9月17日(日)、今年も高岡文化ホールで、宝生・観世・和泉流の「三派合同能楽鑑賞大会」が開かれた。
👇は、番組の表紙。能「三輪」の写真である。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/72/e889ae7d361278deb0dee88432039720.jpg)
私たち蒼山会は、第一部の一番素謡「高砂」を担当した。無本である。地謡だけとは言え、ある程度暗記しなくてはいけない。ま、うろ覚えの個所も多々あったが。お役の方たちは立派に務められた。素謡3番の後、高岡市生涯学習センター『能楽講座』の受講生による公演が続いた。いわゆる「ちびっこ能楽教室」の生徒たちの舞台で、謡、仕舞、笛、太鼓を習っている子どもたちの発表会である。謡、仕舞を山崎健先生と松原水緒先生、笛を瀬賀尚義先生、太鼓を上田博先生が教えておられる。
👇は、連調連管「竹生島」。(写真はなはさんにお借りしました)![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/ff/35c5c53ba16d7e3ac9ba6193bf5673c3.jpg)
👇は、仕舞「鶴亀」。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/5f/4574005409a692cda7cc085477c05642.jpg)
👇は、仕舞「熊野(ゆや)」。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/e6/a17578ab2a41191ced1aae95b8a8dd45.jpg)
👇は、仕舞「藤」。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/1d/abc4440844488632c0582b5273bbb82c.jpg)
👇は、舞囃子「鞍馬天狗」。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/22/e18390f1dad42dd4e4d1b0bf6a66de5c.jpg)
午後第二部が始まり、まず能「三輪」について金井雄資先生の解説がある。その後、先生方の仕舞、舞囃子、狂言「蟹山伏」が続き、能「三輪」が始まった。
これは、奈良県桜井市三輪神社にまつわるお話。三輪そうめんで有名な三輪の里である。何年か前、蒼山会の謡蹟巡りの旅で訪れたが、ご神体がうっそうとした三輪山だと言うことだった。
《あらすじ》
”大和国三輪の里(今の奈良県桜井市付近)に玄賓(げんぴん)という僧が住んでいました。玄賓の庵に、樒(しきみ)を持ち、閼伽(あか)の水を汲んで毎日訪ねる女の人がいました。玄賓が不審に思い、名前を尋ねようと待っているところへ、今日もその女性がやってきました。折しも秋の寂しい日のことでした。女の人は玄賓に対して、夜も寒くなってきたので、衣を一枚くださいと頼みます。玄賓はたやすいことですと、衣を与えました。女の人が喜び、帰ろうとするので、玄賓はどこに住んでいるのかと尋ねました。女性は、三輪の麓に住んでいる、杉立てる門を目印においでください、と言い残し姿を消しました。(中入り)
その日、三輪明神にお参りした里の男が、ご神木の杉に玄賓の衣が掛かっているのを見つけ、玄賓に知らせます。男の知らせを受けた玄賓が杉の立つところに来ると、自分の衣が掛かっており、歌が縫い付けてあるのを見つけます。そのとき、杉の木陰から美しい声がして、女体の三輪の神が現れました。三輪の神は玄賓に、神も衆生を救うために迷い人と同じような苦しみを持つので、罪を救ってほしいと頼みます。そして、三輪の里に残る、神と人との夫婦の昔語や、天の岩戸の神話を語りつつ神楽を舞い、やがて夜明けを迎えると、僧は今まで見た夢から覚め、神は消えていきました。”
👇左 最初、舞台には作り物(2本の神杉を表す)が出される。上に注連縄が張られ杉の葉が立っていて、緑色の引き回しで全体が覆われている。前場で、里女(シテ)は姿を消しこの中に入る。里の男(間狂言)が玄賓(ワキ)に衣の話をしている間に、シテは作り物の中で三輪の神に変身する。写真はネットからなので、緋大口(赤いおおくち)、に白い長絹(ちょうけん)、金の風折烏帽子をつけている。が、この日のシテ、大坪先生はオレンジ色の装束で一段と輝いて見えた。後で聞くと、新調だったとことだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/ec/64d08a7eb7c1cabc73a5e99b51043b37.jpg)
👆 右。三輪の神(後シテ)は「古事記」にも出て来る神婚伝説、天岩戸の物語を語り、神楽を舞う。
神婚伝説とは、昔大和の国に住むある夫婦がいついつまでも変わるまいと固く契ったが、男は夜は来るが昼は来ない。女が「長い年月を送りながら夜でなければ通い給わぬは不審である。」と言う。夫は「昼は恥ずかしい姿が見えてしまう。もう来るまい」としみじみ語る。妻は別れを悲しみ、苧環(おだまき)の糸に針をつけ裾に綴じて、その後を慕って行った。長い糸を手繰り行くと、この山の麓の社の杉の下枝に止まっていた。なんと浅ましいことだ、これが契った人の姿だったかと妻は驚いた。残った糸が三わげ(三巻き)だったので三輪のしるしの杉と言うようになったそうだ。
神話とは言え、なんと大らかな、ロマンティックな、細やかな話だろう。
シテ(里女・三輪の神):大坪喜美雄 ワキ(玄賓):殿田謙吉
間狂言:荒井亮吉
大皷:飯嶋六之佐 小鼓:住駒幸英 太鼓:徳田宗久 笛:瀬賀尚義
地謡:金井雄資 他