アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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小沢民主党美化の行き着く先をイタリアに見る

2009年03月10日 23時47分37秒 | 二大政党制よりも多党制
   
 
   

 最近のネット世論の一部に見られる、反自民の勢い余って小沢・民主党を過剰に美化する傾向や、よりマシな(又は勝てる)候補者に投票する風潮とも関連して、ここ数年来のイタリア国内政治の動向について、先日から調べ始めています。

 イタリアでは、昨年2008年4月の総選挙で、中道左派連合が下野して、右翼のベルルスコーニが再び首相にカムバックしてしまいました。しかも、それだけではなく、イタリア共産党解体以降も一定の基盤を有していた国内左翼諸派(共産主義再建党など)が、国会の全議席を失うという事態になってしまいました。かつて共産党の金城湯池であった北イタリアのエミリア・ロマーニャ州などは、今や極右・北部同盟の地盤と化していると言います。
 その事態に対する、私の今までの理解は、単に「再建党も、結局は、旧イタリア共産党や、今のフランス共産党と同じ道を歩んでしまった」程度の認識でした。「確かに、それは旧日本社会党が辿った道とも瓜二つ」だが、「それでも腐っても鯛」で、「日本とは違い、パルチザンやユーロコミュニズムの輝かしい伝統を有する国において、そう簡単に左翼が自滅する筈が無い」「昨年の敗北は何かの番狂わせに過ぎない」と思っていました。
 しかし、調べ始めていくと、とてもそんな程度の認識では済まない事が、徐々に分かってきました。「これは今の日本の、我々の問題でもあるのではないか」と、今では考え始めています。

 私が、何故そこまで考えるに至ったかと言うと、
 まず第一に、90年代の日本とほぼ同じ時期に、イタリアでも政治腐敗が問題になり、それが選挙制度の問題に摩り替えられて、それまでの比例代表制から、今の日本と同じ様な選挙制度に改悪された事、
 第二に、それと同時進行で、イタリアでも日本と同様に、歴史修正主義の風潮が次第に台頭し、それが今のフォルツァ・イタリアや北部同盟の「興隆」につながっている事、
 第三に、同時期におけるイタリア共産党の解体前夜の体たらくが、右派との妥協・大連立志向や、新自由主義容認の姿勢において、今の日本の民主党と瓜二つであり、また、今の日本共産党の資本主義批判のある種の「曖昧さ」(所詮は資本主義の枠内での格差社会批判に止まる)にも通じるものがある事、
 第四に、同時期にイタリアで進行した世論の変容(右傾化、治安強化容認、移民排斥、劇場政治・ポピュリズムの席巻)が、同時期の日本のそれと酷似している事、の四点で、余りにも今の日本とよく似ているからです。

 勿論、日本との違いもあります。それはプラス・マイナス面それぞれあります。プラス面としては、少なくともイタリアやフランスでは、日本の様な形での反共の壁は無く、共産党が野党共闘から排除されなかった事が挙げられます。マイナス面は、その事がこの場合は却って仇となって、共産党が中道左派・右翼社民や保守反動とも妥協を重ね(旧日本社会党の場合とも酷似)、現在の左翼衰退につながってしまった事です。
 日本の政治的後進性を批判する場合に、それとは対照的な海外の先進事例として、フランスの反資本主義新党や、ドイツ左翼党、南米左派の躍進ぶりが、よく取り上げられてきました。事実、私自身も、ブログなどの場で、折に触れて言及してきました。それと同様に、イタリアにおける左翼後退事例も、日本における他山の石として、もっと検討されて然るべき重要な問題を孕んでいるように思われます。

(参考資料1) ※追記資料有り。

・【外信コラム】イタリア便り 2大政党時代到来?(産経新聞)
 http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080420/erp0804200240000-n1.htm
・イタリア総選挙の結果を考える(グラムシ研究者・小原耕一氏の論考)
 http://members3.jcom.home.ne.jp/sada.m/italiasousenkyosoukatu.html
・岐路に立つイタリア左翼とアクチュアル・グラムシ(同上)
 http://members3.jcom.home.ne.jp/sada.m/obara08.10.html
・読者より:イタリアの2008年4月上下院選挙結果について(私にも話させて)
 http://watashinim.exblog.jp/7978421/
 http://gskim.blog102.fc2.com/blog-entry-3.html
・共産主義再建党(ウィキペディア)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E7%94%A3%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E5%86%8D%E5%BB%BA%E5%85%9A
・イタリアの左翼
 http://www.geocities.jp/stkyjdkt/italia.htm
・やそだ[EU&イタリア]総研
 http://www31.ocn.ne.jp/~yasodasoken/index.html
・4月総選挙、イタリア政治基礎知識2008(All About)
 http://allabout.co.jp/contents/secondlife_tag_c/politicsabc/CU20080212B/index/
・イタリア総選挙(ヴェネツィア ときどき イタリア)
 http://fumiemve.exblog.jp/7009065/

