5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

韓国風《芋川うどん》

2010-06-13 22:16:05 | たべもの
名古屋で麺といえば《きしめん》だと云うのはもはや過去の話か。うどん屋も今ではチェーンの展開に代わって、街中の古いうどん屋は一軒また一軒とその姿を消してゆく。

元の職場近くに、きしめんの由来を入り口に掲げたうどん屋があった。「江戸時代、尾張藩主の饗応に雉の肉を煮込んだ《田舎うどん》を出したところ、旨いと上々の評価を得て、《雉麺》として名前が出、のちに転化して《きしめん》になった」と書かれていて、「なるほどなあ」と単純に関心した記憶がある。そこで出されたきしめんには雉肉は入ってはいなかったのだが。

先週のテレビの朝番組「ぴーかんTV」でも、こうした《きしめん由来話》のひとつを聞いた。

それによると、刈谷の某うどん屋で出している麺が《芋川うどん》という名前で、江戸時代の芋川、今の富士松・今川あたりで出されていた「ひらうどん」を再現したものだという。これに上記の雉肉がからんだり、御三家の紀州候が名古屋滞在時に好んで食べたということから《紀州麺》がなまったものだという俗説もくっつくのである。

《芋川》と聞いて、群馬県桐生の名物うどん《ひもかわ》をすぐに連想した。これも《きしめん》同様に幅広のうどんである。イモカワとひもかわ、何処かで関連があるのだろうか。

ところで、このピーカンTVには、タレントの彦摩呂をキャラクターにしたプログラムがあって、食堂オーナーの悩みにアイデアメニューで答えるという企画である。その日は、富士松の複合商業施設のフードコートテナントの若い経営者からの「おたすけ相談」に乗るということで、地元の《芋川うどん》を韓国風冷麺に仕上げようというわけだ。

番組は新メニューが出来たところで「頑張って」で終わったのだが、韓国風《芋川うどん》の評判はどうだろうと、富士松駅から万歩コースを変更する。

ナショナルチェーンのドーナッツ屋や、名古屋のラーメン店が並んで、どこでも見られるスーパーのフードコートである。土曜日の夕方、夕食を簡単にすまそうという家族連れの姿が多い。問題の店は、TV映像で想像した通り、1970年代のアメリカで見られた「カンティーン」と呼ばれる学食や社食の格好。韓国料理のファーストフードを出す店である。韓国風《芋川うどん》もポスター表示がされている。

ドーナツ屋でコーヒーを買って近くの席に座り、客の動きや店員の対応をしばらく観察した。ところがこの小一時間、両隣のドーナツ屋とラーメン屋には客が来るのに、この韓国ファーストフードに来たのは中年夫婦が一組だけ。しかも、注文は旦那の一皿(彦摩呂メニューではない)で、奥方は無料の冷水を飲んでめんどくさそうに旦那の食事が終わるのを待っているだけ。アルバイトの女性とキッチンの男性との二人も手持ち無沙汰の様子がありあり。土曜日の夕方にこれでは辛い。

デシャップカウンターの頭上にあるアメリカンスタイルの電飾メニュー板から、メニュー料金を読んでみると、セットメニューはL、M、Sにキッズと4ポーション区分があって、たとえば880円のLだと主食1品+料理3品+惣菜1品、630円のキッズだと主食1品+料理2品+おもちゃのコンビネーションである。このセット料金に100円プラスでトックスープが付くようだ。

デシャップ台には15種類の韓国料理がバットに入れられてある。客は料理や惣菜を自由に組み合わせて食べるというのがミソだ。

しかし、左隣は100円のドーナツだし、右隣は290円のラーメン、さらにその隣は、480円のたこ焼きや650円の丼物が並んでいるのだから、いかにも中途半端に高い韓国セットはまず値段からして劣勢である。彦摩呂の芋川うどんは699円。隣の麺屋よりもほんの少し安くという、こちら側の弱気がミエミエの値付けである。

韓国料理の特徴である唐辛子の赤色も、来館客の食欲をそそるというよりは、「やっぱり辛そうだから敬遠しようか」という逆効果しか産んでいないようだ。夕食とはいっても、粉物か汁物をひとりで一品食べればオシマイ。食堂メニューを拡げてボリューム感を出して誘っても客の意識がそちらには動いて行かないというわけだ。

韓流がポピュラーになって韓国料理のファンも増えたとはいえ、一般人にとってはあいかわらず「カルビ焼肉=韓国料理」ということになるのではなかろうか。名も知らぬ唐辛子赤の料理が並んでも食指は動きそうもない。

こんな寂しい状況を観ていて、客の気持ちを振り向かせるには、ソウルの屋台店が出すジャンクフードで勝負したほうが上手く行くのではないかと感じた。

キムパプ(巻きずし)やオデン、ティギム(てんぷら)、ハッドグ(ソーセージのフライ)、プンオパン(たい焼き)、クンパム(焼き栗)、ケーランパン(大判焼き)などなど。日本人が食べるものと似て抵抗のないB級C級グルメばかり。これから夏にかけてはパッピンス(かき氷)やネンミョン(冷麺)なども喜ばれるだろう。

カジュアルなアメリカンスタイルは若い経営者の「格好つけ」意識の反映なのだろうが、ここの利用環境を考えれば、マチガイと言わざるをえない。アマチュアに毛が生えた程度でしかない調理人オーナーの意識と、仲間からの情報を元に色々な場所を食べ回る「口はだすが金は出し渋る」利用客の本音。この駆け引き、勝負は最初から決まっている。

彦摩呂の韓国風《芋川うどん》も売り方を変えないとね。若いオーナーさん。




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