5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

Eブックの値段は誰が決める?

2010-12-07 23:21:31 | PC・インターネット
「グーグルが電子書籍の販売を開始」というホットニュースは、ツイッターの「ツイート」がすばやく知らせてくれた。

当面はクリスマス商戦に併せた形でアメリカ国内向けの販売。300万冊を一挙に提供するのだそうだ。日本は来年に入っての展開になるというから、わが国の電子書籍市場の実質的なキックオフは2011年ということになるのだろう。

グーグルは書籍の全文検索ができる「Google Books」を先行して実施しており、電子書籍市場への移行的参入にはほとんど問題はなかった訳だ。アンドロイド端末の充実も電子書籍販売への後押しになるのだろう。

アメリカのIT関連ニュースには、早速「グーグルEブックストア」の様子をレポートするものも現れた。そのうちのひとつ、「ベータニュース」に掲載されたジョー・ウイルコックスの寄稿文を読んでみた。「Eブックの値段は誰が決める?」というのがそのタイトル。

グーグルが参入したタイミングで、電子書籍の売価比較をレポートしようとしたのに、どこもほとんど同じ価格で売っているのが判って、「競合が増えれば売価は変動するはず」なのに、「こりゃ、何かの作為が臭うぞ」というわけだ。

「弘法は筆を選ばず」と云うが、グーグルの電子書籍サービスはマシンを選ばないのが特徴で、マックもPCも、スマートフォーンもタブレットも何でもOKというのは、アマゾンのキンドルと似ている。しかし、ブラックベリー、キンドル、ウインドウズフォーン7対応のAPPは今のところ無い。

筆者のEブック価格比較は、1930年代のサイエンス・フィクションのはしり、ジョン・キャンベルが書いた短編集の「影が行く」から。現代アメリカ人に人気の出そうな本とは云いかねる。まず、「何でもプレミアムプライス」のアップルアイブックストアは$6.99。バーンズ&ノーブルのヌック は$7.19だから、こちらの方が高い。グーグルはアップルよりも少し安くて$6.15。最安がアマゾンで$4.79。著者の注目点は、グーグルの付けた値段がほかと比べて高いか安いかである。結果はアマゾンの勝ち。

クラシックでは比較がしにくいと、次に筆者はスエーデンの人気作家、スティーグ・ラーセンの世界的ベストセラー、「ドラゴンタトゥーの女」をチョイス。アマゾン、ヌック,グーグルともに $5.20の同価格。一方で、アップルにはこの著名タイトルが見当たらないという結果になった。

3回目のトライは、最新のNYTベストセラーリスト入りをした前大統領、G・W・ブッシュの自伝「デシジョンポイント」。ラーセンの場合と同じで、アマゾン、ヌック,グーグルともに $9.99の同価格。アップルには、やはりこの最新ベストセラーが見当たらない。

同世代のSF作家、オースン・スコット・カードの「エンダーのゲーム」は、アップル、アマゾン、ヌック,グーグルともに$5.99の均一値付けだと判ったし、さらに5冊の比較をしてみても、3社が同一価格で、アップルにはチョイスがないといった、同様の結果が得られた。どうやら、出版時期が直近で、知名度が高い本ほど、同一価格の傾向があるようだ。

これを見ても、グーグルの参入でゲームの流れが変わってはいないようだが、実際にそうなのだろうか。なにせ、グーグルは「無料サービス」を武器に「価格」や「価値」を引き降ろしてきた実績の持ち主なのだから。

割引率、在庫量、棚ざらしなどの要素によって従来の本の価格は変動したが、在庫量や棚ざらしの無いEブックに均一値付けというのはいかもに胡散臭いではないかと、筆者は指摘する。

出版社側の差し金だろうか。アマゾンが出版社側の圧力に屈してEブックの価格を引き上げたのは最近のことだ。いわゆる「代理店契約」というわけだ。こうした繋がりを持った大手出版社や書店は本の価格を恣意的に固定できるのだろうか。アメリカの反トラスト法は消費者に有害な「価格誘導」を禁止しているはずだが?と、筆者は疑問を呈してコメントを終えている。

出版社が本や雑誌の定価を決定し書店で定価販売ができる「著作物の再販制度」が常識の日本の出版業界に言わせれば、「同一価格こそ正当だ」ということになるのだろう。本や雑誌の電子化が進むわが国だが、ウイルコックスの疑問にはどう答えるのだろう。著作権保護は電子書籍も同様なのだから、売価も均一、価格差があってはならないということになるのだろうか。

だとしても、デジタル売価はいったい誰がどうやって決めるのか。ウイルコックスが云うようにEブックには不良在庫も棚ざらしもなく、印刷や流通コストもゼロに近いのだ。著作権保護の錦旗に守られた出版業界が談合して決めるデジタル再販価格もやっぱり相当に胡散臭そうだ。


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