Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

お化けと幽霊の違いは? ~ 裏版「四谷怪談」のそのまた裏話

2013-06-03 | 映画・テレビ・演劇・芸能

 MiTUのコンサートが終わり、気が抜けたように暇~になった。6/1(土)、茶々姫先生の都合でお茶もお休みだ。折しも、演劇鑑賞会の第45回定期総会の日。いつもなら総会後記念講演があるがこの日はないらしく、早く終わるな、と思いながらウイングウイングへ出かけた。
 ところが、急きょ7月例会、劇団民藝の「どろんどろん」の制作の方が来られることになった、と言う。どんなお芝居なのか、見所や裏話が聞けるかも、と残ることにした。役者さんの話より、制作や演出の方の話が面白いことがあるが、この日の上本さんの話もそうだった。

 ↓は、今年度のラインナップ。左から、「モリー先生との火曜日」(加藤健一事務所」、「はだしのゲン」(木山事務所)、「殿さまと私」(文学座)である。

 上本さんの話は、劇団「民藝」の名前の由来から始った。ふだんは「芸」で通すこともあるが、できれば「藝」の字を書けるようになってほしい。滝沢修、宇野重吉、北林谷栄らが、劇団を起ち上げた当時(1950年)は「民芸」だった。だが、宇野重吉と同郷の詩人、中野重治が、「芸は”作物を収穫する”意、藝は”苗を育てる”意だ。若い俳優を育てる場が劇団ではないか」と提案し、改名したいきさつがあるそうだ。今もその精神は引き継がれている。

 ↓は、演壇。昨夜は富山で話して来たと言う上本さんは背の高いイケメン男性(まだお見えになっていません)。     

 まず、トップのポスターをご覧ください。向かって左が、歌舞伎役者3代目尾上菊五郎、右が、大道具師11代目長谷川勘兵衛、中央が、「東海道四谷怪談」の作者4代目鶴屋南北である(菊五郎はもちろん、長谷川勘兵衛も現在、当代が活躍中)。

  江戸時代末期、鶴屋南北は70代にして「東海道四谷怪談」を発表した。ご存知お岩さんの話だ。いつか、テレビで映画を見たが、怖くて画面が見られなかった。そのお岩を、人気役者の菊五郎が演ずるのだが、大道具師の勘兵衛にいろいろ難題をふっかける。「提灯抜け」、「戸板返し」、「仏壇返し」などの仕掛けを作れと注文するのだ。提灯抜けは、燃え上がる提灯から幽霊が現れる?戸板返しは、心中に見せかけ殺した男女を一人二役で演ずる工夫、仏壇返しは、仏壇から幽霊が現れる?などなど(これはあくまでも上本さんの話からの想像だが)。提灯抜けで、本物のを使うかどうかは、その土地の消防署次第とか。

 役者あっての舞台、役者を生かすのは作者、作者の狙いを具体的に造形するのが道具師。三者が協力しないと客を満足させる舞台は作れない。が、そこに生まれるジレンマ。話を聴くだけで面白そう、ゾクゾクしてくる。このお芝居は、小幡欣治氏が「民藝」のために書き下ろした9作目、大道具師にスポットを当て斬新な切り口で描いた意欲作とのこと。
 講演後、いろいろと質問が出て話がまた深まった。「民藝」では、めったに時代物は演じないが、日本人として時代劇を守る、と言う意味で上演している。時代物は費用が高くつく。鬘も衣装も借りなければならない。とても高価だ。床山さんや着付けの人も頼まねばならない。テレビでも、NHK以外は時代劇が減ったでしょう?…(たしかにそうだ)。

 最後に、お化けと幽霊について。菊五郎のセリフの中に、「お化けはパッと出てパッと引っ込む、幽霊はジトッと出て来てジトッとそこに居る」とあるそうだ。お化けには人間でない物もいる(傘や茶碗、動物)が、幽霊は人間、人間の感情や思いを持っている、そこを演じたいと。
 もう一つ最後に、2年前の公演では大滝秀治さんが鶴屋南北役を演じておられたそうだ。