「鉱石検波器、バリコン、バーアンテナ」を使ってつくるのが「鉱石ラジオ」だ。自分が子供の頃に愛読した「子供の科学」という雑誌には鉱石ラジオの組み立てキットが付録でついてきたこともある。
微弱電波を受信する検波器として方鉛鉱や黄銅鉱などが使われていた頃の記憶よりも、その後に現れたゲルマニウムを使った「ゲルマニウムラジオ」をクリスタルイヤホンで聴くクリアな音の記憶の方が生生しい。小学生が中学生になって、SONYの「トランジスタラジオ」という魅力的でパワフルなガジェットを手に入れるまで、自製のゲルマニウムラジオは愛機であり続けた。
こんなことを思い出させたニュースをNHK浜松局が流している。子供たちに科学の魅力を知ってもらう目的の、いわば〈子供の科学〉を具現化するような教育活動は、浜松のユネスコ協会と浜松市が共催ですでに30年以上続けていて、今日も市内の小学5年・6年生70人が参加して〈ラジオ作り〉に挑戦したのだとある。
小学校の理科の先生たちがボランティアで指導に当たる。半田鏝の持ち方や半田付けのコツなどを教わった生徒たちは、それぞれに説明書を読みながら、基板に部品を取り付けて行く。中には、部品が半田でくっついてしまったり、間違えて取り付けてしまったりと大慌ての子もいたが、先生たちの指導よろしく、3時間でラジオを完成させた。
昔のゲルマニウムラジオとはまるで違っていて、コイル巻きや検波器調整などの面倒はなく、プリントされたDSP配線基盤に抵抗やコンデンサを付けていけば出来上がるのだから、難しくはなさそうだが、半田付けなどはじめてという子供たちの方が多いらしく、結構汗もかいたことだったらしい。
イヤホンではなく付属のスピーカーが鳴るのだ。初めて自作のラジオで放送を聞いた女の子は、「難しかったけど、とても楽しいです」と話していたが、その昂奮した気持ちはよく分かる。
「将来の夢は電子工学ですが、もっと勉強しなくてはと思いました」と話す男の子もいる。戦後のゲルマニウム世代は、この子たちが電子の現場で働いているかもしれない遠くない未来は、いったいどんな「夢」を具体化出来ているのだろうかと考えてしまう。はたしてラジオは未だラジオのままだろうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます