映画「パラサイト・半地下の家族」を見た。カンヌ映画祭でパルムドールを受賞とは知っていた。韓国の格差社会を描く、とも聞いていた。
もう20年前だろうか、富山空港からアシアナ航空で簡単に韓国へ行けるようになった頃からザっと10回は韓国を訪れている。釜山、慶州に始まり、安東、扶余、済州島、板門店、水原、鉄原、春川、そしてその都度ソウルへ。韓国のことは少しは知っているつもりだった。だから、今更…と言う気があったがSE子さんの「お薦めです」のメールで見る気になった。
まず、半地下家屋について。日本でも坂の町や崖下の家には玄関が2階と言う家屋がある。しかし韓国の半地下は事情が異なる。キム一家の半窓から見えるものは、家に向かって立ち小便している酔っぱらいや、路地に吹き溜まるゴミばかり。
朝鮮戦争休戦後、北への脅威から家屋に地下防空壕設置を推奨した朴政権の建築法改正が始まりだそうだ。それが居住可能なように半地下化し、1990年代のピーク時には全世帯の19%を占めたらしい。窓が地面のすぐ上にあり、高湿度で湿っぽく、結露や黴が生え生活には不向きだか、そのため家賃が安く都市部の貧困層が住むようになった。半地下は水圧の関係でトイレが部屋の一番高いところだったりもする。そんな家でキム家の兄妹がスマホの無料WiFiを拾おうと便器の蓋の上にのぼる…そんな場面から映画は始まった。
👇のポスターで、目に白いマスクかけた4人が高台に住む社長の家族、周りにいる黒いマスクの4人が半地下の家族だ。
👇 学力があっても貧困のため大学に行けない長男、美術の才能があっても生かせない長女、そして両親とも失業中。でも、一家4人仲良く楽しく暮らしていた。
が、長男がひょんなことから社長一家の娘の家庭教師になったことをきっかけに、長女は息子に美術を教え、両親は運転手と家政婦を追い出しその後釜に入り込み、4人全員が社長家族に寄生することになる。しかも、その豪邸には全地下室があり、そこに前の家政婦の夫が住んでいたとは…。そして話はスリラーかホラー映画さながらの殺人事件に。ハラハラ、ドキドキ、展開が読めない…。
あらすじはここでストップして…。 見終わった後、黒澤明の「天国と地獄」をふと思い出した。60年前の映画と言うから、何度目かの再上映か、テレビでの放映を見たに違いない。黒白映画で、病院の焼却場の煙突から上るピンクの煙が印象的だった。高台の豪邸に、靴メーカーの常務の家族が住んでおり、その息子が誘拐され身代金が要求される。犯人は病院のインターンで苦学生、はるか高台に豪邸の見える狭い部屋で貧しい生活をしながら、身分の違う金持ち一家に憎しみを募らせていた。その苦学生が当時まだ無名の山崎努。彼の叫びが強烈だった。 👇は当時のポスター。
👇は、DVD。煙突からピンクの煙が見える。
後で、ポン・ジュノ監督の「天国と地獄を意識した」との言葉をネットで見つけ、ああ、やっぱり!と思った。