5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

鶏卵が高い

2017-01-10 22:01:49 | たべもの
鳥インフルエンザの来襲で韓国では産卵鶏が多く殺処分されたせいで卵の値段が高止まり、30個のパックで8000WもするとKBSニュースが驚いて報道していた。1個27円だと日本より高価な卵を韓国人たちは食べることになるのだ。

酉歳に因んだ話題はなかろうかと積読本の中から見つけたのが昆虫学者の奥本大三郎が書いた岩波新書の「干支セトラ」。「酉」の最初のところは「鶏卵」について書かれている。

数十年前の値段を維持しているのは鶏卵だけだとあるが、そうだろうか。さしずめ韓国などは、鳥インフルを都合よいきっかけにして値上がりの方向に進むのではないだろうか。日本では「物価の優等生」という言い方もあったが、最近はあまり聞かない。

昔は鶏卵は高価で貴重な食べ物だった。地鶏の産んだ卵はケージ飼いの鶏卵工場製の卵とはまるで違ってとても濃厚。いかにも栄養満点といった雰囲気があった。

だから、病気見舞いに生みたて卵を持って行ったとか、男が力を見せる運動会や祭りなどでは卵の殻に小穴をあけてそこから飲んだなんて光景をよく見たものだ。

生卵を飲むのは日本人と蛇だけだとある。なるほど、そういう云い方もあるのかと変なところで感心した。

昆虫学者の奥本先生、タイの奥地に昆虫採集旅をした。

チェンマイのホテルで目覚めて朝食を取りに街に出た。一軒の食堂の店先には眼光鋭い白鬚の老人がひとり、朝の茶を飲みながらゆったりと腰を掛けて、往来の人の動きを眺めている。これを真似てみようと思った先生、店に入ると朝粥を注文した。

米の粥の中には赤色の濃い卵の黄身がひとつ落とし込んである。しっかりした薄皮を竹の箸で突き破ると、赤い黄身がはじけて白い粥の上に拡がっていく。椀の中はみるみるオレンジ色に変わり、一口啜ると強烈な卵の味がした。卵に卵の味がするのは不思議でも何でもないが、口中に朝日の色が拡がるような感じだったと書いている。

しっかりした生みたて卵を見舞にもらった病人も口に食んで明るい朝日の光を感じられたのなら、きっと元気になるぞという見舞客のこのメッセージをありがたく呑み込めたたことだろう。卵は元気の素だったのだ。

昔は我が家にも裏庭に小さな鶏舎があってレグホンやちゃぼが数羽飼われていた。鶏糞の匂いは今でも鼻の奥に残っているが、毎日彼らの産んでくれる卵にはずいぶんお世話になった方なのだ。

なにかの祝い事でもあると、逃げ回る鶏を捻って手際よく捌いたのは父ではなく母だった。さっきまで庭を走り廻っていた「カシワ」は「ヒキズリ」の材料として一家全員で美味しく戴いたものだ。

ああ、あの時の卵やカシワがもう一度味わってみたいものである。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