アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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超エイプリルフールな政府と国民

2015年04月05日 15時34分49秒 | 貧乏人搾取の上に胡坐をかくな


 確か4月2日の夜だったと思います。仕事から帰ってきて何気なくテレビをつけたら、ちょうどNHKがこの「安倍首相が子どもの貧困率を下げる国民運動を提唱」のニュースを流していました。
 ここに出てくる「貧困率」(正確には相対的貧困率)というのは、人口約1億2千万人の日本国民全員を所得順に一列に並べた時に、ちょうど真ん中(中央値)の6千人目の人の、そのまた半分以下の所得しかない人たちの割合です。単純に総所得を総人口で割った「平均値」ではなく「中央値」で比較するのは、「平均値」だと、一部にずば抜けた大金持ちがいると他の人はみんな貧乏でも実際よりも高所得の金額が表示されてしまうので、そうならないように「中央値」を用いるのです。
 具体的には、今の日本国民の中央値の年収が約438万円なので、そのまた半分の「年収約200万円以下の貧乏人が国民の中にどれだけいるか?」という事になります。それが日本では今や16.3%です。5人家族に当てはめて考えると、どの家庭にも貧乏でしょっちゅう親に金を無心する息子が約1人いる状態です。これは主要国の中でも非常に高い割合です。日本よりも高い貧困率の国と言えば、今やメキシコやトルコなど数ヶ国を数えるのみです。
 その貧困率の高さもさる事ながら、それが母子家庭、父子家庭などの「ひとり親世帯」に偏っている事が今、問題になっているのです。昨今、よく新聞やテレビなどで、シングルマザーが失業して生活保護も申請できずに、マンションの中で餓死して死後数ヶ月も経ってから発見されたとか、時給の安いスーパーのパートでは食って行けずに、やむなく出会い系サイトなどで主婦売春していて警察に捕まったとか、そういうニュースを目にする事が増えました。
 それでも、アフリカのように路上にバタバタ人が倒れている状態ではないかも知れません。でも、表面的な賑やかさの陰で、裏通りのマンションでは今も多くのシングルマザーや派遣社員が、家賃や公共料金も払えず、一日一食でなんとか食いつないだりしているのです。マスコミが取り上げないからニュースにならないだけで。それは当のシングルマザーや派遣社員が一番良く知っているはずです。



 国民がそういう事に苦しまなくても済むように、安倍首相が音頭を取って、「貧困率を引き下げましょう」と国民に呼びかけているのだそうです。
 でも、おかしいと思いませんか?誰が好き好んで、マンションの中で餓死したり、風俗業に走ったりするでしょうか?そうなってしまったのも、なかなか良い仕事が見つからず、運よく仕事にありつけても時給の安いスーパーのパートしかないからでしょう。公共住宅も民間のマンションも家賃の高い所ばかりで、福祉事務所に生活保護の申請に行っても門前払いされるばかりだからでしょう。子供を高校に進学させようと思っても、学費や修学旅行代も払えず、頼みの綱の奨学金制度も、最近は大半が給付型ではなく貸与型で、卒業と同時に何百万円も高い利息付で返していかなければならないからでしょう。学校を卒業してからも就職難で、安い時給のパートやアルバイトの仕事をかけ持ちして身体を壊してしまったり、運よく正社員になれてもブラック企業で長時間酷使されたりするからでしょう。
 そんな社会に一体誰がしたのでしょうか?国民ですか?違うでしょう。安倍さんや、その取り巻きの自民党・公明党などの与党議員や、その与党を形だけは批判するが、実際にはツーカーの仲で、与党の政治家と一緒になって政治資金パーティーをやったり裏金もらったりしている、民主党や「維新の会」などの「野党」議員じゃないですか。
 その与「野」党の政治家が寄ってたかって、奨学金制度をサラ金みたいなものに変えてしまい、もう先進国ではどこも最低賃金は時給千円を上回っていると言うのに、日本だけが7~800円台の低い最低賃金のままだからでしょう。そして、大企業や資産家向けに法人税や贈与税を引き下げておきながら、消費税だけは、やれ「社会保障に必要」だの「これからは少子高齢化で財源が足らなくなる」のと難癖つけて、どんどん値上げするからでしょう。その値上げした消費税を福祉には全然回さずに、カジノやリニア新幹線や原発や軍事費などにばかりつぎ込んでいるからでしょう。

