熱海での同窓会から帰った翌日、5/20(月)は利長忌。今年、瑞龍寺では利長公400年大遠忌法要が行われ、午前中は裏千家前家元の千玄室鵬雲斎大宗匠による献茶式があったようだ。午後は、例年通り「燭光能」が奉納された。
今年の演目は、「来殿」(トップは謡本)。この曲は、宝生流だけのもので、多流派では、「雷電」となる。と言うのは、宝生流では「雷電」の後半を書き直し改作したのである。
「雷電」の後半は、無実の罪で左遷され、無念のうちに配所で亡くなった菅原道真が、雷神となって荒れ狂うが、道真の師である比叡山の座主の法力に屈服し、帝から官を贈られ、感謝のうちに終わる。
だが、宝生流は前田家が保護者であり、前田家は、菅原道真の子孫を称していたため、荒れ狂う雷神=道真を、貴人=天満大神と変えたと言うわけだ。曲名も「来殿」と変更した。しかし、2年前から復曲し、家元自らがシテを務められた「雷電」がNHKテレビで放映された。↓は、昨秋テレビで見た能「雷電」の私のブログです。
http://blog.goo.ne.jp/67kiyoh/e/b822ce8551762d45b6fa13cc74bba3a8
改めて、あらすじを書くと:
〈あらすじ〉 比叡山の僧、法性坊は菅原道真の師であった。天下のため護摩供養をしていると道真の霊があらわれ「自分は冤罪で左遷され死にいたったので、雷となって内裏に行き恨みをはらそうと思う」と述べる。そして「朝廷は悪霊退散のために法性坊を招くだろうが、もし呼ばれても参り給うな」と願う。法性坊は「比叡山は天皇の祈願所であるため、三度勅使が来たら断れない」と答える。それを聞いた道真の霊は、本尊の前に供えてあったざくろを噛み砕き、寺の戸に吐きかけると扉は燃えあがった。法性坊が法力で消し止めると、道真の霊は走り去る。(ここまでが前場)
後場は内裏で雷となった道真の霊が暴れまわり、法性坊の法力と対決する。最後は朝廷から「天神」の神号をおくられ、礼を述べて黒雲に乗り立ち去る。
↓は、後シテの雷神(道真の霊)。(ネットから) 燭光能の天神と比べてください。
さて、瑞龍寺燭光能「来殿」は、中入り後の後場のみ(写真はすべてようこ姫さんよりお借りしました)。
↓、まず法性坊僧正(ワキ)が登場。
↓、出羽の囃子で、道真の霊・天満天神(後シテ)が登場。♪その時虚空に管弦聞こえ…♪ でシテは御代を寿ぎ、早舞を舞います。
「中将」の面をつけた道真の霊は、お正月の天神様そのもの。「早舞」を優雅に舞います。
謡の本ではほんの2ページ半ほど。あっと言う間に終わり呆気ないほど。薄暗い法堂での、仏さまの前での奉納能としては、天満天神の舞はふさわしいかもしれない。が、能楽堂では雷神が師の法性坊と対決し屈する後場の方が見ごたえがあるだろう。
今年は全席が椅子席、法堂の回りの戸はすべて取り払われ外光が漏れ入るので、例年より広々として明るく、よく見えた。
シテ:大坪喜美雄 ワキ:苗加登久治 後見:山崎健
大皷:野尻哲雄 小鼓:住駒幸英 太鼓:徳田宗久 笛:瀬賀尚義
地謡:金森秀祥 他 の皆さんでした。