5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

城東園のレガシー

2017-03-21 22:21:11 |  文化・芸術
『大曽根駅近くの伏見屋で角打ち後、またよからぬ趣味が昂じて杉栄町あたりをぶらぶら。城東園といえば知る人ぞ知るところ。それらしき面影の建物が残っている中で〈米喜〉という屋号が壁に残っている。なんだろうか?』

これはお仲間Sさんがツイートしたもの。すでに一年前のことになる。

杉栄とか城東とか云うのは名古屋城の北側一帯、遊郭のあったところだ。古い仕舞屋が今も残っている花街特有の空気が漂う地域である。

〈米喜〉の看板はWEB上でも見られる。やはり米を扱った店のようだ。

Sさんのツイートを読んで、米喜の存在を確認したいし、遊郭から赤線地帯の様子が知りたいと思って県の図書館に出かけた。ところがこうした特殊な市域に関する記録がほとんどない。名古屋市の観光案内書のようなものがあるだけで、もちろん、当時の桃色事情などは書かれていなかった。すでにこのブログでもそのことは書いた。

今日の中日夕刊に「欲望の文化を残したい。遊郭や風俗専門書店」というタイトルの囲み記事を見つけた。

『吉原』といえば江戸の遊郭として有名だが、その跡地(しかも昔の遊郭の建物の中に『カストリ書房』という遊郭や風俗を専門に扱う書店が去年秋にオープンした。

「遊郭はひとの基本的な欲望から生まれた力強くたくましい文化だ」という店長は40歳前の若さ。もちろん実際の遊郭経験はない。脱サラして遊郭風俗専門の出版社を設立して昔の貴重な書籍の復刊を手掛けてきた。客は全国に拡がり、意外にも女性が半数だというから驚く。

6年をかけて全国の遊郭跡を三百か所以上巡り、僅かな資料をたよりに調べたが「こういう文化は伝わっていない」というのが彼の認識、危機感を覚えたという。

それがきっかけになって、国会図書館にもないめずらしい古本を見つけて復刊したり、郷土史家の私家版を出版したり、ですでに20点近くを刊行している。日本遊覧社編集で1930年発行の〈全国遊郭案内〉が代表的な復刊だというが、これは愛知県図書館には無かった。

このまま時が流れて都市が再整備されていけば、いずれどこが遊郭だったのかということすらわからなくなるだろう。

都市活動の記録も行政の仕事なのだろうが、近頃の役人たちは記録をとったりとらなかったり、都合がわるければ隠したり消去したりと結構やりたい放題らしいではないか。

そうした行政のつくる都市の歴史的記録は東京であれ地方小都市であれ、あくまで「きれいごと」の「行政主体」の歴史だろう。「遊郭史」をいれることなどとんでもないことなわけだ。

「せめて情報として残しておきたい」という若い出版者の活動はこうした行政のタブーに挑戦する勇気あることだと云える。

売春防止法からすでに60年。ほんとうの遊郭を知っているひとは80歳以上の高齢者ばかりだ。彼らに聞き書きが出来るのも今のうち。城東園のレガシーははたして残るのだろうか。

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