのです。

あいりん地区での処世術も、全くこれと同じです。個人の過去をあれこれ詮索する人はまず嫌われます。あいりん地区の住民は外から来た人間をものすごく警戒します。目と目が合っただけでも「何メンチ切ってんねん!」と凄んで来ます。その代わりに、一旦お友達として認識されてしまうと、それまでの邪険な扱いとは裏腹に、手のひらを返すように親切に、色々と教えてくれるようになります。

但し、この「親切」も、時によってはものすごく馴れ馴れしく感じられる時があります。私が釜ヶ崎の夏祭りで買った「黙って野垂れ死ぬな」という文字の入ったTシャツを着て街を歩いているだけで、「兄ちゃん、兄ちゃん、そのTシャツかっこいいな!一体何て書いてあるねん!何々、黙って野垂れ死ぬな......そうや、その通りや、黙っとったらあかんねんで!」と勝手に盛り上がり、いつまで経っても私を離してくれません。これから会社に出勤しなくてはならないのに......(下の写真がそのTシャツ)。

以前の私なら、そんな人間には一切近寄ろうとしませんでした。でも今は、スーツ着てパリッとした礼儀正しい紳士よりも、むしろ、そんな変なオッサンの方に、より親近感が湧くようになりました。素の自分をさらけ出せるからです。周りに気を使わなくても良いからです。「~でなければならない」「~しなければならない」といった呪縛から解放されるからです。

今から考えると、私の生まれ育った家庭は、それとは正反対でした。公務員上級職の親父は典型的な毒親でした。外では物分かりの良い親父のふりして、家でお袋に暴力を振るっていました。子供の意見も一切聞こうとせず、自分の価値観を平気で子供に押し付けようとしていました。

親父は、役所内で労働組合の人から共産党機関紙の「赤旗」を勧められても断り切れずに自宅に持ち帰りながら、もう大学生になった私がその「赤旗」を読もうとすると、私の手から奪い取り、お袋にも「あいつに読ませるな」と命令するのです。直接私には言わずに。家で購読している新聞ぐらい自由に読ませろよ。それが嫌なら最初から購読するなよ。

私が生協に勤めだした時も、親父はお袋に「生協は共産党だ。すぐに辞めさせて教員採用試験を受けさせろ」と言っていたそうです。当時まだ生協に勤めだしたばかりで、早く新しい職場に慣れ、新しい仕事も一杯覚えなければならない時期に。それでお袋が「形だけでも受験してくれ」と泣いて頼むので、仕方なく筆記試験だけ受けて白紙答案を出して試験場から帰って来てやりました。

今の職場で労災もみ消し事件に遭った時も、私が労働組合に入って会社と闘おうとする姿勢を見せた途端に、私を庇うどころか、逆に会社と一緒になって「報告書にそんな事まで書くな」と、とにかく穏便に済まそうとしました。まるで暗に「泣き寝入りせよ」と言わんばかりに。

その挙句に婚活の強要です。「その年になってまだ独身なのか?今まで一体何して来たのか?ただ、のんべんだらりと生きて来ただけではないか」と言って、近所に住んでいるというだけで私とは一面識もない目の不自由な整体師の女性と、いきなり「結婚したらどうか?」と言って来たのです。一面識もないのに。それで私が「何故そんな事を言うのか?」聞くと、いきなり「お前、もう年いくつだと思っているのか!」と怒鳴り散らし始めたのです。

この婚活強要事件が決定打となって、私は実家を出ました。出勤時に電車の中から「自分の世間体ばかり気にして、俺にいちいち指図して、俺の人権も認めず、まるで所有物みたいに扱いやがって。もう帰らない」とメールを送って。親父はまさか私が本気で家出したとは思わなかったようで、夜11時頃まで「早く帰って来い」と命令メールをよこした挙句に、12時を回り翌日に日付が変わった途端に、今度は「いつ帰って来るのかなあ♪待ってるゼ!」と猫なで声メールに豹変。その夜はネットカフェに泊まり、翌日からは、あいりん地区のホテルから会社に出勤するようになりました。

しかも、そんな経過で今に至ったにも関わらず、親父はいまだに相手の釣書(婚活プロフィール集)を私に渡そうとするのです。そりゃあ、経済的な観点からすれば、一人より二人夫婦で住む方が、家賃や水光熱費、税金の負担も軽減されるでしょう。でも、今の非正規の給与では、私一人が食っていくだけで精一杯なのに、二人も養える自信がありません。相手にも両親はいるでしょうし、その両親の老後の世話もしなければならなくなる。これでは老々介護で共倒れになりかねません。