(参考資料2)
2008年イタリア総選挙の結果
前記・小原氏の論考から引用)

●下院(定数630)の党派別得票数・議席数(括弧内は増減)
ベルルスコーニ連合(自由国民+北部同盟など)
--------------17,063,874票--46,81%(+4,51)--344議席(+102)
ヴェルトローニ連合(民主党+価値あるイタリア)
--------------13,686,673票--37,54%(+4,05)--246議席(+ 9)
中道連合--------2,050,319票--5,62%(-1,13)--36議席(- 3)
左翼「虹」連合----1,124,418票--3,08%(-7,10)--0議席(- 72)
右派‐三色旗の炎---885,229票--2,43%(-)--0議席(-)
社会党-----------355,581票--0,98%(-1,91)--0議席(- 18)
以下引用略

●上院(定数315)の党派別得票数・議席数(括弧内は増減)
ベルルスコーニ連合
--------------15,507,549票--47,32%(+3,74)--174議席(+ 39)
ヴェルトローニ連合
--------------12,456,443票--38,01%(+7,26)--132議席(+ 23)
中道連合--------1,866,294票--5,69%(-0,95)--3議席(- 18)
左翼「虹」連合----1,053,154票--3,21%(-8,12)--0議席(- 38)
右派‐三色旗の炎---687,211票--2,10%(+1.47)--0議席(+- 0)
社会党-----------284,428票--0,87%(-1,94)--0議席(-)
以下引用略

(注)旧イタリア共産党は、左翼民主党への改組を経て、最終的に民主党に合流。共産主義再建党は左翼「虹」連合の、右翼のフォルツァ・イタリアはベルルスコーニ連合を構成する「自由国民」の、それぞれ一員として選挙戦を戦った。
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ミクシイでの議論から1 (プレカリアート)
2009-03-12 22:18:06
 今回と、その前のエントリー「仏ではブサンスノーなのに、日本では小沢かよ」は、実は、この間のミクシイでの議論の延長で書いたものです。今回のエントリー記事の本文も、そこでの私のコメントを、そのままこちらに転載したものです。当該議論のキッカケにもなった、最初のマイミクさんの日記を、一応ここでも紹介しておきます。(ミクシイ外での転載については了解済)

(引用開始)
 西松建設事件の捜査で、東京地検特捜部が小沢一郎の公設第1秘書を逮捕、資金管理団体「陸山会(りくざんかい)」を捜索した。
 西松建設がダミー団体「新政治問題研究会」・「未来産業研究会」を通し、献金したのは与野党の国会議員18人や自民党の派閥などだ。
 すでに12月31日の読売新聞の記事で、小沢一郎、自民党の尾身幸次、森喜朗らへの政治献金は明らかになっていた。
 「しんぶん赤旗」は、今年1月26日の時点でこんな記事を掲載した。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2009-01-26/2009012615_01_0.html

 だから西松建設事件とは、急に出てきた問題ではないのだろう。
 こうしたなか、小沢一郎への強制捜査が、解散・総選挙を目前にするなか政権交代の阻止のために麻生政権が仕組んだ政治陰謀との説が出ているもようだ。
 「政府高官」が発言した「自民党関係者の立件には踏み込まない」発言が、こうした政治陰謀説をさらに補強するものとなっている。
 ちなみに、この「政府高官」は官房副長官で元警察庁長官の漆間巌。

(中略)
 本当に「政治謀略」なのかどうかの議論には私は興味はない。
 「政治謀略」だったとしても、それは支配階級内部の矛盾が、そういう形で噴出したというだけのことだろう。
 それより私は「政治謀略」を主張する人達の書いているものを読んでいて気になることがある。
 それは小沢一郎に対する、驚くべき幻想…。
 小沢政権が登場すれば、政官財の利権の構造にメスが入ると信じられている。
 小沢政権が登場すれば、小泉・竹中「改革」に示されるような新自由主義、そして、それが生み出した巨大な格差社会が変わると信じられている。
 小沢政権が登場すれば、国家権力批判をする人達への圧力がなくなっていくと信じられている。
 小沢政権が登場すれば、日本は平和外交に変わると信じられている。