 こういうのを「マッチポンプ」と言うのです。自分でマッチに火をつけ放火しておきながら、騒ぎが大きくなった途端に「消防車を呼べ」と大騒ぎして、犯人のくせにまるで警察官のように立ち回るアレです。
 原発の再稼働でも、集団的自衛権の問題でも、安倍政権のやっている事は皆そうでしょうが。福島で今もあれだけ汚染水を垂れ流し、今も仮設住宅に縛り付けられた人が10万人以上もいると言うのに。オリンピックやカジノやリニアだけに無駄な金をつぎ込み、原発再稼働にばかり力を入れ、除染で引きはがした土を野積みでそのまま放置しながら、ウソの「安全宣言」で福島への帰還だけを推し進めようとしている。尖閣や従軍慰安婦の問題でも、自分から先に挑発しておきながら、やれ中国がどうの韓国がこうのと相手の非ばかりなじって。そのくせ米国には何も言えず、戦時中に住民を無理やり追い出して作った米軍基地を撤去してくれという沖縄の当然の主張にも、同じ沖縄県内の辺野古への移転・新基地建設の話にすり替え、「文句があるなら対案を示せ」と脅しにかかる。足を踏まれた側が、なぜ足を踏んだ奴の心配をしてやらなければならないのか。「踏みつけている足をどけろ!」、それ以外にどんな対案があると言うのか。
 福島や沖縄や母子家庭の人たちは、安倍に「踏んでいる足をどけろ!」「もう、そんな政治は止めてくれ」と言っているに過ぎないのです。それに対して安倍は、「踏んでいる足をどこにどけたら良いか、国民運動でみんなで考えましょう」と、全然ピント外れな事を言っているのです。それ自体が異常な事なのに、NHKのこのニュースは、ご丁寧にも、今頃になって「貧困率」の解説を行っているのです。

 かつてリーマンショックの時に「派遣切り」のニュースが話題になりました。トヨタなどの自動車工場で働いていた派遣労働者が、トヨタを首になった途端に、それまで住んでいた派遣会社の寮からも追い出されて、深夜営業のネットカフェやマクドナルドに寝泊まりしなければならなくなったり、そこからも追い出されてホームレスになる人が続出しました。
 当時のNHKが、「クローズアップ現代」などの番組でその事を取り上げた時に、安倍などの自民党の政治家が、「番組内容が偏っている」と散々難癖を付け、自民党の息のかかった連中をNHKの経営陣にどんどん送り込んできました。それが、今のNHK会長の籾井勝人(もみい・かつと)や、つい最近までNHK経営委員だった百田尚樹といった連中です。
 籾井はNHK会長でありながら、「政府が右と言う物をNHKが左と言う訳には行かない」という事を平然と言う人物です。しかし、マスコミがただの御用放送に成り下がってしまったら、どんなに政府が悪い事をしても国民は真実を知る事ができなくなってしまいます。実際は侵略戦争で負け戦だったのに、「間違った戦争だの負け戦だの言う奴は非国民だ」と、当時のマスコミに散々煽られ、疑う事すら許されなかった戦時中の歴史を、籾井はまた繰り返したいのでしょうか。
 百田尚樹は「永遠のゼロ」という小説を書いたベストセラー作家としても有名な人物です。しかし、あの「永遠のゼロ」も、戦争中に特攻を忌み嫌っていたパイロットが、それでも最後は特攻作戦に志願して華々しく散っていくという筋書です。一見、反戦小説を装いながら、実際は特攻を美化しているのです。本当に百田が戦争に反対なら、「憲法9条を守ろうと言う奴が真っ先に戦場に行けばよい」なんて事を言い放つはずがありません。
 NHKがそういう連中に支配されるようになってからは、番組も全然面白くなくなってしまいました。「クローズアップ現代」も、集団的自衛権の問題で国谷裕子キャスターが菅義偉(すが・よしひで)官房長官にインタビューで食い下がった事が問題になり、番組編集陣が首相官邸やその腰ぎんちゃくの籾井から散々叩かれるようになってからは、まるで「腑抜け」みたいな番組ばかりとなってしまいました。
 そんなNHKが、今更、貧困率の解説をしてどうなると言うのでしょう。NHKが今やるべきなのは、そんな事よりも先に、貧困率の上昇をもたらした政治の責任を追及する事でしょうが。