それに、親父の知り合いだとしたら、相手も親父と同じような人間である可能性が高い。上流階級の狭い世界しか知らず、常に上から目線で、地位や財産の有無で人間を差別するような人間である可能性の方が高い。私はそんな人と結婚したくはありません。そんな人と結婚するぐらいなら、まだ一生独身で通した方がよっぽど幸せです。

無理に結婚して、家族を守る為に、馬車馬のようにこき使われて、過労死してしまったり、うつ病になってしまっても、泣き寝入りしなければならないぐらいなら、まだ独身の非正規雇用のままでいる方が、精神衛生上はるかに健康的です。社畜の裕福より非正規の自由!

しかし、親父は何故そこまでして結婚に拘るのか?兄貴が何度聞いても、帰って来る答えは「人は支え合って生きて行かなければならない」と、まるで判で押したような抽象的な答えが返ってくるばかり。それが親父の本音だとはとても思えず。多分、早く私を誰かと結婚させて、夫婦で自分の面倒を見させようとしているだけではないか?

それでも私が相手の釣書の受け取りを断固拒否していたら、今度は何も思ったのか、いきなり兄貴を通して、私に百万円もの大金を送り付けて来たのです。「お前も大変だろうから家賃の足しにでもしてくれ」と。でも、私は、それを「有難い」なんてこれっぽっちも思いません。その百万円も、元はと言えば、私が就職してから実家に入れて来た給与の一部分に過ぎないのですから。親父はそうやって、社会人となった息子たちから預かった給与の一部を元手に、株や生命保険に投資をしてきたのです。それらも元は私の給与の一部です。

親父からもらった百万円は、その大半を年一括払いの生命保険ファンドの個人年金保険料の支払いに充て、残りを私の銀行口座に入金しました。確かにこれで生活は少し楽になりました。そこで、普段は見向きもしなかった地方競馬に、試しに三千円ほどつぎ込む気になったのです。ほんの暇つぶしです。今やコロナでどこにも旅行に行けず、明日からまた年末繁忙期の激務が待っているのですから、その合間のシフト連休に、地方競馬に三千円ほどつぎ込んだぐらいで、罰が当たる筈はありません。

先ほどの園田競馬ビギナーズ漫画に話を戻します。「私、年上の男の人が好き」とつぶやいた大隅春香の言葉を真に受け取った労務者風の男が、本気で春香にプロポーズ。しかし、春香は一足先に、職場で競馬ファンの男性社員と知り合い、二人で園田競馬場にやって来るようになる。それを知った労務者は失望の淵に。でも「生きてりゃあ、そのうちいい事あるさ」と、再び山田と競馬三昧の日々を送り始める……で終わります。

人生なんて、「生きてりゃあ、そのうちいい事あるさ」ぐらいのノリで送っていたら良いのです。親父からすると「のんべんだらり」と生きているだけかも知れませんが。でも、山田も労務者も、親父が知らない所では精一杯生きているのです。ホームレスですら、その日一日食つなぐ為に、必死になって缶集めに精を出しているのです。必死に努力しているという意味では、親父と何ら変わりません。

それを上から目線で「怠け者」と勝手に決めつけて、バカにする権利なぞ誰にもありません。どんな人間であろうと、自由・平等に、幸福に生きていく権利はあるのです。それを踏みにじる権利なぞ誰にもない。同じ努力するなら、単にホームレスにならないように努力するだけでなく、ましてや、他人をホームレスに蹴落として自分だけ助かろうとするのではなく、逆に、ホームレスを生まない社会を皆で作っていくように努力したいものです。


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より詳しい背景説明 (プレカリアート)
2020-12-27 19:13:04
「赤旗読むな」「生協なんか辞めて教師になれ」「会社に楯突くな」……。「確かに決して褒められた言動ではないが、これぐらいの事は保守的な親父なら言う。単なる”親バカ”なだけじゃないか?それをここまで悪し様に書くのは如何なものか?」

そう思う人は下記の記事も読んでみて下さい。親父の異常性がよく分かりますから。https://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/ae3e5beae849e8a49f1de6d742b5ded9
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