 信じられない。自民党幹事長時代の小沢一郎を忘れたのか…。
 細川・羽田連立政権の「実績」を忘れたのか…。
 小泉政権が出現するまでは、小沢一郎こそが新自由主義の急先鋒だったことすら、忘れられてしまったのだろうか…。

 今回の事件の根本は、やはり「企業献金」だ。
 「企業献金」自体を廃絶しなければ、腐敗は何度でも起きる。
 そして何よりも、格差社会を生み出した元凶だ。
 政治家が日本経団連の言いなりとなってしまう原因は、「企業献金」ゆえ、これを根絶することが必要だ。
 自民党は、日本経団連会員企業からの企業献金を受け取っている。
 2007年には、それは29億1000万円にのぼったという。
 小沢政権が出現すれば、今度は民主党に多額の企業献金が行くだろう。
 小沢一郎のもとでも、それは変わらない。
 1988年リクルート事件でも、リクルートが小沢の政治団体に200万円の献金をしていたことが発覚している。
 保守二大政党による「二大政党制」こそが問われなければならない。
(引用終了)
返信する
ミクシイでの議論から2 (プレカリアート)
2009-03-12 22:43:13
 その後、ミクシイでの議論が続き、私も当該エントリー「小沢民主党美化の行き着く先をイタリアに見る」で述べた事を、そのまま、そのマイミクさん(ミー猫さん)の日記に、コメントとして書き込み、議論の輪に加わらせてもらう事にしました。その後のやりとりについても、下記に紹介しておきます。(転載了解済はミー猫さんのコメントのみに限られるので、紹介もその範囲に止めます)

(引用開始)
●プレカリアート:

 ミー猫さんが書かれた事と同じ事を、私もずっと思っていました。ついさっき、自分のブログにも記事をアップした所です。
(以下、拙ブログの当エントリーへのリンクを張る)

 私は、選挙では、今までは国政・地方とも、ずっと共産党に投票していましたが、今は、衆院小選挙区に限ってのみ、民主党にも入れる様にしています。若し、フランスのNPAみたいな政党が、この日本でも台頭して、ゲバラやブサンスノーみたいな候補者が出てきたら、そちらを支持するようになるかも。そうなったら、小沢・民主党なんて、もう誰も見向きもしなくなるのに。

●ミー猫:

プレカリアートさん、民主党に入れる場合は候補者が、よっぽど魅力的でなければ…。
候補者がどういう人かわからなければ、まず投票できません。

ヨーロッパでは、保守政党と社会民主主義政党の「違い」がほとんどない状態で、「政権交代」そのものに意味がないことが知れ渡っています。
だから、ブサンスノーが必要とされたと思うのです。
日本でも小沢じゃなくブサンスノーみたいな候補者が待ち望まれますね。

●プレカリアート:

(ここで、後に当エントリー記事としてアップした文章を、コメントの形で書き込む)

●ミー猫:

プレカリアートさん、イタリア共産党の場合は、保守派との大連立志向が実に70年代初頭から見られる現象です。
ずいぶん前からNATOを容認していましたし…。
それは「クレムリンの長女」と呼ばれたフランス共産党とは違います。
このフランスとイタリアの両共産党の違いが興味深いところです。
あそこまでイタリア共産党が変貌したのは何故なのか…。

90年代の政治腐敗も記憶に新しいです。
クラクシ、アンドレオッチなど…。
民衆の抗議行動、マフィアのテロ…。
それまでの主要政党がみんな腐敗にからんでいました。
民衆の腐敗に対する怒りが、どうしてフォルツァ・イタリアなのか?
ベルルスコーニだって政治腐敗とは無縁ではないのに…。
そこが私には、ずっと不思議なところでした。

イタリアではもともと南部にネオファシズムが生き残っていました。
対ドイツへの熾烈なレジスタンスを経験した北部と、比較的早く連合国に占領された南部とでは、ファシズムに対する温度差がありました。
その北部でもなぜ「北部同盟」という極右が登場したのか…。
古くからの南北の断絶というだけでは説明できない現象ではないか?
なぜ北部でも極右が台頭したのか…。
そこも私の疑問の一つでした。

正直、イタリアについてはまだ疑問が多いです。
ですが、日本と共通するものが多いですね。
そのいっぽうで、政治腐敗に対する民衆の抗議行動は目を見張るものがあります。それは日本よりも、ずっと熾烈なものがあります。
イラク戦争に対する抗議行動も、日本と比べて大きく高揚しました。
イタリアでの左翼後退も、再び流れは変わると思います。
(引用終了)

 以上、参考までに。
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