 情けない事に、この官製の貧困撲滅「国民運動」には労働組合の「連合」も参加しているそうです。どこの国にもナショナルセンター(労働組合の上部団体)があります。連合(日本労働組合総連合会)は日本最大のナショナルセンターで、主に官公庁や大企業の組合が参加しています。日本には他にも中小のナショナルセンターがあるのに、まるで「自分たちだけが労働組合の代表だ」と言わんばかりに「連合」と名乗っているのですが、「派遣切り」やブラック企業の搾取と闘う事はまずありません。逆に、東電の組合のように会社と一緒になって原発を推進したり、都知事選挙では自民党と一緒になって舛添(ますぞえ)要一を応援したりしていました。それどころか、ブラック企業では、労働者のスト潰しの為に、会社が連合系の御用組合をでっち上げたりしています。「連合」の2015年度重点政策では「反自民」や「政権交代」への言及も一切なくなりました。これでは一体何の為の労働組合なのか分かりません。
 しかし、この4月からは税金も社会保険料も更に値上げされます。それだけでなく、とうとう「残業代ゼロ法案」まで国会に上程されてしまいました。連休明けから審議が始まるそうです。「残業代ゼロ法案」と言うのは、「いくら残業させられても今後は残業手当がつかないようにしよう」という法案です。政府は「ダラダラ残業を防止して、メリハリのある仕事でみんな早く帰れるようにしよう」と言っているそうですが、アホかと思いますね。誰が好き好んで「ダラダラ残業」なぞしたいものですか。誰でも早く帰りたいわ。でも、人手不足でもなかなか人員が補充されずに、定時で仕事が終わらないから、サービス残業までして残っている人がほとんどじゃないですか。今はまだ「法案が可決されても年収1075万円以上の労働者にしか適用されない」なんて言っていますが、そんな年収制限なぞすぐに取っ払われてしまいます。現に経団連などは、「年収400万円以上の層には全員適用してほしい」と、政府を突っついているそうじゃないですか。
 そんな中で貧困撲滅「国民運動」なんかやってどうするのですか。次は残業撲滅「国民運動」でもやるつもりですか。私は何も「国民は何もしなくても良い」と言っている訳ではありません。国民も貧困問題や労働問題に無関心であってはならないのは勿論です。でも、それは何も今の自民党政治をヨイショする事ではありません。こんな官製・お手盛りの「国民運動」なんかではなく、ブラック企業に労働基準法を守らせたり、「残業代ゼロ法案」を廃案に追い込んだり、原発再稼動や集団的自衛権行使(海外派兵)を阻止する大衆運動こそが、今最も求められているのではないでしょうか。



 大体、この顔を見ただけで、安倍がどれだけ本気で貧困対策に取り組もうとしているか分かるでしょう。これは何もイケメンでないから駄目だと言っている訳ではありません。たとえ不細工な人でも(失礼!)、真面目に物事に一生懸命取り組んでいる人の顔は、それなりに美しいものです。職人や政治家の顔などにそれがよく現れます。ところが安倍は、上記のツイート(ツイッターでのつぶやき)にもあるように、昨年夏の長崎原爆慰霊式典でも、「集団的自衛権行使容認は日本国憲法を踏みにじる暴挙だ」と発言した被爆者代表の城台(じょうだい)美弥子さんを、このように薄目を開けてうっとおしそうに眺めていました。(私の過去のブログ記事にその時の画像が載っています。)
 さる4月1日はエイプリルフールでしたが、私に言わせると、今の政治やそれを黙認し続ける国民の方がよっぽど「エイプリルフール(バカ)」です。一体いつまでこんな政治を支持・黙認し続けるつもりなのでしょうか。そういうと必ず、「別に積極的に今の安倍さんや自民党を支持している訳ではない、他に適当な人がいないから、あるいは野党がだらしないから、仕方なく安倍さんや自民党を支持しているだけだ」と言い訳する人が出てきます。しかし、私に言わせると、たとえ消極的であろうと支持している事には変わりありません。選挙への棄権も、今の自民党政治を黙認しているという意味では、消極的に支持しているのと同じです。
 今まではそれでも良かったかも知れません。でも、ここまで安倍が国民の人権や生活をないがしろにしようとしているのに、それでもまだ自民党を支持するようでは、もう奴隷と同じです。「他に適当な人がいない、野党がだらしない」と思うなら、自分が選挙に出れば良いのです。それが無理だと言うのであれば、とにかく消去法でも何でも良いから、少しでも「残業代ゼロ法案」や原発再稼動や海外派兵に反対の候補に投票すれば良いのです。虐めを「見て見ぬふり」するのも、虐めを黙認しそれに加担しているのと同じ事です。
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