👇のブログは、私の小説「億男」読後感である。改めて開いてみると、大まかなあらすじ以外は特に感想は書いてない。お金にまつわる偉人たちの名言が印象に残ったくらいで心にストンと落ちるものがなかった。が、映画は違った。面白く、そして切ない気持ちになる映画だった。
最近映画を見た後本を読んでみたくなったのが、「空海」、「万引き家族」、「日日是好日」だ。本を読んでから映画を見て納得したのが「散り椿」、この「億男」かな。
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👇は、映画のポスター。写真で見ればわかるが、主演の佐藤健の他に豪華な顔ぶれの俳優陣である。それだけでも期待がふくらむ。
一男(佐藤健)と九十九(高橋一生)は、大学時代落研の仲間で親友だった。九十九は吃音にもかかわらず落語を語る時だけは口が滑らかだった。二人は卒業旅行と称しモロッコへ出かける。果てしない砂漠の砂山で二人は落語を語り合う。モロッコでの映像が素晴らしい。らくだに乗った隊商の行列が夕陽を浴びて進む…。
街へ出た二人だが、市場の古物店で急に一男が倒れ、積見上げてあった陶器などが崩れて壊れてしまう。九十九は一刻も早く一男を病院に連れて行きたく、店主に吹っ掛けられた30数万円をその場で払う。九十九にとって一男はそのくらい大切な友だった。そして、”お金の価値は、その人その時により異なる”と言う伏線かも。
👇 砂漠で一男のためだけに「芝浜」を語る九十九(砂漠の場面2枚も選びました)。
その後まったく別の道を歩んだ二人。九十九は大学を中退し起業し億万長者に。一方、一男は兄の借金3,000万円を抱え昼は図書館司書、夜はパン工場で働いている。妻は娘を連れて家を出てしまった。ある日娘が欲しがっていた自転車が当たるといいね、と買った宝くじで奇しくも3億円を当てた。とつぜん舞い込んだ大金。マニュアル本を読み、賞金を当てた人はほとんど不幸になっていると知り、ずっと疎遠だった九十九を訪ね、お金の遣い道を聞く。
👇 九十九は「まずおろして来なよ」と言い、実物を確認させる。1円玉と1万円札は同じ重さ、約1gだと言い、3億円は30㎏と運んで実感する一男。…この後九十九はお金を持ったまま姿を消すのだが…。
この後、一男は九十九と一緒に企業「バイカム」で金を儲けた3人の金持ちを次々と訪ね、九十九の行方を探して回る。3人とは、競輪に明け暮れる北村一輝、カリスマ教祖になってお金を騙しとっている藤原新也、お金をコッソリ隠して主婦におさまってる沢尻エリカ…。それぞれが真に迫った演技を披露。一男と言えば、借金を返して妻子と暮らしたいと願うが妻から離婚を迫られ、お金があっても問題は解決しない。
九十九はどこで何をしているのだろうか? なぜか一男は九十九がお金を持って戻ってくると信じている…。そして、ある夜疲れて電車に揺られていると、ひょっこりと九十九が現れ隣に座り全額入ったバッグを置いて行くのだ。お金で幸せは買えた? お金と幸せのどっちが大事?
さて、ここで落語「芝浜」を一語り、はできないので、ネットのあらすじをアレンジしました。私自身は歌舞伎(前進座かも?)で見たきりで、落語は聞いたことがない。
江戸時代、今でいうところのアルコール依存症の魚売りは、かみさんの粘り強い後押しで、やっとのことで仕事に出る。
ところがその日、魚売りは海で財布を拾う。中身は二分金で42両。これでしばらく遊んで暮らせると、大喜びの魚売りは家に戻ると仲間と飲めや食えやのどんちゃん騒ぎ。また高いびきで寝てしまう。翌日飲み過ぎで記憶を無くしていたが、かみさんに財布の事を訊くと、「何言ってるの?夢でもみたんじゃないか?それよりさぼっていた仕事を真面目にやってくれ」と言われ、酒を止め、心を入れ替え商売に精を出し、成功する。
数年後、かみさんは大晦日の晩に財布を拾った事は事実だったと打ち明ける。財布の横領は打ち首の罪に問われるのを恐れ、内緒で大家に相談し役所へ届けたのが、時効になったからである。その時にかみさんが「まじめによく働いておくれだったね。まあ今夜ぐらいは一杯どう」と酒を用意し、勧めるが何回か飲みかけて、飲むのを止めてしまう。「いけねえ、ここで飲んだら、また夢になっちまう」 がオチ。
👆は、映画館の隣の「喜久屋書店」に平積みされていた文庫本。巻末に高橋一生の解説が載っている。
目先の金で人は変わる。3億円を手に入れた一男が人生を狂わす可能性があるとみた九十九のとった行動の真意が「芝浜」と同じなのか? あるいは横取りを狙ったのか、それはわからない。最後にチャップリンの科白を一つ。「人生に必要なもの。それは勇気と想像力とほんの少しのお金さ。」
それにしても、最近の映画、TVドラマでなんと黒木華さんによく出会うことか? 先日の「散り椿」、「日日是好日」そして「億男」、テレビでは大河の「せごどん」の奥さん役である。
映画の終わり、一男は娘に自転車を買いそっと家の前に置いて行く。大喜びする娘、家から出てきた華さんのにっこりと笑った幸せそうな顔。一男が変わったと信じる笑顔に見えた。