富山能楽堂は、富山空港のすぐ近く、緑の木々に囲まれた閑静な場所にある。 何度も見に行ったことはあるが、舞台に上るのはもちろん初めてだ。
裏玄関が2つあり、部屋数も多い。 庭もよく手入れされていて落ち着いた雰囲気。 高岡「青年の家」3階の多目的ホールの能舞台とは大違いだ。 (トップは終演後正面玄関から出てくる人たち)
さて、第1部の素謡13番の後、第2部では能、狂言、仕舞、能と続いた。 ここでは、最初の能「三山(みつやま)」について紹介します。 最後の「鵜飼」は次の機会に。
三山とは「大和三山」のこと。 奈良盆地南部、藤原京周辺にそびえる香具山(152.4m)、畝傍(うねび)山(193.1m)、耳成(みみなし)山(139.1m)の三山だ。 そびえるとは言っても低い山々だ。 畝傍山を頂点に、きれいな2等辺三角形に位置しているとのこと。 昨年3月、蒼山会から謡蹟巡りで、葛城山、長谷寺、三輪神社などを回った時、葛城山のロープウエイから教えてもらったが、曇っていたせいもありサッパリわからず、3000m級の山々を見慣れているので上の方へばかり目が行き、滅茶苦茶にシャッターを押したのが下の写真。 右下に見える黒く小さい山々がそうかも。 右隣の写真は、ネットから。
あらすじは、良忍上人(ワキ)が、三山として有名な大和の耳成山にやって来て、山々を眺めていると里女(前シテ)が現れ、万葉集の歌にある耳成山、香久山、畝傍山の謂れを語る。
「香具山は男の山、耳成と畝傍は女の山だと言い伝えられている。 昔、膳の公成という男が、耳成山の桂子(かつらこ)と畝傍山の桜子(さくらこ)の二人の女のもとに通っていた。 しかし、そのうち公成は若い桜子のもとに通うようになり、耳成山の桂子のもとに通わなくなってしまう。 桜子を羨み、公成に失望した桂子は、嫉妬のあまり池に身を投げてしまう。」 と、語った後、私こそ桂子の霊だと言って、里女は消える。 (中入り)
上人が桂子の霊を弔っていると、やがて桜の小枝を持った桜子の幽霊(ツレ)が現れ、桂子の恨みを晴らしてくれるよう頼む。 そこへく桂の小枝を肩に桂子の幽霊(後シテ)も現れる。 二人の女は互いに枝を振りかざして争う(地謡が ♪打ち散らし打ち散らす♪ と謡う場面)が、やがて恨みも晴れて、夜明けとともに消えていく。
シテ(大坪喜美雄)もツレ(高橋憲正)も面をつけ、唐織の衣装をつけた美しい女性だが、ツレはいかにも若い女性らしく、後シテは憂いを含む年上の女性らしく見える。
後で、謡の本を見ると、前シテ、後シテ、ツレの面は、「増(ぞう)」の面、「女増髪(おんなますがみ)」の面、「小面(こおもて)」の面とそれぞれ違うらしい。
撮影禁止なのでアップできないが、二人の若い女性が同時に舞台に上がり舞う姿は美しく、見ごたえがあった。