5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

公立夜間中学

2019-11-29 21:45:11 | 学習

昔は空いていた普通電車が最近になって混みあいを見せている。といってもおしくら饅頭ということではないし、急行とは違って駅毎の乗降があるからしばらく我慢すればどこかで空席は見つかる。

混み合うわけを考えてみると、住宅事情によって居住域が拡がったのかもしれないし、都心ではなく外延にあるような小会社や小工場で働く日本人たちが増えているのかもしれない。はっきりわかるのは外国人労働者たちの存在だ。普通しか停まらない途中駅から乗り込んで来て、普通しか停まらない途中駅で降りていく連中が多い。週末の駅には違う異国のことばを喋るグループが複数出来上がり、皆が楽しそうに街中へ繰り出していく。コンビニに入れば接客をしているのは、外国人PTたちばかり。彼らの多くが懸命に頑張っている様子が垣間見られるのはなかなかいいものだと思う。

昨日の中日夕刊トップには「学ぶ喜びすべての人に」という大見出しで、難民として日本に渡ってきたカンボジア人女性の話題を取り上げている。

ポルポトの恐怖政治を逃れ、15歳で日本にたどりついた難民の彼女。ゴム工場で働き、日本人と結婚し、子供も授かったが、カンボジアでの逃亡生活では教育というものを殆ど受けて来なかった。

日本では戦争のない暮らしを得られたが、日本語の読み書きができない自分をふがいなく感じ、友人の紹介で夜間中学に入る。仕事に育児に学校にと三重のハードルに対して「夢が叶って生徒になれ、人間として自信が持てる」と積極的。3年で無事卒業した。

今は保育園スタッフの仕事のほかに難民支援のNPOにも所属し、自分のように学びを求めるひとが学べるようにと公立夜間中学の設立を訴える活動に取り組んでいると記事にはあった。

公立夜間中学は、市町村が運営し夜間帯に授業を行う中学のことで、全国9都府県に33校あるが、東海三県には開設されていない。年齢、国籍を問わずに学べ、在籍年数にも制限はない。1950年代には全国に90校近くが存在し、戦後の混乱で学校に通えなかった日本人が対象だったが、近年では、記事のカンボジア女性などの外国人や、日本人でも中学時代には不登校だった人などの学び直しのケースが増えたという。

愛知県では県の外郭団体が名古屋市内の中学で週3回授業を行う「中学夜間学級」という制度がある。これは文科省の定めた基準ではないため、公立夜間中学校とはいえないらしいが、中学の卒業資格は得られると記事にはあった。

毎日の普通電車で一緒に揺れる外国人たち。彼らの日本滞在が長かろうが短かろうが、この土地に暮らす限り日本語の能力涵養は不可欠のものだ。外国人の流入や就労が増えていく潮流であるのに、法務省は日本在留のヴィザは出しても日本語能力を図る方法は持ってはいまい。文科省とておなじことだろう。

外国人の日本語学習といえばその多くが私立の日本語学校ということになるのだろうが、これが夜間中学のカリキュラムに含まれるとすれば、学費も低く抑えられ、彼らの頭痛の種となる日本人とのディスコミュニケーションも回避できる。

日本語の読み書きが理解できる外国人労働者たちは、近い将来、日本の社会インフラを背負っていく大きなマンパワーになるのだ。

校舎という施設はあるのだし日本語教師のなり手も見つかりそうだ。教育の無償化を政策とする政府であるのなら、夜間中学の開設は、利権がらみの大学新設なんかよりよほど社会的に価値のあることのように思えるのだが。






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