蒼穹のぺうげおっと

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超個人的お勧め小説 第3位 『空の境界』

2004-12-20 18:06:16 | 小説 感想
割と好評だった「超個人的お勧めマンガ」に引き続き、今週は「超個人的お勧め小説」のご紹介をしたいと思います。
年末年始の休みを利用して本でも読んでみるか、とお考えの皆様の一助になれば幸いです(て言っても私の趣味で紹介する本なんでそのへんご理解を)。

さて今回もコンセプトを定めてお勧めの小説を例によって3作品、1日1作品ずつご紹介致します(じゃないとお勧めがありすぎて紹介しきれないので)。

■超個人的お勧め小説 選定コンセプト■
1.広義のSF系作品
この中にはファンタジー、伝奇ものも含む広義のSFと捉えてください。つか、うちのブログの方向性そのものです。

2.男女ともにお勧めできる作品
うちのブログを参照してくれる人の構成比は(勘ですが)男女比率がだいたい同じ気がするので、極力男女問わずお勧めできる作品を紹介したいと思います。

3.3巻以内で完結する作品
年末年始の休みを利用して読んでもらうことを前提にしているので長編ものではなく、かつ完結しているものを選定します。
#3巻と言ってしまったのでノミネート作品の最大巻数がバレましたね。

上記コンセプトに基づき、私燕。が推薦する小説第3位は、

■奈須きのこ 『空の境界』 講談社ノベルス

これは今年読んだ小説の中でもか・な・り・凄かった、いや凄まじく良かったですよ。
既にこのブログでも紹介済みなんですが、それでも敢えてここで紹介したい。
#あいばさんのところでも紹介されているのであわせてチェックして見て下さい。

暴力的な表現もあるので女性の読者の方には最初のハードルが高いかもしれませんが、それを超えた先に見えるもの、その輝きを知っているだけに、敢えてお勧めしたいと思います。

■もはや伝奇というジャンルではない
新伝奇という宣伝文句が付けられていますが、そういう描写や雰囲気が強まれば強まるほどに、主人公両儀式(りょうぎ しき)と黒桐幹也(こくとう みきや)の関係性が透明度を増していき、ラストで辿り着く二人の姿は輝いていてとても美しい。
倫理という境界が崩壊しそうな絶望的な状況であればあるほど、研ぎ澄まされていく切ない純愛小説、そう言い換えても過言ではないと思います。

■随所に盛り込まれた「対比構造」と「境界」の意味に酔いしれる
様々な「概念」を各章ごとに描写しているのですが、その中に表現されている徹底した「対比構造」に注意して読んで頂きたい。
必ず一つの「概念」を語っていくにあたり、随所に「対比構造」が散りばめられており、その境目つまり「境界」の意味について考えるとき、いかにこの作品が緻密な計算に基づいて構成されているかを思い知ることになります。
この感覚に驚愕し、そして酔いしれて欲しい、間違いなく面白いですから。

■そして2回読むべし
「何も無い」と空虚に描かれていた「式」が、どこまでも「式」と向き合う「幹也」と触れ合うことで徐々に自分を取り戻し(創造し)、色付いていくプロセスはほんとうに切なくそして温かい、ここで辿り着くラストだけでも十分美しくかなり満足なところなのですが、エピローグの描写が最高に切なく、そして改めてこの作品がどれほど緻密に作られているかを実感することになります。
エピローグを読んだ上でもう一度この『空の境界』を読み直してください。
一文一文に込められた「仕掛け」、「対比構造」、「境界」の意味に再度気が付かされることになりますから。
そして最初に描かれた点と最後に描かれた点が結ばれる時、壮大な1本の「線」がそこに浮かび上がるんです。

一度目は緊張感と勢いで読破。
二度目は仕掛けの緻密さを味わうようにじっくり熟読。
私は既に今年3回読んでいます(それでもまた面白い)。

ノベルスを購入したのは実はこれが初めて、おかげで以後西尾維新作品とも出会えることになったきっかけをくれた本作。
いろんな意味でこの作品には感謝したい&お勧めの作品です。
なお、西尾維新作品をはじめ、この奈須きのこ氏の文章も中毒性が高いため、読後は十分お気をつけ下さい(笑)。

空の境界 上
奈須きのこ
講談社ノベルス
¥1,155 (税込)
Amazonで購入


空の境界 下
奈須きのこ
講談社ノベルス
¥1,260 (税込)
Amazonで購入


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
再読しようかな (あぷろん)
2004-12-20 20:36:53
『空の境界』ぼくも好きです。

これを買うために何件も本屋を探し回ったのを思い出します。

式と幹也の関係が帰結するラストはものすごく感動した覚えがあります。

そして彼らとは離れた場所で虚無的というか彼らとの関係の帰結がないまま漂っている感じの蒼崎橙子という存在に少し恐怖を感じた覚えもあります。

今度再読してみようと思います。

今度は蒼崎橙子から見た両儀式と黒桐幹也という視点で読んでみようかな。



2位と1位の発表も楽しみにしていますね。
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是非、是非 (燕。(管理人))
2004-12-21 14:54:24
あぷろんさんとは結構読んでいる本が同じだったりしますよね。

ラストシーンはもう何ていうか美しかったですよ。

そしてエピローグに驚愕し、その意味を知って再度読んでみると、果てしなく切ないストーリーだなということに改めて気が付いてみたり。

橙子さんは存在自体怖いです(笑)。



残り2作品、たぶんそのうち一つはあぷろんさん持ってると思うんですが、分かってても内緒にしておいてくださいね。
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Unknown (NNN)
2010-10-09 23:19:11
どうも、ご無沙汰しています。
『空の境界』がこのブログにあったとは全く知らなかったのですが、僕もつい最近、この本にたどり着きました。
どうにかして“未来福音”まで読んでしまいました。

かなり、癖のある文章ですが、とってもすばらしい恋愛小説、そして緻密に練られた世界観が最高です。もう何度読み返したか、特に螺旋の話は、作者がこの作品はある意味でアラヤの物語、というくらいですから何度も読み返しましたし(最後の橙子さんとの掛け合いは最高です)、そして最終話の二人で血まみれ(苦笑)のシーンには、何とも言えない感動を(涙を流すというのではないんですが)覚えました。最後の最後の二人の会話は、本当に深い…。
未来~は、この話を補完する内容として、読んでみるとやはり外せない物語で、ほんと、“救われる”物語ですよね。

その後、
ここからFate, 月姫までさかのぼってしまいました(笑)。もはや中毒です(笑)。Blue-Ray買おうかどうしようか考えているところです。もちろん、魔法使いの夜も…(苦笑)
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